その1 「アプリケーションソフトの機能飽和状態」 富士ソフトABC株式会社 我孫子事業所 当時は、ハードディスクなどは非常に高価なもので、20MBのSASIのハードディスクでさえも何十万という価格でした。高校生だった私には手が出せるわけなく、ひたすらフロッピーでやりとりをしていました。というか、フロッピーさえあれば、とりあえず事が足りていた時代なのですが・・・。 コンピュータに搭載されているメモリの大きさにしても、10年前は「キロバイト」が当たり前の単位だったのに、今や「メガバイト」だけでなく、「ギガバイト」に達してしまったものもあります。もちろん、標準でギガバイトというパソコンは市販されていないとは思いますが(多分・・・)。どちらにしても10年前と比較して1000〜10000倍になっていることは事実です。 CPUの処理速度に関しても非常に高速になり、余程膨大なデータ処理をしなければ数秒で処理が終了してしまいます。実際に、私が学生の頃にNewton法で最適解を見つけるプログラムを作ったのですが、i386DXで計算させると4時間もかかったものが、Pentium(150MHz)で計算させるとたったの10数秒で結果が出てきたことに驚いた記憶があります。 コンピュータの発展はハードのみに留まりません。ソフトにしても今と10年前とでは大きく違ってきています。 当時のソフトというと、ソフトを立ち上げるためにコマンドを入力し、一旦コンソール画面をクリアして罫線を引っ張って情報を表示する・・・。画面上にボタンはなく、ファンクションキーを使って操作する・・・といったものがほとんどでしたが、今はOSによって多少の違いはあるもののウィンドウ表示は当たり前のものになっており、マウスを使ってボタンをクリックするだけで処理を進めてくれるという便利なものになりました。 このおかげで、我々ソフト開発者にとっては、ただプログラムが作れれば良いというだけでなく、しっかりとしたユーザーインターフェイスを考慮しておかなければならないといった責務が生じてしまっているのですが・・・。 しかしそのような状況の中、ごく最近のソフトに関しては、これまでとはやや様子が違ってきているように私は思うのです。 前述の通り、ハードの発展に伴ってソフトも大きく発展を遂げてきております。過去のソフトに比べるとユーザーインターフェイスもしっかりしており、我々のようなある程度のパソコン習熟者に留まらず、パソコン初心者にもわかりやすいような作りになってきているのは事実です。 では、何が違ってきているのか・・・。 機能が充実して便利になった反面、その機能が悪戯を始めていると私は思うのです。「機能の飽和状態」とでも言いましょうか。市販ソフトを製作している会社にとって、他社の同ジャンルのソフトに対抗するためには、機能を追加するなどしてソフトに魅力的な部分を付加するというのは理解できるところであります。 ただ、そのような機能の追加が重なるにつれ、これ以上の機能は付けても意味がないという状況がおとずれるはずです。私は、今の状況がそれに合致するのではないかと思うのです。よくダイレクトメールなどで、「さらに使い易くなりました」という売り文句(言葉が悪くて失礼ですが)でバージョンアップの案内が届きますが、読んでみればやはり機能を無理矢理付けているだけ。もしくは、使用上問題があった箇所の修正、言ってしまえばバグ取り。そんな感じのものが多いと思うのです。 ソフトのセットアップ直後の起動時に環境設定で必ず機能解除をするもの(例えばMicrosoft Wordのオートコレクト機能など・・・)があれば、それが不必要な機能です。私は余程のことがない限りフリーソフトやシェアウェアを専ら使用することが多いのですが(この文章も秀丸エディタを使って書いています)、その理由の一つとしてこのような不必要な機能が基本的に付いていないし、すっきりしていて使い易いということからです。 例えば、最近のワープロソフトを例に挙げたいと思います。最近のワープロソフトには、必ずと言って良いほどウェブパブリッシング機能(ホームページ作成補助機能)が備わっています。 インターネットという言葉が世の中に広まった現在、この機能をワープロソフトに追加するのは自然の成り行きのように思いますし、これは余計な機能とは言えないでしょう。個人的に言えば、ホームページはテキストエディタで作るものだというこだわりはあるのですが。ただし、このソフトで作成したホームページの問題は、全ての閲覧者が同じ状態で見られる可能性が少ないということです。 フォントを指定するHTMLタグは実際に存在しますが、基本的に閲覧者のコンピュータ環境に同一フォントが存在していないと見ることはできません(代替フォントで置き換えられます)。この時点でウェブパブリッシング機能にフォント指定があるのはどうか・・・。付けるのであればOSを問わずに見られる代替フォントの設定まで自動的に行われるのが望ましいはずです。 また、閲覧可能なブラウザまで限定してしまうようなHTMLファイルを作成するものまでありますが、いかがなものでしょうか・・・。 またメールソフトでいうと、メーリングリストなどで問題になるHTML形式メール。これもHTML形式でメールを送信するというのがそのソフトの標準的な設定になっているようですが、はたして本当に必要な機能なのでしょうか。 特にパソコン初心者にとってソフトの設定は非常に困難なものである以上、後々問題になるような機能はセットアップ直後に機能設定で解除すれば問題ないというのではなく、始めから付けるべきではないと思うのです。付けるのであれば、基本設定では機能を使用しない設定にしてあるべきだと思うのです。たとえ、それがそのソフトの「売り」なのであってもです。 これまで書いてきたことは、あくまでも私個人の意見に過ぎません。しかし、私の周りの知人にもパソコン初心者がたくさんおりますし、そのような不必要な機能によって生じた問題の相談に乗るといったことも少なからずあるのです。 これからのソフトには視覚的に訴えるためだけの「機能」をなくし、本来の使途に応じた使い易さを追求した「機能」を充実に期待したいと思うのと同時に、私自身の作業においてもこの点について忘れないようにしていきたいと思っています。 その2 「ソフトのバージョンアップなどについて思うこと」 富士ソフトABC株式会社 我孫子事業所 もうすぐ恐れていた(誰が?)西暦2000年がやってきます。 皆さん準備は万全でしょうか。 コンピュータ関連、ネットワーク関連の方の多くはY2K対策で年末年始大童なのではないでしょうか(「パニックY2K」になら無いように・・・)。 ○Windows バージョンアップの歴史 とうとう Windows 2000 がリリースされるときがやってきました(来年2月18日発売とのことです)。 巷では、Windows 2000 が来たぁーなどと、まるで黒船がやって来たような騒ぎである。 使用しているOSがバージョンアップされるのは、現行であることの証であり良いことなのですが、その実あまりうれしくありません。 利用者としては、一度覚えたことを長く継続させたいと思うからです。毎年と言うわけではありませんが、結構頻繁にバージョンアップが行われていると感じてしまいますし、その度にユーザーインターフェイス(と言うか設定方法など)が変わってしまうのは果たして良い事なのでしょうか?。 最近Windows 2000 RC2を使用する機会がありました。 各種の設定項目などが Windows NT とは異なっており、簡単な設定をするだけでだいぶ時間を要しました。慣れの問題かもしれませんが・・・。 Windows NT からの移行については、それなりに考えられていると思うのですが、導入の後の運用当初に時間を取られてしまうのはマイナスではないでしょうか。 ○Microsoft Word2000について思うこと 個人的な話になりますが、日本語ワードプロセッサMicrosoft Word を使い始めてはやウン年が経ちます。 その間幾度となくバージョンアップされ、現在のMicrosoft Word 2000 になりました。 私がMicrosoft Word を愛用しているわけは、優れたアウトラインプロセッサ機能にあります。 仕事柄、多量の文章を書いていますので、すでにこのアウトラインプロセッサ機能は無くてはならないものになっています。 単に多量の文章(文字)を書く場合には、格段に早いのでテキストエディタを使用しています(この文章の下書きもテキストエディタで書きました)。 しかし、仕様書などの長文を書く場合には、その整理のし易さからアウトラインプロセッサを利用しています。 Wordのアウトラインプロセッサ機能ですが、Word95 や Word97では、それなりに満足の行く使い勝手でしたが、Word98 から(アウトラインプロセッサとして)とても使いづらくなってしまいました。 文章中に図を挿入する場合など、勝手にページモードに切り替わってしまい、めんどくさいことこの上ありません。 それでも、Word 98 の場合には、[編集(E)]-[形式を指定して貼り付け(S)...]を使用すればアウトラインモードのまま図が貼れました。 しかし、Word 2000 からは、それもだめ・・・これって改悪ではないかと思っています。 アウトライン中に図を表示させる場合には、[書式(O)]-[図(I)...]メニューの[図の書式設定]ダイアログボックスから[レイアウト]タグを選択して、設定しなければならなくなりました。この設定のうちでも・・・行内(I)、四角(Q)、外周(T)、背面(B)、前面(F)の違いや、[詳細設定(A)]内の四角(Q)、外周(T)、内部(H)、上下(O)、上下(O)、前面(F)、行内(I)との関係が未だに理解できません(試行錯誤しながら使っています)。 アウトライン中(アウトライン表示中)に描画オブジェクトを表示したいだけなのですが、いったいどうしてこんなにわけがわからなくなってしまったのでしょうか。 ○これって改悪じゃないの・・・ それと、[ツール(T)]-[オートコレクト(A)...]機能はいただけません。 "the"と入力しても"The"に勝手に変換されてしまいますし・・・。 ディフォルトでは、[オートコレクト](勝手な置き換え)をしないモードにすべきではないでしょうか。 確かに便利ではありますが、":","-","("と入力して":("になるのはどうかと思いますが・・・。 また、先に書いたアウトラインでの使用時の表操作も改悪です。 表の下の段落にある通常行を上に移動させると・・・、とたんに表に組み込まれてしまいます。以前のバージョンでは、きちんと(表の)行単位で移動ができていました。 ワードプロセッサは、単に文書の体裁を整えるためだけにあるのではなく、文章を作成(推敲)するためにも使用します。 なぜか、ビジュアルに偏った機能や(初期)設定には疑問が残ります。 ○モバイル環境について 個人的にモバイル環境が好きで、何台かPDAやH/PCを所有しています。今後間違いなく、さまざまな方面にネットワークが浸透して、種種の情報がオフィス内に止まらず外に向かって発信されるようになって来るでしょう。今の内に準備をしておいた方が良いではないでしょうか。 デバイスに関しても、面白いものが多く出ています。iモードやpalmなどがその筆頭ではないでしょうか。特に最近では、韓国製のデバイスに面白いものが多いようです(これは要注目ですよモバイルフリークのあ・な・た)。 ここで発言するのはどうかと思うのですが、Windows CEの中途半端な位置付けを何とかする必要があると思います。今のままでは、本当に「帯に短し襷に長し」そのものです。改善に期待しております。 ○その他 最近テレビで見たCFでとてもよくできていると思うものがあります。 お客さんが店頭で納期を聞くと、店員が電話で外に問い合わせる。さらに、その先が別の会社に問い合わせ・・・結局、店頭のお客さんに電話が回ってくるって言うあれです。 有り得ない話ではないので、とても面白いですね。 やはり、こんなところでもSCM(供給連鎖管理)と言うか、情報戦略が重要ですよ・・・と囁かれているようで・・・。 |