最新Windowsソフトウェア事情(第51回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄
mtaka@fsinet.or.jp


新たなスタート

 100回連載をめざす本欄にとって、現在(99年4月14日)執筆中のこの原稿が折り返し点(第51回)にあたる。コンソーシアム会員のみなさんにはあらためてよろしくお付き合いのほどをお願いする次第である。さて、4月といえば新入社員や新入生を迎える季節である。みなさんも新人研修にかり出されているのではないだろうか。わが家でもこの4月、次女が大手の玩具会社に就職した。いまはやりの自衛隊での合宿研修を終わったと思ったら、今度は工場での実習のためにふたたび地方へ出かけた。老人(義母)と熟年夫婦そして老犬だけの家の中はしーんと静まり返っている。次女が大学を卒業したので、これで子供の教育はすべて終了した。親の義務の一つは果たしたことになるので、これからはいままで以上に自分の好きなことをさせてもらおうと思っている。その一つは本欄でも何度か紹介している小淵沢での生活である。
 図1はわが麗澤大学の入学式風景を示している。もちろん、私は新入生の親ではなく式に出席しようとしている教師の一人である。日時は4月2日とあり、ずいぶんと早い入学式だと思われるだろう。それにはわけがある。麗澤大学は新入生の全員をいくつかのグループにわけ、谷川温泉にある研修センターで合宿のオリエンテーションをすることになっている。外国語学部と国際経済学部そして大学院あわせて1,000人ほどの新入生の人数であるが、それでも2週間近くの日数がかかる。この合宿オリエンテーション日程の関係で4月そうそうに入学式を行っているのである。

図1

 私が所属する国際経済学部はこれまで国際経済学科と国際経営学科の2学科から構成されていた。そして今年はさらに、最近はやりの「だんご3兄弟」にあやかって末っ子の国際産業情報学科がスタートした。この新たなスタートは私にとって情報技術を使った教育方法の試みにチャレンジしようとする新たな意欲を与えてくれた。その一端は私のホームページにもあらわれている。まずは図2を見ていただきたい。これまでと違ってフレームを活用したホームページとなっており、私の学習の成果が反映されていることに気づくだろう。しかし、ページの冒頭には「棒道と石仏」などという、およそ大学のページとは思えないトピックスが読めるのは理解に苦しむかもしれない。じつは小淵沢の北側にそびえる八ヶ岳の山麓には武田信玄が切り開いた軍事道路(棒道)沿いに30数体の石仏がある。これらはいずれも江戸時代に寄進された年代ものの石仏であり、それらの石仏を眺めていると、原稿執筆の疲れも不思議にとれてしまう。このご利益をみなさんにも分けてあげたいと思い、ホームページ上に毎回、一体づつ紹介することにしたのである。

図2

 たとえば図3はリンクをたどって表示される石仏リストである。まだ2体だけしか紹介していないが、それぞれ石仏番号や参拝年月、観音の姿(種類)などが表示され、関連した解説やデジタル写真へのリンクがはられている。たとえば「西国29」の石仏を選択すると図4のようにさまざまな角度から撮った石仏の写真集が表示される。これらの写真はサムネールであり、特定の写真をクリックすると見事なカラー写真が画面全体に広がる。こうしたHTMLアルバムを作成するためにPictureGear3.0(ソニー)を使っている。グラフィックソフトの多くはインターネット対応となっており、簡単な操作でホームページに写真集を含めることができるようになった。

図3

図4

 ところでせっかく30数体の石仏を紹介しても、それらが棒道沿いのどのあたりに鎮座しているのか、その説明がむずかしい。そうしたときに、カーナビよろしく「北緯35度**分、東経139度**分」といったように緯度経度で場所を示すことができたら、正確な位置を伝えることができるだろう。しかし、細い山道のこと、わが愛車(もちろんカーナビつき)を乗り入れることはできない(たとえできても自然を愛する私のこと、とてもそんな暴挙をするはずはないが)。ここでポケナビ(ポケットナビゲーションシステム)が役立つ。これはつい3月にエンペックス気象計という会社から発売された装置であり、定価39,800円と私にも手の届く価格設定の商品である。日経新聞の新製品欄でこの商品の記事を見かけた私はさっそく電子ファイリングにスキャンして保存しておいた。図5はその記事を示している。発売直後、ビックカメラで購入しようとしたら在庫がなく、メーカーに問い合わせたら発売直後に在庫切れになってしまったということであった。中高年のアウトドアブームが続くいま、こうした装置はすぐに人気商品になってしまう。やむを得ず、注文予約して半月ほどたってようやく購入できた。図6は私の手にしっかり握られたポケナビである。装置の下部には小さいとはいえディスプレイが備えられ、そこにメニューや現在位置情報そして拡大/縮小が自由自在な地図まで表示できる。全国6000個所の山や市町村役場などがあらかじめ記録されており、現在位置からそれらのポイントへガイドさせることができる。図7は自宅周辺で測定した現在位置のデータである。通常のカーナビ(GPS)と仕組みは同じであり、衛星から受信する情報にもとづいて2次元測定あるいは3次元測定が行われる。3次元測定の場合は緯度経度に加えて高度も測定できる。

図5

図6

図7

 さて、4月は大学院および学部学生の研修に同行して谷川温泉へ2度でかけた。図8はいまなお銀世界のままの谷川岳である。まだ一度も登ったことはないが、研修の合間、谷川(雪解け水がきれい)沿いに30分ほど上流に向かって歩いてみた。今年もまた山への挑戦意欲をかきたてられた。

図8

 研修では私も2時間ほど特別セミナーを引き受けた。例によってプロジェクタとパソコンを携帯し、大画面上でプレゼンテーションを行った。話の中心は本欄(第48回)で紹介したように、「勝ち組みになるための3か条」つまり「パソコンを使って英語や統計学(数量分析)を学ぶことが重要である」ということであった。たしかに、最近は英語学習用のソフトや英語を実践するためのパソコンソフトを数多く見ることができる。たとえばTOEIC学習用のソフトはじつによくできており、このソフトをみっちり学習すれば最低でも600点はかたいと思われるほどである。30年前にTOEFLを受けてフルブライト留学生試験に合格したこの私がいうのだから間違いない(つい自慢したくなるのが悪い癖!)。
 英語に関連したソフトは試験対策だけではない。翻訳ソフトもまた重要な役割を果たす。麗澤大学の新入生はさっそく英書購読の科目でみっちり英語の専門書を読まされる。私の担当クラスではR.W. Griffin et., Business, Prentice-Hall, 1999を読むことにしている。この本は「経営入門」的な教科書であり、CD-ROMもついている。CD-ROMには企業の事例がビデオクリップで収録されており、パソコン上で具体的な会社の状況を見聞きできる。また関連企業のホームページも数多く収録されており、一人一台のパソコンが設置された教室で行う英書購読はユニークな授業になるはずである。パソコン教育にパソコン教室を使うのは当たり前であるが、経営学の授業にパソコン教室を使うのはまだ珍しいことだろう。
 私のもう一つの講義は「経営科学」である。ここでは意思決定のための情報技術を話題にするが、今年は教科書にかえてCD-ROMを学生に配布しようと考えている。

図9

 図9は試作中のCD-ROMの画面例である。内容はHTML書式で構成されており、図版やビデオ動画、さらに「実戦Excel入門」(岩波書店)で大いに活用したスクリーンカムによるソフトのナレーション入りの解説も数多く収録した。また、本欄や他の原稿なども参考文献として電子的に収録している。これらの電子教科書を使った授業は4月下旬からスタートするが、それがどのような教育効果を示すことになるのか、楽しみである。興味があればみなさんにお分けすることもできるので、ぜひ、学生時代に戻ってパソコン画面上で「経営科学(経営意思決定支援)」を学んでみたらいかがだろうか。希望者はメールください。
 翻訳ソフトといえば従来から「コリャ英和」や「これ和英」を使ってきた。いずれもカテナ社から発売されている。この製品がさらに機能アップして「コリャ英和バイリンガル」と「これ和英オフィス」が発売された。また、より上級編の翻訳ソフトとして「LogoVista Pro Personal」もカテナ社から発売されている。これらのソフトが手元にきたので、これからじっくり学び、その成果を麗澤大学の学生に伝授することにしたい。「勝ち組み3か条」を身につけるにあたって上記の3兄弟ソフトがどのような効果を発揮することになるのか、その結果は次回に報告することにしたい。

筆者(小淵沢にて、甲斐駒ケ岳をバックに)


(麗澤大学 国際経済学部 国際産業情報学科 教授
http://www.reitaku-u.ac.jp/
MAP左上のTakahashiからリンク)



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