Windows よもやまばなし

富士ソフトABC株式会社
技術調査室 恒成英一
mgicho@fsi.co.jp



●ディスプレイが欲しい

 個人で使用している環境で数台のCRTがある。そのうち、メインで使用しているCRTではWindows NTと他OSで使用している。BNC入力をWindows NT、DSUB入力を他のOSとして使い分けている。
 このCRTは数年前、まだWindows 3.1の時代に購入したもので、決して安いものではなかった。しかし、ディスプレイ、キーボード、マウスといった機器は人の体に直結するものであるため、出来る限り体に合うものを使いたいと考えている。マシンのパフォーマンスに比べてると軽視されがちであるが、私はこの3つを別の領域で重要視すべきと考えており、現在使っているCRTも所持金をはたいて買ったのだ。

 先日、以前から欲しかった21インチクラスのディスプレイの展示品を見てまわった。結局、予算の関係により見送ってしまったが、原因は予算だけではない。
 ディスプレイに要求されるものは、シャープさと発色である。前者はもちろん、リフレッシュレートなども関係してくるが、結果的にこの2点で妥協できる範囲を要求する。
 シャープさは、出来る限り解像度を上げて画面を広く使いたい場合は絶対条件と言って良いだろう。これは、カタログスペックからある程度割り出すことができるし、現物を見て確認はできる。もちろん、ロットや製品そのものの個体差があるので店頭で確認したものが全てとは言えない。しかし、極端な差は出にくいため、ある程度は許容範囲であろう。また、あまり解像度を上げない方には影響を受けにくい部分かもしれない。
 問題は発色である。こちらは、発色補正によって満足な発色を得ることができる。しかし、元の発色が正しいかどうかによって、その手間が大きく変わる。発色に関しては気づかない方も多いだろう。しかし、注意して比べると本当の色を出しているディスプレイは少ないことに気づくはずである。発色は補正できるものであるが、元の発色が悪いと補正も難しくなる。この補正は「加法混色」によって行われるが、「加法混色」と「減法混色」を把握していないと色再現は難しい。そして「色温度」も関係してくる。


●色を混ぜてみる

 光と色の3原色において何と何を混ぜれば何色になるか覚えていらっしゃる方には眠い話になるが、この加法混色と減法混色を思い出してみよう。
 テレビやディスプレイなどは、R(赤)、G(緑)、B(青)の光の3原色と呼ばれる3色の組み合わせで様々な色を表現する。どの色も光っていない状態の黒を起点に、3色すべてが光っている状態の白まで色を加えることで表現するため、これを加法混色と呼ぶ。
 一方、プリンタで印刷されたものは、当たった光のうち1部の色を減色し、残りの色を反射することで色を表現する。このような方法を減法混色と呼ぶ。このとき、基本色となる色はRGBではなく、混ぜると黒(光をまったく反射しない色)になるC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3色で様々な色を表現する。これは、色の3原色であり、光の3原色とは別のものである。
 加法混色と減法混色によって色再現を行うということと、それぞれ白や黒になることは有名である。この加法混色と減法混色は別物でありながら密接な関係がある。これは「補色」と呼ばれる。
 理屈抜きで書いていくと以下の並びで覚えておけば通用するようになる。

      B(青)      Y(イエロー)
      G(緑)      M(マゼンタ)
      R(赤)      C(シアン)

 この並びがどのような意味があるかを簡単に解説すると、色を混ぜた時に何色になるかが判るようになる。たとえば、青と緑を混ぜるとシアンであり、青と赤を混ぜるとマゼンタである。そして、イエローが必要であれば緑と赤を混ぜるのである。この混色は、円板に色紙を張り付けて高速回転を行い、擬似的な加法混色をしたマクスウェルの円板を出した方がご存知の方が多いだろう。マクスウェルは、円板を二重同心円にして外円と内円の混合色を比較しやすいようにした。円板を固定して、鏡に写し、鏡の方を回転させるように改良されるなど、その後も多くの心理学実験室で使われていらしいものだ。
 しかし、マクスウェルの円板を思い浮かべても、何色と何色を混ぜると何色になるかはとっさには出づらい。ところが、上の並びから補色の関係が簡単に割り出せる。
 まずは、以下をじっくり見ていただきたい。それぞれの色はBGRYMCと省略して書いている。

・Cが欲しい場合
B + G = C
-------------
B
G
          C

・Mが欲しい場合
B + R = M
-------------
B
          M
R

・Yが欲しい場合
G + R = Y
-------------
          Y
G
R

 ある規則性に気づかれただろうか? 必要な色は、向かいの色を除いた2色を混ぜることにより得ることができる。
 たとえば、Cが必要な時、BとGを混ぜる。まず最初に示したBGRYMCの並びを思い出して欲しい。この並びにおいて欲しい色はCであるが、このC以外はYとMである。このYとMの向かいにある色がCを得るために必要な色である。

B <-------- Y
G <-------- M
R        C

 Mが必要になる場合も同じ要領である。M以外のYとCの向かいにある色がMを作る色である。

B <-------- Y
G        M
R <-------- C

 このように光の3原色から成る加法混色と色の3原色から成る減法混色の補色は互いに作用する。写真で加法混色の原理を説明する。まず、カメラのレンズにBGRの3つのフィルタを順次かけ被写体を撮影する。撮影した3枚のコマには、RGBの色光の強弱が濃淡として写る。次に、それぞれのネガを黒白フィルムに焼き付けて、3種類の色分解ポジを作成する。これらの色分解ポジにそれぞれの色フィルタをつけて白色光でスクリーン上に投影し、重ね合わせる。するとRGBの3原色が加算されて、もとのような色が再現される。これは、光の3原色による加法混色によるものである。
 プリントされたカラー写真とパソコンのプリンタや書籍印刷の原理は減法混色である。その方法は、BGRのフィルタをかけて撮影するところまでは同じであるが、減法混色ではネガをそのまま版として用いる。すなわち、加法混色の3原色BGRに対して、それらの補色に対応するYMCを3原色として用いて発色させる。加法混色と減法混色は互いに補色の関係にあるため、YMCを得るだけでなくBGRを得ることもできる。

 Bが必要になる場合、上の並びと同じ要領で、B以外のGとRの向かいにある色がBを作る色である。ここでは、MとCとなる。

B        Y
G --------> M
R --------> C

 同様にRが必要になる場合、Rの向かいにあるC以外のYとMがRを作る色である。

B --------> Y
G --------> M
R        C

 この規則性とBGRYMCの並びさえ覚えておけば何色を混ぜれば何色になるかが間違ずに導き出すことができる。もちろん、以下のように全ての組み合わせを記憶しても良いが、こういった規則性による覚え方もある。

加法混色 減法混色
R + G = Y M + C = B
B + R = M C + Y = G
G + B = C Y + M = R

 もう一つとりあげなければならないものがある。それは、今どの色を帯びているかを識別することだ。これは、測定機を使うこともできるが、誰でも持っているわけではない。そこで頼りにするものが自分の目である。信号の赤が白になっているといったものは簡単に識別することができる。しかし、この赤にどのくらいシアンを帯びているかといったものは訓練しなければ識別することは難しい。
 パソコンのディスプレイではわずかな訓練だけで識別することができる。特にWindows標準の配色で使用している場合、注目すべき個所は多い。
 それは「白」を表示している部分を凝視し「どのくらい白に近いか」を判別するのだ。これがパソコンではなく、たとえば写真であれば白が少ない場合もあり難しい時がある。このときでも、たとえば金属が光って飛んでしまっている部分を白として補正の訓練を行う。パソコンでは、簡単に白を表示することができるため、訓練するにも識別するにも比較的容易に行えるだろう。よくカラーチャートを表示させることがあるが、カラーチャートで補正するにはある程度の訓練が必要なると思う。まずは白を白くすることから始めることを薦める。
 周囲にあるもので今まで白と思っていたものを比較すると同じ白でも様々であることに気づく。いろいろな色が混ざった白があることに気づくだろう。厳密には色温度をはじめとするいくつかの要素も関係してくるが、話がややこしくなるためここでは割愛する。


●Windowsに要求されるもの

 すこし話が逸れるが、色の話の延長線上には、各種グラフィックスが関係してくる。私自身、怪しい画像には全く興味無いが、Macintoshで組版や、組版に伴う画像処理を行っていた頃があった。この世界において、今のWindowsおよびIBM-PC/AT互換機がどんなに優秀であっても、MacOSや漢字Talkの13インチモードに匹敵するものは少ない。13インチモードが万能ではないし、時にはやっかいな代物であるが「ものづくり」を行ううえで重宝する時もある。
 色の再現性に満足がいけば、あとは現物そのものの再現性が必要になってくるかもしれない。もっとも、必要とする人はWindowsを使わなければ良いだけのことではあるが。

 Macintoshを引き合いに出したついでに、MacOSからWindowsに移植されるアプリケーションの話をしよう。
 日ごろから思っていることなのだが、MacOSからWindowsに移植されるアプリケーションは、とても使いにくい。このように感じるアプリケーションに共通することは「Windows上でMacOSのHMIを真似している」という点だ。おかげで、MacOSではとても使いやすいアプリケーションのWindows版を動かすなり非常に使いにくいアプリケーションとなってしまう。WindowsにはWindowsなりの実装があるし、MacOSにはMacOSなりの実装がある。開発コストの問題もあるだろうが、猿真似したところで良いアプリケーションとは思えないし、そのようなアプリケーションは二度と購入しようと思わない。
 このように感じるのは私だけだろうか。そのせいか、使うアプリケーションによってOSを使い分けるということを行っている。Webアプリケーションが流行っているが、Windows NTとIISにはWindowsなりの実装があり、UNIXとApacheはUNIXなりの実装がある。無理に互いの真似を行う必要はない。それぞれの局面において有効なものを使い分け、それぞれのメリットを引き出すことが重要だろう。


●ディスプレイが無い

 さて、ディスプレイの話に戻す。
 多くのディスプレイを見るには大手量販店などになるが、実際に見てみるとシャープさと発色共に満足なものは少ない。目を引くものがあった場合でも、私にはとても購入できない金額のものである。
 冒頭に書いたように、できる限り解像度を上げて使用したいため、私にとってシャープさは必須となる。「解像度を上げると字が小さくなる」という意見も時々聞くが、Windowsにおいてはナンセンスであるのは言うまでもない。さらに言うと、フォントを変更できない部分も多く存在するが、解像度を上げる事とフォントの変更ができない部分で文字の大きさを同列に論じるものではない。解像度が低くてもディスプレイサイズを小さくすれば文字の大きさは小さくなる。逆に解像度を高くした場合であってもディスプレイのサイズを大きくすれば文字の大きさは大きくなる。両者は同列に扱うべきものではない。
 そして問題は発色である。手の届きそうな金額のディスプレイの多くはお世辞にも綺麗な発色とは言えない。もちろん、ディスプレイ本体以外にビデオカードやドライバ、そしてビデオカードとディスプレイを接続しているケーブルといった要素も含めて評価しなければならない。
 しかし、白が白ではなく、赤が赤ではない。ある程度補正しながら確認していくが、ディスプレイによっては締まらない発色であったり、濁った色であったりするのだ。展示環境によってはカプラやミキサを噛ませている場合もあるので、そのディスプレイの持っている色とは異なっている場合も少なくないだろうが、そういったことを含めて考えても、もしかしたら数年前の高級ディスプレイの方が勝っているかもしれない。

 最近、液晶のディスプレイがもてはやされている。場所も少なくて済み、模様替え等で移動させるときにも非常に楽なものだ。価格も非常に安くなってきた。しかし、大型のテレビをが売れる一方で省スペースのディスプレイが売れているという点に矛盾を感じる。さらに、移動が楽と言っても、年中移動している家庭は少ないだろう。
 そして、実際の製品をに見てみると満足できる液晶ディスプレイは、とても手が届かない金額だ。解像度が低くなる点は妥協するとしても、発色やシャープさを確認していると一日何時間も見つづけたいとは思わない。1時間程度なら我慢できるかもしれないが、それ以上見つづけるにはとても耐えられないだろう。

 店頭やショールームで比較しながら見ていくが、店員や係員にこのことを訴えたところで何も解決しない。彼らは、そこにある商品をいかにして売るかであって、いかにして良い発色のディスプレイを見つけるかというものではないだあろう。店員や係員に訴えたところで、それは自己満足の世界にすぎない。または、自分の優位性をアピールするだけと言うことができるかもしれない。もちろん、その筋のプロであれば満足のいくものを出してらうということもあるだろうが、残念ながら私はその筋のプロではない。

 過去に、熟練した職人がディスプレイの調整を行っていた時期があったらしいが、その頃のディスプレイは今でも通用する。実際、個人の環境で使っている最も古いディスプレイは7年前のものだ。20インチのトリニトロン管を使ったワークステーション用で非常に重くて大きい。省スペースのディスプレイや高性能なパソコンも良いが、人の体と接する部分が軽視されがちではないかと感じている。これは、「慣れ」や「好み」とは一歩離れて考える必要がある。そして「ブランド」は全く関係ないものとして考えなければならない。もちろん、「こだわり」を含めるのは論外だろう。
 Windows 3.0が一世風靡した頃、「私はマウスを使うのが苦手だから」という意見を耳にした方も多いだろう。マウスに不慣れということもあっただろうが、マウスの使い方自体に問題があるといったこともあった。これはマウスの使い方だけでなく、マウス本体を交換して解決することも少なくなかった。
 キーボードも似た要素を持っている。より楽にパンチするためには、やはり体に合ったキーボートが必要になる。マウスやディスプレイほども幅は狭くないだろうが、体に合ったキーボードは思考を阻害しにくくなる。「慣れ」という要素もある程度はあるが、どこまでが慣れでカバーできる範囲かを考えるべきだ。
 円相場が1ドル200円前後だったころ、海外の雑誌広告で左利き用のキーボードとマウスの広告を見たことがある。当時から何でもアリな市場ではあったが、慣れを要求する前にこういう製品を探してみるといったことも必要だろう。Windows NTやWindows 98には、マウスの設定で左利きを考慮したと思われる設定箇所がある。また弱視の方を考慮したと思われる設定個所もある。しかし、これは私の感覚では「布団を丸めてソファーにする」ようなものである。日本固有の実装ではないし、Windowsそのものだけの話ではないためローカライズを非難するつものは全くない。また、実際にこれらの設定の恩恵を受けている人も居る。しかし、周辺の要素も併せて使っていかないと飾りに近い設定になるのではないだろうか。

●左利きとWindowsのHMI

 左利きで思い出したが、私はビデオカメラが苦手である。利き手や利き足は右だが、利き目だけが左なのだ。スチルカメラに関しては何とかなるのだが、ビデオカメラだけは右で見ないと難しい作りになっている。ただ、利き目に関しては訓練で右にすることができるらしいが、訓練を怠っているために今でも利き目は左のままだ。腕時計を見るときは、無意識に右目の方に腕を移動するのだが、利き目は左であるため、秒針の位置によっては1秒ずれて見えてしまう。
 利き目が左の方でも、気づかずに日常生活を送っている方もいらっしゃるだろう。左利きで慣れてしまうと不自由することは少ない。

 訓練や慣れも無視できない要素であるが、それ以上に快適な環境を目指すことは重要だと思う。1日のうちで短時間しかパソコンに触れないようであれば、空間の利用を重視すべきだろう。しかし、長時間触れるようであればディスプレイなども重視していきたい。




<事務局より>
◎山本淳氏による「今月のトピックス」は、しばらく休載させていただきます。
◎ 奥津和真氏による「やさしく解説するマイクロソフトの最新技術」は、今月分を休載さぜていただきます。来月号にご期待ください。



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