田中 亘 ■ キーワードはストリーム技術 Pentium IIIの登場によって、ストリーミングという言葉が、ちらほらと雑誌の記事などでも目にするようになってきた。マルチメディアという言葉も、なんとなく定着したようなしなかったようなままに、漠然とした市場が形成されてきたが、「今度はストリームか」と静観している関係者も多いのではないだろうか。また、常にインターネットの先端を走っているエンジニアたちにとっては、むしろ「何をいまさら」といった印象を抱かれるかもしれない。 確かに、現在のパソコンとインターネットを取り巻くストリーミング関連の技術は、いうなれば「中途半端」なものだ。多くの人がイメージする理想的なストリーミング環境といえば、テレビの放送のように、大きくてハッキリした画像が、滑らかに映し出されるものだろう。しかし、現実のストリーミング処理は、ちょうどQuickTimeのバージョン1.0のようなもので、画面は35mmフィルムほどの大きさしかなく、通信環境が悪ければ、短波ラジオで海外からの放送を受信しているような音だ。 利点といえば、主に米国を中心とした海外のニュース映像やプレゼンテーション、音楽や映画の宣伝などが見られることだ。ニュースや音楽などは、インターネットよりもテレビの方が早かったりもするが、特定の趣味や目的がある人にとっては、文字と画像だけの情報よりも、音や動きがあるだけで、心そそられることもある。いまだ技術は未熟でも、映像の世紀と言われる20世紀に育ってきた人たちは、やはり動くものに注目する。 そして、そのストリーミングの可能性に対して、遅まきながらも組織を上げて取り組みだしたのが、マイクロソフトのストリーミング メディア部門(Streaming Media Division)だ。米国時間の4月28日に発表された報道資料によれば、この新設部門は、消費者および企業向けのデジタルメディア アプリケーションを対象とした技術とソリューションを開発し販売するという。組織としては、マイクロソフト シニアバイスプレジデントのジムオールチン(Jim Allchin)氏が担当する既存の2部門(コンシューマ ウィンドウズ部門、およびビジネス&エンタープライズ部門)に合流する。その目的は、音楽、ラジオ、ニュース、イベント、オンライントレーニング、および企業コミュニケーションなどのアプリケーションを対象とするストリーミングメディア技術を提供していく上で必要なリソースの投入と事業化にあるようだ。 この部門が扱うソフトウェアとしては、Windows Media Technologiesがある。この中にはWindows Media Player、Windows Media Services、Windows Media Tools、およびWindows Media Audio SDKが含まれていて、Windowsユーザーは以下のWebサイトからダウンロードできる。 http://www.microsoft.com/windows/windowsmedia/ こうしたマイクロソフトの動きに同調するかのように、シャープは、Internet Viewcamという製品の販売をはじめた。これは、デジタルカメラとMPEG-4動画をスマートメディアに記録する機能を持ったカメラになる。動画のフォーマットには、Windows Media Playerで再生できるASF形式を用いている。以前、日立がMPEG-1形式で動画を記録できるデジタルカメラを販売していたが、その保存形式はmpgで、ホームページに掲載すると、ファイルをダウンロードしてから再生しなければならなかった。対するASF形式であれば、単にホームページにリンクを用意するだけで、クリックすると同時に、Windows Media Playerが起動し、再生をはじめてくれる。大規模なストリーミングの送信でなければ、かなり手軽に動画の発信が可能になる。 もっとも、その動画のサイズはかなり小さいので、どこまで実用的に使えるかは、サンプルを記録したホームページを作ったので、ご興味があれば、その目で確かめてみてほしい。 http://www.yunto.co.jp/asf/ 掲載しているデータは、高画質なので、直接再生すると、ちょくちょくバッファリングされてしまうので、まとめてダウンロードしてから再生した方がいいだろう。また、再生のためには、最新のWindows Media Playerが必要になる。それは、マイクロソフトのホームページからダウンロードするか、Internet Explorer 5.0をセットアップする。 もちろん、現在のストリーミング技術を否定することは簡単だ。しかし、インターネットをより大きなメディアとして拡大させるためには、ストリーミングが重要な鍵を握る。将来的には、テレビショッピングの世界がインターネット上で展開され、秋葉原駅前の街頭販売もストリームで何度でも見られるようになるかもしれない。 20世紀が映像の時代だとすれば、21世紀はその映像をデジタル化したストリームが、新しい時代を作っていくのかもしれない。 |