●マイクロソフトのインターネット戦略
米国で最初にIE1.0が登場したのは、1995年の8月24日。それから現在のIE3.0までに至る時間は、一年を切っている。わずか一年という短い時間で、IEは三世代もバージョンがあがった。マイクロソフトがいままで開発してきたソフトウェアの中で、ここまで劇的な進化を遂げた製品も珍しい。それに加えて、マイクロソフトにとっては、まったく利益を生み出さない、無料で配布するソフトウェアに、これだけの労力と経費をかけているのも不思議だ。こんなに投資を惜しまずに努力して、マイクロソフトはどうするつもりなのか、そんな疑問を感じる人もいるだろう。
しかし、そこまでしてIE3.0を出さなければならない訳がある。それは、この二つの画面を見比べてもらえば、すぐにわかる。
まさに一目瞭然で、画面のデザインが違う。その最大の理由は、フレームと呼ばれるレイアウト技術への対応にある。フレームは、ページの中に別のページを埋め込んで表示したり、スクロールによって移動しない領域を作り出す。フレームを利用すると、いままでよりもずっと見やすくて便利なホームページのデザインが可能になる。米国では、1996年の春頃から、ホットでポップなページの多くは、フレームを使ったデザインを積極的に採用してきた。
ところが、そのフレーム処理されたページをIE2.0で見ると、ウェブ・デザイナーの意図する画面にならなかったのである。そのため、
●Internet Explorerの歴史
さて、Internet Explorerのルーツを辿ると、Mozaic というウェブ・ブラウザに基点がある。
インターネットの歴史に詳しい人ならば、この Mozaic こそが、インターネット・ブームの火つけ役であり、その設計者の一人が、あのNetscape社の若き億万長者であることを知っているだろう。
マイクロソフトは、この Mozaic のライセンスを得て、IEとして改良を重ねてきたのである。その結果が、こうしてIE3.0として実を結んだ。
●Internet Explorerie3.0の主な特徴
IE3.0に装備されている機能の中でも、最大の特徴はActiveXという技術だ。発表当時は言葉ばかりが先行して、いまひとつ実体の掴みきれなかったActive Xだが、IE3.0の登場によって、その利用と普及に期待がかかる。
実際にActiveXで何ができるかを体験するために、マイクロソフトでは、いくつかのサンプルページを用意していた。
・Internet Explorer 3.0のポイント
1.IE3.0からは、画面のデザインが大きく変わった。ツールバーのボタンの仕組みも変わり、マウスでポイントした部分のアイコンに色がつく。また、クイックリンクと呼ばれる便利なボタンも用意された。
2.オプションに関する設定もかなり強化された。この画面では、画面の表示に関する情報表示の方法を指定する。ダイヤルアップで利用している人のために、マルチメディア関連のデータをダウンロードするか否かも決められるようになった。
3.ActiveXをはじめとして、各種のスクリプト処理へのセキュリティも強化された。これらのセキュリティも、みなこのオプションによって、細かい指定ができる。
4.Javaのアプレットにも対応したので、Javaで作られた情報も、簡単に参照ができる。以前のβ版では、別のモジュールを組み込む必要があったが、正規版では、ただJavaのアプレットが登録されているページを参照すると、自動的にプログラムが動くようになった。
5.もちろんShockwaveにも対応した。Shockwaveで作られたページを見るために、特別な設定作業はいらない。IE3.0は、Shockwaveを楽しむために必要なコンポーネントは、すべて自動的にダウンロードしてくれる。
6.IE3.0の登場よりもひと足早く、日本のmsnのウェブが、カスタマイズ可能になった。このページも、アニメーテッドGIF(動く画像)が使われるようになった。IE3.0で参照すると、画面にある鍵が回転し、バナーに表示されている魔女のシルエットが動く。
7.ストリームの動画再生を可能にするVDOをサポートした。VDO対応のデータの再生を実行すると、動画を鑑賞するための画面が現れる。インターネットでのマルチメディアが、また一歩身近で手軽なものになった。
8.IE3.0の姉妹ソフトとして、電子メールのMicrosoft Mailも登場した。Exchangeのように重くはないので、Netscapeのメール機能のように手軽に使えるのが特徴。ただし、msnでは使えないので残念。
9.得体の知れないプログラムの実行を防ぐために、認証のための署名が表示されるようになった。プログラムをダウンロードして使うかどうかを途中の段階で判断するので、安全性が高くなる。
(著者:田中亘 wataru@yunto.co.jp)