最新Windowsソフトウェア事情(第63回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄
mtaka@fsinet.or.jp


名水のほとりで

 今回はまたまたロマンティックなタイトルとなった。どんな話が出てくるか、いやがうえにも期待が高まってくる。まずは図 1を見ていただきたい。パソコン画面の左側にビデオの再生画面が表示されている。ソフトはMedia Player、その上で再生されているのはわが八ヶ岳山荘のすぐ近く、人知れずこんこんと湧き出している八ヶ岳南麓湧水群の一つである。小淵沢中学校の生徒たちが立てた立て札には「根本湧水」とある。たしかに、大木の根元から水が湧き出しており、その水源には「水神さま」のほこらが注連飾り(しめ飾りの「しめ」がこんな漢字とは知らなかった)とともに、俗世界の「けがれ」を寄せつけまいとしている。

図1
CD-ROM「日本の名水」(シンフォレスト)より/
(C)1998 KIICHIRO YAMASHITA

 この湧水も最近は水量が減った。また、よそから入ってきたよからぬ連中が湧水池に育つクレソンやセリを根こそぎ、引っこ抜いてしまい、無残な姿になってしまった。これも、本欄34回において神聖なる根本湧水を「高橋湧水」などと勝手に命名してしまったことのたたりかもしれない。連休明けにでも、湧水のほとりに咲く山桜の下で友人と酒を酌み交わしながらお祓いをしなければと思っている。希望者はぜひmtaka@fsinet.or.jpまでメールをいただきたい。

 さて、図の背景(壁紙)もまた清らかな流れである。これこそ名水の一つであり、もちろん、プロの写真家の手になる素晴らしい写真である。いうまでもなく、パソコンソフトのジャンルの一つにコンテンツがある。写真や音楽のアルバムあるいは電子百科事典など、その種類は想像以上に豊富である。中でもシンフォレスト社のタイトルは200種類前後にもおよび、パソコンショップによってはシンフォレスト社のタイトルだけを集めたコーナーがあるほどである。
 さきほどの壁紙はその一つ、「日本の名水」の一枚を壁紙にしたものである。このコンテンツは山下喜一郎氏撮影の「滝・湧水・源流・・・究極の名水を訪ねて」と題する写真集を収録したソフトであり、中田悟氏の音楽をバックに一人静かに、画面上に次々に再生される素晴らしい名水の写真を楽しむことができる。本欄のように雑ネタ中心なら、ざわざわした中でも原稿の進みは速いが、小難しい原稿を書いていて筆がにぶったときには、キーボードから手を離し、しばしパソコン画面上の名水を眺めることによってふたたび、書く意欲が湧水のごとく湧き出してくるのである。リラクセーション用のソフトといってもよい。
 図 2はメインメニューである。ムービーも含まれているが、なんといっても写真集のスライドショウが素晴らしい。たとえば「麗水」を選んでみると画面上には音楽とともに図 3のように次々に目をみはるような素晴らしい風景が再生されてくる。図はつい見とれてしまった麗水である。これはパソコンの壁紙としていつも見ていたい、そう思ってパッケージに添付してある壁紙管理ソフト「壁紙君」を使ってパソコンの壁紙にすることにした。図 4は「壁紙君」の操作画面例である。左上のコンテンツのリストから「麗水」を選択し、その下に表示されるサムネールをスクロールすると写真が右側に大きく表示されるので、これはと思う写真が表示されたところで「適用」ボタンをクリックすればよい。なお、さきほどの図3では右上に操作ボタンが用意されており、写真をスクロールしたり、メモを書き込んだり、音楽の設定などを行うことができる。

図2
CD-ROM「日本の名水」(シンフォレスト)より/
(C)1998 KIICHIRO YAMASHITA
図3
CD-ROM「日本の名水」(シンフォレスト)より/
(C)1998 KIICHIRO YAMASHITA

図4
CD-ROM「日本の名水」(シンフォレスト)より/
(C)1998 KIICHIRO YAMASHITA

 「日本の名水」を楽しんだところで次の話題に移ることにしよう。最近のパソコンの普及は目覚しい。私の電子ファイリングに収録された新聞記事によると(図 5)、パソコンの世帯普及率は38%である。大学の授業のときに学生に質問した結果などとあわせると、実感としては普通の家庭の半数近くにパソコンが入っている。その結果、パソコンマニアの大学生だけでなく、子供もお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも、みんなそれぞれの使い方、興味の持ち方でパソコンと接するようになったのである。しかし、しばしばいわれることであるが、いま現在のパソコンそしてパソコンソフトが子供から中高年、老年層にいたるまで、誰にでもすらすら操作できるようになっているとはいえない。もっともっと工夫が求められることはいうまでもない。

図5

 自分が幼稚園や小学生の子供だとして、パソコンはどうあって欲しいと思うだろうか。パソコンが、いつも一緒に遊んでいるスヌーピーとかどらえもん、あるいはキティちゃんなどのキャラクタと同じ存在になってくれれば楽しい。図 6は私のサブノートパソコンのそばにおかれたスヌーピー人形である。見てわかるように人形はなんと、USBに接続されている。そしてときどき、スヌーピーはがたがた動き出したり、声をかけて原稿の進みを催促したりしてくれる。また、スヌーピーの台に用意されているボタンを押すとメールやインターネットブラウザが起動する。
 また、ネットに接続されている場合はメールが届きとスヌーピーがそれを知らせてくれる。

図6
PEANUTS(C)United Feature Syndicate, Inc

 この人形は「パソコンと一緒にスヌーピー」(NEC)という製品である。ソフトを起動しておくと図 7のように犬小屋とスヌーピーがデスクトップ上にあらわれ、状況に応じてさまざまな動作をしてくれる。スヌーピーの動作やボタンの設定などは図の設定画面で行う。「名言」などもあり、それによって起動時に「名言」を含んだスヌーピーの一こま漫画が表示される。また、状況に応じたボイス(スヌーピーからの呼びかけ)やメール着信時の動作なども設定できる。

図7
(C)1998 KIICHIRO YAMASHITA
PEANUTS(C)United Feature Syndicate, Inc

 スヌーピーにアラームを設定すると面白い。図 8に見るように、指定した時刻になるとサウンドでアラームが鳴るとともに、スヌーピーがさまざまな動作をする。クレージー、おおあわて、いやいや、・・・それぞれがどんな操作か、実際に見てもらわないと説明できないが、子供でなくともじつに楽しい。サウンドもまた、種類が多い。図 9のように、くちぶえ、ファンファーレ、時計台などそれぞれどんな音?と思わせるサウンドのラインアップである。もちろん、スヌーピーをスクリーンセーバーに設定してもよい。それによって、指定した時間、パソコンを操作していないと図 10のように、画面上でスヌーピーが眠ってしまい、人形もまた眠りの動作(どんな動作かな?)をする。

図8
PEANUTS(C)United Feature Syndicate, Inc
図9
 

図10
PEANUTS(C)United Feature Syndicate, Inc

 さて、子供や中高年層にとってパソコンソフトが使いにくいとすると、その理由の一つはソフトが高機能化しすぎて、使いもしない機能がメニューを埋めてしまうからである。そこで機能を限定してもっと使いやすくする方法が考えられる。また、メニューの表記にしても、たとえば、「上書き保存」などというコマンドがどんな意味なのか、子供にとっては理解に苦しむ。そこで、メニューの表記そのものもユーザーにとってなじみやすいものであって欲しい。そこでたとえば代表的なワープロソフト、WORDをユーザーレベルに応じて使いやすい設定に変身させてしまうソフトが登場した。それは「Dr.シンプラー」(ディアイエス社 http://www.dis.co.jp/edu/。5,800円)である。この「ボクにもワードが使えるよ!」のソフトを組み込むとWORDが図 11のように変身するのである。

図11

 モードには年齢順にキッズ、ジュニアそしてユースの三つがあり、図はキッズモードである。メニューはひらがな、カタカナ表記になり、しかもメニューに含まれるコマンドは幼児にとって必要な最小限の機能にしぼられる(右端にあるDragonSpeechは音声認識ソフトをWORDに別途、追加したものである。いずれ話題にしたい)。図ではツールバーの「キーボードくん」を選択し、ソフトキーボードを使って文字を入力しているところである。幼児/学童だけでなく、老年層ユーザーにとってもWORDを使いこなす必須のツールになるかもしれない。キッズモードにおいてファイルメニューがどう表記されるか見てみると、図 12のように、「上書き保存」は「とっておく」となった。ついでにもう一つ、編集メニューも見ておくと、図 13のような表記になった。実にわかりやすい。いざ、こうしたわかりやすい表記を考えるのも大変だったろうと思われる。

図12
図13

 つづいてジュニアモードを見てみよう。図 14のように絵日記テンプレートも用意されており、その中で学内運動会の日記を書いてみた。メニューの表記は漢字まじりとなり、また、ファイルメニューもキッズとはかなり違う。画面では日記の上段に絵を置き、下段に縦書きで日記が書かれている。このようにして、今回は「名水のほとり」に立ちながら、日本のパソコンがさらに普及していくための条件、とくに幼児から老年層まですべての人々にとって、パソコンが楽しく使うことができる存在になるための条件を、静かに検討したのであった。

図14

(麗澤大学 国際経済学部 国際産業情報学科 教授
http://www.reitaku-u.ac.jp/



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