最新Windowsソフトウェア事情(第46回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄
mtaka@fsinet.or.jp


旬のソフトあれこれ

 今年もCOMDEX(あわせてコンソーシアム総会)の季節となった。本格的な雪の便りが聞こえてくるとともに11月も足早に通り過ぎ、師走そして新年の足音が近づいてくる。今年はどんな年だったのか、正月に立てた予定のどれほどが実現できたのか、やはり計画は絵に描いたもちだったのか!といった反省しきりで新年を迎える。これがこの10数年、変わることのない年中行事である。
 ところでソフトウエアの世界にも年中行事がある。それは季節物のソフト発売であろう。米国なら納税申告用のソフトが店頭にうずたかく積まれるようになるし、日本では11月に入ると各社から年賀状作成用ソフトの新版が発売され、雑誌のソフト紹介コーナーも年賀状ソフトの評価記事であふれるようになる。最近は年賀状関連ソフトの競争も激しくなり、年末に向けての新版の発売時期も早まってきているようである。私の手元にもすでに「筆まめVer.9(クレオ社)」、「筆ぐるめVer6(富士ソフトABC社)」そして「筆美人Ver6(メガソフト社)」が届いており、どれを使ってみたらよいか、迷っているところである。
 「筆ぐるめ」は最近購入した東芝のノートブックパソコン(Dynabook Satelite)にもバンドルしてあった。その後、新バージョンをコンソーシアム事務局より届けていただいた。パソコンといえば、この2ヶ月前に購入したDynabookもあっという間に新機種が発売され、数日前、大学の同僚とパソコン購入にビックカメラに出かけてみたら、同じ機種の新機種が、まったく同じ値段で一回り、ディスプレイが大きくなっていた。こうして何かパソコン関連機器を購入するたびに、もっとあとで買えばよかったと反省させられるのである。
 自宅の部屋にはパソコン本体および関連装置が整理不可能な形でストックされている。このありさまを見ると、「年末に今年を振り返るときの反省」だけでなく、年中、反省ばかりの「半生」を送っているのかもしれない。11月11日、映画評論家の淀川長治さんが亡くなられた。4歳から89歳まで映画一筋の人生であったそうである(映画を伴侶として、生涯独身をつらぬかれた)。私にとってもこの89歳までの人生が約束されるなら、残りの半生を「反省しないで」楽しむ方法をそろそろ考える必要があると思われる。
 さて、三つの年賀状ソフトの画面例だけでも載せておこう。図 1(筆まめ)、図 2(筆美人)そして図 3(筆ぐるめ)である。それぞれ見た目は少しずつ異なるし、また実際に使ってみると操作の微妙な点で使い勝手が違うようである。いずれも住所録のリストとそれらが葉書の表面でどのように配置、印刷されるかが示されている。もちろん、裏面に入力する年賀の挨拶とかイラストなども豊富に用意されており、それらから適当なものを選ぶことができる。

図1


図2


図3

 新しいソフトの魅力も捨て難いが、すでにどれかのソフトを利用している人にとっては、新しいソフトに乗り換えようとするためには、それまでに蓄積してきた住所録データを新しいソフトで利用できるようにしなければならない。現在のソフトで作った住所録がそのまま新しいソフトで利用できればよいが、多くの場合、CSVなどのファイル形式で保存し、それを新しいソフトで読む込むという方式がとられている。われわれにとってはとくに障害とはならないこうしたファイルの互換性も、一般ユーザーにとっては「CSV形式」と聞いただけで、「新しいソフトは面倒だ。多少は不満があってもこれまでのソフトでいい」となってしまうことも多い。こうした状況を考えると、当たり前のことであるが、ソフトメーカーにとって、自社のソフトがユーザーが使う「はじめての」年賀状ソフトになってもらうことがきわめて重要である。バンドルソフトに採用してもらったり、体験版を雑誌に収録してもらったり、さまざまな戦略がとられている。みなさんの会社ではどのような戦略を考えているのだろうか。
 年賀状ソフト一つ一つの具体的な内容については手元のパソコン雑誌を見てもらうことにして、今回はもう一つ、新年になると書店店頭に積み上げられる家計簿(ここではもちろん家計簿ソフト)を取り上げることにしたい。それは「わが家のなんでも情報4」(メガソフト)である。メガソフト社とともにこのソフトの開発にあたっている(株)夢工房は神戸市にある女性だけの社員によって運営されているソフト会社である。社長の田中裕子さんはおじさんが筑波大学教授をされていたこともあって私も何度か会ったことがある。神戸の大地震で大きな被害にあわれたが、こうして新しいソフトのパッケージに会社名を見るたびにがんばってやっているなと、安心している次第である。本誌の会長インタビューにはまだ女性社長は登場していないので、可能であれば近い将来ぜひインタビューの候補にしてもらいたいと思う。
 さっそく「わが家のなんでも情報」を見てみることにしよう。図 4はデスクトップ画面上段に表示されたソフトのツールボタン群である。

図4

 また、同時にミニカレンダーも表示された。今日は11月13日、コンソーシアムの総会が予定されている。この原稿はなんとかあと2時間で完了して総会の場へもっていかなければならない。家計簿ソフトの機能は上段の「家計簿」ボタンをクリックすることで起動できる。はじめて使用するときは、個人名(年齢も入れる。あとで家計簿以外のさまざまな機能、たとえば健康管理などの機能を利用するときに年齢が重要となる)や銀行口座番号あるいはクレジット関連情報などを入力、設定する。
 家計簿の画面は図 5のようにデザインされている。

図5

 左側に現金出納帳、口座出納帳、予算集計表などのタブが用意されており、それぞれ特定の機能が含まれている。図では現金出納帳を選択したところであるが、中央には通常の家計簿同様、日付、摘要欄、収入、支出などの欄が設けられている。通常の家計簿であればこれらの欄にいちいちボールペンなどで記入したり、電卓たたいてちょっとした計算を行っていかなければならない。毎日のこととなると面倒になってしまい、新年の真新しい家計簿も2ページ以後はいつまでたっても真っ白のままということにもなりかねない。それに対してパソコンであれば家計簿記入にあたってさまざまな入力支援が組み込まれていることは当然である。家計簿ソフト選択にあたって、家計簿の基本機能がどうであるかは当然であるが、さらにこの入力のしやすさなども選択の大きなポイントとなる。
 図では摘要欄をクリックすると右下のような摘要ボックスが表示される。収入と支出にわけて、明細がアウトライン方式で階層型に整理されている。図では教養娯楽費を選択し、その中の雑誌を入力しようとしている。雑誌をクリックするとそれが摘要欄に入力される。このあたりは家計簿記入の主役である家庭の主婦が直接ソフトのデザインにあたったのであるから、きめ細かな工夫があちこちにみられる。
 「わが家のなんでも情報」の大きな特徴は環境問題を意識していることである。その一つは家計簿の「環境家計簿」タブにみられる。そこには図 6のように、生ごみ、家庭ごみについて、処分したり捨てた量を記録することにしており、それらのデータはあとで「エコチェック」とよばれる機能の中で分析される。行政まかせにせず、主婦がみずから環境問題を意識し、そして環境を守るための活動を実践することが求められる時代になってきたといえよう。

図6

 「わが家のなんでも情報」は家計簿を基本にしながら、家庭で必要となるさまざまな情報を記録、維持そして利用するための豊富な機能が揃った統合ソフトでもある。それらは画面上段のツールバーにリストされている。

図7

 たとえば図 7は上段のツールボタンから「整理箱」を選択したところである。ここには書籍、音楽、映像(ビデオソフトなど)、パソコンソフト、衣類、小物にわけてコレクションの管理ができるようになっている。図は「購入ソフト」タブをクリックしてソフトの登録、管理を行っているところである。見てわかるように、いわゆるカード型データベースとなっており、ソフト名をはじめ、必要なデータが入力でき、また、カードをめくって表示できる。テキストや数値だけでなく、右下に見えるように、画像も直接あるいはファイルから取込むこともできる。さらに、カードの追加、削除、一覧表示、印刷なども上段のボタン一つで操作できる。

図8

 図 8は「日課」である。いわゆるスケジュール管理機能だが、画面右側のシールにもわかるように、つらい予定も画面上では楽しくスケジュールできるようになっている。図では13日にパーティ用のシールを貼ってコンソーシアム総会の日程を入れた。また、15日はCOMDEX視察が予定されている。スケジュールの入力はカレンダー上で日をダブルクリックすることで予定入力のウィンドウが表示され、そこに詳細な予定内容を入力できる。また、この日課には左側のタブにリストされているように、日記やエコチェック、健康管理、バイオリズムそしてなんと、「おみくじ」まである。

図9

 「おみくじ」と聞いてはほっておけない性分なのでさっそく今日の運勢を引いてもらうと、図 9のように、「小吉」と出た。また、「カップルは相手の裏切りに注意」とある。これはどのように解釈したらよいのだろうか。願うことなら「もう一度」ボタンを押してよりよい運勢を引いてみたいが、「凶」を引かないという保証はない。せめてバイオリズムによって今日の精神状態を調べておこう。その結果は図 10のように、13日近辺は感情と知性が落ち込んでおり、とくに知性はどうしようもないどん底になっているようである。いずれにしても今日の総会は「要注意」である。

図10

 私は「付き合いが悪い」ということで評判を落としている。なにしろ酒はほとんど飲めない、カラオケだめ、そして最近はゴルフも限界を悟ってしまった。いまはただ、毎週のように小淵沢の我が家へ車を飛ばすのが習慣となった。小淵沢でのお昼どきは小淵沢カントリークラブそばの駐車場に車をとめ、「ナイスパー!」とプレイに興ずるゴルファーの歓声を耳にしながら、ゴルフ場の側を通る棒道(かの武田信玄が整備した)をただ一人1時間近くたどって、山を降りる。話のついでに棒道の写真も図 11に載せておこう。

図11

 そして「料理工房」というレストランで京都からきた板前さんが料理する昼食を楽しく味わい、再度、山道を登って駐車場に戻るという「昼食3時間コース」を歩く日々となった。しかし、「わが家のなんでも情報」には上段左端に「おつきあい」ボタンもある。関係ないボタンではあるが、参考のためにクリックしてみると図 12のような画面が表示された。ここでは仲間の住所録やいただき物、おくり物を管理する機能である。図では例として上司に「ワインセット」を送ったデータを入力してみた。おくり物も写真を入れて管理しておけば何かと役立つかもしれない。

図12

 ツールボタンの中で「記録」はゴルフやレジャーあるいは成績(会社の営業成績も)などさまざまな記録を管理するための機能である。「金庫番」は現金、カード、株券、保険、健康保険証、年金そして物品の管理である。また、「料理」は毎食の食事メニューを考えたり、買い物のリストを検討したり、あるいは栄養管理などのために役立つ機能である。小淵沢では一人で過ごすことも多く、ついレトルト食品中心の朝食や夕食になりがちである(雨の降った日の昼食も)。そうしたときはこの「料理」ボタンをクリックすればよい。それによって図 13のように料理のメニューを選択したり、栄養のバランスをチェックしたり、あるいは料理の調理方法などを参照できる。収録されているメニューはかなりの数にのぼっており、専門の先生の推奨メニューも含まれている。もちろん、「我が家のメニュー」を追加することも可能である。

図13

 「夢物語」ボタンはなんとなく魅力的である。さっそくクリックして「私の夢物語」を見ようとすると図 14のような画面が表示された。タブにあるようにここではライフプランとマネープランを管理するようになっている。図では現在55歳の私が今後、どのような出来事が予想されるのか、それをみずから入力していかなければならない。やむをえず、56歳の欄に右側のシールから退職シールをドラッグして貼りつけてみた。実際の退職年齢はもっとあとのはずであるが、いずれにしても、うそでもよいからもっと「ばら色」のライフをプランしたいものである。

図14

 年末といえば「第九」を忘れては困るという声も聞こえてきそうである。たしかに、「ベートーベン第九」は11月中旬のいまでもコンサートのポスターが見られるようになった。もちろん、「第九」のパソコンソフトをお見せしよう。

図15


図16

 図 15は画面中央に「Symphony No.9」と表示されているから、間違いなく「第九交響曲」である。さっそく下段の「video」ボタンをクリックしてみると図 16のように画面右側に解説のテキストそして左側にビデオ動画が再生されてきた。しかし、テキストをよく読むとなんと、「Antonin Dvorak」とあるではないか。しまったこれは「ドボルザークの第九つまり新世界」であった。そういえばこのLaserlight社の音楽ソフトは数年前のCOMDEXで一枚5ドルの値段につられて5枚ほど購入したその中の一枚であった。5ドルといえば600円程度、格安ソフトといえ、解説のビデオや図 17のようにスコアも含まれ、スコアを眺めながら実際のシンフォニーの演奏をCD音質で楽しむことができる。COMDEXでは30数枚の展示が行われていたが、この値段ならもっと買ってくればよかったと反省したことを思い出す。今年のCOMDEXにも出展しているようであればぜひ、追加購入してきたいものである。

図17

 いよいよ本物の登場である。私にとって、この種の音楽CD-ROMは懐かしい。かつては毎年のように視察していたMacWorldではじめて目にしたマルチメディアソフトがこの「ベートーベン第九」であった。ハイパーカードで作られ、音楽CDをマッキントッシュから操作するソフトであった。会社はマッキントッシュ用マルチメディアソフトの老舗、Voyager社であった。同社の日本側パートナー(そして荻野社長)はエクスパンドブックで有名である。この「ベートーベン第九」はUCLA(カリフォルニア大学ロスアンゼルス校)の教授が制作されたという話を聞いたことを思い出す。

図18

 マルチメディア音楽シリーズはマイクロソフト社の手でWindows版に移植された。「ベートーベン第九」をはじめ10枚近くのソフトが発売されたはずである。私の手元にもストラビンスキーの「火の鳥」など数枚ある。図 18はこの「Multimedia Beethoven: The Ninth Symphony」のメインメニューである。ToolBookで動作するようになっており、通常のWindowsソフトのイメージはない。メニューボタンから「The Art of Listening」を選択すると図 19のように、第九を構成する小節がリストされ、聞きたい小節を楽譜を表示しながらCD音質で楽しむことができる。また、楽器が好きな場合は図のように下段のメニューを引き出し、最上段の「Musical Architecture」をクリックすると楽器の解説が表示され、第九の中でそれぞれの楽器の演奏をがもっともよく聞けるパートを選択して再生できる。このソフト(マック版)はずいぶん長く楽しんだ思い出がある。

図19

 このようにして、今回は年末の恒例となったいくつかのソフトについて自分自身の最近の生活パターンと関連づけながら紹介してみた。みなさんは年末、年始をどのように過ごされているのだろうか。ぜひ、聞いてみたいのもである。

(麗澤大学 国際経済学部 教授 http://www.fsinet.or.jp/~kaikoma/

Windowsコンソーシアム第10回総会懇親会場にて


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