ソフトウェアベンダーの立場から業界を見る

Windowsコンソーシアム副会長 大森 俊樹 (omorit@creo.co.jp)



残暑お見舞い申し上げます。
 毎日蒸し暑く頭の中はボーとしていますが、7月にリリースされた今年の目玉Windows 98が好調な立ち上がりとのことで正直ホッとしているところです(下期に向けて気合が入ります)。
 このたび、ソフトウェアベンダーの立場から業界を見ての所感、ということで、 Windows View紙面の空きを拙文で埋めさせていただきます。

 PC業界(Windows 95リリース以降はWindows業界といってもいいと思いますが)で商売をしていますと、このごろ、市場が拡大するにつれ自助努力だけでは通用しない部分が増えて仕事が難しくなっていくなと思うことがあります。
 低迷状態といわれる昨今の市況もありますが、私が担当するビジネスソフト分野(主に個人ユーザー向け量販市場)では、Windows 95発売以来、簡単で便利に使える高機能ソフトへの要求が以前にも増して強くなってきたことが一つの要因と感じています。高機能といったのはソフトベンダーの視点からは、丁度、ハイテク多機能な全自動洗濯機を要求されているようにも感じられるからです。極限すれば「予備知識がなくても、マニュアルもほとんど目を通さなくても、ちょっと説明されればすぐ使える便利なもの」です。
 これが難しいと考えるのは、アプリケーションソフトだけではなく(ソフトの役割・責任を転嫁するわけではありませんが)PC本体、各種周辺機器、OS、通信、さらには各ベンダーや販売チャネルのサービス体制等、PCの利用環境が複数のエレメントで構成され、全自動洗濯機のように自己完結的な商品状態にないことによるものです。一見ボーダレスで勝手気ままな商売ができそうなPC市場ですが、実状は自己完結的な商売は困難で、常に周辺との何らかの関わりがインフラとして必要なビジネスとも考えます。特にコンシューマ市場の拡大・定着に向けた商売では重要なことと考えます(将来、PC機能搭載の家電が主流になるようなことになれば話は別ですが)。

 さて、Windows業界ではマイクロソフト社を筆頭に、新技術、新環境が次々と市場に投入され、その対応に少なからず混乱されている方もあろうかと思います。新情報をタイムリーに捕らえ取りまとめることがビジネスチャンスに繋がるケースが増えてきましたが、これには当コンソーシアムの各委員会が企画・開催するセミナーが大いに機能していると思います。DOS時代のアプリケーション開発では製品独自機能の向上が作業のすべてでしたが、Windows市場拡大に伴い厳しい市場競争が強いられる昨今は、さらに新技術、新環境へのタイムリーな対応が必須となり、作業量の増加もあって中々しんどい仕事になっています。
 先にPC業界での仕事が難しくなってきたと申し上げましたが、PC及びPC関連製品は、他分野の既存工業製品に比べると、まだ発展途上製品で、DOS時代のマニアックな狭い市場から、抜け出ていない部分が少なからずあるような気がしています。ことコンシューマ製品に限れば過去にそうであったように今後も製品形態、ビジネス形態ともに絶えず変化(進化・分化?)していくと思います。
 私には変化の行き着く先が分からないので、仕事のスタイルやライフスタイルに社会的な影響を及ぼすくらいに便利な製品・環境に向かって行くと、いい加減に考えております(全自動洗濯機は便利です)。

(株式会社クレオ 取締役 プロダクト事業部事業部長)


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