田中 亘のWindows in Millenium

田中 亘


■キーワードはIT

 もはや、PCとかパソコンという用語は、あまりに一般的になりすぎて、それだけで情報誌が成り立つ時代ではなくなったのかもしれない。そう痛感したのは、この三ヶ月の間に自分を取り巻く仕事が大きく変化したからだ。まずはじめの変化、それは「終焉」にある。まあいわゆる「連載の中止」ということなのだが。それが、かなり立て続けにやってきた。中でも最大のものは、某大手コンピュータ販売店の販売促進用の連載で、これは八年近く続いていたもの。ショックは大きかったが、それも時代と諦めた。他にも、WindowsとOfficeを中心に展開していた連載が終わり、BackOffice系のニュースレターも終了した。とにかく、およそマイクロソフトのパソコン時代を支えた製品に関連した連載は、ことごとく終わってしまった。

 そしてやってきた変化。それが「IT」というわけだ。連載の関係では、産経新聞のHome IT 2000という朝刊紙面のスタッフライターになった。また、某大手総合研究所のIT関連のホームページで、新しい連載がはじまる。どうやら、ITというのは、かの森首相も口にするくらいに、時代のキーワードになってきたようで、いままでの「パソコン」が置き換わったような気がする。

 その一方で、コンシューマ市場を狙った情報誌は、かつてのパソコン雑誌の比較にならないくらい、表現の難しさに直面することがある。テクニカルターム、いわゆる「専門用語」を使わないで、いかに製品や概念を伝えるかが、一般消費者向けの情報誌にとっては、必須の課題であり、その点で、古いタイプのパソコン系ライターは、四苦八苦することになる。いくら技術を理解していても、他人に伝える言葉を持たなければ、それは無知と同じことになる。専門職であれば、結果を出せばいいのだが、ライターのアウトプットは文字だから、ことのほか厄介だ。また、ITも専門分野だから楽かというと、これがまた新しい問題に直面することになった。

 ITの基本とは何か。釈迦に説法かもしれないが、それは「ビジネス」にある。電子メールやデータベース、WebサーバーやXMLなどの技術は、いわばどうでもいいのだ。その技術が他社よりどれだけ優れているかを解説するのではなく、個々のコンポーネントをどのように組み合わせれば、その会社に最適な情報システムを構築できるのか。その答えが問われている。それを取り巻く用語が、ERPやSCM,CRMにKMというわけだ。さらに厄介なことに、IT関連誌の目標とする読者はコンシューマよりも敷居が高い。企業の舵取りをする人たちに、古いタイプの情報システム管理者を飛び越えて、メッセージを伝えなければならない。旧タイプの情報システム管理者が、大きなダダッコ(ホスト系コンピュータ)の子守りだとすれば、彼らにさらに厄介なお荷物(ネットワークと分散環境)を背負わせることになるから、そのための説得力は並大抵のものではない。理論や技術だけでは、もはや動かなくなっている。

 ただ、追い風もある。ITというキーワードは、いまもっとも注目されているからだ。日本経済の景気回復の旗手のように取り上げられている。それだけに、もはや守りに徹することはできないから、進めない企業は取り残されるという意識だけは、広がり始めている。その市場に対して、どれだけ「優しく」アプローチできるかが、次のビジネスの鍵を握っている。ライターとしても、そこに進んでいけるかが、問われている。

 さらに、書く仕事とは別に、知り合いの会社というのが基本だが、頼まれればBackOfficeを基盤としたネットワーク構築の仕事も請け負っている。これは、仕事というよりも、むしろ実地研修と経験を積むためのもので、すべてのコンポーネントをWindows NT/2000とBackOfficeで構築するのが目標となっている。Linuxという選択肢もあるのだが、ここまでくると、いまさら「UNIXに戻る」ことはやりたくない。それは、Excelを体験した後にVisiCalcを強制されるようなもので、限られたリソースを使うからには、できるだけ効率を追求したくなる。

 確かに、Linuxをベースとしたサーバーは増えている。海外の著名なeコマースのサイトでも、Linuxをチューンアップしたサーバーを稼動させている例は多い。UNIX系技術者の経験を利用できることもあり、なにかと重宝するらしい。しかし、そうしたサイトの多くも、「業務系システム」はWindowsを利用している。となると、ITの本質である「ビジネス」を考えると、やはりWindows系ネットワークに焦点を当てておいた方が、利益を得られる可能性が高い。

 といった理由から、ITになっても、システムの中心はWindowsにあり、その上に何を構築できるか、相手の利益を提案できるかが、いま求められる情報なのだと考えている。もちろん、技術も勉強しなければならないが、それ以上に、読者に伝わる「ビジネス」そのものを学ばなければならない。

 「パソコンとソフトにちょっと詳しいから」という理由だけではじめたライター稼業も、21世紀に向かって、大きな転換期を向かえているのかもしれない。

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(ユント株式会社 代表取締役)



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