日 時:平成10年10月8日(木) 13時30分〜17時00分 会 場:マイクロソフト株式会社新宿オフイス17Fセミナールーム1(新宿南口 小田急サザンタワー) 参加人員:63名 テーマ:XMLとDynamicHTML 構 成: 第1部 :『XMLとMicrosoftの戦略』 マイクロソフト株式会社 ソリューションデベロッパー事業部 デベロッパー製品部テクニカルエバンジェリストグループ課長 寺田 雄治 様 第2部 :『進化するDynamic HTML 〜Internet Explorer 5.0に向かって〜』 マイクロソフト株式会社 ソリューションデベロッパー事業部 デベロッパー製品部テクニカルエバンジェリスト 奥津 和真 様 今回は、新しく移ったばかりのマイクロソフト新宿オフイス17Fセミナールームにて開催されました。新しいセミナールームは、マルチスクリーン、後方席の左右には大型モニターテレビの設置があり充実した設備と、ゆったりした座席に受講者は大変満足しておりました。またレストルームからは、新宿駅南口から高島屋、紀伊国屋が眼下に見え、その向うには新宿御苑の緑とまた良い眺めでした。 第1部では、寺田講師より将来のWebベースアプリケーション開発において重要となるであろうXML(eXtensible Markup Language)技術の現状と、マイクロソフトが今どのような対応を考えているかについてのお話がありました。 お話いただいた内容は、@何故XMLが必要か、AXMLとは何か、BXMLの想定される使われ方、CXMLの現在の仕様、Dビジネスソリューションへの展開、Eマイクロソフトの戦略、FCall to Action、について行われました。なお、XMLのスペックはマイクロソフトが独自に定めるのではなくW3Cの勧告によるスタンダードなものであり、参照サイトはhttp://www.microsoft.com/japan/sitebuilder/xml/です。 @ では、イントラネットシステムを構築する段階になってHTMLの規格の限界が見えてきたという点が一番大きなポイントである。HTMLはあくまでドキュメントをビジュアル的に見せていくものであって、そもそもデータを扱うようには向いていない。表現力は豊かで見た目には良いがフォントの指定や表示の仕方を主に考えているものである。HTMLベースでシステムを構築して行くときに、さらにはJava、ActiveXが普及してプログラムのクライアントへの配信が進んだとき、そこで扱うデータ構造やアプリケーションが混ぜん一体となった環境になった。つまり、オブジェクトという概念がコンポーネントの世界で非常に普及してしまったために、配信されたプログラムとそれが扱うデータの処理が非常にやりづらいものとなった。それによって、HTMLという文章の中に全てスクリプトからオブジェクトの呼び出しやプロパティの設定を含んでいるような非常に巨大で、複雑で、メンテナンスが難しいシステムができあがったのである。イントラネットシステムが普及したときに、ビジネス to ビジネス、つまり、システムとシステムをつなげるニーズが非常に高まったときに(これが一番要求されるのが電子商取引である)、HTMLベースでやるのは非常に心もとない、ということになった。そこでもっと効率的にできないかというニーズが高まり、それらを解決するためにXMLの手法が利用できるのではないかというのが、現在の流れである。 A では、XMLは任意のタグの拡張が可能なMarkup Languageであり、テキストにデータの属性を付加する。テキストベースのメリットはクロスプラットフォーム、低トラフイック、検索が容易なことである。 Bでは、複数のデータベースによる連携、共通ファイルフォーマットの制定、Webクライアント上での業務処理、サーバー配信情報の選択(CDF:Channel Definition Format、OSD:Open Software Description)があるが、これ意外にも新しい使われ方が出てくるかもしれない、とのことです。 Cでは、文法、表示方法、使用するキャラクターセット、DTD(Document Type Definition)、XML Schemas(XML-DATA)、現在の状況についてソース例を示した説明がありました。また、IE4.0によるサポートがあり、ツールとしてXML Parser、XML Data Source Object(DSO)がある。XMLの表示にはDynamic HTML を使用しており、サンプルデモは、http://www.microsoft.com/xmlにある。 Dビジネスソリューションへの展開としては、業種・業務ごとの要件、タグの共通化(データベース項目のマッピング、共通項目のマッピング、保険・医療情報・戸籍情報、CAD/CAMなど)、アプリケーション・データの共通化(文書管理、ナレッジマネジメント)等が考えられる。Eマイクロソフトの戦略として、アプリケーションデータのXML化をフェーズ1としてOffice2000に対して、各種インダストリースタンダードへの適用、インダストリー協議会の発足等が考えられるが、どこまでいつ実現するかは不明である。Fでは、XMLのスペックはまだまだ進歩するので、日々情報をゲットしていただき、アイデアを文書化して提出する余地が十分あり、新規ビジネスのチャンスがある。標準を作るのはこれからなので、XML準拠でのWeb機能拡張、提案をしていただければ、皆さんのアイデアが業界標準に成り得るかもしれない、と結ばれました。 第2部では、奥津講師よりDynamic HTMLを使用したWebアプリケーションの構築方法と、Internet Explorer(IE)5.0を見据えた今後の展望について、多くのデモも交えながら2時間余にわたっての解説がありました。 お話いただいたのは、@HTMLからDynamic HTML、ACascading Style Sheet(CSS) 、BDocument Object Model(DOM)、CDynamic HTML、DDHTML Scriptlets、E現在のWebアプリケーションの問題点、FInternet Explorer5.0、G更なるプラットフォームの拡張へ、とポイント、ポイントにデモを入れながらの説明は長丁場にもかかわらず、受講者は魅力的なDynamic HTMLや次期IEの世界へと引込まれていました。 @では、HTML、HTML+Control/AppletおよびDynamic HTMLについてそれぞれの利点と欠点の説明がありました。Dynamic HTMLの利点(コンテンツの動的な変更が可能、再利用が可能、スクリプト言語に依存しない、オープンスタンダードな技術の集合体)と、欠点(難易度がHTMLよりは高い、作成ツールがまだ少ない、ブラウザー間の互換性問題)の説明の後、その特長であるACSSとBDOMについて詳しい説明が行われました。CSSは、デザインを豊かにするもので、CSS1.0の登場によりフォント、背景、テキスト、枠線などのスタイルの指定が可能になり、デザインの自由の向上や文書からのデザイン定義の切り離しが可能になったが、完全な絶対位置の指定やオブジェクトを重ねた場合の順番指定ができないという欠点がある。CSSについてインラインスタイル、スタイルブロック、スタイルシート・インポートを例にとり、デモが行われました。DOMは、これがDHTMLと云われものであり、World Wide Web Consortium(W3C)によるDOM Level1.0の勧告がこの10月1日に公開された(http://www.w3.org/TR/REC-DOM-Level-1/)。IE4では、DOMと類似のDynamic HTML Object Model(多くのメソッドとプロパティによりほとんど全てのオブジェクトにアクセス可能、イベントの実装、DOMはHTMLだけでなくXMLも包括)を採用している。Cでは、Dynamic HTMLはDOMをスクリプトによって操作するもので、Dynamic Styles、Dynamic Contents、 CSS Positioning、Data Binding、Multimedia Transaction/Filterの5つに分けた説明と簡単なデモがありました。Dでは、スクリプトの再利用を簡単にしようというWebのためのコンポーネントアーキテクチャであって、開発時の生産性の向上、各種プロパティが設定/利用可能などの特長についての説明のあと、コンテナ、利用、作成についてソース表示とデモが行われました。Dynamic HTMLのまとめとしては、その利用により多くのユーザーインターフェイスがス クリプトのみで実現可能、小型化(資源の活用)と表現力の向上、Webアプリケーションだけではなく通常のアプリケーションのユーザーインターフェイスへの利用ができる、またChromeffectsへの道である。Dynamic HTMLは決して全てでなく全体の小型化のために最低限度使えばよい、とのことです。 E「現在のWebアプリケーションの問題点」としては、パフォーマンスの問題、総合的な安定性に欠ける、開発に時間がかかる場合がある(本当に使えるツールが少ない、Webアプリケーション開発のノウハウ不足、とりまく言語/規格の未成熟)、拡張の柔軟性に欠ける、ことがいえる。Webアプリケーション構築に最適なプラットフォームとして、FIE5.0により単なるブラウザーとしてではなく、安定性とパフォーマンスの向上、拡張性の向上、アプリケーションプラットフォームとしての機能向上などプラットフォームとしての拡張が可能になると、それぞれの機能について詳細説明とデモが行われました。 Dynamic HTMLの目標は、オープンスタンダードベース、簡単なページ作成法の提供、全要素/全プロパティへの自由な読み/書き、考えられる限りの全要素へのアクセスである、とのことです。 Dynamic HTMLのまとめとしては、アプリケーション開発者のための機能拡張、開発が早く・簡単に・率先できるサポートツールのサポート、オープンスタンダードのサポート(HTML4.0,CSS1、 CSS positioning、DOMLevel1)、CSS2のサポート、DHTML behaviorを利用した効率的な開発ができる、とのことです。 G「更なるプラットフォームの拡張」として、ChromeffectsテクノロジーがありWeb上で3Dのオブジェクトを扱うもので、利用法として3Dグラフイックス、ビジネスアプリケーションなどがある。そのデモではWeb上で何故こんな3Dが動くの、と驚かせるものでした。 参加の皆さんのアンケートによるご意見です。 第1部では、「XMLについては、まだこれからだということが良く分かった」、「まだ具体的な利用例が見えないので暫くは様子を見ていきたい」、「現状ではあまり内容のあるものは難しいということか」、「もう少し具体的なビジネスソリューションの例なども聞いてみたかった」、「MSのXML戦略プランは未だ明確なものがない」、「市場でのXMLの位置付けが曖昧だけに内容がぼやけてしまい残念。Office2000の話も聞きたかった」、「XMLがMSの製品でないのは分かるが、もう少しXMLの仕様の深いところ、あるいはその具体的な応用例などが欲しかった」です。 第2部では、「デモが多くイメージがつかみやすかった、大変良く理解できた」9件、「IE5.0の今後の機能強化ポイントが良く分かった」3件、「Webがもっと面白い情報発信の場になる気がした」、「話が具体的で良かった」、「Chromeffectsの将来に期待する」、「DHTMLの特徴、IE5.0の概要が理解できた」、「IEの今後の目指す方向性など良く理解できた。DHTMLについては大変参考になった」、「無意識のうちに目にしていたものと、IEとの関係が良く分かった」、「IE5.0が開発対象として使用できるようになれば、今までWebアプリケーションを作る際に苦労した部分が軽減されそうで期待できる」、「かなり長丁場だったがデモなどが良くできていた。内容も最近の情報があって良かった」、「IEがNetscapeとの競争から別エリア(一般APの世界)への侵略へと、シフトしてきていることを感じた。いずれにせよ、まず“安定性”、“信頼性”が重要だと思う」、「開発者向けというところでユーザー側のメリットが少し分かりにくかったが、今後の開発の参考になった」、「DHTMLなどで気になるのはブラウザ互換性である。最新テクノロジーが直ぐにブラウザに反映されない状態である」、「Scriptletsに興味を感じた」、「ブラウザはMSだけでいいのでしょうか?APIの公開により他のブラウザもある程度は共有できる機能を増やして欲しい」、と好評でした。 セミナー全体としては、「開発者向けの内容の解説が多く、雑誌等で得られる情報より的確で、有用でした」、「会場が大変良かった」、「DHTMLが比較的簡単に使えそうなことが分かり、大変参考になった」、「Webの関係者でないと理解しにくい」です。 多くのご意見をいただき、ありがとうございました。今回のセミナー内容は、Windowsコンソーシアムのホームページ「資料室」に掲載を予定します。 また、本誌「やさしく解説するマイクロソフトの最新技術(第7回)」に、奥津講師が『Dynamic HTML』について書かれていますので、ご参照ください。 |