第1回交流会が4月28日午後5時から日本電子出版協会会議室(東京神田駿河台、駿河台サンライズビル)において30名の出席者により開催されました。常日頃より会員会社様から会員会社相互の情報交換の場を設けて欲しいとのご要望を多々いただいております。本交流会は、それにお応えして情報交換および親睦を深める場として開催されました。 今回は、企業間の情報交換フォーマットとして各業界より注目を集めているXML技術について、普及啓蒙活動に務めておられる株式会社大塚商会の岡部恵造様をお招きしてXMLのお話をお聞きしながらの会となりました。岡部様のお話、出席者の自己紹介のあと、それぞれ情報交換など歓談が終始続いておりました。 出席された会社は、アンテナハウス株式会社、インクリメントP株式会社、株式会社大塚商会、金子建設株式会社、株式会社クレオ、株式会社翔泳社、住商情報システム株式会社、総合オフイスサポート株式会社、株式会社テクノサプライ、日本SE株式会社、ピーシーエー株式会社、株式会社日立マイクロシステムズ、富士ソフトABC株式会社、富士通株式会社、マイクロソフト株式会社、ライオンブリッジジャパン株式会社、リコーシステム開発株式会社、ロータス株式会社、和田特機株式会社の各社です。また、Windowsコンソーシアム理事・顧問として、松倉会長(富士ソフトABC株式会社)、大森副会長(株式会社クレオ)、中田副会長(ロータス株式会社)、三ヶ野原技術顧問(マイクロソフト株式会社)の出席がありました。
今日は交流会ということで特にXML系の方々が多くご参加していますし、またマイクロソフトさんもいらっしゃいますので、こういう時にいろいろな情報交換をしまして、是非とも皆さんのビジネスにプラスになるようなことをどんどんやっていただければと思います。
●Webの社会インパクト IT革命といわれるが、何で革命なのかというと、インターネットというネットワークが知らない内に世界中にできてしまった。インターネットは作ろうとしてできたものではなく、知らない内にできてしまったので大変であり、一種の革命となってしまった。できたことにどういうインパクトがあるかというと、世界中のインターネットにつながっているコンピュータが同じプロトコルのソフトウエアを実装していることである。TCP/IPもさることながら、その上のHTTPのプロトコルもみな同じものを持っているわけである。ワールドワイドのネットワークを作って同じプロトコルを持たそうということは、今までものすごいお金をかけて沢山のトランスポートの上に乗るプロトコルを作ってきたが、残念ながらどれ一つとして少なくとも今時点までは完成していない。お互いにコンピュータとコンピュータが通信するためには両方とも同じプロトコルを実装していないと通信できないわけであるが、それが知らない間に気が付いてみたら、全部のインターネットに接続されたサーバーの上にTCP/IPとHTTP、SMTPとFTPという標準的なプロトコルが実装されてしまったということである。実は1980年代にいろいろな動きがあって、90年にWWWやHTML、HTTPが出てきて急速に広まってきたが、今や世界中のコンピュータが、みんな同じプロトコルを乗せているということである。みんな同じプロトコルを乗せているということは、みんな通信ができるということである。既に実体験されているようにHTTPでいろいろな情報、例えば地球の裏側の事象や会社の情報も手に取るように分かるわけである。そこまでだと、大したことではないが、次に考えることは「どうせみんながつながるのであれば企業をみんなつないでしまおうよ」というBtoBの発想になる。そうなると、今まで企業の中で一生懸命ワークフローやコンテンツだとかそういうものを統合していろいろな取り組みをしてきたものを今度は企業と企業の間をつなごうよという話になるわけである。そうするとBtoBのeコマースということになる。 ● 何故XMLか? そこでXMLというのが非常に役に立つということになるが、XMLがBtoBなどのIT革命の中でどういう位置付けかというと、これが実に日本ではよく理解されていないところである。ほとんどの人がXMLをHTMLの延長戦上で考えており、HTMLのTAGを自由に付けられるようになったものがXMLだと思っている。ところがXMLはHTMLと違って自由にTAGが付けられるというのはXML全体のうちのほんの一部分のことでしか過ぎない。よく雑誌に載っている「CSV形式でデータを扱うよりもXML形式で扱ったほうがHTMLのWebで処理する時は楽ですよ」というような表現はXML全体のほんの一部分を取り上げていっているに過ぎない。 それでは、XMLは何かというと“メタ言語”である。メタ言語というのは言語を作るための言語であり、言語を作るための環境とかシンタックスのようなものである。自由にTAGに名前を付けてシンタックスを使ってセマンテックスを決めてある言語を作るわけである。何のために言語を作るかというと、コンピュータとコンピュータがXMLを使って情報を交換し合うためである。それならEDIと変わらないのではないかと思われるがそこがまた違う。EDIはコンピュータとコンピュータが情報を交換するためにあるメッセージフォーマットを決めてやり取りするデータ交換に重きが置かれているが、XMLは交換もさることながらアプリケーションとアプリケーションを連携すること、つまりプロセスを連携することに重きが置かれている。今世界ではBtoB/AtoA(Business to BusinessのApplication to Application)、これがXMLをベースにしたBtoBのソリューションを一番端的に表している言葉である。例えば、A社にあるSAPのソフトウエアとB社にあるオラクルのソフトウエアとC社にあるピープルソフトウエアのソフトウエアがXMLというドキュメントをベースにしてお互いに交換し合うと、その時にお互いにドキュメントを交換し合うわけであるからXMLにふられているTAGがどういう意味なのか、この属性はどういう意味なのか(これをセマンテックスという)をお互いに共有していないといけないことになる。共有には、標準化というステップが必ず付いてまわる。 ● 世界標準への道 もう皆さんが経験しているようにいろいろなリレーショナルデータベースやいろいろなEDIのフォーマットに対応したと全く同じことがXMLでもおきる可能性がある。ゴムの業界で、或いはコンピュータ業界で、或いはプラスチックの業界で、そして或いは電子部品の業界で(これらはみな自動車業界と関係している)、勝手にみんながXMLを使ってどんどん交換メッセージを作ったり、ドキュメントを作ったりすると、自動車業界が「何かするぞ」と言ったときにこういう業界と必ず電子的なやりとりをしなければいけない。ところがAという業界も、Bという業界も、Cという業界も全部リレーショナルデータベースやEDIでやったと同じようにみんなが全然バラバラにXMLで好きなようにメッセージを作っていたらつながらないことになる。自動車業界はA業界とはこのやり取り、B業界とはこのやり取り、C業界とはこのやり取り、というふうにいろいろなやり取りに対応しなければならない。これはいろいろなリレーショナルデータベースやいろいろなEDIのフォーマットに対応しなければいけななかったと同じように全く一緒である。もう既に人類はそういう入れ物は標準化したけれど中身を標準化しなかったために、大変な目にあっているということを実体験しているのである。 であるから欧米ではXMLを使った業界毎のBtoB/AtoAの標準化は各業界が標準化するだけではなくて、「もっと世界的にお互いにメッセージがやり取りできるような作法とエンベロープ(封筒)を標準化しようよ」、或いは「プロセスを記述する言語を標準化しようよ」という形になっている。それがeBXMLであれ、BizTalkであれ、そういう大きな全ベンダーが集まり、関係者が集まって世界で統一化していこうという動きになっている。 先ほどの話のようにIT革命が起きてみんなが同じプロトコルを実装してしまったのであるから、みんなが集まってその気になれば、世界で唯一のメッセージフォーマットというのができるわけである。今ものすごい勢いでみんなが集まって世界で一つの標準を作ろうとしており、マイクロソフトさんはマイクロソフトさんでBizTalkというところで一つの標準を作って貢献しようとしている。 それは、XMLという言語がサーバーとサーバーでデータをやり取りし、なお且つサーバーのデータを人間が見るときにも、スタイルシートを与えてやるとドキュメントが見られるという、このXMLのパワーがあるからこそ、共通のトランスポートの上にコンテンツを乗せてお互いにアプリケーション連携することができる、ということになるわけである。これがBtoB/AtoAの基本的な考え方である。であるから、標準化というのが如何に大切か、そして大変かというのがよくお分かりかと思う。残念ながら日本というのは標準がものすごく苦手である。これは小さい島国の中でみんな生きてきたのであるから、標準化に対して抵抗感があることは止むを得まいが、もう今や海外から標準化したものがどんどん入ってきているから、日本ももっともっと積極的に標準的にオープンに自分たちが持っているものをテーブルの上に出してもらいたい。 ● アプリケーション構築の変革 次に考えることは、今構築されているアプリケーションが全て階層型である種のAPIという規制をもって作られているということである。この世界は非常に融通の利かないシステムで、“タイトリーカップルド(固い結合の世界)”といい、この“固い結合の世界”は今一般的なアプリケーション構築の世界である。ところがインターネットでIT革命が起きてしまうと、企業の全てのサーバーはTCP/IPとHTTPプロトコルでつながっているのだから、なにもジュールが全部タイトに結合している必要ないという発想になり、“ルーズリーカップルド(緩やかな結合の世界)”という考え方が出てくる。つまり一つのアプリケーションを構築するために複数のWebの上にあるいろいろなサービスをかき集めてきてアプリケーションを構築するという考え方である。例えば、JAL、ANA、JASのサイトがXMLで同じタグが決まっていて各社同じXMLのドキュメントで作っていたらフライト情報が共通化でき便利なサービスを顧客に提供できることになる。HTMLではフライト情報は共通化できないが、いろいろな人たちがWebで決められたXMLのドキュメントをかき集めてきてアプリケーションを構築するとその間はXMLドキュメントに依存されているからタイトにはつながっていない。もう一つの例は、営業支援のためのアプリケーションで、営業の出張先の天気が分かるような機能が入っており、あるサイトから国内の天気報について標準化されたXMLのフォーマットを使って取り寄せていたが、海外の天気報も必要になった。今までのAPIだったら国内の天気報しか分からないモジュールに新しいモジュールを追加するために、Webサイトのアプリケーションサーバーの後ろ側のところで新しい海外の天気報のモジュールをAPIで作りこまなければならなかった。しかし、XMLでWebサイトが構築されており、なお且つ天気報というXMLドキュメントが標準化されていたとしたら、国内の天気報だけのサービスをやめて、海外まで含めた天気報までやっているサービスに切り替えたとたん翌日から海外の天気報までそのアプリケーションで見ることができるようになる。 このようにデータをかき集めてきてあるアプリケーションを作るというスタイルを「Webサービスベースのアプリケーション構築」という。例えばマイクロソフトでは、「メガサービス」といい、メガほどの細かいサービスをかき集めてきて、アプリケーションを構築しようとする。それがあるところのサービスは、たとえばある非常に小さいコンポーネントかもしれない、あるところはみなさんが一生懸命と取り組んでいるASPに近い完結したアプリケーションかもしれない、だけど完結したアプリケーションを作る人たちもこれからはそれが他の人たちと組み合わされて使うのだということが分かると、何かXMLのドキュメントも標準化をしながら出していきたいと思うのである。 Webベースのアプリケーション構築を考えている人たちが、次に考えることは「Webの上にどういうサービスがあるかどうか分からないとどうしようもない」ということである。 LDAP(Ligftweight Directory Access Protocol)というTCP/IPの上のプロトコルが各ディレクトリサービスに対してアクセスをするが、Webサービスがいろいろバーチャルにグローバルにたくさんある時に、すべてのeビジネスのアプリケーションはLDAPをかかえて全部のディレクトリサービスにアクセスすることになるわけである。LDAPは非常にプリミティブなプロトコルであり、あるディレクトリサービスでは、あるところはLDAPのうちのここしか使っていない、あるところはフルで使っている、というように一個一個のディレクトリサービスにアクセスするためにLDAPをたくさん作りこまなければならない。これでは使い物にならない。そこで頭のいい人がいて、DSML(Directory Service MarkUp Language)をXMLで作ってDSMLサービスエージェントがLDUPを発行する。このDSMLサービスエージェントがいろいろなサイトのLDUPを発行して取ってきたディレクトリ情報(どのアプリケーションがある、どのWebサービスがあるというもの)をツリー構造でかき集めたものを、DSMLのツリー構造に変えていつもある契約のもとに蓄えている。そうするとeビジネスのアプリケーションは、HTTPでもいいし或いはSMTPでもいい、自分がアクセスしたい、探したいディレクトリを探すためのちょっとした軽いXMLのドキュメントを投げかけてやると、それが探してくれて「それはここにありますよ」といって使えるようになる。このようにWebの上にあるいろいろなWebサービスやリソースを簡単に探して使えるようなものをDSMLというコンソーシアムを作って今標準化をしている。このようにWebの上のいろいろな環境がXMLという非常にインテリジェントな人間にもわかりやく、ちゃんとプレゼンテーションを作ることができるのである。 コンピュータもタグをベースにして情報を共有できる、しかも階層構造になっていて、もう一つSelf Descripted Document、自分自身が一体何者であるのかをちゃんとスキーマで定義できて今もインターネットのデポジトリーの中に入っている、そして一つのドキュメントの中にいろいろなスキーマが入れ子になって入っているものが全部リンクを取れてこれは誰々が決めたもの、これは別のコンソーシアムが決めたものということで、全部ドキュメントの正体をドキュメント自身が説明できるSelf Descripted のXML Documentを使ってWebサービスベースでアプリケーションをルーズリーカップルドで作って、そして廃れていくサービスは消えていき新しいサービスが出てくると、そういうものを皆がつなぎこみながら新しいアプリケーションを作っていこうという、こういうWebサービスベースのアプリケーション構築というのが今非常に多くのアプリケーションベンダーやeビジネスのソフトウエアを作っているサーバーなどを作っているベンダーが取り組んでいる。 このようにXMLをCSV形式とXML形式と比べるというような非常にスケールの小さいことで捕らえずに、もう少し次世代のWebとか次世代のアプリケーション構築だとか、次世代のBtoB、AtoAの中で何ができるかという非常に大きなソリューションの中でXMLが使われるのだということを是非理解をしていただいていろいろな取り組みをしていただけたらと思う。 |