Windowsコンソーシアム副会長 下川 和男 5月頃、一通のAir Mailが舞い込んだ。「Microsoft Business Application Conference」とある。Professional Developer Conference(PDC)には、毎年参加しているが、BACなんて聞いたことがない。MSKKに問い合わせたら、製品ごとの新技術を紹介するPDCに対して、BACはマイクロソフトの技術を組み合わせたソリューションについてのコンファレンスとのこと。PDCがプログラマーを対象としているのに対して、BACはSEを対象にしているらしい。今年が初回なので名称もゆれていて、途中から、BizAppsという略称に変えたようだ。確かにBACより洒落ている。 キャッチフレーズは「Building a Digital_Nervous_System」。最近、Microsoftは、この言葉を良く使っている。Nervousはデイリーコンサイス英和辞典では「神経の(ある);神経質な;落着きのない;臆病な;(文体などが)力強い」とある。さて、どの意味なのだろうか。 なお、このレポートの作成にあたり、マイクロソフト株式会社インダストリー・マーケティング部(永久 茂部長)からBizAppsに派遣されたチームのレポートや写真を多数引用させていただいた。
早速、Air Mailにある通りにURLを打ち込むと、いつものmicrosoft.comのEventsページに、申込み画面が現れた。ホテルはラスベガスのMGMグランド指定、コンファレンスの代金は$795である。 Webで登録したら、「8月に詳細な資料を送る」という確認メールの後、8月に電子メールが来てそれでおしまい。紙は何も来ない。Windowsコンソーシアムのアプリケーション・データベース「Windows Shopping」(http://cat..wincons.or.jp)もインターネットに繋がった人しか登録できないが、BizAppsでは申込みの最終確認も電子メールでと徹底している。 9月9日サンフランシスコ経由でラスベガスに入り、恐る恐るホテルのカウンターに行ったら、ちゃんと予約されており、BizAppsの登録もスムーズに行なえた。 MSKK主催のツアーもあり、日本から15人ほどが団体で来ていた。プレス登録も可能で、マスコミの人も来ていたが、日経BP、インプレスなどの日刊電子メール新聞では、一切記事として配信されなかった。PDCなら、キーノートからすぐにニュースになるのだが。
資料もシンプルである。CD-ROMとガイドブックのみ、大きなバッグや資料集も何もない。バックも紙のショッピングバッグである。参加費がPDCの半額なので、仕方ない。毎回、立派なショルダーバックをもらうより、この低価格路線は好感が持てる。 CD-ROMは二枚組みで、一枚が今回のコンファレンスのホワイトペーパーやサンプルソースなどの技術資料、もう一枚は協賛企業のプローモーション資料が入っている。 肝心のPowerPoint(PPT)資料は、6週間後にCD-ROMを送付するとのこと。最近のPDCでは、開催の当日にPPT資料がWebに載ったが、このサービスはBizAppsでもやって欲しかった。事業部単位に運営を外注しているようなので、同じサービスは難しいのであろうが。
数日前にRod Stewartがコンサートを行った、4000人以上を収容する会場にぎっしり人が入っている。と言っても最上階は閉鎖しているので、2000人ほどの入りと思われる。後で、MSKKの人に聞いたら、2400人が参加との事。 司会者がTechEdおよびPDC参加者に挙手を求めたが、どちらにも参加したことのない人が半数を占めていた。 会場の上手、下手に、IBMのサーバNetfinityが6台ずつ置かれ、上手にcontoso、下手にFabrikanと大きなロゴがある。またしてもソリューション系新製品の開発コード名称かと思ったら、この二つは架空の企業で、この二社のソリューションを事例にして、キーノートや各セッションが行われた。 キーノートは以下の通り。 ・James Utzschneider / Dir. ADCU Opening(Sep.9 8:15-8:40) 今回のBizAppsのコンテンツオーナーで、ADCU Scenario Evangelism DirectorであるJamesUによるオープニング。 ・Paul Gross / VP Dev. Tools Biz Apps(Sep.9 8:40-10:00) 本来は、このセッションはBob Mugliaが行う予定だった。DNS/WinDNAの簡単な説明BizAppsのシナリオを各トラックのオーナーを呼んでデモを交えての紹介。 ・Brian Arbogust / GM Dev. Tools Building&Solutions with VS(Sep.9 10:30-11:45) VSの新機能および開発上にどう応用するかのデモを交えての紹介。 ・David Vaskevitch / VP DNS(Sep.9 16:30-19:15) PC産業の将来性のスライド(電話/自動車/ラジオ/TV等の歴史的成長曲線の例のスライド)から始まる。DNS/WindowsDNAの各部の詳細な説明を長時間かけて(講義時間45分オーバー)おこなう。 ・Jim Gray (Sep.11 13:15-14:00) 300人の研究者を擁するMicrosoft Researchの新規研究分野に関する説明。 CG/音声合成/構文解析/Telemeeting/TerraServerなど ・Steve Ballmer (Sep.11 14:00-14:45) マイクロソフトの戦略を、Platform/R&D/Partnershipの3点から解説。DeveloperおよびPartnerに関しての支援策等を、年間30億ドルのMicrosoft R&Dを軸に、シナリオとイニシアティブの活動から解説。事例では、米国トヨタの販売店ネットワークが紹介された。
個別のセッションは、以下の5トラックに別れており、以下のオーナーが取り仕切っている。各々、延べセッション時間は15時間で、それを通して聞くことにより、各シナリオに基づきBizAppsのためにISVと共同開発した、実践的なプログラミングについて、開発の上流工程から、最終コーディング技法までを講義およびディスカッションするという、充実した構成である。 Line of Business(LOB) Dan Rogers eCommerce Angela Mills Collaboration Sangita Gulati Tracking Walter Myers Business Intelligence Roger Doherty 事前にアンケートを取ってセッション会場の大きさを調整したはずだが、Trackingは満員、eCommerceは半分くらいの入りであった。 マイクロソフト社のコンサルテーション・グループが講師を担当しており、質問が矢継ぎ早に出ていた。PDCでは、ちゃんとQ&Aの時間に、マイクに並んで順番待ちをしてしているるが、BizAppsでは、Q&Aの時間もマイクロフォンの場所も無視して「ここの日付管理はどうやっているんだ!」とか、大声で叫んで、講義を中断させてしまう。このあたり、PDCはプログラマーが中心だから、ルールを守る癖がついている。そうしないと、ソフトウェアは動かない。SEは顧客をかかえ、切った張ったの繰り返しなので、ルールなど無視である。キーノートと同じ広いアリーナを会場としたLOBでは、質問攻めで、進行がガタガタになるセミナーもあった。
SAP(http://www.sap.com)とBaan(http://www.baan.com)がいちばん目立っている。Cognos(http://www.cognos.com/datasmart)がそれに続いている。IBMは売り出し中のサーバ「Netfinity」(http://www.ibm.com/netfinity)の部隊が出ている。ハードウェア・メーカーがIBM一社なのは寂しい。 異色はFedEx(http://www.fedex.com)で、ソフトウェア会社として出展しているのである。何を展示していると思います? 「何、部長から電話!」の怪優 大地康雄のテレビコマーシャルで有名な、あのトラッキングシステムである。FedExの荷物がいつ、どこにあるのから、Webで即時にわかるという、あのシステムである。これをアプリケーションとして販売しているのである。物流では常に問題となるトラッキングを、FedExは自社のニーズでいち早く解決し、今度は、その外販に乗り出した。 また、参加者へのサービスとして、中型のFedExバックを配り、無料配送サービスを行っていた。といっても、前出の通り、資料は二枚のCD-ROMだけなので、利用している人は少なかった。 場所は、世界第二位5000室の客室を誇るラスベガスのMGMグランド。ここに三日間缶詰になって行われたBizAppsは、Steve Ballmer新社長のキーノートを最後に、成功裏に幕を閉じた。 朝8時半から夕方6時半までのセッションと三晩のパーティで、最後は参加者も疲れが目立った。 5000室の巨大ホテルの中で勉強して、食べて、飲んで、寝て、という生活で、結局、外気に触れたのは2日目のMGMアミューズメントパークでのパーティの時のみ。そこも、ホテルの敷地内である。まるで火星のコロニーで暮らしているような三日間であった。 (イースト株式会社 取締役 兼 コミュニケーション事業部長) |