やさしく解説するマイクロソフトの最新技術(第4回)

マイクロソフト株式会社 ソリューションデベロッパー事業部
デベロッパー製品部 テクニカル・エバンジェリスト 熊谷 恒治 kojik@microsoft.com





 今回は趣向を変えてTechEDのレポートを行いたいと思います。
 TechEDはマイクロソフトの技術カンファレンスで毎年1回開催される大きなイベントです。
 今年はニューオリンズにて6月1日から5日までの5日間に渡って開催されました。このTechEDの目玉は200を越えるテクニカルセッションで解説されるマイクロソフトの最新技術であり、それを目当てに米国はもとより全世界から9000人を越える技術者が参加しました。私も今回TechED New Orleansに参加し、いくつかのセッションを受講しましたのでその様子をご紹介します。

●Migration Application From Windows95 to Windows NT5.0

 このセッションはWindows95もしくは98対応のアプリケーションをWindows NT5.0へ移行する方法を解説セッションです。企業システムは今後デスクトップ環境をWindows NTへ移行すると思われるためISVにとっては重要なセッションのようで800人ほど収容可能な会場が開始30分前に満杯になってしまいました。
 ここで主に説明したのがWindows95,98対応アプリケーションとNT対応アプリケーションの違いと、その対応方法の解説です。
 まず違いとしてプラットフォームに依存するコード(API)、ユーザープロファイル、レジストリを挙げて解説を行いました。APIを例にあげるとPassword Provider Interface、Remote Access API、Spooler等を挙げこれらのコードを変更しなくてはならない事を説明していました。ユーザープロファイル、レジストリの移行に関してはMigrate.DLLにて対応する事が解説され、Migrate.DLLのMigrateUser9x、MigrateSystem9x等、Windows95,98対応アプリケーションで使用しているユーザー、システム情報収集ファンクションやMigrateUserNT、MigrateSystemNT等先ほどの9xファンクションで収集したデータをNT側に登録するファンクション等を使用してどのようにユーザー、システムの移行が行われるかを説明しています。

●Active Directory Internals

 ここではActive Directoryの内部情報を解説していました。
 今までActive Directoryの解説といえば概要説明がほとんどでしたが、今回は実際の導入で必要となるレプリケーションの仕組みやディレクトリデータベースのサイズ等、より深い情報が提供されました。特にディレクトリデータサイズの解説はいくつかのモデルケースを元に詳細な解説を行っています。
 例えば10,000ユーザー、9,000ワークステーションPC、3,000グループ、1,000プリンタ、200ボリュームで構成した場合全体のディレクトリデータベースサイズは241,680KBとなりさらに、日々の運営でユーザー及びグループなどが増えた場合の結果を時系列で出しています。この例の場合には2年後に150,000ユーザー、135,000ワークステーションPC、45,000グループ、15,000プリンタ、3,000ボリュームに成長したと仮定してデータベースを作成し測定結果を2,484,240KBとしていました。今後NT5.0の出荷が近づくにつれこのような情報が多く提供されていくことと思います。(本当は私も作らなくてはいけないのですが・・)

●Windows NT Internals

 このセッションはNTのカーネル、I/Oシステム、システムスレッド等について解説がありました。またスピーカーはInside Windows NT 2nd Editionの著者であるDavid Solomonで、彼の深い知識とプレゼンテーション能力により受講者の満足度は非常に高いものがありました。(TechEDではComNetと言うネットワークがあり参加者はExchangeのパブリックフォルダに受講したセッションの感想等を書くのですがDavid Solomonはその中で一番の評価を受けていました。)
 Windows NT Internalsは3時間に渡る長いセッションで様々な解説が行われました。例えばWindows NTの起動プロセスについてブートから始まり、セッションマネージャー(smss.exe)、ログオンプロセス(Winlogon.exe)、サービスコントローラー(service.exe)などの動作を、段階を踏んで解説しています。このセッションについては文章で解説するのが難しいため、この位いにしておきますが個人的には一番気に入っています。なおこのセッションはTechED YokohamaでもDavid Solomon本人が解説します。興味をお持ちの方は是非とも参加をお勧めします。(TechED Yokohamaの詳細はhttp://teched.msn.or.jp/をご参照ください。)

●エキジビジョン

 TechEDでは出展コーナーがありスポンサーを含め、約100社の出展がある非常に規模が大きいものです。出展社の半分は日本ではまったく知られていない会社でニッチ市場をねらった面白いプロダクトを多数出展しており、ここを見るだけでも十分楽しめます。そのなかで特に興味を持ったものがEntevo Corporation(http://www.entevo.com/)のディレクトリ管理ツールです。なんとこの会社はまだリリースされていないWindows NT5.0で実装されるActive Directoryを管理するアプリケーションのアナウンスを行っているのです。(既にカタログまで作って配っていました。)
 彼らはDirect Adminというツールを現在出荷しています。これは複数のWindows NTドメインをエクスプローラーに似たインターフェイスで一元管理するツールで、話を聞いてなかなか面白かったのはこのツールから異なるドメイン間のユーザーを移行することもできると言うことです。それだけではなく現在βではあるが既にWindows NT5.0のActive Directoryにも対応していることであり、さらにスナップインとしてNovellのNDSの管理も可能(複数のディレクトリサービスに対応するためこの前紹介しましたADSIというディレクトリサービスを操作するためのAPIを利用しているとのことでした)とのこと。これを使用すればNT4.5 NetWareの混在環境でもアカウント等を同じインターフェイスから一元管理することができ管理者にとっては非常に有用なツールだと感じました。
 ここで話はちょっと脱線しますが、いくつかの出展社を回って一つ感じたことがあります。それはどのブースへよっても日本人であることがわかると日本の市場と販売代理店についてしつこいぐらいに聞かれる事です。
 彼らは日本の市場にはとても興味を持っておりコンサルタントなどを雇って日本市場への進出を検討しているようです。 先に紹介したEntevoもその一つで私が日本から来たとわかったとたんその話しだけで30分ほど捕まってしまいました。 まあDirect Adminはなかなか面白いツールなのでもし興味があればコンタクトしてみるのも良いかもしれません。
kojik@microsoft.com宛てにメールをいただければコンタクト先をお教えします。)

●その他

 キーノートでは時期バージョンのオフィスの紹介までしてしまいました。次のオフィスは今まで以上に企業システムを構築するプラットフォームと言う位置づけが強く、単体の使用はもとより他のコンポーネント及びスクリプトとの組み合わせによるアプリケーションフロントエンドの役割を担っているのが強く感じられます。例えばOutLookではメッセージ自体をDHTML,スクリプトで記述し、さらにActiveXコントロールを埋め込む様な操作ができます。メッセージ自身がアプリケーションとなるわけです。Windows DNAの中核であるスクリプト+COMコンポーネントがここでも充用しされているのが良く分かります。

 最後にTechED Yokohama を少しだけご紹介します。
 日本ではパシフィコ横浜にて7/29、30、31の三日間で約80セッションを設けてあります。 ここで紹介したセッション以外にも開発者向けセッションからExchangeの運用管理まで幅広く準備しております。 さらにPeer Talkを設け、日本および米国のマイクロソフトの技術者が直接参加者の質問に答えるコーナーなどを用意していますので 情報収集には絶好の機会です。 詳細情報は、http://teched.msn.or.jp/にて公開しておりますのでこの機会にぜひ参加していただければと思います。


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