松倉会長の業界キーマン直撃インタビュー
クラリオン株式会社 開発本部担当本部長
佐久間 彪氏を訪ねて



 今回の直撃インタビューは、東京渋谷のクラリオン本社に開発本部担当本部長の佐久間彪氏をお訪ねしました。佐久間本部長は3月半ばまでロサンゼルスのアメリカクラリオン社副社長としてご活躍されており、1週間ほど帰国中の際のインタビューでした。また、総合企画本部マーケティング部課長の望月秀敏氏も同席されました。
 本インタビューのきっかけは、12月4日のWindows CEアドバイザリー会議で出席いただいたメンバーの方々から各社の状況報告があり、クラリオンの望月氏からAutoPCのお話が出たことに松倉会長が興味を持ったことによります。
 佐久間本部長からは、プロモーション用の英語版スライド「AutoPCの今日と将来」を基にご説明いただき、2時間近くにわたる大変ホットなインタビューでした。特にその構想をマイクロソフト社にぶっつけたあたりは、AutoPC開発の裏話として最高のところではないでしょうか。
 なお、本コラムの最後に、いただいた資料の中からAutoPCの機能、仕様などをご紹介いたします。


松倉 最初に御社のAutoPCの概要ををご紹介くださいませんか。
佐久間
 まず、AutoPCの説明の前に、当社のインカーネット(IN-CAR NET)構想をお話したいと思います。
 「車載型双方向マルチメディア商品を核に、高度情報社会におけるカー・マルチメディア世界の実現を目指す当社は、21世紀に向けた商品・技術開発への取組みを『IN-CAR NET構想』と名づけ、その具体化を進めています。その中核機能として、車内空間における音を中心とした快適性、情報利用の利便性、操作の安全性の3つをあげ、将来の高度交通システムに対応する各種通信機能の統合化や家庭・オフイスとの情報環境をヒームレス化することにより、車内空間をネットワーク社会とのつながりを持った環境へと変化させることを狙っています。当社では、これまで栽ってきたAVCC(Audio Visual Computer and Communication)技術をベースとした新技術開発によりIN-CAR NET構想の実現の具体像としてClarion AutoPCを提案しています。」ということで、全世界のドライバーに新しいクルマ社会を提案するものです。
 AutoPCの機能や仕様一覧、使用されている最新テクノロジーなどは、別紙の資料を見ていただくことにして、これからはビジュアルにご説明いたしますので、気楽にお聞きになって、ご質問ください。

松倉 よろしくお願いします。
佐久間
 去年12月、フランスにあるオートモーティブ関係のマルチメディアを推薦する団体、インカーテック(IN-CAR TECH)が、是非AutoPCを紹介してくれないかということでその時に作ったスライド「AutoPCの今日と将来」がありますので、それを基に途中でビデオを入れるような形でご紹介します。これは、クラリオンのAutoPCというのはどういうものなのか、クラリオンはAutoPCを引き下げてどのようなグローバルなストラテジーを考えているのか、今日のAutoPCと次世代のAutoPCをどのように考えているのか、また、具体的にカーメーカーに対して我々はどういうようなことを考えているか、という構成になっています。

 はじめてのVoice ActivatedでIn-Dashであることが1つの大きな要素だと思います。In-Dashとは、所定のところにスポッと入るカーオーディオのようなもので、切ったり広げたりしなくてもまったくカーオーディオのサイズで所定の位置へ組み込めるということです。そのIn-DashのAutomotive のマルチメディアコンピュータであり、世界初の全てが音声コマンドで動くということです。見かけ上は全くカーオーディオのような顔付をしており、通信とのインターフェイスやちょうど電話のテンキーのようなものも持っており、真中にはWindowsのロゴがついています。

Clarion AutoPC

   去年12月4日にアメリカで販売を開始しましたが、その時点ではカリフォルニアのサンディエゴ、サンフランシスコ、シアトルと3つの主力大手の顧客先とかなり地域を限定して出しました。AutoPCにはいろいろなフィーチャがついていますが、中には地域性を要するものがあります。例えば交通情報を流すFMのキャリアやナビゲーションなどは、かなり地域に密着したものです。また初期物だということで、そのメンテナンスについても、我々自身もマイクロソフト社自身も非常に重視しておりました。しばらくの間はマイクロソフト社そして私どももフルにお客様に対し取計いできるという意味でも地域を限定にしてやった次第です。
 AutoPCの一番のうたい文句は「Keep your hands on the wheel and your eyes on the road」です。これは、“手はハンドルに置いたままですよ、目は正面を見たままですよ”ということです。
 マイクロソフト社としては、はじめてのAutomotiveのマーケットに出て行くということで最高に重視しているのが安全性ということです。推測していただけるように、このマーケットというのは非常に保守的な大企業のいるところですから、マイクロソフト、何様が来るのだというカーメーカーにはかなり抵抗感があります。カーメーカーとしては、PC業界がなんで我々の業界へ入ってくるのだという気持ちに非常に強いものがあります。そこで、マイクロソフト社としても非常に安全性を重視しているのです。
 AutoPC、車の中のPCといいますと今時は少ないですが、企画当時日本では、「PCで何?キーボードが付いている、マウスが付いているようなものを車に持ち込んでどうやってやるのだと、そんなことはできるわけないじゃないか」というような思われ方があったように「車の中のPC、んー、危ない、危ない」というような気持ちが非常に強いわけです。従って我々のキーワードになっているのは、「手はハンドルを握ったまま、目は方向線上に集中したままで」です。「私はいつも聞き耳をたてて聞いております。あなたがやりたいことを私(AutoPC)に話しかけてください。そうすると、忠実に私の方でやりますから」、いわゆる“Just talk to me”、“Just talk to AutoPC”ということです。これがキーワードです。

Clarion AutoPCカタログ

松倉 Windows CEという点からはどうでしたか。
佐久間
 大体は推測いただけるように初期のものとして大変苦労しました。とりわけマイクロソフト社にとりましてもWindows CEからの展開ということであり、また、車とのインターフェイスというのは彼等も未知の分野でありましたので、いろいろソフト的にもハード的にもかなり苦労しました。とりわけペリフェラルの部分での接続はいろいろ検証しながらそろりそろりとやっております。いわゆるUSBでつないでいるものがほとんどですが、1個2個のときには極めて快調に動くけれど、それ以上になるとちょっと変なものが出てくると、というところもありました。

松倉 アメリカでの発売で苦労したことがありましたら。
佐久間
 実は発売がちょっと遅れました。CEショウでは、去年の7月頃具体的なプロダクトランチをするということを発表しましたが、それが結局12月まで延びたわけです。何故遅れたのかというと、Voice Recognition(音声認識)の部分とユニットのゼネラルなユーザービリティ(使い勝手)の2つの点をハードウェアの観点からと同時にソフトウェアの観点からともかく入念なテストを繰り返えしました。その評価期間が予想以上に掛かってしまったこと、すなわち、我々の持っている“商品のコンセプト”を確かなものにするためにということです。それは何かというと、先程申し上げた“Hands on the wheel”と“Eyes on the road”というプロダクトの安全性の最優先と使い勝手についてです。音声認識というのが本当にどこまで的確に反応するのか、これは例えば止まっている車の中でジッとしているのならどうってことは無いのですが、ドライブ中にはいろいろな環境の変化があり、どの範囲までだったらきちんと捕らえられるかが問題でした。例えばアメリカ国内にしてもいろいろアクセントやイントネーションの違いなどがあります。今回アメリカ向けに採用している音声認識は、いわゆるアメリカンイングッリシュということで、アメリカ人がしゃべる英語でやっています。いろいろなアクセント、イントネーションの違いなど違うものを学習してもらったら、今度はコンピュータが覚えるということです。少々日本人が変な発音をしてみても1回2回3回くらいエラーするかもしれませんがそれで機械の方が覚えていますから、貴方の発音でも大丈夫ですよ、というようなところに時間がかかったということです。

<具体的にAutoPCを具体的に見るということでビデオでの紹介が行われる>

佐久間 実際にこういう顔をしていまして、ここがスライドしてきてここにCDが入ります。ここに当然音楽CDとデータCDが入ります。
 
佐久間本部長

松倉 後ろにカセットは入りますか。
佐久間
 カセットは入りません。現状のカセット目かは大きくて収まりません。画期的な小型カセットメカがあれば別ですが!?(笑い)

<ビデオで、E-mailの読み上げ、ナビゲーションなどが紹介される>

佐久間 E-mailも読み上げてくれます。

松倉 私欲しいです(笑い)。マイクは上の方にあるのですか
佐久間
 そうです。運転席の上の方ですが、あまり近くなくてよいです。結構このあたりも苦労したところです。
 AutoPCの考え方は、エンターテイメント、インフォメーション、ナビゲーションそれからコミュニケーションをシームレスにインテグレートするものです。プラットフォームさえしっかりしていれば、将来的にはもっといろいろなことができますから、あとはアプリケーションの問題となります。
 「エンターテイメント」としては、FM、AMステレオがついてきます。CDプレーヤは私どもの強いところですからハイパワーの35W x4のデジタルサウンドを提供しています。また、CDチェンジャもつながっています。CDチェンジャは最近PCで売れているUSBの機種を利用していますが、家庭におけるUSBのケーブルと違い、自動車の中に搭載するケーブルはかなり信頼性が必要で、苦労したところです。振動があったりいろいろ悪条件の中で使っていますので、USBのケーブルの開発、具体的にはコネクターの部分が相当しっかりしないといけないということで、ヒロセ電機様と手を組んで独自に開発しました。これは非常に特長的なところです。
 「インフォメーションマネージメント」は、Windows系のPCからのダウンロードで行います。Windows CEをベースにしておりますが、アメリカでアクセスの中心になっているのは、アドレスブック、ボイスメモ、ワイアレスのメッセージ、e-mail、ページャー、リアルタイムのトラッフイクメッセージです。それに加えてVehicle diagnostics(車両診断という意味合いなのですが)として、例えばシートのアジャストメントをするとか、ウィンドウを開け閉めするとか、シートを暖かくするといった車のメジャーな制御関係を除いたところの快適性をうたうような車のフイーチャと全部インターフェイスをとれるようになっています。あまり制御関係のところまでタッチしますと大変な話になりますが。
 「ナビゲーション関係」ですが、1号機の大きな特長としましては日本にあるような大きいディスプレイを持っていません。我々がいろいろ商品企画をマイクロソフト社と考えた時に、アメリカ人というのは非常にコストゴージャスといいますが、安くないものでなければなかなか買わない、したがって日本にあるような30万も40万もするようなディスプレイとワンセットになったようなものは今ひとつ普及が遅れるだろうと、いうことです。コンポーネント全体が下がれば別の話ですけど。
 従ってもう少し手頃に買えるナビゲーションを1号機でなんとかしようとして、ディスプレイそのものも小さいディスプレイでやっているわけです。もちろんカーオーディオをちょっと大きくしたものです。ここで日本とアメリカの道路事情というのでしょうか、道路の表示事情が、アメリカ、欧米もほとんどそうだと思うのですが、通りすべてに名前が付いているわけです。日本にも通り名が付いているでしょうけど、あまり知らないですよね。従ってどこかへ行く場合、地図を見ながら行くという人は非常に少ないのです。物理的にこう曲がってこう行くという地図を書いてくれる人は、ほとんどいないのです。逆にいえば書けないというか、通りの名前を書きます。3ブロック行ったら○○通りが見えてくるからそれを左折しなさい、左折して3ブロック行くと△△通りが出てくるから、それを右折しなさい、という感じです。

松倉 そういえばそうですね。
佐久間
 従って彼等はわざわざ高い金をだして、ナビゲーションシステムを導入しません。例えばレンタカーをアメリカに行った時、借りて、どこどこに行きたいのだというと、プリントアウトしてくれますが、通り名が全部言葉で書いてあるだけです。それを読み上げているだけです。このナビゲーションは、○○通りを行け、△△通りを行けと。今はコンピュータの言葉で話しているというようなちょっと堅い感じですが、いずれ時間の問題です。これからは人間の自然音に近いかっこうで応答していくと思います。
 今、2種類のナビゲーションをやっています。1つはディレクションという、本当に簡単なナビゲーションで、マイクロソフト社が提供しているものです。地図も何もなく全部声のみです。もうひとつはサードパーティがやっているオデッセイという名前のもので、常時ではないですが地図に矢印で示すものです。自分がどこにいるのかを見たい時に、イメージの感覚でまわりがどうなっているのかをまあちょっと見せてあげましょう、というようなナビゲーションですが、スクロールしますから、縮小、拡大の機能も持っています。安全性の問題でこの小さいナビゲーションも運転している時は見て欲しくないです。止まって自分が一体全体どこにいるかを知りたい時に見るというのが、基本的なコンセプトです。こういうのもあると面白いなということで、サードパーティが作ってきている。従ってWindowsの良さというのでしょうか、非常にデベロップメントのパートナーが多いものですから、将来的にもどんなアプリケーションのソフトが出てくるのか楽しみという部分もあります。
 「2WAYのコミュニケーション」、これは文字通り電話との接続であって、ハンズフリーになっていて、携帯電話を車の中にとりつけて、あとは連動させて車の中でのオペレーションは全部声でやるというものです。
 「ASSIST」、これはアメリカの緊急通報システムです。例えばGMはオンスターとか、フォード系はレスキューとか名称をつけまています。緊急事態時にこのボタンを押すとセンターに連絡し、そうするとセンターの方ではオペレータが答えてくれます。今ここでこういう事故があったと、そうするとGPSで位置が分かりますから、緊急出動したり、警察と連絡しあったり、病院と連絡しあうとか、といったものです。SOS的なイメージが強いのですが、あくまでもエマージェンシー時とかロードサイドのアシスタントです。

松倉 これは御社のオリジナルですか。
佐久間
 一応トレードマークにしてやっています。緊急性うんぬんということでうたい文句にしていますので、ボタンを押すとセンターにつながるよう1発選曲しなければならない。ただし「ASSIST」のボタンはちょっと奥に引っ込んでいますので、通常触っても動かない。他のものは比較的出っ張っていて押しやすいですが、これだけはちょっと触っただけではいかない、結構押さないといけない。あまりしょっちゅう押されては困るので、普通に触っている分には全然反応しません。

松倉 開発パートナーさんも多いのでしょうね。
佐久間
 あくまでマイクロソフト社がサポートしているということでエクスパンダムでアップグレーダブルというような格好でやっています。Windows CEの状況でも我々がセールスとしてアピールしているアプリケーションソフトが既に260ぐらい出まわっています。このうちすべてが車で使われるということではありませんが、ソフト開発面からは非常に大きいことです。今までのナビゲーションシステムのように独自のシステムを作るのは、滅茶苦茶に金がかかり大変なのです。
 発表時に沢山の付属品がそろってくれないとただのハコになってしまいますから。今ある開発パートナーは次のような会社です。
●InfoGation社は、ファームウエアからアプリケーションまで幅広い商品開発能力を持ち、AutoPC向けに独自アプリケーションソフト開発を行っています。
●CUE Network社は、全アメリカ人口の85%が居住するエリアと高速道路の80%をカバーするFM多重データを供給しており、このFMのサブキャリアを使って、AutoPC用にe-mail着信、メッセージページング、リアルタイム交通情報などのサービスを行います。
●Vetronix社は、自動車整備機器の開発をしており、AutoPC用車両診断システムを提供します。
●Navigation Technologies社は、世界有数のデジタル地図のデータを供給しており、ナビテックというナビゲーションのデータCD-ROMを出しています。
●Protection One社は、さきほどのASSIST(緊急通報のシステム)サービスの提供をやっています。ちなみにこの会社はフォードのレスキューというサービスのコンテンツを出しています。
●ORA Electronics社は、セルラー電話・無線の周辺機器の開発をやっており、AutoPC用にセルラー関係のドッキングステーションを発売しています。

 今までですとオーディオを買って、アラームシステムを買って、次に何々を買ってというようになっていましたが、それを1つにしてしまおうということです。
 AutoPCのアライアンスとしてどれくらいの会社があるかというと、Webサイトでは昨年11月の時点で11社ありましたが、今ではもっと増えていると思います。その中でも、我々はInfoGation社に対してかなり戦略的パートナーシップを結んでおり、現段階ではもっとも活発にアプリケーションソフトを開発しているサードパーティです。AutoPCに使われているいろいろなソフトを提供していこうという会社がどんどん増えてくると非常に面白いソフトができると思います。これが日本でいろいろやっているコピーシステムの格好ではなかなかこういうものはできない。他で売るところはないですから。InfoGation社の提供するナビゲーションはマイクロソフト社のナビゲーションとは趣が違うもので、優秀なアプリソフトを開発する会社です。このようなコンテンツのサポートがないとAutoPCは成り立たないわけです。
 将来的には、コンパクトフラッシュなり、いろいろな大容量の記憶装置が出てきますと、AutoPCはいろいろな恰好に発展すると思います。マイクロソフト社がサポートする一連のものはAutoPCにもごく自然に取り入れられるということです。AutoPCはそのようなプラットフォームとしては結構力はあると思っていますから、いわゆるナビゲーションだけに使ったりするには非常にもったいない。AutoPCの情報を今度はPCに入れることもできるわけで、そのような機能がいっぱい付いているのです。

松倉会長

松倉 アメリカで発売された時は、どのような人達をターゲットにしたのですか。
佐久間
 モービルプロフェッショナルという車を仕事に対して非常に使う、セールスマン等々含めて、このような人達をターゲットにしています。ざっとアメリカを見ましても常時車で通勤している人が8000万人くらいいて、そのうちの25%位は車を使っての仕事をかなりメインにしている、Mobile Walkerといいますか、この人達です。すなわち彼らの生産性を向上させようということです。E-mailもとれるし、セルラー、ページャーやPCのHandheldなど見る必要がなくこれらの機能が一発でできてしまう。従って1号機にはややエンターテイメントの要素よりも業務用に使うということにかなりターゲットをおいています。2つ目は、デジタルジェネレーションというか、新しいものだったら何しろ試してみたいという、Early Adapterというような言葉を使うことがあるのですが、ともかく「新しいテクノロジーは、おれは好きなんだぜ」という人達がもう1つのターゲーットです。

松倉 必ず直ぐ買う人ですね。私もその一人ですが。
佐久間
 直ぐ後悔したりして(笑い)。

松倉 デジタルジェネレーションという方は何人くらいおられるのですか。
佐久間
 相当数おられるようですが数字的には分かりません。アメリカにも松倉さんのような方がいっぱいいるということですね。Early Adapterといわれる方は早めに早めにともかく試してみたいという人達です。

松倉 AutoPCはどこで作っているのですか。
佐久間
 我々は小さい会社のわりには、プロダクションに関してはたくさん海外に工場をもっています。アメリカ、メキシコに2つ、イギリス、フランス、などにもありますし、日本にもそれなりにあります。今は生産比率からいいますと海外の方が多いです。コンピュータですから、どの工場でもという訳にはいきませんので、しばらくは日本の主力である一番進んでいる東北事業所が担当すると思います。どうしても儲からなくなってくると、海外に出て行きますけれど(笑い)・
 当社は、OEMブランドとしてカーメーカーに売る商売の方が得意なので、市販では少し弱いかなという受け取られ方をされている部分があります。カーメーカーに売っている分には名前が出てきませんので、生産量等などからみますと、世界で一番たくさん作っている製品がかなりあります。
 AutoPCの開発体制ですが、一番の中心は日本の埼玉事業所にある研究開発センターのマルチメディアディビジョンです。海外には、アメリカにClarion Advanced Technology Corporationがカリフォルニアのロサンゼルスの少し南のアーバインにあり、ヨーロッパではClarion Advanced Technology Corporationの支社があります。こういう3つの所でやっていますが、コンピュータエリアの所の開発はマイクロソフト社、インテル社がらみでやっぱりアメリカが中心にならないといけないということでやっています。こういう組織作りにアメリカにミッションとして行ったのは私です。もっとも私は一番マイクロソフト社との交渉の初日からいましたから、よくありますように、おまえが最初に口を開いたのだから、プロジェクトを立ち上げろ、アメリカに行け、という格好になりました。

松倉 どの位行っていたのですか。
佐久間
 かれこれ2年弱です。やっと目途がつきました。
 開発については、埼玉事業所にある研究開発センターのマルチメディアディビジョンと、カリフォルニアのアーバインあるClarion Advanced Technology Corporationの両輪でやっています。Advanced Technologyの下にあるヨーロッパ支社も開発のためにあり、それこそAutoPCは地域性に関連のあるフューチャリングを持った商品ですから、ナビゲーションにしても、どこか一ヶ所で例えば日本でアメリカ向けのものは開発できないわけです。正直いって習慣も違いますし、ナビゲーションの画面を1つ見ても、日本の画面の作りではアメリカでは通用しません。やはり考え方とか趣味の違いがありますから、従ってこういう2つの大きな両輪でやっています。
 分担としては、日本側がカーエレクトロニクスのテクノロジー、即ち我々が伝統的に持っているもので車載応用技術の開発です。これは、いわゆる耐震性の問題、耐熱性の問題、雑音の問題等々、車へ積むためのエレクトロニクスの商品化です。アメリカ側はコンピュータのテクノロジー、即ちAutoPCは、PCとの合体ですから、この方の開発です。特に重要なマイクロソフト社、インテル社などいろいろキーパートナーとの接点は全部アメリカ側でやらせると、この中でこの2つが上手くインテグレーションすると、いい競争力のあるクラリオンのAutoPCができるだろうと、いうことです。特に、PCですから、やはり開発期間の大幅短縮ということがいえます。一番効率のいいところで専門の領域を開発させるということです。その後それぞれのマーケットに応じた条件に的確に合わした市場性が持てる、というような段階です。

松倉 そうするとソフトウェアの開発もアメリカでやっているのですか。
佐久間
 そうです。アメリカに置いています。この下にぶらさがっているのがInfoGationという会社になります。それらを含めてアメリカで今80人位の規模でコンピュータ関連のソフトウェアの開発をやっています。オーディオや車載用の技術というのは、それを最終的な商品に仕上げて何年間も丈夫に車の中で頑張ってくれる、というような最終的なテストは日本側が最終的に面倒を見て出荷しています。

松倉 最近は車自体がコンピュータになっていますよね。
佐久間
 いっぱいコンピュータの部分が入っていますから。

松倉 御社のだしAutoPCプロジェクト開発のきっかけは何ですか。
佐久間
 クラリオンがAutoPCを何でマイクロソフト社とやったのかという質問はたくさんあります。それまで我々はコンピュータをやったことがなかったものですから。
 何故こういうプロジェクトがスタートすることになったかというと、もう4年くらい前になるのですが、当社も一人前にカーマルチメディアの世界のリーダーになりたいという強い要望がありました。当時、カーオーディオは我々の専門でしたから、“CarAudio and Beyond”というタグラインを作りまして、カーオーディオとそしてさらにそれを越えるものという格好で将来的に新商品開発、市場開拓をやろうという会社の合意が得られました。このために何を具体的にやればよいのかの試行錯誤をして、2つの問題点を出しました。
 その1つはクラリオンのPropriety Systemを続けるべきかどうかということで、クラリオン独自のナビゲーションシステムにいろいろな機能を加えていって、いわゆる総合的なカーマルチメディアという商品に仕上げていくのか、こういうことが何時までにできるかという問題点。当社の商品にしか関わらないような付属品をソフトも含めていっぱい開発するわけです。開発費が膨大にかかり、これは非常にしんどい。
 2番目の問題点として日本と同じようなやり方で、果たしてアメリカやヨーロッパでもって我々はお金になるのか。ということは日本の地元で年間15万位の台数を売っているわけですがそれでも結構今までの開発投資からみるとかなり苦労してやっている、非常にお金をかけた商品開発をしている。それがまだまだ非常に脆弱なマーケットにしか成長していないアメリカとか欧州において、果たして日本と同じようなエネルギーを費やしても、もっともっと大きいエネルギーがいるわけです。ローカル性がありますからね。本当にお金になるのかという疑問があったということです。
 今度出そうとしているナビゲーションシステムは、ナビゲーションといっても所詮コンピュータですから中身は、CPUを積んで、モデムがあって、RAMがあって、PCIがあって、バスが通って云々、ということになります。コンピュータだから、この世の中には何かオープンスタンダードなプラットフォーム、いわゆるデファクトスタンダードな全世界に通じるような何か統一性の強いプラットフォームというのはないのかという感じでした。
 こういう思いでいましたが、アイディアとして浮かんだのは「そうだ、我々はマイクロソフト社に行ってみよう、あなた方となにか上手いことができないか」ということでした。マイクロソフト社だって恐らく当時の段階でオフィス関係の業務用のアプリケーションはしっかりしている、これから家庭用のところにかなりダイナミックに入っていこうとしている、その代わり家庭用となると、かなり使い勝手の点など改良しなければならない、当然彼らだって自動車業界という大きな所に目をつけていないはずがない、とにかく話に行ってみよう、ということになりました。
 1995年の初め頃、「我々クラリオンがオートモーティブのマルチメディアないしオートモーティブのコンピュータの世界をこのように考えているのですよ」、というプレゼンテーションをしに行きました。その中で我々が要求したのは、とにかく何か新しい軽めのOSを作りませんか、作れませんか、というアプローチでした。当時はWindows CEのことは何も知らなかったし、もちろん商品もありませんでした。こういう思いをぶつけに行ったわけです。「クラリオンとは何ものだ」とかいろいろいわれましたが、当時、私とアメリカの同僚は分からないなりにも将来的にはこうあるべきだという結構おおきな構想作りをしていました。今考えるとあまり現実とは違わなかったような気がします。

佐久間本部長、望月課長、松倉会長

松倉 これだけで1冊の本ができてしまいますね。
佐久間
 有名な話で昔ビル・ゲイツ氏がIBMに売り込みに行ったとき、「よらば大樹の陰」ではないですけれど“強いのにくっ付くに越したことはないぞ”ということだったらしいです。アメリカ人によるとば、そういうものを「Riding the Bear」という云い方をするらしいのです。“大きな熊に乗ればなんとかなるぞ”と。私どもはこういう気持で行ったのです。もちろん熊は非常に力強いですけども、そうかといってなかなか難しい点があります。向きを変えたり、こっちに来ると思ったらあっちにいってしまったり、乗っかっているのを振り落とそうとしたり、歩いていたのが、突然走り始めたりします。結構苦労しましたよ。ビル・ゲイツ氏もそういう思いで行って苦労したのですが、まあ成功だった。我々もこういう思いで行くかと、漠然と、このように考えた、というわけです。
 最終的には、95年の4月に“それではお互い真剣に考えてみましょう”というアグリーメントが成立しました。

松倉 その時からAutoPCという名前なのですか。
佐久間
 いやいや、全然全然。その当時はCEという名前もなかった頃ですから。とりあえず、一緒に手を結んでやろうということになりました。どういうふうな格好でOSというものを仕上げていくかといろいろ議論がありました。Windows 95をかなり軽めにするとか、あまり立ち上げに時間がかかったら目的地に着いてしまいますよね(笑い)。彼等はいろいろ内部で協議したのですね。Windows 95からダウンサイジングしていくか、私どもは知らなかったのですが、Windows CEという構想があったのでしょうね。Windows CEをベースにしようということが決まったのはそれから数ヶ月後のことです。なにしろこういう発端がありました。

松倉 ますますAutoPCの開発物語裏話ですね。
佐久間
 ちなみにこれは余談ですが、一番最初のミーティングでロサンゼルスのガーデナー市のアメリカクラリオン本社にマイクロソフト社に来てもらった時ですが、我々が想像したのは初回の話ですから、マーケティングプランの連中が2人、3人くらい来るんだろうと軽く考えて待っていたのです。そうすると、大勢来ましてね、技術者も入れてズラーッと並んでちょっとびびったのですけど。とにかく、いう方は云えますから、ドキュメントを説明しまして、今度向こうからの質問になりました。私などは何をいっているのかさっぱり分からない。当時のアメリカの同僚(今は社長をしているジム・ミナリックですが)に、「ジムよ、今日の会議のMinutes(議事録)とってくれ、俺はコンピュータの詳しいことは分からん」といったら、彼は「負かしとけ!」と云ってたのです。約1時間半位のミーティングが終わってから、彼に「俺はマイクロソフトが何をいっているのだかさっぱり分からんかった、ちゃんとMinutesとってくれたのだろうな」といって見たら出席者の名前しか書いていなかった。「俺だって出席者の名前くらい分かるぞ、名刺持っているから」と云ったら、ジムも「俺も何を云っているのかさっぱり分からなかった」と。

松倉 コンピュータ用語でいわれると分からないですよね。
佐久間
 とくにエンジニアがいっていることが全く分からなかった。まあこういう状況でした。
 次に、ヨーロッパ関係の考え方をお話しましょう。ヨーロッパでは1号機ですけどクラリオンから見れば2号機ということになりますが。ヨーロッパではどのような商品展開を考えているかということですが、スライドを見ていただきます。

松倉 画面が大きいですね。
佐久間
 それは重要なところです。ヨーロッパ向けにどういう風な商品展開にするか考えたときに、アメリカとは違うという考え方です。アプリケーション関係もヨーロッパ特有のものを揃えないといけません。アメリカ向けとちょっと違う、画面が見た目は1DINのような格好で。立ちあがってきて画面が中に入っているというもので、日本のナビゲーションと同じような形です。それからふつうの2DINのタイプもあります。ヨーロッパあたりではこういうタイプのものを中心にしようと思っています。

 話が変わりますが、AMICというのがあります。AMIC(Automobile Multimedia Interface Consortium)は、カーメーカーが去年の10月19日のConvergenceという会議で発表されたものです。メイン幹事としてトヨタ、GM、フォード、ダイムラーベンツ、ルノー、クライスラーの6社のカーメーカー連合軍として共通なプラットフォームを持ちましょうとか、共通なアプリケーションのAPIを作りましょうとか、共通なペリファラブルなインターフェイスを作りましょうというコンソーシアムが発足しました。対マイクロソフト社作戦というのでしょうか、マイクロソフト社に滅茶苦茶に牛耳られるのはたまったものではない、けん制球もかけるという意味で、主たるカーメーカー(全世界の車の生産量の40%位を占めていると思いますが)が中心になってコンソーシアムを作ったのです。その後、このコンソーシアムに参加しませんかという勧誘を推進しています。
 AMICは何をするのかというと、共通の車用のエンターテイメント、インフォメーション、コミュニケーションのために共通のスペックを作って、例えばGM用のものがフォードに付いたりという、いろいろな付属品がクロスして使えると、基本的な考え方はこういうような考えでいっています。
 目指しているのは先ずマーケットに商品を出すタイミングを早める、早く開発するということです。皆が同じようなことを独自で全部するのではなく、手分けしてやる、しっかりしたプラットフォームを持って後からアップグレードできるようなシステムを作ろうではないかと、いうことです。カーメーカーは一つの商品を開発してマーケットに出すのに、大体3年くらいの時間がかかります。そうするとコンピュータの世界ですと3年前のを作ったのが今ごろ出てくるのという格好になりますからね。それでは競争力がかなり落ちてしまいます。また、取り付け関係をもっと簡単にしたいと、いろいろな付属品がずらずらと出てきても、どの機械でも使えるようにということを目的にしています。マイクロソフトと同じような考え方です。
 アプリケーションプログラムのAPIのところを共通のものを作りたいとか、ハードウェアのインターフェイスの部分をスタンダート化したいとか、こういうのがメインです。

 AMICのコンセプトを図式しますと、次のようになります。

AMIC’Sコンセプト

 真中にOSがあり、上側にソフトウェアのプラットフォームが付いており、下側にハードウェアのプラットフォームが付いている、あといろいろなペリファラルがハードウェアに付いている。ソフトウェアの観点から見ると、ソフトウェアのプラットフォームの上にいろいろなアプリケーションのソフトウェアが加わってくる。ある時にはナビゲーションがあったり、音声認識があったり、インターネットのパッケージがあったりということで、こういうところのAPIの仕様を共通化させよう、できれば車の中でバスラインでつながっている部分を共通化させようと、いう考え方なのです。従ってOSは何を使おうがそんなことはいっさい関係ないことになります。

松倉 AMICはWindows CEにこだわらないわけですね。
佐久間
 これをWindows CEに置き換えた場合、AutoPCのコンセプトと同じような方向性になっています。

AutoPC コンセプト

 そうすると、Windows CEのOSの上にあるWin32 APIのアプリケーションソフトウェアにはいろいろな格好のソフトが既にあり、沢山の開発者がいます。ハードウェアのリファレンスプラットフォームもマイクロソフトが提供している共通のUSBを使ったりしており、ここのインターフェイスはマイクロソフトのWindowsベースのハードウェアにつながっている、云ってみれば、同じ考えです。なんとなくマイクロソフト社のは、使いたくないというけん制球ですね。
 ビッグ3の1年間の3社の利益合計とマイクロソフト1社の利益は同じ位であるとよく云われていますが、カーメーカーとしてはあまりいい気持ちはしないらしいです。

松倉 対抗意識があるのでしょうか。
佐久間
 ビッグ3には歴史がありますからね。
 次はマーケットのセグメンテーション等の話になります。AutoPCの展開についてクラリオンがどのように世界的に見ているかというと、ヨーロッパというのは、Driver centric feature(ドライバー中心の特色を出したもの)だと云い方をしています。これは、主たる本当のユーザーはドライバーだと、すなわちドライバーを対象にしたいろいろな仕様作り、ドライバーとのインターフェイス、我々はこういうものを中心にするつもりです。日本においても、ほとんど同様にDriver centric featureになるでしょう。
 でも、アメリカはちょっと違います。Passenger centric featureということでやっています。PL等々が非常にうるさいですから、ドライバーにはある程度の必要情報は与えますが、過度のエンターテイメントの情報は与えません。ドライバーの横に乗っている人、とりわけ後ろに乗っている人をかなり重視した商品作りをやるつもりです。後ろの席だと何でもいいわけです。映画もできるし、インターネットのホームページも検索できるし、キーボードも打てるし、ゲームもできる、なんでもOKです。こういうようなコンセプトで行こうと思っています。従って、大掛かりなシステムのものも共通なプラットフォームでやりたいと思います。こういう考え方でいけるのは、Windows CEのようなしっかりしたOSを持っている、それに対するマイクロソフト社の絶対的なサポートもあります。それにつながっているチップメーカーさん等々との強いサポートもあるだろうと、こういう考え方で行けると思っています。

USA AutoPC

 ドライバーを対象にした1DINのDriver centricの小さいディスプレイが付いており、また後部席には、もう1つ大きいディスプレイが付くわけです。ここで子供達がDVDの映画を見たり、ゲームをしたり、キーボードをつけたりできます。アメリカはこういう格好でやりたいと思っています。逆にいえば、ドライバー席に大きなディスプレイをつけて日本流でやりたくないということです。後部席の大きいディスプレイは、かなりしっかりしたプラットフォームを、相当しっかりしたチップでサポートしないといけないということです。つまりWebサイトを見たり、ゲームをしたり、TVやDVDでムービーを見たり、そしていろいろなポケットオフィスではないですが、PCを使っているのと同じ感覚でやったり、ともかくよりファミリーメンバーのファン(家族を)をかなり意識した商品作りになりますよ、というイメージです。

Europe AutoPC

 一方、ヨーロッパですが、ヨーロッパもDriver centric featureという形にしています。ヨーロッパになると、おそらくマーケットそのものもそうでしょうが、我々はやはり大きい画面を付けた使い方をしたいと思っています。画面の付け方にもいろいろありまして、大きい画面のところも映し出す、また小さい画面のところも映し出すという、いわゆるデュアルでやっています。それとか、1個付けて横にオプションでまた1個付けるとか、ドライバーを重視したような格好の物作り方をしたいと考えています。

Japan AutoPC

 日本の場合は、従来通りの2DINあたりのものがドライバーの席についているタイプが主力のものになると思います。
 このように、同じプラットフォームをベースにするのですが、地域戦略の商品作りというのが極めて鮮明に出てきます。このようにマーケットのセグメンテーションを考えています

松倉 日本でも最近はUSタイプの方が好きになる人が多いのではないですか。
佐久間
 日本では圧倒的に従来通りのものが多いです。私は松倉さんがおっしゃるようにもっと手軽に挑戦してもよいのではないかと思いますが。我々は業界筋の人間ですから楽に動かせますが、はたして一般の方がリモコンでナビゲーションなどが上手く使えるかといえば今もって疑問に思っていますが。

松倉 最近はテレビが付くようになったのですが後ろの位置では全然見えないので、こういうのがあると非常にいいなと思います。
佐久間
 日本の方はテレビを器用に運転中も見ていらっしゃるけれど、あれは大体違反です。アメリカのマーケットでは、前でテレビを見てはいけないという規制がありますから、日本と同じ様な商品をアメリカに持っていくと、テレビはぜったいかからないというハンディキャップがあります。日本の方はテレビを見ている方が多いですね。特にプロ野球が始まったりしますとそっちのけで(笑い)。
 そういうことでアメリカやヨーロッパのナビゲーション、いわゆるカーマルチメディアの攻め方は苦労しました。日本でもテレビがなかったら、ナビゲーションのユニットはこんなに普及していなかったと思います。当初は、性能もいまいちでしたし、使い勝手も非常に悪いし、かなりの方はテレビを見ても、それがアンテナの関係で画像が良くなかった。日本には金持ちがいるということですかね。

松倉 最近はナビゲーションが増えてきていますよね。
佐久間
 そうですね。それだけ機能がよくなってきていますから。
 これからご紹介するのは、今後の方向として、全ての情報がコンピュータの中に入ってこなければいけない、従って特に車の場合、外からの情報をどういうふうにして取ってくるか、ということです。ヨーロッパでは相当数のインフォメーションプロバイダーというのが存在しています。まだ、立ちあがったばかりですが。
 私が実際に欲しいナビゲーションというのは、行きたいところを調理のセンターに電話して「日本橋あたりの鰻を食べたいのだが情報をください」というと、向こうが「はい、分かりました。座標軸のデータを電話で送りましたので、後はナビゲーションのユニットの方が勝手に計算してくれます」とそれだけいってくれたら十分だと思います。一番鮮度のある情報ですから。機械の中に一旦取り込むと鮮度が落ちてしまいますから。まあだんだんそのようになっていくと思います。日本ではプロバイダーからの情報提供にちょっと抵抗があるみたいなのですが。いい情報を出していないというのもありますが。ところがヨーロッパには結構いい情報があります。

松倉 交通情報も出ているみたいですね。
佐久間
 ヨーロッパも一人前にやっているのですよ。それに比べ日本はゴチャゴチャしており、いずれどこかでプロバーダーはも淘汰されるでしょうね。

松倉 特にコンテンツですね。内容の悪いところは整理されますよね。
佐久間
 アメリカもオームスターとか、レスキューとか、結構いいコンテンツを出すプロバイダーがあります。アメリカは日本のナビゲーションの成長過程とはかなり様相の違った格好で車載用のマルチメディアコンピュータが登場すると思います。日本と同じ歩ではないと思います。

松倉 日本語版はいつ発表できるのですか。
佐久間
 実は、いつ頃発売しようとしているかマイクロソフト社も困っているのです。日本の市場においては、とりわけナビゲーションに関連するところはかなり進んでいますから。明らかに3〜4年は海外よりナビゲーションというエリアでは進んでいるでしょうから。従ってマイクロソフト社にしても当社にしても、よほど慎重にとりかからないと、たいしたことはないという悪いイメージを与えてはいけない。クラリオンも通常のナビゲーションは持っていますから、それよりは金かけて一生懸命やってWindows CEをベースにしたAutoPCの方がなんとなく使い難い、といわれると論外の話です。特に今OSの仕様を慎重に固めているところです。従ってその時期は何時かというと、やや流動的な面がありますが、来年中にはということになりましょうか。


松倉 21世紀には出てくるということでしょうか。ソフト会社からすると日本語版は後からでてきてもいいのですが、コンシューマ相手ですからアプリケーション開発のためには開発ツールが先に出ないと困るのですが。
佐久間
 MSKKも国内向けに関しては本腰を入れた対応をしておられます。

松倉 マイクロソフトさんの悪いところは製品が先に出てきて、開発ツールが後から出てくることです。逆にしてもらわないと困るのですね。内情が分かっているだけになんとも云えないのですけれど(笑い)。
佐久間
 私どもの立場もそうですけれど、勿論マイクロソフト社としてもあれだけの看板を背負ってAutoPCを日本でやるという限りにはみっともない真似はできないですから。通常のナビゲーションと比べてAutoPCというしっかりしたプラットフォームにナビゲーションという機能もありますよ、ということをお客様の目に見えるような決定的な差別化を出すことに苦労しています。まだまだ議論を重ねなくてはいけません。開発面からいきますとすごくありますよ。例えばツールが揃っていないということは当然ありますが、これは日本のデベロッパーさんがツールが揃っていないとおっしゃっているだけで、アメリカには相当数のツールがあるわけです。さきほどご紹介しましたように、我々は開発の拠点をほとんどアメリカにおいていますから、ベースはアメリカにあって、日本でローカラゼイションすることができるわけです。開発面からいうと、ものすごくメリットがあります。門戸がパーっと広がったということです。今までは埼玉を中心にして、いろいろ集めたり、とっかえひっかえして、いわゆるパッチワークです。それが一挙に大げさないい方をすれば、パーっとアメリカ、欧州まで開発の舞台が広がった、ということです。これはお客さんの目から見たらどうってことない話ですが、実際にソフトがどんどん出てくれば話は別ですけど。Windows CEといえどもそんなにアプリケーションの多彩なソフトが揃うまでには時間がかかります。とにかく出るときは、急遽本物にしないとならないということです。

松倉 自動走行などは考えられるのでしょうか。
佐久間
 AutoPCというのはしっかりしたプラットフォームを積んでいますので、余力があります。いろいろなフイーチャのアップグレードがいっぱいできると、ソフトだけではアップグレードはできないですし、ハードの方はチップの方がついてこなければなりませんから、CPUなり、ERAMなり、EPROMなりということです。でもこれは、ベースはPC用のものですから、それにかなり耐震性、耐熱性を加味したようなちょっとカスタムなチップを使っていますので、いつでもハード的にはアップグレードしやすい、これは大きいことです。OSのグレードアップはマイクロソフト社が受け持ち、ハード的にも使っているチップはPC全体としてですので、価格も需要が大きいので急速に下っていきます。なんとしても日本に出す場合には、そんな意味のきちんと差別化された、魅力ある商品に是非とも仕上げなければならないと一生懸命やっている最中です。


松倉 日本では他にAutoPCの開発をやって会社さんはあるのでしょうか。
佐久間
 我々はあまりどこの他社さんが出てくるかということを気にしているのではなくて、ともかく沢山売れて欲しいですね。それだけです。私の考えとしては、当社が今までやってきたことがもし参考になるのなら、いつでも提供します。自分たちでもの作りしたら大変ですから、しばらくの間作ってくれないかというようなことでもほとんどのことには応じる積りです。要するにWindows CEベースのマーケットが大きくならなければいけないと、その段階でうちが先にやったからしばらく実行しておくぞという気持はさらさらありません。日本だけでなくアメリカにおいてもそうですけれど。こういうボード類を売ってくれないかといった、できる限りのアライアンス作りには協力するということでやっています。
 AutoPCはこれから考えなくてももうあるのです。我々は強力なパートナーを持っています。あまりデシジョンに時間をかけないで決めることが必要でず。スピードがないと話になりません。具体的にAutopc.comというサイトを見ていただければ詳細が分かります。また、クラリオンのアメリカの販売会社のClarionmultimedia.comにも詳細があります。microsoft.com.windowsce.autopcでも見られます。それにしても、AutoPCは商品として、非常に面白いものだと思います。

松倉 特にUSAのものは面白いですね。AutoPCの後ろには何が入っているのですか。
佐久間
 CDのメカニズムが入っています。

<はずしてみる>
 このように外れるというのは盗難防止なのです。

松倉 盗難防止用なのですか。さすがアメリカで考えることですね。
佐久間
 日本ではこんなモデルは売っていないですね。日本では全部蓋をしますから。

松倉 それがそのまま、携帯電話になったり、自分の情報がそのまま歩いて見えるのかができるかなと思いました(笑い)。
佐久間
 それは、先々になりますですね。

松倉 会員のソフト会社さんが御社と一緒にAutoPCのソフト開発をしたいといわれた場合の窓口はどちらにしたらよろしいでしょうか。
佐久間
 大歓迎です。窓口は望月(mochimochi@msn.com)にお願いします。ところで日本におけるWindows CEの普及状況はどうですか。外から見ていますとかったるいなと感じますが。

松倉 熱狂的に人は集まるのですが。いざ開発になると、先ほどいいましたが伝がなくてアメリカのツールを持ってこなくてはいけないということで、アメリカのツールを持ってくるということは皆さんのパソコンをUS版にしなければならないということになってしまいます。皆さん非常に興味はあるのですが、まだHandheldというところに行っているようです。
佐久間
 Windows CEファミリーとしての商品はまだこれからでしょうか。

松倉 それでは長いことありがとうございました。

<参考資料>













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