開発/言語ソフト ここが見所、さわり所

〜 最新技術動向 〜

山本 淳



 
 例年であると、11月に米国ラスベガスで開催される「COMDEX/Fall」は、各社の戦略製品が発表されるコンピュータ業界にとっての一大イベントとなっている。ところが今年は、まだCOMDEXへの旅支度を整える準備も進まないうちから、10月末から11月にかけて米国で各社がこぞってカンファレンスや新製品発表会を開催し、次世代への戦略製品の発表を行った。

■オラクルとネットスケープの製品バンドルの合意
■サンの「JavaStation」の発表

 この2つの話題は、まだ日本での対応が明らかでないために、あまり大きく扱われていないようであるが、マイクロソフト攻勢に対抗する勢力のニュースも押さえておかなければならないだろう。開発者にとっては、サーバーサイドの動向と、クライアントサイドのJavaについては興味のあるところに違いない。
 もっとも以下に述べるマイクロソフトの最新情報を前にしては、それどころではないといったところだろうか。

■マイクロソフト
・10月28〜30日 「Site Builder Conference」 (サンノゼ)
・11月4〜7日 「Microsoft Professional Developers Conference」 (ロングビーチ)

 マイクロソフトは、これまで一年に一度のペースで、開発者に向けた世界規模のカンファレンスを開催し、戦略製品の発表を行ってきた。
・1992年 Win32 PDC (Windows NT)
・1993年 Win32 PDC (Windows 95)
・1995年 Win32 PDC (Windows NT Server)

 ところが今年は三回も開催し、インターネット技術への急速なシフトと、分散環境への対応を発表した。
・3月 Internet PDC
・10月 Site Builder Conference
・11月 Windows PDC (Distributed Computing)

 実は、今米国カリフォルニア州ロングビーチのホテルの部屋で、PDCのセッションの合間を縫って原稿をワープロしているのだが、現場にいても情報量の多さと変化の激しさに音を上げている。
 先週のSBCでは約20枚弱のCD-ROMが配布され、インターネット関連技術、とくにISP (Internet Service Provider)向けの商業利用のためのさまざまなコンポーネントのベータ版が配布されたという。
 今週は最終日に12枚のCD-ROMが配布される予定とアナウンスされている。重複するものがあるというが、米国で96年末から97年にかけて、ということは日本において97年第1四半期から98年前半にかけてリリースされる主要なコンポーネントが一斉に公開されている。

 先週から今週にかけて発表されている戦略技術・製品/ベータ版は次の通りである。情報が整理できていないので、抜けがあるかもしれないがご容赦願いたい。
●Active Platform
DCOMとActiveX、およびインターネットの標準技術を核に、分散コンピューティングを実現するインターネット・イントラネット対応技術の総称。サーバーサイドを「Active Server」、クライアントサイドを「Active Desktop」と呼び、HTML、スクリプト、コンポーネント、各種のシステムサービスをサーバー・クライアントのそれぞれに配し、トータルな分散コンピューティングの実現を図る。
「Viper」と呼ばれていたTransaction Server、「Wolfpack」というClusters技術、「Falcon」というMessage Queue技術なども続々と投入される。
●Zero Administration Initiative for Windows、NetPC
ネットワーク上のすべてのデバイスを集中管理する戦略によって、他社の500ドルPCに対抗したネットワークコンピューターをPCベンダーと共同で開発
●BackOfficeの追加コンポーネント
従来「Normandy」という開発コードで呼ばれていたインターネットサーバー製品群。Internet Information Server 3.0、Proxy Server 1.0、Merchant Server 1.0 (電子商取引)、Personalization System (個人情報サービス)、Conference Server (コンファレンス)、Content Replication System (Webコンテンツのリプリケート)、Mail Server、News Serverなど。
●Dynamic HTML技術
HTMLを動的なオブジェクトの集まりとして扱い、Active Desktop上で操作や実行きるようにする技術。
●Internet Studio
以前は「BlackBird」という発コード名で、Microsoft Networkのコンテンツを作成するためのツールとして開発されていたが、Active Server PageやActive Data Objectに基づく動的なWebコンテンツを開発するツールとして、日本でも97年第1四半期に出荷予定。
●Visual Basic 5.0 Control Creation Edition
Microsoft Developer Studioに統合されたVBで、ActiveXコントロールが開発可能。

 マイクロソフトは、すでに出荷されている(日本では、ご存知の通り12月中旬出荷の)Windows NT 4.0、97年中にベータテストが始まる「Memphis」 (Windows 9x)とWindows NT 5.0、97年早々に発表が見込まれるInternet Explorer 4.0などWindowsプラットフォームに続々と製品を投入するが、MacintoshやUNIXプラットフォームでも対応が予定されており、OSプラットフォームや開発ツールに依存しない標準環境としての地位が揺るぎないものになりそうである。

 先月OS/2コンソーシアム関係で、IBMの方々と話する機会があったが、OS/2におけるWin32アプリケーションのバイナリサポートは行わず、Lotusが行っているようなOpen32を利用したソースレベルでの互換性や、アプリケーションのJava対応に力を入れていく戦略のようである。11月1日のコンソーシアム総会でも「IBMのWindows戦略」の話があったが、少なくともPCクライアントはWindows 32ビットで決着したということだろう。

 開発者にとってのマイクロソフト戦略は、OLE/COMの延長線上にあるActiveX/DCOMへの対応であると理解すればいい。分散コンピューティングへの対応は、「Microsoft Transaction Server」(MTS)が対応してくれるので気にする必要はない。開発者は、単独で動作するActiveXオブジェクトDLLを作成するだけだという。開発ツールは、Visual C++でもVisual BasicでもVisual J++でもサードパーティのCOBOLほか、何でも構わない。
 次のアプローチは、スクリプト技術を磨くことである。Java ScriptやVisual Basic Scriptを使ってActiveXオブジェクトをコントロールし、動的なWebページを開発することでアプリケーションが完成する。

 今回の原稿が配布されている11月末のテクニカルセミナーで、久しぶりに言語製品セミナーということで「Visual C++ 4.2」について講師を依頼されている。ちょうど一年ほど前に「Visual C++ 4.0」や「Visual Basic 4.0」のセミナーに絡めて、オブジェクト技術によって、オブジェクト部品開発者と、部品を利用したソリューション開発者に二分されるという予測の話をしたが、まったく世の中の移り変わりは激しいものである。
 最近は単独のオブジェクト部品の話などほとんど聞くことがなく、もっぱらActiveXやJavaの話ばかりである。10月初めに東京ビックサイトで開催された「Object World Tokyo 96」は、出展者も来場者も少なく、盛り上がりに欠けていた。
開発者にとって必要な技術は、日々刻々と変化している。果たして、本当にユーザーが望んでいる世界に近づいているのかは疑問が残るが、米国から発信される大きな津波に飲み込まれて溺れかけている日本の開発者にどんなメッセージが喜ばれるのか、聞いてみたいものである。

富士ソフトABC株式会社 技術調査室長
(yamamoto@fsi.co.jp)


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