田中 亘のWindow’s1999

田中 亘


Office 2000を取り巻く米国事情


 サンフランシスコに行ってきた。現地時間の6月7日に、米国マイクロソフトが開催したOffice 2000のラウンチイベントに参加するのが目的だった。もちろん、内心では「今渡米すればスタ○ウ○ーズが観られる」という期待もあったが、第一目的は取材にあった。

 ラウンチイベントの会場は、サンフランシスコのダウンタウンにある Sony Entertainment Center で、そのシアターに特設のステージを設けて、スティーブ・バルマー社長がキーノートを行った。
 これだけならば、単なる製品の発表会にしか過ぎないのだが、今回のラウンチイベントには、二つの仕掛けが用意されていた。まず第一は、スティーブ・バルマー社長が現れる前に、サンフランシスコの市長が登場し、マイクロソフトを称えるスピーチを披露した点にある。マイクロソフトでは、今回のOffice 2000のキャンペーンに関しては、サンフランシスコを重要な拠点として、広告宣伝のバスやタクシーを走らせたり、ラウンチイベントを開催するなど、かなり積極的に活動している。そうした姿勢に、市長が感謝の意を表し、記念の盾を贈ったのだ。そのお返しがOffice 2000というのも、いかにもマイクロソフトらしい演出といえるだろう。
 第二の仕掛けは会場にあった。本来、ソフトハウスのイベントといえば、ホテルや倉庫など、一般的な展示スペースや宴会場を使うのが常で、企業の娯楽施設を借用するということは、あまり考えられない。ところが、今回はSonyが運営する総合娯楽施設の一部を使って、イベントを開催したのだ。さらに、このSony Entertainment Center内には、Microsoft SFというアンテナショップまで出店している。一時期、MicrosoftとSonyの不仲説がまことしやかにささやかれていたが、今回のイベントを見る限り、両社の関係は至って良好ではないかと思われた。
 さて、前置きはさておいて、肝心のOffice 2000ラウンチイベントの内容だが、印象としては、とてもあっさりとしたものだった。実際の内容は、すでにインターネット上にスクリプトもストリームも公開されているので、興味のある方は、そちらを参照してもらいたい。(http://www.microsoft.com/presspass/exec/steve/06-07o2k.htm)
 全体を要約すると、ビジネス環境に合わせて、以下のようなカテゴリに適した新機能を提供するというものだ。
・HTMLファイル形式での電子書類
・プレゼンテーション・カンファレンス機能による電子会議
・オンライン解析、Webコラボレーションといった企業内での情報共有
・Outlook Todayのカスタマイズによるデジタル・ダッシュボードの実現
・Windows CEなどの新しいデバイス対応
 これらのテーマに合わせて、ゲストを紹介したり、デモを見せたり、社長自らが操作してみせる、といったデモンストレーションを行った。
 キーノートのあとは、米国お馴染みの立食パーティとなり、Microsoft SF店のスニーク・プレビュー(事前ご招待)も催された。会場には、サーカス一座のような凝った扮装のパフォーマンスたちがいて、お手玉をしていたり、手品を披露していた。こうした会場の印象と、Office 2000のキーノートには、どこか互いに通じるものが合って、いろいろありすぎて雑多に見えてしまう点が、似ていた。もちろん、アプリケーションとしての完成度が高いのは、とてもよく理解できるのだが、あまりに多方面において「最適ですよ」と言い過ぎているせいか、どのメッセージが当事者に向けられているのかが判断しにくくなっている。
 一方、Microsoft SF店だが、こちらの可能性は未知数だ。米国では、コンセプトを引っさげて、全米各地のショッピングモールに出店をかけるベンチャー企業が増えている。衣類などの生活必需品だけではなく、ネイチャー系グッズとか、知的玩具の専門店など、ニッチな市場を狙ったフランチャイズ展開もある。果たして、Microsoft SFが、そういう展開を計画しているのか、あるいは、シアトル本社にあるカンパニーショップのコンセプトに、アンテナショップ的な要素を盛り込んだだけのものなのか、とても興味がある。取材した6月7日時点では、なんとも判断できなかったが、またサンフランシスコに行く機会があれば、その後を見てみたいと思う。また、これからサンフランシスコに行かれる用事があるのならば、時間のあるときに、ちょっと立ち寄られることをお勧めする。何かのアイディアが得られるかもしれない。
 話が散ってしまったが、サンフランシスコには現地時間の10日までいた。この日がOffice 2000の出荷日だったので、製品が店頭に並んでいる様子を見ようと思ったのだ。朝からサンフランシスコのCOMPUSAに行ってみたが、期待通りにOffice 2000が並んでいた。ただ、地元の反応はとても冷静で、Windows 98のときのような前日からの待ち行列もなければ、商品に殺到しているようなことはなかった。おそらく、かなり冷静に様子を見ているのではないだろうか。こうした「静観」している層をマイクロソフトがどのように発掘していくのかは、Office 2000の性能がどうこうよりも、むしろ興味がわく。

サンフランシスコの市長と握手を交わすスティーブ・バルマー社長

Office 2000の特長について語るスティーブ・バルマー社長

日本から視察にきていたマイクロソフトの古川享会長

Microsoft SF店内の様子



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