日本のWindows 3.1は、PC-9800シリーズ版とDOS/V対応というPC/AT互換機版が用意された。これらの日本語化にあたっては、米国版で採用されているアウトラインフォント技術であるTrue Typeの日本語対応の実現や、日本語入力システムの標準搭載など、日本法人のマイクロソフト社も、かなり頑張った。
また、日本電気は自社のAIかな漢字変換を搭載したり、フォントアベニューなどを付加して、PC-9800シリーズ版の付加価値を上げようともした。
一方のDOS/V版は、日本IBMを筆頭として、旧AX陣営の他に、コンパックやデルコンピュータといった外資勢も混入し、「一つにして同じにあらず」という状況を生み出した。
そんなWindows 3.1の日本語処理環境は、三つのキーポイントに集約されていた。
一つは日本語入力システム。
新しい日本語入力システムはIME(インプッド・メソッド・エディタ)と呼ばれた。
二つ目はアウトラインフォント。
Windows 3.1から本格的なアウトラインフォントを使えるようになった。Windows 3.1に高品位なアウトラインフォントが搭載されてたことでワープロだけではなく表計算ソフトやグラフィックソフトなど、あらゆるアプリケーションで使えるようになった。もちろん、Windowsという基本システムがフォントを用意したので、データのやり取りも便利になった。文字の奇麗さと、データの統一という二つの面で、Windows 3.1の日本語True Typeフォントの存在意義は大きかった。
三番目のポイントが、外字処理。
ビジネスでパソコンを使う上で外字の種類や最大登録数は、かなり大きな問題だった。
★日本語入力システム
マイクロソフト版のWindows 3.1には、MS IMEという日本語入力システムが標準で添付された。
当時のMS IMEは、エーアイソフトが開発したWX2のWindows対応版をベースとして、マイクロソフトで辞書などをチューニングして出荷したもの。Windows 3.1をインストールすると、一緒に導入されシステムを再起動すれば、すぐに日本語を入力できるようになった。使い方は、日本語を入力したい場面になったら、かな漢字変換の開始を指示するキーを押すだけ。PC-9800シリーズの場合は、XFERキーが漢字変換の開始と終了を指示するキーになっていた。
AXマシンとIBMの5576-001型キーボードは、「漢字」と刻印されたキーが、同様の目的に使われた。また、DOS/Vパソコンで広く使われている106型キーボードの場合は、Alt+半角/全角キーが、漢字変換の開始キーとなった。
漢字変換の開始状態になると、Windowsの画面右下に、アイコンまたはボタン型のガイダンスが表示され、この状態を確認してローマ字かカナで漢字の読みを入力し、適当な文節で「変換」キーを押す。
また、MS IMEは、ATOKとVJEにWX2という三つの異なるキー操作方法を選べる機能を装備していた。さらに、ガイダンスの表示を「文字型」にすると、漢字変換モードの時に表示されるメニューの表示も、MS-DOSらしくなった。
★外字処理
当時はワープロ専用機に比べて、パソコンで使える外字は少なかった。しかし、Windows 3.1では、かなりの数の外字コードを用意した。外字の作成も、マウスを使ったグラフィッカルな操作なので、手軽に文字をデザインできるようになり、既存の文字をコピーするだけで、ヘンとツクリを組み合せた外字を短時間で作成できるようになった。
★他社製品の細かい違い
基本的には二つの日本語化が行われたWindows 3.1も、パソコンメーカー各社の差別化政策によって、微妙な違いを見せていた。
その中でも、一番大きな違いとなっている点は、日本語入力システム。
日本電気は、自社で開発したAIかな漢字変換を搭載し、フォントの種類も増やしている。DOS/Vの元祖である日本IBM社も、純正の漢字変換を搭載していた。コンパック社は、どこまでも純粋なマイクロソフト版のWindowsとMS-DOS 5.0/Vを採用していた。
(著者:田中亘 wataru@yunto.co.jp)