Windowsよもやま話


Windowsとインターネット

富士ソフトABC株式会社 八王子事業所
SIグループ
   主任 小池 隆 koike@fsi.co.jp



Windows 3.1の時代から、悪戦苦闘をしながらインターネットを利用してきた。どうにかこうにか接続できて個人ホームページを開設した頃からWindows 95の登場を経て現在に至るまでの、Windowsによるインターネット利用について個人ユーザーの立場で振り返ってみる。

− Windows 3.1によるインターネット接続 −

 私が初めてダイアルアップでインターネットに接続したのは、1994年の秋のことだった。「シカゴ」というコードネームに代わって「Windows 95」という名前が少しずつ広まり始めてはいたものの、まだ発売までは1年以上待たなければならない、そんな頃の話だ。
 Windows 95と異なり、Windows 3.1にはダイアルアップによるTCP/IP接続機能は付属していなかったため、インターネットに繋げるのは非常に困難だった。
 最も簡単な方法として、市販のTCP/IPソフトウェアを購入するという選択肢があった。しかし、安い物でも定価5万円以上するため、個人ではちょっと手が出せない。
 そこで、雑誌の付録で手に入れた定番シェアウェアであるTrunpet WinSockを利用したが、これはなかなかの曲者。接続用のスクリプトを書いてやらねばならず、その記述がうまくないと接続できない。さらに接続先のプロバイダはサービス開始直後のため毎日ほぼ一日中ビジー状態。ユーザー認証用のサーバーも時々落ちていることがあり、こちら側とプロバイダ側の、どちらに問題があって繋がらないのか切り分けができない。接続に成功するまで、しばらくは眠れない夜が続いた。
 その後、雑誌の付録に付いてきた「デイトナ(NT3.5)」のトライアル版では、比較的簡単にインターネットに接続することができた。今となっては当たり前のことだが、ネットワーク機能はOSレベルで実装するべきだとこの時に実感した。

− ホームページを見る −

 現在では、Windows 95搭載のパソコンを買えば嫌でもブラウザが付いて来る。昔は「使える」ブラウザがなく、ホームページを見るのも一苦労だった。
 初めて使用したブラウザは、某大手コンピュータメーカーにより日本語化されたMosaicの試用版だった。しかし、試用版のため連続して5分間しか使えないという、あまりにもケチな制限が付いているため、全く使い物にならない。
 仕方なく、英語版の元祖NCSA Mosaicを使うことにした。mosaic.iniファイルを書き換えることで、日本語もシフトJISなら表示できるようになったが、行端での折り返しがうまく行かない。また、漢字コード変換のためにdelegateを通すとレスポンスも良くない。結局、日本語ホームページを見ることは諦めてしまった。もっとも、当時はまだ日本語ページは少なく、興味を引くようなページも少なかった。
 やがてNetscapeが登場したが、これも初期のものは日本語に対応していなかった。そのため、フリーウェアの日本語化パッチである「Mosaic Patch'n(モザイクパッチン)」と「I-BAR」を併用した。インターネットの個人ユーザーでこの2つのソフトを知っている人は、かなり年季が入っている方だろう。
 現在では、ブラウザが漢字コードの自動判別までしてくれるが、当時から考えれば夢のような話だ。しかもタダで手に入るとは、なんて恵まれているのだろうかと思う。

− ホームページを作る −

 1995年の初めに、私は個人でホームページを作りインターネットで公開した。まだ日本語対応のブラウザが手元になかった頃のことだ。そのため公開当初のページは全て英語で書き、後日、翻訳して日本語ページを作成した。
 その頃、最も苦労したのは、ホームページのコンテンツ作成にWindows 3.1を使用していたために長いファイル名を使えなかったということ。
 今では.htmで終わるURLが珍しくなくなったが、当時はHTMLファイルの拡張子はhtmlというのが常識だった。しかし、Windows 3.1では拡張子は3文字までしか使えない。そこで仕方なく拡張子htmで作成した。そのためページを更新する時には、HTMLファイルをWebサーバーにFTP転送した後で、拡張子をhtmlに変えるという作業をしなければならない。うっかりそれを忘れてしまうと、リンクが壊れてしまったり新しいページに変わらずに古いページが見えてしまったりと、何かと不都合なことが多かった。
 また、ファイルの拡張子は勝手に変えられないため、実質的にはたった8文字で一意なファイル名にしなければならない。1つのディレクトリにたくさんのファイルがある場合は大変だ。妙な略語にしたり、単語の先頭8文字で無理やりブッタ切ったりして、作った本人ですら、名前からファイルの内容を想像できないものがあった。
 当時のブラウザの多くは、GIFファイルはインライン表示できるものの、JPEGファイルの表示には外部ビューア(ヘルパーアプリ)を必要とした。そのため、本当はフルカラーのJPEGファイルを使いたくても、泣く泣く256色のGIFファイルにする場合もあった。
 現在では、JPEGファイルを表示できないブラウザなんて考えられないため、アニメーションGIF以外はすべてJPEGファイルにした。小さな改良だが、ホームページ作成者にとっては嬉しい進歩だ。

− Windows 95によるインターネット接続 −

 Windows 95が発売されると、すぐに購入してダイアルアップ接続を設定した。この作業はWindows 3.1の時とは比べようのない程簡単だった。それまでは敷居の高かったインターネットを、初心者でも簡単に利用できるものにしたWindows 95の功績は非常に大きいと思う。
 私のホームページを見てくださった未知の方からのメールが最も多く届いたのは、Windows 95発売後の1年間、つまり1996年。この頃に頂いたメールにはインターネットへの熱い思いが書かれているものが多い。嬉しいような恥ずかしいような...古き良き時代。
 Windows 95では長いファイル名を使うことがでる。そこで、ホームページの作り直しをした。ファイル名を、内容の分かり易い長い名前に変え、HTMLファイルからのリンクを書き換えた。大変なのはリンクの確認。インライン画像は読込みに失敗していれば一目瞭然だが、ページからページ、ページから画像へのリンクは実際にマウスでクリックして見なければ分からない。ファイルの書き換えとリンクの確認とで半日を費やした。

− Microsoftのインターネットツール −

 現在、私が使用しているMicrosoftのインターネット関連ツールは、Internet Explorer、Outlook Express、そしてMicrosoft Site Server。
 HTMLファイルの作成には、古くからのWebmasterの多くがそうであるように、FrontPage等のHTMLエディタは使わずに通常のテキストエディタを使用している。その方が余計なタグが生成されないので、ファイルサイズが小さく、ソースが読み易くできる。
 Microsoft Site Serverに付属するContent Analyzerを、壊れたリンクの発見に使用している。ページの数が増えると、手作業で全てのリンクの確認をするのは非常に困難。また、Windowsはファイル名の大文字小文字を区別しないが、ほとんどのWebサーバーは区別する。そのため、Windowsマシンのローカルファイルシステムをブラウズしても、壊れたリンクを発見できない場合がある。その点、Content AnalyzerはWebサーバーと実際にHTTP通信をして壊れたリンクを確実に見付け出してくれるので、非常に便利だ。
 最近、私のホームページは開設以来2度目の引越しをした。もちろん、引越し後の動作確認にはContent Analyzerを利用した。ホームページは以下のURLにあるので、仕事の合間の息抜きにでもご覧頂きたい。
http://www.fsinet.or.jp/~bird/index_j.htm

− Windowsとインターネットのこれから −

 ここ数年のWindowsの進化は、確実にインターネットを使い易く面白いものにしてきたと思う。これから先はどうなるのだろうか。
 Internet ExplorerもNetscape Navigatorも、機能が豊富になる反面、プログラムが肥大化したために多くのハードウェアリソースを消費する。そのため、特に必要としない機能のために設備投資をしなければならない場合がある。
 現在インターネットで公開されているホームページを見るには、Internet ExplorerにしてもNetscape Navigatorにしてもバージョン3があれば十分で、バージョン4以上を必要とするようなページはほとんどないだろう。むしろ、高機能な最新ブラウザを要求するようなページには高速な通信回線も要求され、ダイアルアップ接続の個人ユーザーには敬遠されてしまうだろう。
 ソフトが貧弱なためにインフラを活かしきれていない状態から、逆にソフトの方が進歩し過ぎてインフラの整備が追い付いていない状況になったと言えるのかもしれない。インフラがもう少しソフトに追い付き、新しい技術を思う存分に駆使できるようになり、インターネットがさらに面白くなることを期待している。



今月のトピックス

富士ソフトABC株式会社 技術調査室 室長
山本 淳 (yamamoto@fsi.co.jp)


 参議院議員の選挙の結果、橋本政権が倒れた。F1自動車レースイギリスGPではM. シューマッハが優勝した。そしてサッカーではフランスがW杯を獲得した。今までならテレビ中継などを待つしかなかった情報が、インターネットを通じてほとんどリアルタイムに入手できるようになった。同時に複数のブラウザを立ち上げページを表示しておき、30秒から1分間隔で自動的に更新されるのを眺めていると、ネットワーク上に流れる大量の情報の波に溺れている自分に気が付く。

●何はともあれWindows 98、どうするWindows NT 5.0...

 「企業ユーザーにはWindows NT、ホームユーザーのためのWindows 98」とマイクロソフトが声高に叫んでみても、きっと企業にかなり導入されるWindows 98がいよいよ日本でも登場する。
 米国では6月25日に"Route 98"と銘打ったLaunchイベントが開かれ、ビル・ゲイツ会長のキーノートもホームページで全文公開されている。低調であるという事前の予測に反して、テークオフは順調であるという結果になっている。
 もっとも発売直後から「アップデートに関するトラブル」に関する報告があちこちに掲載されている。代表的な問題は、ネットワークカードやモデムカードなどに関してプラグ&プレイが動作せず、ユーザーが手動でドライバを導入しなければならない、ということである。DELLをはじめとするいくつかのメーカー系のホームページにおいては、BIOSなどのアップデートが完了するまでWindows 98へのアップデートを保留するようにという警告が流れている。
 実は筆者が愛用しているDELL LatitudeシリーズのノートPCも対象となっていて、本来であればBIOSをアップデートするまでWindows 98をインストールしてはいけないはずだが、すでにWindows 98とPlus! 98の製品レベルのバージョンが動作していて、仕事上のメインマシンとして利用している。たしかに56KbpsのモデムPCカードを正しく認識しなかったし、ACPI対応による電源制御回りの修正が原因でネットワークに接続した状態でWindowsを終了すると電源がオフされずに止まってしまう。いろいろベータ版も動作しているので何が原因か定かではないが、突然かな漢字変換中にキーボードが利かなくなり、リセットしなければならなくなることもある。ある程度仕方がないと思っているので、黙って一日に何回か電源をオフ・オンして仕事を続けているが、こうした事情に明るくない一般ユーザーにとって、「もっと使いやすくなったWindows 98」が果たして問題なく利用できるか疑問が残る。
 6月17日にビル・ゲイツ会長も来日して大々的に世界で最初の製品発表会が開かれ、7月25日の発売に向かってのカウントダウンが始まっている。成毛会長の発言によると、Windows 98 日本語版の初期ロットは45〜50万本であり、Windows 95の出荷時よりも強気の販売計画を予定している。コンソーシアムでもWindows 98対応アプリケーションの情報を収集しているし、ほかにもインターネット上にはさまざまな情報があふれ始めている。「あなたのマシンをWindows 98にアップグレードすべきか」なんてページも登場している。インストールを巡るトラブルに備えてメーカー各社もホームページやアップグレード・プログラムの準備を始めているし、マイクロソフトも7月22日から本格的なサポートをインターネットや電話ベースで開始するとアナウンスした。
 すでにバグ対応バージョンのService Packの提供や製品出荷に間に合わなかった一部の機能を追加するOption Packの提供が噂されているが、ビル・ゲイツ会長の講演内容によるとWindows 98は2001年まで進化を続けるということなので、その動向を踏まえながら導入を検討すべきである。
 7月初めに幕張で開催された「WINDOWS World Expo/Tokyo 1998」でも企業ユーザー向けにはWindows NT Workstation 5.0だと盛んにプロパガンダを流していたが、どう考えても実際に製品を手にすることができるのは99年夏であり、ソースコードの80%以上に手を入れている「新しいOS」をいきなり企業が大量導入するとは思えない。実際に企業に普及が始まるのは2000年を迎えてからであると予想できるし、それまでプラグ&プレイや新しい周辺装置に対応していないWindows NT 4.0でつなぐのは苦しい企業は、やはり一時的にでもWindows 98を選択する場合が増えてくるだろう。


●国際言語対応

 Windows NT 5.0もInternet Explorerも、近々ベータテストが始まるOffice 2000 (開発コード: Office 9)もすべて英語版にランゲージパックを導入することで、日本語をはじめとする各国語の表示が可能になるという。他社製品でもLotus Notes Domino 5.0は同じコンセプトで開発が進んでいる。今後アプリケーションのワールドワイド対応とインターネット技術対応は各段に進化し、英語版の出荷と同時に新しい機能が利用できるようになっていく。逆に考えれば日本の開発者も世界市場を相手に、アプリケーションを開発する気概を持つ必要が出てきているといえるだろう。


●データベースやディレクトリーサービスを巡るマイクロソフトとオラクル

 SQL Server 7.0対Oracle 8、Active Directory対Novell Directory Service (NDS)など、マイクロソフトがWindowsプラットフォームに投入しようとしている新製品に対して、既存の他社製品が激しい市場争いを繰り広げている。ある範囲では協調して、あるところから自社製品の優位性を説くのは当然だが、ユーザーに対するサービスの提供という点でますますむつかしさの度合いが高まってきている。こうしたあたりをいつかゆっくり触れてみたい。


●Tech Ed 98 Yokohama、SQL Server 7.0 Developers Conference、PDC 98

 7月末のTech Ed 98 Yokohama、8月中旬のSQL Server 7.0 Developers Conferenceとお盆を挟んでマイクロソフト系のイベントが続いている。10月の米国PDC 98に向けた準備も進めておく必要がある。Tech Edに関しては次回レポートする予定である

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