活動報告


● 第98回セミナー <マルチメディア委員会主催>

日 時:1999年9月22日(水)13:30〜17:10
場 所:東京工科専門学校ICAテラハウスB1Fテラホール
参加人員: 22名
テーマ:『デジタルコンテンツの著作権問題 その3』
 第1部 「デジタルコンテンツの著作権問題 〜映像・画像編〜」
     マックス法律事務所 弁護士 山崎 卓也 様
 第2部 「デジタルコンテンツと著作権法の改正」
     マックス法律事務所 弁護士/ニューヨーク州弁護士 齋藤 浩貴 様

 今回は、デジタルコンテンツの著作権問題について、マックス法律事務所の山崎弁護士、齋藤弁護士のお二人から、「映像・画像編のデジタルコンテンツの著作権問題」、「デジタルコンテンツと著作権法の改正」についてお話いただきました。デジタルコンテンツの著作権問題に関するセミナーも今回で3回目となりシリーズものとして根付いてきました。

第98回セミナー会場

 第1部では山崎講師から、デジタルコンテンツ利用の実際上の問題について、第1回の音楽、第2回の電子出版に引き続き、映像・画像の著作権問題について、(1)映像・画像の著作権に関する基礎知識、(2)デジタルがもたらした映像・画像分野における新しい著作権問題、(3)著作権の基本的な考え方とこれからの方向性、についてお話いただきました。
 前回と同じように講義途中で、指名して回答を求めるシーンがたびたびありましたが出席者も戸惑わなくなったようです。山崎講師は、病み上がりでいつものテンションが出ないのではないかと心配されていましたが、かえって冴えた感じのする講演でした。


 はじめに「映像・画像の著作権問題ではいろいろな論点があるが、なるべく皆さんと一緒に考えながら進めていきたいと思う。非常にいろいろな論点があってふり切れない部分もあるが、なるべく多くの論点に触れるようにしたい。関係の書籍も沢山出ているところなので、どんな論点があるかの整理と大体の方向性をお話したい」、とのおことわりがありました。
 特に、(2)では、映像・画像はもちろんアナログの時代からあったわけで、アナログからデジタル化されたことにより著作権問題で何が変わったかを整理してみたい、(3)では、今回で音楽、出版、映像とコンテンツ御三家などと呼ばれているものの制覇をしたことになり、それのまとめ的な意味を含めて著作権の基本的な考え方、著作権はたびたび改正されいろいろな新しい問題が出てくるので、その時にどういう考え方、どういう物差しを持っていれば分かり易い解決ができるかということと、これから法制ないしはビジネスの方向性がどうなっていくのかについて簡単にお話したい、とのことで本題に入りました。

 (1)では、まず問題A「A社は、20世紀の終わりにあたり、『映画で振り返る20世紀』というDVDソフトの制作を企画している。同ソフトにさまざまな劇場用映画の映像を入れる場合、誰のどのような権利処理が必要となるのか。TV番組の映像を入れる場合はどうか。また、写真を入れる場合はどうか」を例に出して、出席者に回答を求めながら映像・画像の著作権に関する基礎知識(映像・画像の制作と著作権処理、映像・画像の利用と著作権保護)に関する説明がありました。
 映像・画像の権利処理には、2つのポイント、
@映像・画像全体の権利者の権利処理、
A映像・画像に収録されているものの権利者の権利処理、が必要であり、これらを必ず忘れないようにすることが重要である。この2つのポイントについて、「劇場用映画の権利処理」、「放送番組の権利処理」および「画像(静止画素材)の権利処理」を例にかなり詳しい説明が行われました。

●「劇場用映画の権利処理」では、
@劇場用映画全体の権利者の権利処理は、映画の著作物の著作権者は映画製作者(映画会社)<著作権法第29条1項><同第2条1項10号>、映画の著作物の著作者人格権者はモダン・オーサー(この場合は映画監督)<同第16条>、
A劇場用映画に収録されているものの権利者の権利処理は、原作・脚本・音楽など「クラシカル・オーサー」の権利や俳優など実演家の権利の扱い<同第91条1項、2項>について、該当する著作権法を引き合いに出しながら大変明快な説明が行われました。
 映画の著作物は非常に変わった規定をしている。著作権はそれを作った人に帰属するのが原則である(例えば小説の場合はそれを書いた作家に帰属する)が、映画の著作物は監督が作るのだが映画会社に帰属するということで、作った時から映画の著作者人格権と著作権者が分かれてしまうという非常に特殊な著作物である。
 問題Aに対する回答として、「劇場用映画をDVDソフトに収録する場合に誰のどのような権利処理が必要ですか」と聞かれた場合に、「まず全体の権利者として映画の著作物の著作件者である映画会社の許諾が必要です。また、そこに収録されているものとして原作・脚本・音楽が通常あるので、各著作権者の許諾が必要です」。また、「そこに出ている実演家(俳優)の許諾が必要ではないですか」と聞かれた場合は、「それはワンチャンス主義によって必要ではありません」という結論になる。ワンチャンス主義とは、映画ソフトというのはウインドウ方式などと呼ばれいろいろな利用(ビデオ化、地上波での放送、機内上映、地方上映など)されていくことがそもそも前提とされているので(ワンソフト・マルチユース)、実演家はそれを予測して予め契約で定めてから劇場用映画に出演するということで映画に出演するときに1回チャンスがある、1回チャンスを使った後はもうチャンスはないよという意味でワンチャンス主義と呼ばれる。「対価を回収する機会は最初に実演する時にあるのだからそのチャンスを使いなさいよ」という考え方が実演家の権利である。

●「放送番組の権利処理」では、放送番組は映画の著作物になる場合が多いが、「映画の著作物」にならない場合もある。「映画の著作物」の場合は著作権法第2条3項の条文により、物に固定されることが条件であるので、“テレビの生番組”は映画の著作物にはならない。
@放送番組全体の権利者の権利処理は、映画の著作物の著作権者は通常は映画製作者(実務上テレビ局)になる場合が多い。しかしここはデリケートな問題であり、これから映像ソフトは非常に多メディア化、多チャンネル化により価値を持つので、そのテレビ番組ソフトの権利をテレビ局とテレビ製作会社でどちらが持つべきかを争っている段階である。映画の著作物の著作者人格権者は、通常はテレビ番組のプロデューサになることが多いが、大体プロデューサはテレビ局の社員の場合が多いので、その場合は“法人著作”といって会社にそのまま著作権がいって、会社が著作者になるケースが多い。従って著作権者と著作者人格権者が一致する場合がテレビ番組では多いことになる。
A放送番組に収録されているものの権利者の権利処理は、原作・脚本・音楽などのような「クラシカル・オーサー」については別に権利処理をしなければならない。放送番組もドラマであればテーマソングがあり、脚本があり、その元となった原作もあるのでその権利の処理をそれぞれする必要が出てくる。きわめて重要なのは、俳優など実演家の権利の扱いである。一般に放送番組の場合はワンチャンス主義が働かないと考えられているので、例えばテレビドラマをビデオ化する場合は、そこに出た俳優全員の許諾を得る必要がある。この放送番組における実演家の権利とワンチャンス主義(の適用がない)について、著作権法<63条4項>、<91条2項>により説明が行われました。
 問題Aに対する回答として、「DVDソフトに放送番組を収録することは非常に大変なことになる。例えばドラマの映像を使う場合は、テレビ局の許諾だけでなく原作・脚本・音楽の許諾、そこに出演している俳優全員の許諾が必要になるわけであるから非常に大変である」。それが放送番組の特殊性である。

●「画像(静止画素材)の権利処理」では、
@静止画素材全体の権利者の権利処理は、写真・美術の著作物の著作権者と写真・美術の著作物の著作者人格権者の双方の許諾が必要になる。著作者人格権者の許諾は常に必要になるわけではなく、著作者人格権者が働くような場合、例えば、典型的には氏名を表示しない場合、内容を改変する場合、名誉声望に関わる利用をする場合(CMに使用したり、非常に著作物のイメージに重大な影響を及ぼすような利用をする場合)に著作者人格権者の許諾を得る必要があると一般に考えられている。全体の権利者としては、写真・美術の著作物の著作権者である。写真を使う場合は写真を撮ったカメラマンが原則として著作権者になる。カメラマンがある会社の社員の場合は会社に法人著作が、絵画の場合は画家が原則として著作権者になる。
A静止画素材に収録されているものの権利者の権利処理は、写真・美術の著作物に含まれている著作物の権利(例えば写真の中に別の絵画が写っている場合には、写真の著作権者の処理も必要であり、その中に写っている絵画の著作権者の権利処理も必要)と写真・美術の著作物に含まれている肖像の権利(肖像権としてその人の許諾が必要)についての説明が行われました。  (1)のまとめとして、必ずその全体の権利者は誰かということと、それに含まれているものの権利者は誰かという、この二つを必ず考える。2番目のポイントは、そこに含まれているものは必ずしも一つでないので、音楽、脚本、原作などが含まれているケースがあり注意する必要がある。また、著作権が問題になる場合は、常に著作権と著作者人格権の両方を考えることが重要である。非常に著作権の話はしつこくなるが、基礎知識なのでご理解いただきたいとおことわりがありました。

(2)では、デジタル化・ネットワーク化が著作権に与えたインパクトを4つのポイントに整理したお話がありました。
@ 複製が簡単:今までのメディアに比べて圧倒的に複製が簡単で、ガンガン大量複製されて海賊版が出回るなどにより経済的な不利益が生じる。
A 品質が劣化しない:品質が劣化しないことによりゲームなどで使い回しも出てくる。
B 改変も簡単:インタラクティブ著作物における改変の問題
C 新しい伝送メディアの登場:衛星、インターネットなど新しいメディアでの使用には著作権法に規定がなかったので、一体どのように対処したらいいのか、またどう対処されているのか?

これらについての詳細な説明が行われました。
@ 複複製の容易性がもたらす権利の危機とその対処として次の動きが見られる。
・私的録画補償金→今年から運用が始まった。今まで私的録音補償金として生のMD、MDレコードプレーヤに知らず知らず著作権料を上乗せした金額を払っていたが、同じようにデジタルビデオカセットのソフト・ハードに補償金が上乗せされる。
・著作権法30条の見直し →デジタル著作物については私的複製という条文が妥当しないような動きが著作権審議会の複製検討班で見られる。著作権法30条とは、レンタルでCDを借りてきて家でMDに落とす時に著作権侵害にならないための根拠条文であるが、それを原則違法にするという動きである。それは複製が簡単だから、それによってもたらされる権利の危機が大きいということの配慮の一つとしてこのような動きが出ている。
・一時的蓄積も「複製」にあたるという動き →ストリーム配信によりある映像をみた時はアクセスするサーバーが流しているものをそのまま黙って見ているだけであるが、実際はメモリには一時的に蓄積されているのでそこに複製権が働くという動きが出ている。要するに、複製という概念を広げることによって著作権者の権利の範囲を広げようとする動きであって、瞬間的な複製をしただけでも著作権が及ぶというようにすべきだというのが最近の主張として出てきている。日本の場合は、瞬間的な複製をしただけでは複製権侵害にならないと今までは一般的に考えられていたが、世界的な潮流としてはどちらかと言うと一時的蓄積しただけでも複製に当るという流れになってきている。これも複製があまりにも簡単なので著作権者はどうすべきかということに対する一つの考え方である。
・コピープロテクション、著作権管理情報 →第2部でお話するWIPO条約に対応するため著作権法改正である。コピーが簡単だったらコピーをできないようにしようとする技術が考えられるのは当然のことで、さまざまなコピープロテクションの技術がすでに実用化されている。コピープロテクションの技術はあるコピープロテクションの解除装置を使うことによって解除されてしまうので、このような解除装置を野放図にしておけば結局コピープロテクションが無駄になってしまう。このため、そのような装置を販売することを規制する法律が先の著作権法の改正でできたし、不正競争防止法の改正でも出てきたところである。著作権管理情報とは、インターネットなどで配信されるデジタルコンテンツの中に誰が著作権者であって、誰に許諾を求めたらいいかという著作権に関する情報を電子透かしで埋込み、それの改ざんについては違法にするということで先ごろの改正で盛り込まれたところである。これは世界的に締結されているWIPOの条約に対応するための著作権法の改正である。

A 品質が劣化しない
品質が劣化しないという点から来る問題の一例として、中古ゲームの問題があげられました。問題B「ゲームメーカーの業界団体CESA(Computer Entertainment Software協会)は、かねてより“NO RESALE”を唱えて中古ゲーム販売撲滅をとなえてきたが、とうとう中古ゲーム販売者を相手に訴訟を起こしました。一体何がどういけないのでしょうか。」
○質問「メーカーは何にむかついているのか」? 出席者回答「開発費が回収できない」。解説として、開発費はどんどん高騰化しており、特にシミュレーション、アドベンチャーなどは深刻である。開発費を回収できるような制度作りを求めている。
○質問「ビデオの中古販売は禁じられているか、いないか?」? 回答者「禁じられていない」。
○質問「ここでの問題は映画の著作物に伴う問題なわけであるから、著作物としてゲームの中古販売がいけないというためには、著作権法上何らかの権利根拠がなければならないことになる。何でビデオはいいのに、ゲームの場合は駄目なのかということが云えるのか」? 回答者複数「分からない」。
解説として、著作権法には流通をコントロールする権利が定められている。これは“頒布権”という権利であって、頒布するごとに一々著作権者の許諾を得なければならないという条文がある。頒布権(著作権法26条、2条1項19号)「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は頒布することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあっては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。」この頒布権は映画の著作物以外には認められていないので、もしゲームが映画の著作物に当るとすれば頒布権が認められることになる。著作権法2条3項には、「この法律にいう『映画の著作物』には、映画の効果に類似する視覚的又は視覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。」と書いてある。つまり、ゲームは昭和45年の著作権の改正当時にはビデオゲームというのは世の中になかったわけであり当然予定されていない。どういう著作物として保護しようということを考えた時、映画の著作物が一番近いのではないか、何故ならば、この映画の著作物の中に“映画の効果に類似する視覚的又は視覚的効果”と書いてあり、確かにアクションゲームなどは視覚的効果がかなりあり、また“物に固定される”という点ではディスクに固定されるということでこれを満たす、従ってゲームの著作物は映画の著作物にあたるのではないかと言われてきた。復習として“物に固定される”という要件があるが故に、「テレビ番組の生放送が映画の著作物にあたらない」ということは先ほど説明した。結局のところ中古ゲーム訴訟では、「ゲームは映画の著作物に当るか否か、もし当るとしたら“頒布権”も認められるので中古流通も止められる」ということになる。結局、中古ゲームに関しては、この5月に東京地裁で「ゲームは映画の著作物ではない。従って頒布権もないので中古販売はOKである」という判決が出て、ゲーム業界のメーカーの方が負けた。今、高等裁判所に控訴されており継続中であるが、実は「ゲームが映画の著作物である」というのは、ほぼ確定した判例といっていいくらい沢山の判決が今まで出ていた。パックマン事件で初めて、「ゲームは映画の著作物にあたる」という判決が出されて以来、「ゲームが映画の著作物にあたる」という判決は沢山出てきた。
しかしながら、今回中古ゲーム訴訟が問題になり裁判所は、「ゲームは映画の著作物ではない」と始めて判決をしたわけである。それがいろいろな論議を呼んでおり、中古をどう考えていくかの議論の中で“映画の著作物の概念”が改めて問い直されている。その中でエニックスや光栄という会社は、中古に対して9ヶ月の中古販売禁止期間を設けて、その後は小売価格の7%を支払うことによって中古販売OKのスキーマを確立して運用している。そういった判決もあり、しかしながらそのような実際の運用もあるという中でまだまだ中古の問題はこれからどうなっていくのか目が離せない状況である。

B改変が容易という点に関して(改変の容易性に関する問題の一例)
問題C「プレイステーションゲームソフト『ときめきメモリアル』を販売しているコナミは、ゲームのエンディング場面直前のパラメータデータの入ったメモリーカードを販売する業者を“ゲームを改変するもの”として訴えた。一体何がいけないのか。」

解説:『ときめきメモリアル』はかなり人気のあるゲームである。主人公は高校生で一生懸命勉強して頭が良くなったり、運動して格好良くなったりしてどんどん能力値のパラメータが上がっていって一定の能力値になると、憧れの女子高生である藤崎詩織ちゃんという一番人気のキャラクターに愛の告白をしてもらうことができる、という中々楽しいゲームである。非常に地道な努力が必要とされるゲームであるがゆえに、何日もやらなければならないが、そうであれば“詩織ちゃんから愛の告白を受けるデータ”を売ればいいのではないかという業者がいて(なるほどと思ってしまうビジネスであるが)、それに対してコナミはけしからんと、その業者を“ゲームを改変するもの”として訴えた。一体何がいけないのか。
【ときメモ訴訟は何が問題なのか その1 何にむかついているのか】時間が押しているので山崎講師自ら回答:「ゲームの醍醐味、面白味が破壊される。そもそもシミュレーションゲームには、設計思想上予定された“過程“というものがある(例えば進行上早期の段階では、高いパラメータになることはありえないようにゲームが設計されているなど)」。
解説:そのようなゲームクリエイタの設計思想を「意に反して」改変してはいけないということである。ゲームは、インタラクティブなジャンルに入るが、劇場用映画と違って映像の流れが一定ではない。ユーザーのプレー次第によっていろいろな映像の流れが出てくることがゲームの特長であり、そのような意味でインタラクティブな著作物である。しかしながらそのインタラクティブな著作物でも許容する限界が自ずからある。要するにゲームクリエイタが設定した“範囲の中で遊んでくださいよ”という基本的な意図がある。そのような物が破壊されてしまっては、そのゲームの面白みが破壊されるわけであるから著作者人格権の問題が生じるのではないかということが問題になる。法的論点としては、著作者人格権の改変に関する権利、同一性保持権という権利である。

【ときメモ訴訟は何が問題なのか その2 法的論点・インタラクティブ著作権の保護】
著作者人格権の同一性保持権という権利。
同一性保持権(著作権法第20条)は、「著作者は、その著作権及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする」という条文である。
インタラクティブ著作権の「改変」とは何かというと、インタラクティブ著作物とはそもそもプレーヤーの操作によって多様な変化が予定されている。元々いろいろな変化が予定されていて展開も無限だから、別に改変はないのではないかという発想もある。そうなってくると、インタラクティブな著作物は、著作権上何の著作物として保護されるのかが問題になってくるわけである。伝統的には先ほどの中古ゲームの訴訟の判決の前まではゲームは映画の著作物として保護される、また、プログラムの著作物として保護されるという判決が主流であった。しかしながら、ゲームはインタラクティブな著作物なわけであるから、このどちらと考えても実態に合ったような理論が立てられないのではないかということも問題になってきた。そして、この「ときメモ訴訟」は、第1、第2審と裁判が行われて第1審はコナミが負けたが、第2審ではコナミが逆転勝訴した。それは結局何がポイントになったかというと、そのメモリーカードを販売している業者の入れていたパラメータのデータが異様に高い数字であって、高校生のキャラクタのいろいろな能力のパラメータが全部999で完全無欠の人間のデータであった。しかしながら、このゲームではどんな努力をしても完全無欠な人間はできないような仕組みになっており、ゲーム上あり得ない人物であるということで、それは“ゲームの改変である”ということになった。「なるほどな」と思えるような論理であるが、そういった意味で“新しい映像の改変”という問題が最近出てきているということをご理解いただければと思う。

B  新しい伝送メディアへの対応
今放送と通信の融合化現象がいわれているが、伝統的には放送権しか定めておらず、インターネットに関する配信権は(インターネットはそもそも昭和45年の著作権法改正時にはなかったわけであるから)なかった。それに対応させる意味で平成10年1月1日施行の著作権法で「公衆送信権」が新設された。この権利は、「公衆によって接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うもの(著作権法2条1項7号の2)」であって、放送と自動公衆送信(インターネット)は「公衆送信」の一つとして位置づけられた。このように日本の著作権法は既に放送と通信の融合化に対するケアーをしているわけである。しかし、放送と自動公衆送信は明確に分けられるという前提で一応作られてはいるが、これから益々放送とインターネットは非常に混在、融合化してきて、どっちがどっちか判らなくなってきている。例えば、インターネットでのプッシュ配信型配信の場合は、繋ぎっぱなしであって自分のパソコンまで既に情報がきているので、このようなケースの場合はほとんどTVでチャンネルを回すとほとんど変わりがないのではないかという発想もできるし、逆に衛星CS放送では最近インタラクティブTVも出てきているしなど、こういうものはインターネットとどこが違うのか、あるサーバーのポイントへアクセスしてそこから情報を引っ張ってくるインターネットの構造とほとんど変わりがないのではないかというふうにどんどん融合化してきているわけである。そうすれば放送と自動公衆送信の区別さえゆくゆくはできなくなってしまうのではないかということが問題になってくる。そうすると一つ著作権法上困った問題が起きる。何故ならば現行法上、放送事業者の権利(TV局が典型的にそうであるが)が著作隣接権の一環として与えられているが、放送と自動公衆送信との区別がつかなくなれば放送事業者の権利が無くなるのではないかという不安になってくる。つまり、放送の自動公衆送信も同じ物だと考えるとすれば、インターネットで配信する人は皆な権利者になるか、あるいはTV局も含めて皆な権利者にならないか、どっちかの扱いをしなければ不公平になると考えられている。一説には、放送と通信がどんどん融合化することによって、TV局のような放送事業者だけ特別に保護する必要はなくなるのではないかといわれている。そうなるとTV局は、放送事業者としての権利(著作権法98条以下)を失ってし
まうということにもなりかねないので、放送事業者のこれに対して、どのように放送事業者の権利に関するワーキンググループが設けられて、放送事業者の権利に関するこれからについて議論されているが、そこには放送事業者の権利として著作隣接権を強化して保護の強化を図っていくという方向性もあるが、それとは別に先ほどのように生放送に対して現在映画の著作物として認められていないので、それを何とか解決していこうという方向も考えられている。もし放送事業者の権利がTV局が失ってしまう場合は、結局放送局自らが著作権者にならないとこれからの時代対応ができないような状態になるので、放送と通信の融合化現象が進まないうちに著作権者としてのスタンスを確立していかなければならない、というのが放送業界での著作権問題である。

静止画系の著作物(写真の著作物や絵画等美術著作物)については、これまで、複製物の展示に関する権利が認められていなかった。(著作権法第25条:著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する)
しかし、近時はイベントや博物館等における展示用などとして高精細のディスプレイ画面が利用、静止画系著作物がそのような形で利用される機会も増えている。そこで著作権法改正により対処(平成12年1月施行)されることになった。

(3)著作権の基本的な考え方とこれからの方向性
著作権処理をする場合4つの視点を考える必要がある。先ほどのようにDVD映画の中に誰の許可を得たらよいのかという話は詳しく話したが、そもそも著作権の処理をする必要のないものもある。例えばビルの所に自動設置カメラが置いてあってその映像を使う場合は、その映像に関する著作権者はいないので自由に使うことができる。何故かというと、自動設置カメラは人が創作したものではなくて、あるところに設置されて機械的に撮った映像なので著作物ではない。このように著作物でないものに対しては著作権が生まれないので、当然著作権を処理する必要がなくなってくる。このような事例もあるので、それをどう発見したらよいのかという4つの視点を便宜的に用意してきた。つまりこのような4つの場合は著作権処理をしなくてもよいという事例である。

<著作権クリアのための4つの視点>
@ 著作物として保護されるかどうか
次のような著作物ではないものに対しては処理の必要がない。
創作性がないもの、純粋なアイディア、実用品いわゆる応用美術と呼ばれるもの、条約、法令等

A著作権は消滅していないか
PD(Public Domain)その他の事由、保護期間は50年。

B問題となっている利用に権利は及ぶか
自分がやっている行動、問題となっている行動が著作法上に定められている支分権のどれかに当らなければ著作権侵害に当らないわけであるから、その支分権に当るか当らないかの判断がポイントとして必要となる。

C正当な利用行為といえないか
借りてきたCDを自宅でダビングをする行為は私的複製で許されると話したが、著作権法30条の私的複製以下、著作権法48条までいろいろな著作権の制限規定がある。このようなものにあたれば、一見著作権侵害にあたるようなものであっても正当な利用行為として許される類型にあたるので結局著作権侵害にならないことになる。

これから著作権法はいろいろな形で改正される。その改正が一体何のための改正かということを理解するための物差しとして捉えて欲しいということで、次のお話がありました。

<著作権改正を先の4つの視点に照らして>
@ 著作物として保護されるかどうか
まず著作物そのものに関する改正がこれから予想される。昭和60年にはプログラムの著作物が新たに規定された。その他に昭和45年にはデータベースの著作物が新たに規定され、このように昭和45年当時に予想されていなかった著作物についても新しく著作権法上規定されるというケースが出てきている。今日話した内容の中では「映画の著作物の範囲」が非常に重要な意味を持つということがお分かりいただけたと思うが、ゲームの著作物が一体何になるのか、映画の著作物なのか、或いはそれとは別にゲームの著作物という規定ができるのか、或いはより広い形での視聴覚著作物という規定ができるのか、ということがこれから問題になってくることが予想される。現在、放送事業者のワーキンググループの中では衛星で配信しているpoint to pointの配信を盗んで他の放送局やインターネットで流すことが考えられるので、このような放送される前の放送信号をどのように保護していくのかが問題になっている。ひとえにこれは著作隣接権の問題であるが、隣接権の対象物としてどのようなものが保護されるべきか、どのように立法されるべきかという問題になってくる。およそ著作物として保護されるかを議論するにあたっては創作性があるかないかが問題になる。例えば俳優の名前をアイウエオ順に俳優の名前を並べたようなデータベース(費用とか労力は非常にかかるが)は、創作性がないので著作権法としては保護しにくく、このようなものは不正競争防止法など別な法律で対処していくことになると思う。何でもかんでも著作権法で保護できるのではなくて、創作性だけは補えない投資方法をどういう法律の枠組みで保護していくかが、これからの課題である。

A著作権は消滅していないか
これから考えられる態勢は、世界的に著作権は死後50年から死後70年に延長されるようになってきており、保護期間は長くなってきている。これからこのような改正が行われるかと思う。

B問題となっている利用に権利は及ぶか
さきほど話した公衆送信権という権利が新たにできたり、第2部で説明する譲渡権という権利が来年からできる。さきほどディスプレイに関して説明した改正は上映権という権利が写真の著作物に適用できるようになるが、このような支分権を次々と継ぎ足すということによって著作権法改正は歴史をたどってきたということがいえる。これから支分権が沢山できてくることが考えられるので新しい支分権ができた時には、この部分に関する改正だと理解しておけば判り易いと思う。

C正当な利用行為といえないか
先ほどのような“デジタルとしての私的複製は止めよう”という動きが出てきているので、それに関する改正が近々行われるかもしれない。或いはむしろ個別列挙するやり方を止めて、アメリカの著作権法107条のように一般的なフェアユースとして条文を1個設けて著作者の権利を害するか害しないかを個別的に判断していくという方向性にもっていくという可能性も出てきている。
「著作権法の改正のこれからの視点」については、以上の4つのポイントを物差しとして捉えていけば判り易いと思う。

 最後に、「著作権関連法のこれから」ということでデジタル著作権ビジネス法務の行方を、4つのポイントから見てみる。
@「仲介業務法の改正」
来年には仲介業務法が改正されると思う。仲介業務法の説明は音楽編でやったが、「仲介業務法」はもともと音楽をにらんでできた法律であり、映像は規制の対象としていない。 仲介業務法とは、小説・脚本・音楽について著作権の仲介業務、ブローカーのような業務をする場合には文化庁の許可が必要であるという法律であるが、これが自由化の方向に改正されると登録制になってくる。そうなると映像についても一般的に仲介業務の適用対象になると考えられ、文化庁に一定の要件での登録が必要になり、いろいろな権利ビジネスが考えられる中で仲介業務法の動きは目が離せない。

A「著作隣接権者の行方」
著作隣接権者とは、実演家とレコード製作者と放送事業者である。放送事業者については、これからは放送事業者自体の権利は危ないかもしれないということが云われている。 また、レコード製作者についても原盤制作費がこれからますますコストが安くなってくると、レコード製作者の保護の根拠が疑問になってくる可能性もなくはないということが問題になる。実演家については、著作権者にむしろ近くなる方向で動いている。実演家には今、人格権が著作権法上認められていないが、最近は実演家の人格権を認めろという動きが強く出てきている。

B「契約の発達と報酬請求権化」
著作権の法律がいくら変わったとしても、その都度契約を云々しなければいけなくなるのではなく、結局著作権のビジネスのリズムというものは契約が99%といっても過言ではないくらい重要である。従っていかに日頃の契約でしっかりしたものを作ることが、これから如何に著作権が変わろうとビジネスを強固なものにできるかどうかの分かれ目を握っている。契約をしっかりとやることが重要である。従って、著作権法を改正して支分権のような物権的な権利を獲得しても、運用によっては報酬請求権化される可能性があるので、結局のところ契約は重要であることを理解して欲しい。

C 損害賠償制度の強化
これも見放せない流れである。ある著作物を利用する前に許諾申請しないで使って、後から訴えられた時も結局使う前に申請したときに払う金と同じ金額しか損害賠償請求できない。だったら黙って使って、後から何か云われたらその時に払えばいいし、云われなかったら儲け物みたいな風潮を冗長してしまう。そうすると結局著作権侵害はなくならないのではないかという指摘があり、電車のキセルと同じで3倍くらいとってやれという主張が出てきており、これは今議論されているところである。鉄道営業法ではキセルをした場合は正常運賃の3倍ということが規定されている。そのうち著作権でも著作物を長年無断で使用していて莫大な金額を請求されるケースも出てくるかもしれない。著作権が本当にちゃんとしたものになるためには、こういう損害賠償制度の強化という制度の流れも見放すことはできない。
著作権法のこれからについては、いろいろな論点もあるが、これに関して多くの書籍も出ているので、このような論点があるということを理解していただきたい。

 第2部では齋藤講師から、デジタルコンテンツと著作権法の改正について、(1)「今回の著作権法改正のポイント」、(2)「不正競争防止法の改正による技術的制限手段の回避規制」のお話がありました。(3)として、「アメリカ著作権法の改正の概略とその特徴」の資料が準備されておりましたが、時間の関係で省略されました。
 参考資料として、「著作権法の一部を改正する法律新旧対照条文」、「不正競争防止法の一部を改正する法律案新旧対照条文」、「WIPO著作権条約、WIPO実演・レコード条約(文化庁参考訳)」、「The Digital Millennium Copyright Act of 1998」とかなりの量のものが配布されました。


 今国会で著作権法の改正が成立したが、著作権法を改正する法律というのはほぼ全てがデジタルコンテンツに関わるものであり、それを解説していく。実は、情報公開法の制定に合わせて著作権法も一部改正されるが、情報公開される場合には政府に提出された著作物が著作権者の承諾を得ずに公開を求めた人に複製なりして提示されるということになり、それに合わせた改正もされているが、これはデジタルコンテンツには直接の関わりがないので今日の話の対象とはしない。
 今日のテーマとしては、今回の著作権法の改正の話と、その中で“技術的保護手段”についての規制がなされているが、その著作権法の改正とともに不正競争防止法も改正された。その中では技術的保護手段でなくて、“技術的制限手段”と呼ばれているものがある(中味は似ているが、同じものでない)。“技術的制限手段”はコンテンツ(ほとんど著作物であるが)の流通の際に、技術的制限手段が使われる場合に回避装置を流通させたりする行為が不正競争防止法にあたるということで改正になっているので、非常にデジタルコンテンツの流通に関わりが深いし、また著作権とも密接な関わりを有しているので、著作権法の改正と対比しながら解説を行う。それから、今回の著作権法改正は、1996年WIPO新条約を受けて全世界で改正が着手されている。アメリカでもそれに合わせてアメリカ著作法が昨年末に改正になっており、日本と同じような改正、また日本よりある意味で進んだ改正をしているところもあるので、それを見て日本が今後可能性のある著作権法の改正の参考にしたり、日本の著作権法の今回の改正の特長を知るための手がかりになるのではないかということで、アメリカの著作権法の概略についても時間が許せば説明したい、とのおことわりがありました。

(1)では、改正内容ついてかなり詳細な解説が行われました。
 まず改正の背景についてのお話がありました。
 1996年の年末にWIPO新条約が採択された。それを受けて日米その他の国の著作権法の改正がなされている。WIPO(World Intellectual Property Organization)は国連の機関である。WIPOの場で今までの各国の著作権法はデジタル時代・ネットワーク時代に対応していないので、各国の著作権法の調和を図りながら新しいデジタル時代に対応させていこうということで、WIPO著作権条約を批准する各国が著作権法で制定すべき最低限の事項を定めたのが、WIPO著作権条約(WIPO Copyright Treaty)とWIPO実演・レコード条約(WIPO Performances and Phonograms Treaty)である。改正の一番の動機は各国がこの批准のためであり、日本でも改正作業を行っている。この改正は、96年にWIPO新条約が採択されてから2度にわたっている。平成9年にも一度改正がなされ送信可能化権など主にネットワーク系の権利についての改正がなされた。日本では今年著作権法の改正をして、これでWIPO新条約を批准するための改正は終わったという状況になっている。

今回の改正内容の概略として、大きく2つに分かれる。
@「著作権者等の権利の充実を図る」
 “等”と云っているのは、著作権者だけでなく著作隣接権者も含むという主旨である。今まで著作権者等に権利が認められていなかった著作物の利用行為に対して、権利を及ぼそうということをする。そのための改正として、「著作物等の譲渡に関する権利の新設」をした。今までは複製については権利が及んだのであるが、複製の先の譲渡については直接的には権利が及ばなかった。それを譲渡についても直接的に権利が及ぶようにした。次に、「上映権の拡大」をしている。従来上映権は映画の著作物にしか認められていなかったが、映画の著作物以外にも拡大をした。3つ目の改正として、「演奏権に係る経過措置(附則14条)の廃止」これはWIPOの直接の批准というよりは、日本が抱えていた演奏権が今まで経過措置で及んでいなかったところに及ぼすことにした、ということで権利の拡大をして、本来あるべき姿に戻した。
A「新しい技術を活用した権利の実効性の確保」
 1つが、「コピープロテクション等技術的保護手段の回避に係る規制」であり、デジタル時代、ネットワーク時代になって、著作物が今まで以上にデジタル化されて容易に利用されるようになり、ネットワーク(特にインターネット)によって瞬時にして広く頒布・流通されるようになった。それはメリットでもあると同時に簡単に違法な配信がなされたり、或いは技術の発達によって複製が簡単になったのでオリジナルと変わらない複製が簡単にできるようになり、著作権者の大きな脅威となっている。このような技術によって可能となった脅威については、技術によって対処していこうという考えがあり、技術には技術で対応しようとする新しい技術を活用した権利の自己性を確保するというものについて、1つはコピープロテクションがある。ただ技術はさらに技術で回避できるのであれば、技術を技術で回避しようとする行為を規制しようとするのがこの改正である。
 もう1つは、「権利管理情報の改変等の規制」である。権利管理情報とは、権利者が権利の管理のための情報を乗せていって著作物の流通の際にその流通で不正な行為が行われた場合にそれを分かるようにしたり、或いは正常に利用する場合利用しやすいようにする。その場合に技術的に乗っけられているものであるからそれを改変等されてしまうと、その実効性が確保できないということでこれにも規制を及ぼしていこうということである。従って技術で可能となった著作権の流通とその侵害に対して技術で守ろうとする、それを更に技術によって不正に利用しようとする行為について法律で規制するというのがこの改正である。

次にそれぞれの改正について詳細な解説が行われました。以下、配布資料からの参照です。
●著作物等の譲渡に関する権利の新設
・著作物等一般について複製物等の譲渡に関する権利(譲渡権)を認める(法第26条の2第1項)
・一度適法に譲渡が行われた場合には、それ以降の譲渡行為には権利が及ばない(法26条の2第2項)
 <権利の消尽の規定(法26条2第2項)>
・譲渡権者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された場合
・文化庁長官の裁定を受けるなどして公衆に譲渡された場合
・譲渡権者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された場合
・この法膣の施行地域外において、譲渡権に相当する権利を害することなく、又は、
当該権利者若しくはその承諾を得た者により譲渡された場合
・第47条の3、第113条の2の制限
・映画の著作物については従来どおり
映画の著作物の頒布権には譲渡の他に貸与も含まれる
映画の著作物の頒布権は、消尽しない

●上映権の拡大
上映権を映画の著作物以外の著作物にも拡大(法第22条の2)する。

●演奏権に係る経過措置(附則14条の廃止)
適法に録音された音楽の著作物の再生演奏(公衆送信に該当するもの及び営利を目的として音楽の著作物を使用する事業で政令で定めるものにおいて行われるものを除く)について、当分の間、演奏権を適用しないこととする経過措置を廃止することとした。

●コピープロテクション等技術的保護手段の回避に係る規制
技術的保護手段とは(法2条20号)
・電磁的方法により、著作権等を侵害する行為の防止又は抑止をする手段であること。なお、放送スクランブルなどのアクセスコントロールやゲームソフトのオリジナル信号照合は含まれない。
・著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものでないこと。
・機器が特定の反応をする信号を著作物とともに記録し、又は送信する方式によるものであること。

○技術的保護手段の例としては、映画DVD等に用いられているCGMS、音楽CD、DATなどに用いられているSCMS、映画ビデオテープ等に用いられているマクロビジョンがある。
○技術的保護手段の回避についての規制の内容
・技術的保護手段の回避専用装置等(パソコン等の汎用装置は除かれる)の公衆への譲渡等を刑事罰(民事的な請求権は認められない)によって規制(第120条の2)。
・技術的保護手段を回避して可能となった複製(SCMSの第1世代コピーはここで除外される)については、その事実を知りながら行う場合には、私的使用のための複製の制限から除外(第30条)。
○「回避」とは?
・技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(無反応機器を用いる行為は該当しない)を行うことにより、当該技術的保護手段によって防止される行為を可能とし(防止型の場合)、又は当該技術的手段によって抑止される行為の結果に障害を生じないようにすること(抑止型の場合)ことをいう。
・「記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変(カセットテープへのダビングやリッパーソフトは該当しない)」については、規制の対象となる「除去又は改変」から除外される。

●権利管理情報の改変等の規制
権利管理情報とは、
・著作権等に関する情報であって、「著作物等又は著作権者等その他政令で定める事項を特定する情報」、「著作物等の利用を許諾する場合の利用方法及び条件に関する情報」、「他の情報と照合することにより、上記いずれかの事項を特定できる情報」のいずれかに該当するものであること。
・電磁的方法により著作物等とともに記録され、又は送信されるものであること
・電子計算機による著作権等の管理に用いられているものであること
目的は、違法利用等の容易な発見と自動的な権利処理等を可能にすることである。
○権利管理情報の改変等の規制の内容
・以下の行為を著作権等を侵害する行為とみなすこととした(第113条3項)
−権利管理情報として虚偽の情報を故意に付加する行為
−権利管理情報を故意に除去し、又は改変する行為
−上記いずれかの行為が行われた著作物等について、条を知って譲渡等を行う行為
・営利目的で権利管理情報の改変等を行った者には、親告罪の刑事罰を科すことにした(第119条、第120条の2及び第123条)

(2) 不正競争防止法の改正による技術的制限手段の回避規制
コンテンツ提供事業の存立を危うくする管理技術を無効化する迂回機器・プログラムの取引を防止し、公正な競争を維持するため、使用・コピーの管理技術(技術的制限手段)を無効化する機器・プログラムの販売等の行為を、不正競争防止法第2条の「不正競争」として位置付け、これに対する差止請求、損害賠償請求を、コンテンツ提供事業に関与する者(コンテンツ発送者、機器メーカー等)に認める。

●技術的制限手段とは(第2条5項)
・電磁的方法によりコンテンツの視聴若しくは実行(アクセス)を制限する手段、又はコンテンツの記録(コピー)を制限する手段であること
・視聴等機器が特定の反応をする信号をコンテンツとともに記録若しくは送信する方式、又は特定の変換を必要とするようコンテンツを変換して記録若しくは送信する方式であること
●「不正競争」
・不正競争とされる行為その1(第2条1項10号)
営業上用いられている技術的制限手段により制限されているコンテンツへのアクセス又はコンテンツのコピーを当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置若しくはプログラムを譲渡等する行為(10号)である。例えば、マクロビジョンキャンセラーや、DVDに施されたCSSを解読する装置を販売する行為が該当する。
・不正競争とされる行為その2(第2条1項11号)
他人が特定の者以外の者にコンテンツへのアクセス又はコンテンツのコピーをさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されているコンテンツへのアクセス又はコンテンツのコピーを当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置若しくはプログラムを当該特定の者以外に譲渡等する行為(11号)であって、例えば、有料衛星放送や、有料ケーブルテレビ放送のペイパービューなどのスクランブル解除装置の契約者以外への販売がこれに当たる。

 セミナーアンケートからのご感想・ご意見です。
 第1部では、「大変よかった」、「具体的事例が多く、説明も丁寧なので良くわかった」、「全体的にやや時間不足だったのが残念」、「実例も交えて非常にわかりやすい説明だったが、基礎の説明に留まったのが少し残念」、「インターネット上等で画像、映像の利用での権利問題などにもふれて欲しかったが、基礎知識吸収ができた」、「第3章(著作権の基本的な考え方とこれからの方向性)は時間がなくて詳しく説明されなかったので理解がよくできなかった。残念」です。
 第2部では、「大変参考になった」、「時間がなかったのがもったいない。個人的にはリッパーソフトは面白かった」、「条文を中心とした説明なので多少わかりにくかった」、「一転して話が難しくなり、理解に時間がかかった。説明もかなり狭い範囲を掘り進めた形になり、実生活に有効であるかは疑問」、「難しい。法的解釈が中心であった。ソフトウエア会社などの実務者向けの実務上の問題に絞り込んで欲しい」、「法律の話で難しかった」、「条文説明中心で、面白くない」、「聞いて理解するのが苦痛だった。頑張りは伝わってきた」、「時間が足りなくて残念」です。
 セミナー全体では、「正直、CDリッパーのことを聞きたくて参加したので非常に有用なセミナーだった」、「ユーザーの望む機能を現在の法は、相反する部分が多く、製品企画には悩まされることも多いが、今回のセミナーで1つの方針を作れたと思う」、「時間が少ない(情報量が多い)中で良くわかった」、「もう少し一般的な内容と、詳細については参考資料を示す程度ではどうか?」です。
 今後希望するセミナーは、「著作権法の改正に伴う実務上の問題および対策について考察するセミナー」、「再度『音楽編』をお願いしたい。(最新業界情報も含め)」、「著作権に関するセミナー、最近争われた事例の詳細な解説があると面白い」、「SDMIを視野に入れたデジタルコンテンツ配信の仕組み、作り等に関するテーマ」です。
 ありがとうございました。
 


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