◆米国マイクロソフト最新技術情報

富士ソフトABC 株式会社
技術調査室 室長 山本 淳
yamamoto@fsi.co.jp


「Microsoft .NET platform」 〜Microsoft PDC 2000 米国出張報告〜

すでに「Microsoft .NET platform」に関する情報は、インターネットのホームページやオンラインニュースにも技術系雑誌にも数多く掲載されているので、目にされている方は多いに違いない。
米国では報道関係向けの「Forum 2000」、開発者向けの「Professional Developers Conference (PDC) 2000」、販売パートナー向けの「Fusion 2000」と各方面に対するお披露目第一弾の行脚を終えている。
http://www.asia.microsoft.com/net/
http://commnet.pdc.mscorpevents.com/
http://www.microsoftfusion.com/

日本でも報道関係向けの記者説明会を開き、IT技術者向けの「Tech Ed 2000 Yokohama」で概要を説明し、今秋には開発者向けのイベントも企画されていると聞く。
http://www.asia.microsoft.com/japan/presspass/releases/062300ngwa.htm
http://www.asia.microsoft.com/japan/teched/default.asp

「PDC 2000」受講のために米国出張し、日本に戻ってから「Tech Ed 2000 Yokohama」で改めて情報を整理できた。一部の報道で「MS-DOSからWindowsへの移行に匹敵するステップアップ」と呼ばれるほど大きな変革の時を迎えている訳だが、率直な感想を述べさせてもらえれば今回の「PDC 2000」は久しぶりにマイクロソフトの夢の大風呂敷を聴かせてもらったというのが第一印象である。ここ数年開催された"PDC"は技術的な興味を引くほど大きな変化を促すインパクトはなく、Windowsプラットフォーム製品の開発手法を踏襲してきた内容だった。
好みの問題はあるだろうが、マイクロソフトは営業的なプロパガンダが上手で完成してもいないベータ版以前のデモをうまく使って観客の心を掴み、他社製品に対する優位性を際立たせて将来リリースされる製品への購買意欲を駆り立ててしまうと言われ続けてきた。「PDC 2000」ではもともとWindowsプラットフォームを支えてきたマイクロソフト親派の開発者を前に、現状のアプリケーション環境や開発環境にはこんな問題があるので".NET platform"ではこうやって解決策を提示します、とアナウンスするだから好意的に受け取られて当然である。
逆に言えば、これまで開発者に押し付けてきた欠陥があるとも言える開発環境を使ってまさに今ソリューションを提供し続けているパートナーは、これから".NET platform"が完成するまでどうやってユーザーを納得させていけばいいのだろうか。最近はインターネットやIT革命のキーワードに代表されるように技術系雑誌どころか一般新聞やビジネス系雑誌を通じてさまざまな情報がユーザーまですぐに届くようになり、ユーザーはどんどん賢くなってきている。"Dog year"と呼ばれるほど移り変わりの激しいこの業界を取り巻く環境は、さらに厳しさを増していくことだろう。
たしかに日本でも業界大手のジャストシステムや大塚商会でもパッケージ製品やハードウェア製品などの開発・販売の限界を感じ取り、サービスプロバイダーへの変身を遂げようとしている。WINTEL帝国と呼ばれるほど強大なWindows関連製品の普及に支えられてきたマイクロソフトでも例外ではないはずである。

新しい".NET platform"では、これまで以上にインターネット技術を標準としてサーバー上にある"Web Service"として連携する分散処理環境を前提に、サービス連携の核としてXML (eXtensible Markup Language)とSOAP (Simple Object Access Protocol)の技術を挙げている。XMLは言うまでもなく世界標準のデータ交換フォーマットであり、SOAPは分散環境での情報交換のためのプロトコルである。パッケージアプリケーションはソフトウェア部品群が提供するサービスに取って代わられ、ユーザーは必要に応じてサービスを組み合わせて利用することになる。

「PDC 2000」で明らかにされた".NET platform"構想では、開発環境である「Visual Studio.NET」とその実行基盤となる「.NET Framework」、複数のアプリケーション間やサービス間、組織間にまたがるトランザクションやワークフローを制御する「Orchestration」、これまでのBackOffice製品群が改称されて新たなサーバー群とともに形成する「.NET Enterprise Servers」、マイクロソフトが提供する各種サービスとしての「.NET Building Block Services」、PCだけでなく情報端末や携帯電話を含む「.NET Devices」などに大別されている。
Visual Studio 6.0の次期バージョンとなる"Visual Studio.NET"は、".NET platform"の先陣を切って「PDC 2000」でプレビュー版が提供され、米国MS社のホームページからも「.NET Framework SDK Technology Preview」がダウンロードできる。"Visual Basic"や"Visual C++"などお馴染みの開発ツールに6月に発表された"C#"が加わり、代わって米国Sun Microsystems社との裁判に揺れるJava開発ツールだった"Visual J++"が姿を消している。".NET Framework"では、「Common Language Runtime」(CLR)と呼ばれる共通ランタイム環境でプログラムが言語を超えて実行されるようになり、「Active Server Pages+」など"Web Service"を支える新機能が提供される。VBScriptに変わってフル機能のVisual Basicが使えるようになり、開発者が得意なプログラミング言語で簡単にWebアプリケーションや"Web Service"を記述できるようになる。
http://msdn.microsoft.com/net/

すでに日本でもホームページが更新されているが、".NET Enterprise Servers"はWindows DNA Serversの後継として"SQL Server 2000"、"BizTalk Server 2000"、"Commerce Server 2000"、"Application Center 2000"、"Host Integration Server 2000"、"Internet Security and Acceleration Server 2000"、"Exchange 2000 Server"などのサーバー製品が含まれ今秋から順次リリースされる。ほとんどの製品がBeta版やRelease Candidate版として入手可能であり、一部はすでにRTM (Release To Manufacture)して出荷体制を整えつつある。これらはWindows 2000 サーバー製品群上で、XML対応など".NET platform"の基盤を強力に支えていく。
http://www.asia.microsoft.com/japan/servers/

このほかにも今秋からベータテストが始まるWindows 2000の後継製品である"Windows Whistler"は、32ビット版や64ビット版のコンシューマ版・企業ユーザー版・各種サーバー版が提供され「Windows.NET」と呼ばれると言われているし、「MSN.NET」や「Office.NET」などプロダクトレベルのサービス製品群の提供も予定されている。
Windows 2000の最初の"Service Pack 1"は7月末に米国などでリリースされ、日本語版の提供も間近である。MS-DOS時代からの16ビットコードの名残を引きずってきたWindows 9x製品群のトリを務める"Windows Me"(Millennium Edition)も9月には出荷されるだろう。"Windows 2000 Datacenter"も9月末には出荷されることが決まったようだが、注目されていた64ビット版WindowsはINTELのIA-64 CPU "Itanium"の出荷遅延に伴って2001年にずれ込みそうである。21世紀を前に、我々を取り巻く環境は大きく変わっていこうとしている。
http://www.asia.microsoft.com/windows2000/downloads/recommended/sp1/default.asp(英語版ページ)
http://www.asia.microsoft.com/WindowsMe/(英語版ページ)


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