活動報告


●第108回セミナー実施報告 <セミナー企画委員会主催>
日  時:2000年8月25日(月)16:00〜18:20
場  所:ホテルニューオータニ東京
 ガーデンコート宴会場階アリエス
参加人員: 150名
テーマ :「Microsoft .NET 」
講  師:米マイクロソフト社 副社長
コンシューマ戦略(日本担当) 古川 享 様

 恒例となりました納涼技術者交流会での古川様のセミナーは、今回も2時間以上にわたり、「次世代のインターネット Microsoft .NET」の全体像とコンシューマ向け戦略についてお話いただきました。100枚近くのスライドにビデオ映像を取り込みながらデモを交えてのお話しは、いつものように出席者を飽きさせることなく圧倒し、懇親会の始まりを20分近く延ばすことにより終了しました。なお、司会は下川副会長により行われました。


●松倉会長ご挨拶


 今日はWindowsコンソーシアム恒例の夏場のひと時を過ごしていただくということで米国マイクロソフト社から古川副社長をお招きして、マイクロソフト.NETということで大変興味のあるお話をしていただけると思います。このあとの懇親会でも会員、マイクロソフト及びゲストの皆さんとともに有意義な時間を過ごしていただき、明日のビジネスの糧としていただければ思っております。

 先ず、古川講師から、「.NET全体のマクロ的なオーバービューが十分語り尽くされていないのではないかと思う。雑誌を見ても.NETの記事があるとどの記事でもみんな違うことが書いてある。この際マクロ的に、.NETとはどんなことを考えて今回発表になったかというあたりを、先ず全体像をご説明させていただいた上でその後、コンシューマ分野でこんなことが起きます、ということを引き続きお話したい。」とのお断りがありました。


 前半の『.NETの全体像』では、「デジタルワールドへ」、「創業時のビジョン」、「次世代のインターネット」、「Forum2000でのビル・ゲイツの発言」、「インターネットの進化」、「Why is Microsoft .NET」、「Microsoft .NETの供するもの」、「プラットフォームの進化」、「What is Microsoft .NET」、「次世代Internet Platformの開発/提供」、「Applicationサービスの提供」、「.NETビジネス体験」、「ビジネスユーザーにとっての変革」、「New World For Corporations」、「.NET Small Business Experience 企業間の協業の姿」、「中小企業にとっての変革」、「企業ユーザーのロードマップ」、「Business Transaction」についてお話いただきました。この中からいくつかをご紹介いたします。


●デジタルワールドへ
世の中が今いろいろな物がデジタル化している。パソコンの周りの出来事を見てみると写真のデジタルの出荷数量が今年ついにフイルムの出荷数量を超えた。出荷台数だけでなく実際それから吐き出される紙の量といったものも印画紙のスペースより実際プリクラやカラープリンターで出力される面積の方が多くなった。そうやって見てくると写真の世界はデジタルカメラとパソコンの関係はお互いに協調し合いながら一定のところまで到着したものだと思う。また、今年から来年にかけて音楽を自由に編集したり、音楽を自由に持ち歩いたりといった新しいミュージックデバイスの登場、ネットワークで音楽を聴くといった状況が新しく生れてくると思う。そして、Windows Meの登場によりビデオがパソコンの中で自由に編集ができることになる。このようにデジタル化されたメディアがパソコンの中で非常にいいものになるという状況になってきている。従来、マルチメディア系もしくは新しいメディアの流れというと音が出て絵が出るということを中心に考えてきたが、今回の.NETの発表の中、それから.NETを対象にしたコンシューマデバイスの中でもう一度手書きの文字で自由にノートを取るといったペンを使って操作するようなインターフェイス、それから書籍そのもののメディアとして新たな流れを作るであろうという意味においてノートがデジタルメディアとして登場するものと思われる。
そういったメディアのビジネスの分野では、インターネット/イントラネットの単にホームページを掲示してその中で実際にドッジボールのやりとりというレベルを超えて、インターネットの時代では購買/販売、契約、サービス、記録といった分野で各々のインターネットの力が既に使われ始めているのではないかと思う。従来、知的ワーカーの方々にとっては印刷物を配布する、回覧するという形での情報の共有、そして1対1の間でメールのやり取りをしていたような情報の共有の仕方が、相互の中の情報を如何に共有して、良い情報も悪い情報も速やかに判断して、かつ方向を決めていくかという中での情報の分析、会議の持ち方、学習の仕方といったことに関して各々デジタル化がどんどん進んでいくのだと思う。

●次世代のインターネット
マイクロソフトは、1975年創業時「全ての机に家庭にコンピュータを」というビジョンを掲げ、プラットフォームはパソコンというハードウエアであってその上にソフトウエアとしての基盤としてBASIC、MS-DOS、Windowsを乗せた上で私どもは今までやってきた。
ところが昨年から方向を変えて新しいビジョン「時や場所、機器を問わず、優れたソフトウエアで人々の可能性を広げる」を掲げた。この言葉の持つ意味というのは、物が欲しい時代からソフトウエアを通じて人々の力になるためには単にソフトウエアを運用しているだけではなくて時や場所、機器を問わずにソフトウエアが自由に発揮できるような環境を作っていきたい。ここで新しい定義をしたいのは、従来ソフトウエアと呼んでいるものはプログラムとそれを運用されるコンテンツなどが中心になっていたが、これから先にソフトウエアそのものは、ネットワークの中で運用されるあらゆる形のサービスを実現することが要求されてくるのではないかと思う。その時に、私どもは今までのハードウエアがあってその上にOSを乗せるといったプラットフォームから、インターネットの上に基盤を築いてきたい、そして中核となるソフトウエアの基本アーキテクチャとして.NETをこれから提案していきたいと思う。その中でキーワードとしてサービスとしてのソフトウエア、それを実現する新しい時代の新しいスマートなデバイス、そしてあらゆるところにおいてXMLに柔軟に対応していく(XMLを中核に据え置いてそこから上がってくるメッセージをどういう形で処理するか、XMLを核にどういう形で情報を格納するか)ということを中心に考えて展開していきたいと思う。そしてこれからは、今までのユーザーインターフェイス(ファンクションを中心にしたもの)から、新しいユーザー体験(New User Experience)を中心にして考えていきたいと思う。ユーザー体験とは、1つの時間の流れの中で企業として価値ある時間を過ごしたのだろうか、生産性が上がったのだろうか、そして個人として豊かな時間が過ごせたのだろうか、ということを保証していくことである。

●Forum2000(6月22日に開催)でのビル・ゲイツの発言
サービスそのものが各クライアントに奉仕できる。今までの積み上げ方がハードの基盤の上に積みあがったOSその上にアプリケーションが存在していたのではなしに、サービスを中心にそれに必要ないくつかのコンポーネントを自動的に立ち上げてきてお客さんに奉仕していきたい、そんな環境を作っていきたい。個人だけで起こしているのではなくて、他のXMLのコンポーネントに対しお互いにやり取りするというような事も含めてこれからサービスを一つのキーワードにしたい。

●インターネットの進化
最初のうちのインターネットは機械を相互に接続するプロトコルを定義するというところでTCP/IPを確立して相互に接続されるということを中心に考えた。今現在のインターネットは、HTMLを使って表現を豊かにする、Webを見るということであるが、そこに書かれたデータは生きたデータでなく死んだデータである。編集が終わった後はそれを見るだけのデータである。それを準加工して再度みんなに共有してもらうという状態になった時には今のHTMLの表現ではなかなか難しい。その時のXMLはそこに記述されている情報を何のツールを使って編集したかというところまでさかのぼって、その中に持っている情報の属性を引き起こして、なお且つそれを加工したツールがあるならばそれを起動した上で自由に加工したり、そこに書かれている情報同士がお互いに関連を持ちあったりして実際に見ている人同士が対応するだけでなく、XMLで格納された情報同士がまた変化をとげる。そういう意味でまたこれから先にWebの中でプログラムが可能であるという思想がXMLの一番大きな要素であろうと考えている。

●Why is Microsoft .NET、Microsoft .NETの供するもの
何故、『.NET』という言葉にたどり着いたかというと、今のインターネットの状況を見てみると沢山普及したし、期待もどんどん広まっている。ところが実際に現実とのギャップがあるのではないかと、プラットフォームの上でアプリケーションを起動したとき、そこに書いてある情報は読むだけで、加工した情報をまたもう一度再登録するということがそれほど簡単にはできない、スタティックなデータとしての存在であり、そこに書いてあるデータを結果として読むことは非常に簡単であるが、それを2次加工して新しい数字をまた登録するということは一定のユーザーの方が自由にできるような環境ではない。
それから複数のサイト、例えば課金管理をするようなサイト、実際にメニューを見せるサイト、映像を配ってくれるサイト、もしくは業務であれば複数の業務を管理しているサーバー同士がお互いに関連を持ち合って相互に協力しあうようなプログラムを作ってくれと言っても非常に難しい。そういう意味では各々のサイト、もしくはデバイス間の協調の難しさといったものが今のインターネットに限界を生じている。
決して悪い話だけではなく、従来想像もつかなかったモバイルデバイスの急速な普及で、パソコン以外のデバイスでインターネットが自由に使えるようになった、また、単にホームページを登録してそれをアクセスするというサービスだけでなくインターネットのインフラを使ったホスティング・サービスへの期待もどんどん高まっている状況である。

その中で、Microsoft .NETの供するものは、前にも述べたが「サービスとしてのソフトウエア」、「XML互換を核に」、「各種のスマート・メディアをサポートして」、「新しいユーザー体験を供していただく」ことを中心に考えている。

●プラットフォームの進化


図の右と左の世界の中で大きく変わるものがある。これは多分DOSからWindowsに変わった時に匹敵する変革である。Windowsから.NETのプラットフォームに変わったとき、各々のブロックの中が、例えば、パソコンだけでなくパソコンと他のデバイスが存在する、Win32のAPIだけでなくBuilding Blockを中心に、File SystemからXML Storeへ、User InterfaceからUser Experienceへ、また各種アプリケーションからサービスに変わっている。これについてForum2000でのビル・ゲイツの話をお聞きいただきたい。このお話について詳細な解説がありました。
私どもはこれから先にはマイクロソフトのアプリケーション、パートナー様のアプリケーションなしに、私どもはサービスを提供し、そして皆様のパートナーの方々にもサービスを提供していただくために必要なものをご用意していく形となる。
また、途中で寝てしまった人に対するコメントとして、「Windowsは止めません」、「Windowsのアプリケーションをそのまま書いていただくことが必ず.NETのプラットフォームに一応つなぐことになるのでそこに不安を持っていただくことは止めていただきたい。」とのお断りがありました。

●What is Microsoft .NET
マイクロソフトがどうして、.NETに取り組んだかについて、次の項目について実際に事例をいれた詳細な説明が行われました。
『次世代Internet Platformの開発/提供』・・・「新しいUser Experienceの提供」、「次世代インターネットに適したサーバー群の開発/提供」、「プログラミングモデルの提案、開発環境の整備」、「ビルディングブロックとしてのサービスの整備」、「Non-PCデバイスも視野に入れたプラットフォームの提供」。
『アプリケーションサービスの提供』・・・「MSN.NET」、「Personal Subscription Service」、「Office.NET」、「bCentral for .NET」、「Visual Studio.NET」。

●.NETビジネス体験
例としてビデオによる大変面白い例が紹介されました。



後半の『.NET for Consumer』では、「人々の可能性を広げる・・・・」、「新しいインターネットの体験」、「MSN .NET体験」、「.NETコンシューマ体験」、「.NETプラットフォーム」、「Windowsメディアテクノロジー」、「ネットワークを利用した音楽配信」、「Physical Goods Become Digital」、「MS eBook Reader Application」、「マイクロソフト TVプラットフォーム」、「Microsoft TV ロードマップ」、「米国のデータ放送への取り組み」、「インターネット時代の通信と放送」、「.NET開発ツール製品とサービス」、「New Developer Experience」、「An Open Language Model」、「製品ロードマップ」、「This Year:Best Lineup Ever」、「まとめ」についてお話いただきました。この中からいくつかをご紹介いたします。


●「人々の可能性を広げる・・・・」。
自分が今責任をもってこの分野でやってきていることというのは、「人々の可能性を広げる」という言葉に非常に着目したいと思っている。
・ 個人として会社として、家庭の中で毎日の仕事をより簡単にやさしいものにしていきたい。
・ 人々が持っている情報に容易にアクセス可能にしたい。
・ 個々人の嗜好に合わせたエンターティンメントの創造と楽しみ方を提供したい。

●新しいインターネットの体験
従来のキーボードやペンに変わってナチュラルインターフェイス(手書き入力、言葉の理解、視覚)がどんどん生れてきて可能となって、本当に必要な情報を選択することができ、どこからでも必要な情報にアクセスが可能となる。ナチュラルインターフェイスの例として、人間の顔の喜怒哀楽が要素を簡単に変えることによって可能となることがビル・ゲイツさんの顔を対象としたデモが行われました。このデモは大変興味のあるものでした。


これから先、ナチュラルインターフェイスというのは言葉を理解したり、視覚をより有効に活用したりするということがどんどん進んでいくと思う。今の見ていただいたビルの顔の技術はMicrosoft Researchの中で開発されたコンポーネントで、実際にこのコンポーネントの一部分がExcel、Wordの中で既に使われアニメーションへの対応をしている。これから先の新しいインターネットの体験の中ではどんどん新しいインターフェイスが出てくるであろう、それらを自由に活用していくことができる場にしていきたいと思う。

●MSN .NET体験
家庭の場合、コンシューマの世界ではこれから先にMSNをアクセスしてホームページを見る場合こんなふうに変わるでしょう、というデモがモバイル、デジタルTV、ホームPCについてありました。.NET Experienceのモバイルの場合では、旅行の計画を立てたとき、動物園、ホテル、レストランの予約から留守になる自宅のセキュリティの管理、もし空席があり日程が変更になったときはメンバーのスケジュールに連動してチェック・連絡など全てホームページ側でやってくれる。また、モバイルデバイスを持ってある物に近づいただけでそこに関連した情報が全部映る、自分自身のロケーションサービスで自分がどこにいるかというロケーションが分かる。今は徘徊老人だとか、盗まれたバイクをトレースする位であるが、これからは重要な使い道となり、一例として一番近いプリンターへの出力サービスなどができる。また、.NET ExperienceのデジタルTVの場合では、有料で写真の額縁サービスができる例が示されました。こんなことが簡単にできるようになった一つの理由は、画面に映っているそのものがXMLで書かれているからであり、これから先にはXMLの世界は有効に活用されていくことだろう。

●.NETコンシューマ体験
デスクトップのパソコンだけでなく新しいデバイスとしてタブレットPCなどを含めて新しい環境が整ってきた。実際には新しいインターフェイスの中でここではペンを使ってやっているが、重要なことはメニューの形態が変わるとか見栄えがよくなるということではなくて、その中で仕組まれている情報そのものが、サービスそのものがお互いXMLで連動することによって新しい環境が生れてくるということが重要なことである。この中でパソコンの果たす役割が少しずつ変わってくると思う。生産性の分野で、創造性の分野で、コミュニケーションを司る、エンターティンメントの分野で、ショッピングセンターとしての電子商取引で、あらゆる分野の中でパソコンそれなりの役割を果たしてくるだろう。
.NETプラットフォームの上に、MSN.NET(プログラムされたお客様の体験)とコンシューマの購読サービス(娯楽ゲーム、生産性活動などの付加価値サービス)が存在することになる。.NETコンシューマ体験のNext StepとFutureは次の図のようになる。



●.NETプラットフォーム
.NETに対応した各種デバイスが各ビルディングブロックの上に存在する。


●Windowsメディアテクノロジー
マイクロソフトが提供するストリーミングソリューションであって、デジタルメディアの製作、配信および再生のための最良のプラットフォームである。高品質なオーディオクオリティ、容易なコマースソリューション、最新の圧縮テクノロジー、インテリジェンスストリーミング、高品質なビデオ、Digital Rights Managementを提供する。

●マイクロソフト TVプラットフォーム
高機能テレビ(Enhanced TV)用クライアント・サーバープラットフォームである。
・ Microsoft TV:今までWeb TVといってものである。OEMメーカーがセットトップボックス、組み込み型TVなどのインターネット機能付き高機能テレビデバイスを開発するためのクライアントソフト。
・ Microsoft TV Server:オペレータが、高機能テレビサービスを柔軟に、且つスケーラブルに構築および管理するサーバーソフト製品。

●米国のデータ放送への取り組み
ATVEFという会員性をとり、HTML4.0を基盤にインターネットとTV番組との親和性を持つ。また、幅広い放送業者、番組制作会社、機器メーカー、ツール開発者の支援を受けて、多岐に渡るプラットフォームをWebTV,MicrosoftTV,Liberate(NCTV),OpenTV,Winなどに提供している。

●インターネット時代の通信と放送
放送のデジタル化がもたらすメディアの変化、豊かな生活、そして新産業基盤となるものである。デジタル化による高精細な映像と音声、双方向な番組・プログラム、コンテンツのシングル・ソース・マルチプルユース、新しいビジネスモデル(電子商取引、音楽配信、IPテレフォニー、IPマルチキャスト)を提供する。

●.NET開発ツール製品とサービス
.NET開発ツール「Visual Studio .NET」による。


●製品ロードマップ


●まとめ