日 時:平成11年2月10日(水)13時30分〜16時30分 会 場:マイクロソフト新宿オフイスセミナールーム(新宿小田急サザンタワー17F) 参加者:27名 テーマ:DirectX6 事例紹介 構 成: 第1部 「次世代DirectXグラフイックス Fahrenheit」(13.30-14.20) マイクロソフト株式会社 インターネット事業部 マルチメディア・テクノロジー・グループ担当課長 川西 裕幸 様 第2部 「DirectX Media概要」 (14.30-15.35) マイクロソフト株式会社 インターネット事業部 マルチメディア・テクノロジー・グループ マルチメディア・エバンジェリスト 本島 昌幸 様 第3部 「ネットワークゲーム開発テクノロジー」 (15.55-16.20) 株式会社ドワンゴ 技術担当取締役 森 栄樹 様 今回は『DirectX6 事例紹介』ということで、マイクロソフト株式会社、 株式会社ドワンゴの2社からお話していただきました。また、ご参加の皆さんにはマイクロソフトよりMicrosoft DirectX 6.1 SDKがお配りされました。 第1部では川西講師から、次世代DirectXグラフイックスである「Fahrenheit」について、そのコンセプト、アーキテクチャーおよび使い方についてお話いただきました。 Fahrenheit(コードネーム)は1997年12月にシリコングラフィックス社と共同開発のアナウンスがされたプロジェクトであり、広範囲で拡張可能なグラフイックスの開発を行うもので、1999年末にはFahrenheitの成果第1段としてDirectXにそのコンポーネントのFahrenheit Scene Graph(FSG)が実装される予定である。FSGはDirect3D、OpenGL、Fahrenheit Low Levelの上位の3D APIであって、WindowsやSGI社のIRIX、HP社のHP/UX上でも動作するマルチプラットフォームなAPIとなっている。このAPIのターゲットはゲームのようなコンシューマ アプリケーションだけではなく、CADやビジュアリゼーションのようなプロフェッショナル アプリケーションも含まれている。特にFSGのエクステンションであるFahrenheit Large ModelはCADなどの数GBのアッセンブリデータを標準的なPCプラットフォーム上でリフレッシュレート10Hzで表示できることをターゲットにしている。 お話は、@FSGのコンセプト、AFSGのアーキテクチャー、BFSGの使い方、について行われました。 @では、その機能(フレキシブルで高機能なフレームワークを提供し、より簡単、より高速なグラフィックスを作成する)、ゴール(ハイパフォーマンス、軽量、高い拡張性、最大限にハードウエアアクセレラーション、フレキシブル、他のライブラリーやアプリケーションとのインターオペラビリティ)、ターゲットアプリケーション分野(CAD/CAE、サイエンスビジュアリゼーション、ビジュアルシミュレーション、インタラクティブゲーム、バーチャルリアリティ、バーチャルセット、建築ウオークスルー、景観シミュレーション、バーチャル手術)、メリット(抽象性、拡張性、マルチプロセッシング)、および用途例(モデラー、PCゲーム、リアルタイムビジュアルシミュレーション、ハードウエアベンダー)についてお話されました。 Aでは、FSGシステムコンフィグレーション(コンフィグレーションテンプレートを選択、コンポーネントを選択)、デザインコンセプト(融合可能な独立性、構成可能、モジュール化、拡張性)、コンポーネント、およびエクステンション(エクステンションタイプ、Extension Development Kit、ゲームエクステンション、ラージモデルエクステンション)についてお話されました。 Bでは、HP社のDirectModelの機能、SGI社のOpenGL Optimizerの機能についての説明がありました。その中でラージモデルエクステンションの1つの機能としての“閉じ込めカーリング”(内部にあるデータの間引き)には、単純化、ポリゴン削除、セマンティックカーリングがあり、間引く前後の図が示され、特にポリゴン削除で表示品質を落とさないようにポリゴン数を減らして77Kを5K表示にした例には出席の皆さんは大変興味を持って見ていられました。 FSGは既にデザインレビューを開始し、ベータテストは今年の第二4半期、出荷は本年末であって、参加希望者は連絡して欲しいとのことです。また、サポートするOSはWindows 98、Windows 2000であって、Windows NT4.0はサポートされないとのことです。 第2部では本島講師から、@DirectX Mediaの概要、ADirectShow、BDirectAnimationについてのお話がありました。 DirectX Mediaはすでに安定した基盤技術となっているDirectX (Foundation)を利用し、各種メディア再生技術やInternet上のマルチメディアサービスを提供しているもので、最近注目が高まっているDVDやインターネットストリーミングの基礎となっているDirectShowの技術を中心に実際の利用方法などについてお話されました。 @ では、DirectX Mediaの特徴(各種メディアを統合的に利用できる、DirectX Foundationの能力を活用できる、IE4.0やWindows Media PlayerやWindows 98/2000などによる広範な配布形式(再配布も可能)、実行環境、構成要素(DirectShow,DirectAnimation,DirectX Transform,DirectPlay,Direct3D retain mode)について概略のお話がありました。DirectShowは、ビデオやオーディオ再生のための総合的なサービスを行う。DirectAnimationは、2次元、3次元グラフイックスの統合的な表示サービスを行う。DirectX Transformは、COMベースの汎用的なプラグインモデルで、お配りしたDirectX 6.1 SDKの中に55種類のフイルターが入っている、とのことです。DirectPlayは、接続形態を問わない通信サービスAPIを提供し、通信ゲーム向けである。Direct3D retain modeは、利用しやすい3次元サービスAPIを提供するもので、DirectAnimationでの3次元表示の基礎であって、3Dを最初にやるときには取っ付きやすいAPIである、とのことです。 A では、DirectShowのフイルターグラフ構造、Windows Media Player、キャプチャ機能、DVDのサポート、ストリーミング、キャプショニングについてのかなり詳細なお話がありました。DirectShowは、フイルターグラフ構造によりさまざまなファイル形式のサポートを可能とし、2通りのプログラム方法(Windows Media Player ActiveXコントロールを埋め込みスクリプト言語などからコントロールする方法と、Visual C/C++を使ってCOMのインターフェイスからDirectShowを呼び出す方法)がある。Windows Media Playerはメディア再生のための総合ソリューションであり、ActiveMovieとNetShowクライアントの統合(Universal Player)、インターネット上のほとんどのファイル形式をサポートし、利用しやすくブランディング可能なユーザーインターフェイス、コンテンツ制作に必要な高いプログラマビリティ、広範囲な配布形式(Windows95/98/2000に対応、Windows98 SR,Office2000,Windows2000にプレインストール、再配布ライセンスの取得)を持つ。DirectShow上のDVDは、98年6月のWindows98からDVDサポートがOSに標準搭載され、98年9月からはDXM6.0 SDK,MPEG-2 splitterの提供、DDraw Exclusive Modeのサポートが行われている。今後のDVDサポートとしては、Webとの接続を前提としたDVDコンテンツおよび実行環境、Windows Media Playerにおける完全なDVD-Videoのコントロール、MPEG-2 motion compensation APIのサポートなどが行われる予定である。、ストリーミングは、APIベースのプログラミング(DirectShow Streams API)により可能となり、さまざまなWindows Mediaテクノロジー(コンテンツの作成、コンテンツ配信、コンテンツ再生)を実現する。 B では、メディアの統合化、さまざまな利用手段、DirectX Transform、HTML+TIMEにつてお話がありました。メディアの統合化としてはさまざまなタイプのメディア(文字、数値、色、2D、3D、サウンド、ムービー)をサポートする。また、ビヘイビアという概念により、データとその変化をカプセル化、各種プロパティが時間制御可能、インタラクティブ性を実現、利用手段によらないパフォーマンスの実現する。利用手段は、アプリケーションおよびHTMLから利用ができる。DirectX Transformの利用により、サードパーティがDirectAnimationに独自の特殊効果を持たせることを可能にし、ビヘイビアを出力するのでDirectAnimationのプログラミングからはシームレスに利用可能である。また、HTML+TIMEは、HTMLの表示を時間軸で制御するもので、タグはXML形式、現在標準化作業中(http://www.w3.org/TR/NOTE-HTMLplusTIME)。 リソースとして、DirectX 6.1 SDKは、http://www.microsoft.com/directx/およびhttp://www.microsoft.com/japan/directxに、Windows Media Playerについては、http://www.microsoft.com/windows/mediaPlayerを参照、またSDK入手やライセンス等の問合せは、DirectXJ@microsoft.comとのことです。 第3部では森講師から、@ネットワークゲームとは?、Aネットワークゲームシステムのカテゴリ、B通信用ライブラリ、Cシステムパッケージ、D実装案についてお話いただきました。 ネットワークゲームは昨今注目を集めているが、求められるパフォーマンスやコストそして開発期間は一般的なシステム開発と大きく異なる。今回は、実際のネットワークゲームシステムの開発についての実例を取り上げ、現状の問題点、そしてその最適なソリューションについてお話がありました。 @ では、インターネット接続または、専用回線接続を行いゲーム内容に関連するデータ交換するゲームをいい、1対1のリアルタイム格闘対戦、複数人数のリアルタイムレース・スポーツ、長期にわたるシミュレーションゲーム、ターン性のボードゲーム、大規模人数参加型RPG、シングルプレイの点数ランキング、シングルプレイの収集データ交換などの機能を持つ。Aカテゴリとしては、ピア・トゥ・ピア、クライアント/サーバーとフレーム同期、フレーム非同期がある。 ピア・トゥ・ピアモデルは、小人数のゲームに対応(8台位までのクライアント)し、クライアント/サーバーモデルはクライアントを増やすことにより大人数のゲームに対応できる。フレーム同期タイプは、通信相手間で同期を取る、入力と画面の同期は困難、通信部分の汎用化可能などの機能がある。また、フレーム非同期タイプは、通信相手間でデータの同期は取らない、入力と画面の同期を取ることができる、予測表示や過去表示できる、人間の感覚が満足する範囲で調整できる、通信部分の汎用化が難しいなどの機能がある。これらのことから、ネットワークゲームの開発に際しピア・トゥ・ピア/フレームでの開発は簡単、クライアント/サーバー/フレーム非同期での開発は簡単、ピア・トゥ・ピア/フレーム非同期での開発は難しい、クライアント/サーバー/フレーム非同期での開発はかなり難しい、といえる。BWindowsにおけるネットワークゲーム用の通信ライブラリには、Microsoft DirectPlay,Microsoft WinInt,Microsoft Winsock,NetEngineがあり、それぞれの機能と適したゲームの説明がありました。NetEngineはロイヤリティフリーで提供されている、とのことです。Cのネットワークゲーム用システムパッケージには、DWANGO(専用回線向け汎用DirectPlayロビーサーバー)、IWANGO(インターネット向け汎用DirectPlayロビーサーバー)、GigaArena(ターン性ネットワークゲーム用汎用サーバー)があり、各々について利点、システム構成について説明がありました。Dでは、1対1のリアルタイム格闘対戦、複数人数のリアルタイムレース・スポーツ、長期にわたるシミュレーションゲーム、ターン性のボードゲーム、大規模人数参加型RPG、シングルプレイの点数ランキング、シングルプレイの収集データ交換について実装案が示されました。 第3部については特に仕事とは関係無いが、ゲームファンとして興味を持って聴かれていた方が多かったようです。 ここで、セミナー受講の感想をご紹介いたします。 第1部では、「出荷時期が遠すぎる。すぐにでも利用可能な(それを用いて商売のできる)ツールを我々は求めている」、「3DグラフイックスAPIとして利用を考えている(OpenGLにたよっていたため)ので、実用的なレベルになるのを早期に期待したい、「具体的なデモが見たかった」、「医療関係等細かいところが重要である分野では、データを如何に削除するかという方向性では対応しきれないのではないか」、「映像サンプルをもっと見せて欲しかった」です。 第2部では、「イントラネットでWeb情報発信している立場なので非常に有用であった」、「よりプログラミング無(実際はスクリプトやVBは必要だが…)で利用できるとは面白い」、「デモがとても参考になった」、「ビヘイビアという考えが面白い」、「エンターテイメントとして非常に面白い内容だと思うが、もう少し聞きたかった」、「DirectXのさまざまな種類に関する説明が分かりやすかった。実際に使用してみたい」です。 第3部では、「ネットワークゲームの基本的な考え方が理解できた」、「貴重な話であった。ゲームのノウハウを業務(CAD等)に使える気がする」、「ネットワークゲームの今後の展望などにふれて欲しかった」、「1ゲームファンとして大変面白かった」です。 セミナー全体としては、「バランスが悪い。第2部で内容が盛り沢山すぎて時間が足りなかったが、第3部は内容が専門的過ぎる」、「全体的にはもう少し詳しい説明が聞きたかった」、「1回のセミナーで3部構成は多いと思う。また、テーマを統一して欲しい」、「第2部の話をもう少しゆっくり聞きたかった」です。 今後希望する関連セミナーとしては、「Fahrenheitに関する更に詳細なセミナー」、またご意見としましては、「製品紹介のセミナーはメーカーやベンダーが直接主催しているものが沢山あるので、Windowsコンソーシアムに期待するのは実際の企業の導入事例や運用事例などの生の声が聴けるセミナーである」です。 Windowsコンソーシアムに対する要望、意見としては、「講演でも用いられた資料のオリジナルまたは、HTML化したものをHPまたはダウンロードできるように公開してもらいたい」、「今回初めて参加したが非常にシンプルなセミナーで少し時間を取れば参加できるところがありがたい」、「今後も有用かつ最新の情報を交換できる場所を提供して欲しい」です。 なお、セミナー資料は、Windowsコンソーシアムホームページ(http://www.wincons.or.jp/)の資料館に掲載されていますので、ご参照ください。 |