Windows よもやまばなし



富士ソフトABC株式会社
技術調査室 室長 山本 淳
yamamoto@fsi.co.jp


○2000年を迎えて...
 さっき東京や八王子では雨に混じって初雪を観測したという寒い一日である。2000年を無事に迎え、Y2K問題対応で大騒ぎした割に、細かな問題はあったもののライフラインや核施設などのトラブル、ミサイルの誤発射など大きな問題が発生しなかった結果、過剰反応・過剰投資に対する「狼少年を探せ」的な批判も高まっている。テレビや新聞などで異常な関心を呼び、暮れのスーパーなどはY2Kグッズの特需で好成績を残したようだが、今となっては不要となった備蓄品の処分に困っているという落ちまで飛び出してきている。かくいう私も大晦日・元旦・世間の仕事始め、と休日を返上して会社で待機していたのだが、とくに何も起こらず、連絡を待ちながら溜まっていた仕事を片付けていた。別に備蓄品を買い揃えることもなく、きっと大丈夫でしょうと公言しながら、カウントダウンのテレビ放送を楽しみに見ていた。

 業界系の人間と話すと「電車だって普段から毎日どこかでトラブっているし、サーバーは毎週安全のためにリセットしている。年末にY2K対応で、ウイルスチェックソフトのデータファイルを最新に更新したら、PCがよく固まるようになった気がするけれど、よく考えれば以前から妙な動きをしているPCは多かった。ちょっと表示や印刷がおかしいくらいで大騒ぎするな」など、いたって冷めた目で新年を迎えた関係者が多かったようである。うちの社内でも年末になって行った最終チェックで、Y2K問題とはまったく関係のないソフトのバグが見つかったりして、久しぶりにソフトの品質について見つめ直すいい機会を得たのではないだろうか。この手の話はあちこちで語られ続けているし、1月の月次処理や2月29日の閏年処理、3月末に迎える年度末処理、12月31日に迎える366日目処理など、これからもまだまだ警戒日が続くので、大きな山は越したけれど勝利宣言など出すことができない未解決の問題と認識して、今年一年過ごしていかなければならない。

○Y2Kに続くW2K...
 某社の役員さんがよく喋っていた話で「Y2K問題は万全以上の体制を以って臨んでいるので大過なく進行していくだろうが、その後に続くW2K問題をどうするかが2000年の大きな課題である」というわけで、ご存知のようにすでに予約販売も始まっているWindows 2000の全世界主要国同時発売の幕は、まさにこれから上がろうとしている。これについても今さら何を語ったところで、すでにセミナーや技術雑誌でいろいろな情報が氾濫しているし、提供側のマイクロソフトやそれを支えるパートナー企業の準備も整いつつある。しかし導入側はY2K対応もあったのでそれどころではなく、実際の導入の「検討」を始めるのが4月以降の新年度という企業も多いだろう。新規設備やライセンス料などの予算確保を前提とすれば、実際の導入が始まるのは早くて秋からの下期、下手すると来年度という企業もあると認識している。長い目で種を蒔き、刈り取りを計画していかなければならない。Windows 2000対応アプリケーションを開発するために必要なVisual Studio 6.0 Plus Packも登場してくるが、これまで開発してきたアプリケーションの動作確認はもちろん、Windows 2000の新機能をフル活用したネイティブアプリケーションの開発など、まだずっと先の話だと思っている開発者はたくさんいる。

 Beta 2版から実作業で利用し始め、Beta 3版、いくつかのInterim版、いくつかのRelease Candidate版を経て、現在はRTM 120日間評価版(Build 2195)のInternationalバージョンをノートPCで動作させているのだが、この間の進化は体験した者でないとわからない苦労の連続だった。今でも最大のショックはコンパックのAlpha版Windows 2000の撤退なのだが、高いお金を出して買い揃えた作業場所の2台構成のクラスタサーバーは、結局Windows NT Server 4.0のファイルサーバーとしてしか活躍できない羽目になった。コンパックは2004年までサポートを続け、下取りサービスも実施するという話も伝わってきているが、一時期Windows 2000のBeta版に移行して痛い目を見たので、別OSへの移行も躊躇し、しばらく様子見といった状況である。Windows 2000に対応したSQL Server 2000 (Shiloh)やExchange 2000 Server (Platinum)のBeta版の評価も併せて行っているのだが、これがまたそれぞれに曲者揃いで、今後の進化に期待するといった状況である。

 コンシューマ向けの次期クライアントOS Windows "Millennium"もあるのだが、こいつの位置付けも中途半端な気がしている。いろいろな噂を総合すると、場合によってはWindows 98 Third Editionのような非常に軽い製品に落ち着く可能性があり、コンシューマ向けにはWindows 2000 Professionalを積極的に拡販することも検討されているようである。たしかにWindows 98のスーパーセットとして、最新PC技術に対応し、プラグ&プレイやUSB、IEEE1394、DVD-ROMなども動作しているWindows 2000のノートPCを使っていると、古い16ビット資産を引きずったWindows 9x製品群を早く捨てたいというマイクロソフト戦略が見え隠れしても仕方がないような気がしてくる。もっとも「Windows 3.1だってちゃんと動作しているのだから、動いている環境を移行する必要などない」というエンドユーザーをどうやって説得していくのかは他人事ではない。

○その他にも...
 Windows NT 4.0のService Pack 6aがようやく登場したり、Windows CEが「Pocket PC」と名前を変えて登場することが決まったり、Java 2関連でJ2SE (Java 2 Platform, Standard Edition)のソースコード公開やLinux版の提供、J2EE (Java 2 Platform, Enterprise Edition)とJ2ME (Java 2 Platform, Micro Edition)の正式公開などなど、12月から1月にかけてY2K問題だけでなく、さまざまなホットなニュースが流れてきている。ノベルがWindows 2000に対する対抗製品としての登場させるNetWare 5.1に、IBM WebsphereやOracle8iを搭載し、先行するディレクトリ市場での覇権を維持することに尽力しようとしていることも目が離せない。Lotus Notes/Domino R5のLinux版が出荷されたり、IBMのLinux新戦略も発表されたり、Javaシフトに加えてLinuxシフトが敷かれたマイクロソフト(Windows)包囲網の中で、「ネット&モバイル」をキーワードにインターネットビジネスやASP事業を始めとする新しいビジネスモデルの創出に取り組んでいるベンダー各社の2000年問題は、これから始まったばかりである。


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