田中 亘のWindow's1999

田中 亘


― Windowsこれからの一年 ―

 正月草々にホテルのケーブルTVを見ていたら、CNNでY2Kこと2000年問題に関する30分の特集番組が放映されていた。その内容は、単に2000年でコンピュータの時計が100年間戻る、というだけではなく、それを取り巻くさまざまな危機管理に関する対策が紹介されていた。その中で印象的だったのは、オランダのKLMが、2000年1月1日には、運行を取りやめるという報道だった。そうしたシビアな問題を取り上げる一方で、西海岸の一般的な家庭を取り上げて、Y2Kによって、録画予約が使えなくなる旧式なビデオデッキに頭を抱えるご主人を映してみたり、アナログ式の時計は大丈夫だ、などの対応表を真面目に紹介するあたりに、米国の徹底した情報公開ぶりを感じたりもした。
 いずれにしても、Y2Kに関しては、何が起きるかわからないだけに、その対応に関しては、最大限の危機管理をしよう、というのが米国を中心としたコンピュータ先進国のあり方のようだ。
 もちろん日本でも、金融関係やハイテク産業を中心に、Y2K対応は着々と進められている。先ごろ、今年の三月までに、政府が危機管理のマニュアルを作成するというニュースが流れ、国内でも2000年対応は、もはや解決のための修正だけではなく、問題が発生したときの対策こそが重要、という流れに変わってきたようだ。確かに、Windowsや対応するアプリケーションは、4桁の西暦に対応していても、X.400規格のように、旧式な設計のメールシステムでは、年号を二桁で取り扱っているままなのだから、根本的な解決は難しい。プログラムではなく、規格のレベルで2000年対応をしていないものに関しては、結局は100年単位で問題を繰り越すことしかできない。1999年は、そんな2000年問題に関して、昨年以上にマスコミでも取り上げられる機会が増えるのではないだろうか。

 一方、同じ2000は2000でも、Windowsを取り巻く2000といえば、Office 2000とWindows 2000が待っている。この二つのうちのOffice 2000は、日本のビジネス環境に対する大きな波紋を投げかける存在になるのではないか、と感じている。すでに、パソコン雑誌やマイクロソフトのホームページなどを通して、Office 2000の概要に触れている業界関係者であれば、今回のバージョンアップが、どれだけ企業の中におけるコラボレーションに重点を置いているかを理解しているはずだ。組織に従事する人たちが、パソコンを使って文書や表にスライドやデータベースなどの情報を互いにやり取りする、その行為や目的において、いままで以上にその速度や効率を上げるために、Office 2000はバージョンアップする。反対に、ネットワークやWebサーバーなどのBackOffice環境がなければ、Office 2000は、その真価を発揮することができない。
 どちらかといえば、日本におけるビジネス用途のアプリケーションは、ワープロ専用機の代わりとして普及してきただけに、パソコンが真のビジネスツールとして、インターネットやイントラネットの活用を促進できるかどうかが、日本の組織に問われていることになる。
 それは、なにもOffice 2000に限ったことではなく、国内で販売されているWindows用のビジネス向けアプリケーションすべてに問われているのかもしれない。とても当たり前のことだが、使う人の役に立たなければ、顧客は対価を払ってはくれない。つまりは、パソコンやソフトウェアに対して、お金を「投資」するのが企業であり、「消費」するのが消費者だ。投資する側は、必ずリターンを求めている。いままでは、それがある程度の約束事に守られていて、ワープロソフトを使えばいいとか、表計算があればいい、という認識だけで、パソコンのビジネス用途がまかなわれていたのではないだろうか。
 しかし、もはやそうした甘えは、許されない時代がきている。パソコンがビジネスに普及していく中で、すでに使いこなしている人の多くは、ある部分においてソフトウェアを設計ないし開発した専門家を超えている。そんなプロフェッショナルな企業系ユーザーに受け入れられる機能を提供していかなければ、ビジネス用途のアプリケーションソフトという製品の価値は、維持し続けられない。

 ところで、いまをさかのぼること7年ほど前。当時のExcel 4に、ソルバーという機能が搭載されたとき、その製品レビューを通して、先進的なビジネス環境で求められる機能と、自分を取り巻く現実的な利用方法とのギャップを感じたことがある。同じような印象が、今回のOffice 2000にもある。
 海外で開発され移植されるアプリケーションの多くには、ソルバーやピボットテーブルのように、いままで自分には馴染みのなかった新機能が、数多く搭載されてくる。もちろん、そうした新機能の多くは、ビジネスの現場からの需要を分析し研究した結果だ。その背景には、そうした機能を求め使いこなしている第一線のビジネスマンの姿がある。
 日本の優れたビジネスマンも、最新のアプリケーションに搭載されている機能を使いこなして、世界を舞台に活躍しているとは思うが、ソフトウェアをレビューする立場から見ていると、どうしても最新の機能の多くは、米国から渡ってきているような気がしてならない。
 1999年はどちらかといえば、2000年問題に追いまくられそうな気もするが、日本のビジネスマンをもっと活気づかせるアプリケーションの誕生に、大きな期待も抱いている。


Office 2000をセットアップすると、自動的にマイコンピュータに追加されるWebフォルダ。
これが、コラボレーションの鍵を握る存在だ。


今回のOffice 2000の中でも、一番機能が強化されたのが、PowerPoint 2000。3ペインの画面表示が標準になって、大画面での使い勝手がよくなった。


Excel 2000。一見すると、なんの変わりもないようだが、使ってみると、微妙にいろんな機能が改善されている。


ちなみに、これがWord 2000の画面例。もちろん、ベータ版なので、最終的なイメージは変わるかもしれない。



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