●Power PCへの対応
米国でWindows NT 3.5が、9月21日に発表された時に、キーノートスピーチに立ったビル・ゲイツ氏も公約していたが、3.51ではPower PC対応を実現する。正確なリリース時期は未定だが、春過ぎに登場するバージョンで、Power PC対応版もCD-ROMの中に入れられる予定だ。ただし、それは米国版の話であり、日本での対応はまだ正式にアナウンスされてはいない。
その背景には、まだ日本の市場がPower PCに対して様子を静観している状態にあることが大きく影響しているだろう。Power PCの業界標準リファレンス仕様となるPReP機が、いつ登場して、日本でどの程度普及するのか、その動向次第で、Power PC対応の日本語版のスケジュールも決まるのではないだろうか。また、米国では、モトローラ社がPReP対応版への移植を積極的に支援しているが、日本でも同様の動きがあれば、意外に早く日本語化されるかもしれない。
●Windows NT 3.51のフューチャー
1995年3月から米国でβ版のリリースが開始されたWindows NT 3.51だが、その強化されたポイントは以下のようになっている。
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・PCMCIAコントローラ
・Windows 95風のダイアログをサポート
・Windows 95のアプリケーション完全互換
・NTFS Disk 圧縮。
・Powerマネジメント対応
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マイクロソフトは、MS-DOSの頃も、Windows 3.xxの時代にも、0.01ポイントのバージョンアップに、縁起をかついでいるかのように見受けられるが、今回の0.01ポイントのアップでは、Windows 95のフューチャーを積極的に取り込んでいる様子が伺える。
★PCMCIAコントローラ
PCMCIAをサポートするコントローラ系デバイスドライバは、もともとWindows 95が提唱しているプラグ&プレイの延長線上にある仕組み。現在のWindows NT 3.5には、PCMCIAスロットを制御するためのカードサービスが用意されていないため、2スロットあるPCMCIAを完全に使うことができない。たとえば、スロット1でイーサネット用のカードを使ってしまうと、残るスロット2には何も利用できない。
仮に、イーサネットを使わなかったとしても、フラッシュメモリやFAXモデムなどのカード類は、Windows NT 3.5に対応したドライバを別途用意しなければ、OS上で認識することができない。このドライバは、32bit仕様になるため、現在(1995年当時)流通されている製品の多くは、まだほとんどサポートされていない。そのため、ノートパソコンのPCMCIAスロットを活用するためのOSは、Windows 95を待たなければならないと思われていた。
そのWindows 95よりもひと足早い対応として、Windows NT 3.51のPCMCIAサポートが実現する。これで、最新のノートパソコンでもWindows NTが使えるようになる。しかし、その対応はあくまでもPC/AT互換機を中心にしたもので、日本での対応は未定のままだ。日本電気の高山支配人は、先日(1995年当時)のPentium搭載98noteの発表会場で、日本電気のノートパソコン(98noteシリーズ)におけるWindows NTの対応は、遅くても年内には実現すると約束していたので、Windows NT 3.51が、来年にずれ込む心配はないだろう。
一方、Windows NT 3.51の日本語化のスケジュールも、まだアナウンスされていないので、DOS/V対応のノートパソコンにおけるPCMCIAサポートも、98noteと同時期になる可能性は高い。
★Windows 95風のダイアログをサポート
Windows NT 3.5においても、コントロールパネルにある「ディスプレイ」設定など、一部のダイアログボックスやアイコンのデザインなどにおいては、Windows 95風のデザインを採用していた。しかし、それはあくまで部分的なものであり、OSのAPIレベルではサポートされていなかった。そこで、Windows NT 3.51からは、システム全体のダイアログボックスが、Windows 95の仕様に対応する。その結果、Windows 95用に開発された32bitのアプリケーションが、何の修正もしないでそのまま動くことになる。
★Windows 95のアプリケーション完全互換
ダイアログボックスの互換性をはじめ、Windows NT 3.51は、すべてのアプリケーションにおいて、Windows 95との完全な互換性を実現する。マイクロソフトが日本で開催したWindows 95のプレスセミナーの会場では、Windows NT 3.5とWindows 95の32bit APIには、カラーマッチや一部のAPIにおいて、100%の互換性がないと説明されていた。一般的なAPIセットのほとんどは共通化されていたが、部分的な違いに関しては、3.51側で吸収することになった。これで、二つの32bit OSにおいては、完全な互換性が保証される。
★NTFS Disk 圧縮
以上の三点に加えて、Windows NT 3.51独自の機能アップとしては、NTFSフォーマットのディスク圧縮対応がある。NTFSは、Windows NT専用のフォーマット形式で、いままでは圧縮機能には対応していなかった。マイクロソフト社のDisk圧縮は、MS-DOS 6.2に搭載されているものが最初で、その機能は従来からのFATにのみ対応していた。NTFSのDisk 圧縮によって、その利用範囲が拡大されることになる。この圧縮技術がWindows NT Serverでも利用できるとなれば、サーバーのディスク容量を節約するための効果的な手段となる。
★Powerマネジメント対応
PC/AT互換機に搭載されつつある「エナジーセーブ」に対応したソフトウェア・モジュールを装備する。Windows 95では装備されているが、ディスプレイの信号出力を停止するとか、ハードディスクの回転を止めるなどの省電力機能を実現するもの。Power マネジメントは、レジュームの設定やバッテリ消費量の監視など、特にノートパソコンで威力を発揮する。
対応の内容としては、Windows 95で実現されている機能を踏襲したものが多い。Windows NTは、Windows 95との親和性を高くしていくことで、Windowsによるネットワーク環境の普及を促進しようとするようだ。
(著者:田中亘 wataru@yunto.co.jp)