Windows よもやまばなし

富士ソフトABC株式会社
技術調査室 嶋 範行 ( mgicho@fsi.co.jp )


−非パソコン時代−

 先日、Microsoft社よりUniversal Plug and Playが発表された。UPnPはSun Microsystemsから発表されているJiniの対抗技術と目される技術であるが、 実際に聞いたわけではないが、国内説明会でのプレゼンターから「UPnPにはパソコンは必須ではない...」などという説明がされたらしい。まさかMicrosoftの人間から「パソコンがなくてもいい」なんて言葉がでてくるとは...UPnPについての実装、仕様書などはまだ一般には公開されておらず次世代の技術ではあるが、何分未来の事と思っていたことが現実になっている時代であり、UPnPもいずれ世の中に出てくると思う。Windowsというテーマからは離れてしまうが、今回はパソコンがいらない時代という未来像・技術について話してみようと思う。
 私たちが仕事をする上でパソコンは必需品である。しかしながら、このパソコンは本来の仕事以外の部分にあまりにも手がかかりすぎではないだろうか。OS、ソフトウェアのインストールや設定などといった管理作業は、決して「本来やるべき仕事」ではなく、古き時代にはシステム管理者なる人が管理作業を一手に引き受けてくれていたが、今の時代ではコンピュータの管理作業までがユーザーの仕事となっている。ときには、本来の仕事をしているよりもパソコンの管理作業を行っている時間のほうが長いという、本末転倒の状態になっていることもある。では、UPnPやJiniの技術はどのような世界をつくりあげるのだろうか。

−UPnP技術−

 UPnPの特徴をあげると以下となる。
(1)PC-centricではない
(2)インターネット標準に基づく
(3)プロトコル・レベルでの標準である
(4)相互運用性がある
(5)スケーラブルである
(6)オープン・プロセス
(7)幅広い産業界の支持

 この中(1)についてが、UPnPのネットワークでは、パソコンは必ずしも必要ではないという。UPnPは,ビデオデッキ、テレビ、デジタルカメラなどの家電機器、電話機、パソコンなどを連携して使えるようにするための仕様である。同様の規格としては、ソニー、松下電器産業など日欧家電メーカー8社が策定した「HAVi」があるが、UPnPとHAViとの違いは、HAViがIEEE 1394というインターフェイス規格を前提にしているのに対し、UPnPはインターフェイス規格は問わないこと。IPを採用することで,IEEE 1394やイーサネットのほか、電話線を使ったネットワーク規格である「Home PNA」や無線の「Home RF」などにも対応できるという。UPnPの狙いはWindowsの家庭対応機能の強化である。この技術が具体化すればWindowsで制御できる家電製品が自然と増えるというわけだ。UPnPはパソコンなしでも使え、またパソコンがあれば、家庭ネットワークの機能をさらに高めることができることになる。

−Jiniによる未来像−

 Jiniとは、ネットワークに接続した様々な機器やアプリケーションを相互に接続し分散コンピューティングを実現する基盤技術である。Jiniのポイントは、ハードウエアもソフトウェアも区別せず、共にオブジェクトとして扱う点と互いの情報を持たない「初対面」のオブジェクト同士が通信できる枠組みを提供することである。その狙いは、ネットワーク・OS・デバイス・ドライバなどをユーザーに意識させない分散オブジェクト環境を構築し、より使いやすい環境をユーザーやプログラマに対して提供することにある。
 従来のコンピュータ環境においてユーザーやプログラマは「ファイル」「ネットワーク」や「デバイス」などを区別し、その特性に応じた設定/利用が必要であった。Jiniが目指すものは、すべてを統一的な「オブジェクト」として扱うコンピュータ利用環境である。すべてを「オブジェクト」とし一元的に扱う。これにより、今までのユーザー負荷をなくし、容易にネットワーク上に散在するソフトを連携させ分散アプリケーションを構築することができる。Jiniがもたらす恩恵の一つに、先に述べた「インストール設定という面倒な作業を行わずに、すぐに本来の仕事ができるように変える」ということがあげられる。よく使われる例としては、電話のサービスを使いたいときには、電話機を用意してモジュラ・プラグに接続すればすぐに使うことが出来る。Jiniによって、コンピュータやその周辺機器にもこのように使えるようになるという。

−今後のネットワーク・インフラ−

 ちょうど、この原稿を書いているころ、NTTドコモより新サービス「iモード」が開始された。iモードと呼ぶネットワーク・サービスの端末として携帯電話の画面上でコンサート・チケットや航空券の予約、書籍購入、株式売買などが可能となり、今までパソコンから利用するしかなかったEC(電子取引)やオンライン・バンキングもiモード・サービスにより誰でも手軽に利用できることになる。今日、携帯電話も一人一台は当たり前の時代であり、パソコンを利用しない人でも手軽に利用できる巨大なネットワークできあがる。
 「がんばれ湯川専務!」のコマーシャルで話題となったセガ・エンタープライズの新ゲーム機「ドリームキャスト」も一種のインターネット接続サービスである。
 今までのテレビ向けネットワーク・サービスとしてはWebTVやNCTVといったサービスがあったが、ドリームキャストは意外な方面からでてきたサービスであり、今年中には100万人の利用者が見こまれているという。

 これまでも「非パソコン」を旗印にしたサービスや端末が現れては消えていった。これら、ドリームキャストやiモードは今までとは違い、パソコンを使わない本格的なネットワーク・インフラになるだろう。また、これらに続く第2、第3の非パソコン・メディアの登場のあるであろうし、今後、街角や家庭で誰もが手軽に利用できる新たなネットワーク登場が、ネット・ビジネスを変えていくだろう。



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