最新Windowsソフトウェア事情(第66回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄
mtaka@fsinet.or.jp


地図ソフトへの尽きない関心

 地図ソフトへの関心はいつ頃からのものだろうか。本連載のタイトルを過去にさかのぼると、「第五回 地図情報」とある。いかにもそっけないタイトルであるが、この頃はページ数もわずか2ページであった。最近のように、だらだらとただ長すぎる原稿よりは、かえって効率よく読んでもらえたのかもしれない。紙に印刷することになるとどうしてもページ数の制約を意識するが、Web版であればほとんど気にならない。
 この96年5月の記事では、ロータス1-2-3のマップ機能を使うと、ワークシート上に地図を描くことができることを具体例にもとづいて紹介している。本当はみなさんにもこの5年前の記事を参照して欲しいのだが、残念ながら現在Web上に掲載されているバックナンバーは11号からであり、この記事は載っていない。いずれ、第一回目からのすべての原稿をアップしてもらおうと過去の原稿のファイルを探しているところである。
 5年前のこの頃は1-2-3をよく使ったものである。マップ機能も最初は1-2-3からだったように思う。また、「バージョンマネージャー」も、さまざまな条件のもとでのシミュレーションを効果的に行うために注目すべき機能であると思われた。その後、Excelにもマップ機能や「バージョンマネージャー」に対応する「シナリオ」機能が加えられた。
 正直なところ、最近ではもっぱらExcelを利用している。大学のパソコンにはMSオフィスがインストールされているので、その環境にあわせなければならない。たしかにExcelは私の研究テーマである「経営意思決定支援」にかかわるさまざまな機能を含んでおり、授業の実習用ツールとして欠かせない。また、外部のセミナーや放送大学のスクーリングでもかならず、シナリオやゴールシーク、ソルバーそしてマップ機能を紹介する。
しかし、「表集計ソフト」というイメージが強いためか、Excelにこうした高度な分析機能が含まれることを知っている人は少ない。マップ機能を紹介しても「地図の上に県別の販売状況を色分けして表示して何の役に立つの?」という疑問を強くもつようである。やはり、「必要こそ発明の母」ではないが、データ分析の必要性(ニーズ)があってこそ、高度な機能もその役割を果たすことになるのだろう。というように、話をしだすと、肝心の「最新Windowsソフトウェア事情」からますます離れていく。そろそろ本題に戻ることにしよう。

 図1をみていただきたい。これは私の情報収集整理のデスクトップである電子ファイリング上に収集された新聞記事である(5月初旬)。記事を読むと「2000年5月2日からGPSの精度が従来の10倍に上がり、これまで100m前後あった誤差が10m前後になる」ということである。もともと軍事用であったGPS(全地球測位システム)の精度を安全保障の理由からデータを間引いて精度を下げていたが、こうした処理を取りやめたのである。それによってカーナビの精度も私が購入した携帯型のGPSも何の変更も加えることなしに、精度が10倍に上がることになったのである。これは関係者(GPSや地図ソフトに関心をもつ人々)にとって大きな朗報である。

図1

 たとえば、本欄51回に紹介したように、私は八ヶ岳南麓にのびる棒道沿いの石仏の写真をデジカメで撮影し、また、その位置を紹介するためにポケナビ(携帯型のGPS)を購入した。しかし、ポケナビを購入したあとマニュアルを読んで知ったことだが、当時のGPSは誤差が100mもあり、製品カタログに書かれているように「今年見つけた山菜の位置をポケナビで記録しておけば来年また、ポケナビが同じ場所に案内してくれる」ことなど、現実的ではなかったのである。ここだと思った位置の周囲100mのどこかにあるといわれても、とても探す気にはならないだろう。
 しかし、2000年5月を境としてここだといわれた場所の周囲10mを探せばよいのであるから、これは大変なことである。そういえば携帯電話の機能競争は近い将来、GPSのついた機種の発売が予想される時代になった。また、つい最近、私も購入したPDA(とくにPalmOS。 私はVisorを購入した)もオプション機器の一つとしてGPSがリストされている。位置という重要な情報をいかに活用するか、個人生活においてそしてビジネスにおいて、問われる時代が近づいているといってよい。

 さて、また急に話は変わるが、私はベンチャー企業「デジプリ」が運営しているメルマガ(メールマガジン)に「デジカメ活用」の連載を始めた。URLは「http://www.digipri.com/free/maga_e.html」である。デジカメの1ユーザーにすぎないお前がなぜ?と思われるかもしれないが、私はデジカメの撮影方法を伝授するのではなく、情報収集のツールとしてのデジカメを個人そしてビジネスの立場から紹介しようとするのである。したがってこの月2回の連載の最近号で紹介しているように、「棒道沿いの石仏をデジカメの写真とその位置情報をあわせ提供することによって、あとから石仏を訪れる人々にとって重要な情報を提供することになる」のである。記事の画面例を簡単に紹介しておこう。

 図2は「プロフェッサー高橋の私のデジカメ活用術」と題する記事であり、記事本体は下段のリンクをクリックすることで図3のように表示される。いつものように長い夏休みを過ごす小淵沢の我が家を紹介し、その下にはいよいよ棒道へと読者を案内することになる。レイアウトなどは編集部にお願いしており、私はいつものように原稿と写真を送るだけである。編集部には大変な手間をかけているようであるが、私にはこうしたレイアウトなどのセンスはない。ページをスクロールするとやがて図4のような画面が出てくる。ここには「第28所観音」の前でポケナビを使って位置情報を取得している様子がデジカメで撮影されている。下段には前に紹介した画面同様、石仏の現在位置を示す緯度経度がディスプレイ上に表示されている。もちろん、現在の誤差は10m前後である。GPSつきの携帯端末(携帯電話を含めて)が普及していくにつれて私の情報を頼りに石仏を訪れる人々が増えていくものと期待される。

図2

図3
図4

 ところで情報技術の分野はまさに"dog's year"そのものであり、ネット上の新聞には新製品情報があふれている。私もさきほどのGPS関連情報を確かめるためにポケナビの発売元(エンペックス気象計)のホームページをおとずれてみた。そこには新聞記事と同様にGPSの精度が10倍あがったという情報とともに新製品の紹介もあった。図5は「ポケナビ・ミニ」のカタログである。1年半前に購入したときよりも、「より小型軽量そして高速の機種」が1万円も安く販売されている。しかも装置自体は米国の専門メーカーGarmin社の製品のようである。これからこの種の装置を購入される場合はこの最新機種をお勧めしたい。

図5

 さて、上のメルマガで「デジカメ活用法」と題する以上はカメラのことも書く必要がある。メルマガにはまだ書いていないが、デジカメの中にはGPSと直接連動して、写真を撮影したその場その場の緯度経度情報を記録できる機種もある。もともと、デジカメは写真を撮影すると日付や時刻そして絞りやシャッター速度などが自動的に記録され、それらの記録情報の中には位置情報を記録するための項目もあるということである。したがって近い将来、個人向けのデジカメの中にもGPSを内蔵した機種も出てくるはずである。このGPSと連動したデジカメは図6ように、コダック社のデジカメとガーミン社のGPSを連動させた機種(GPS260)として昨年6月に46万円で発売された。値段は業務用といわざるを得ないがおそらく、野外の工事現場などで活躍しているのだろう。

図6

 GPSは衛星から受信した情報にもとづいて、現在地の緯度経度や高度そして速度などを取得してくれる。しかし、緯度経度がわかっても、そこがどこかを調べるためには地図ソフトが必須である。地図ソフトもインクリメントPやアルプス、ゼンリンなど各社からさまざまなソフトが発売されており、私もその都度、提供してもらって大いに楽しんでいる。そのうちの一つ、MapFan(インクリメントP社)はVersionVとなり、ますます面白くなってきた。図7はこのMapFanVの画面例である。左側の検索欄に住所などを入力して検索すると右側に該当する地図が表示される。
 また、画面はインターネットブラウザと同様のインターフェイスとなっており、必要に応じてwebにアクセスして最新情報をシームレスに得ることができる。機能競争の結果、地図ソフトの基本機能は各社とも次第に似通ってきており、ソフトの区別は付加的な機能に求められるといってよい状況になってきている。この点においてMapFanは以前のバージョンから、Excelなど他のソフトと地図情報(位置情報)を連携できるように、そのためのデータベース機能が用意されている点が注目される。たとえば、現在のバージョンにはExcelのテンプレートが添付されており、それらを使うとExcelのワークシート上に用意されたデータベース(住所や郵便番号など位置を示す情報含んだデータ)にもとづいて、即座に地図や緯度経度を表示したり、取得できたりする。これは使い方(目的、ニーズ)によっては大変に便利な機能である。

図7

 たとえば図8はテンプレート上の氏名や住所欄に適当な名前や住所を入力したところである。その上で、住所欄をマウスでクリックするとその住所欄に該当する地図が左側の欄に表示されてくる。これは図7の住所欄に住所を入力して検索するのと同様であるが、Excelのワークシート上の顧客データベースなどで同様のことを行うことができるのである。テンプレートのもう一つは図9のように、今度は住所欄に該当する緯度経度情報を検索、表示してくれる機能である。高度な地図ソフトたとえばMapFanには緯度経度情報を使って、たとえば、現在地周囲5kmの顧客をリストアップするといった分析が可能である。そのための基本データが緯度経度情報であり、いまのように、簡単な操作で顧客の住所から緯度経度情報を取得できれば、高度な分析に大いに役立つことになる。それはともかく、地図ソフトそして位置情報の活用については今後とも話題にしていきたいと思う。

図8

図9

(麗澤大学 国際経済学部 国際産業情報学科 教授
http://www.reitaku-u.ac.jp/



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