Windowsよもやま話
富士ソフトABC株式会社 我孫子事業所 設計グループ 課長代理
須田 浩章 hsuda@fsi.co.jp
私が初めて Microsoft Windows に触れたのは何年前になるだろうか。はっきりした記憶はないが、確か Version 1.03 のころだったように思う。当時はまだタイルドウィンドウでアプリケーションもほとんど存在していなかったと記憶している。
「そのころはプログラム開発も大変だったなぁ」と昔話をしても共感してくれる人はほとんどいない。ポップアップウィンドウで時計を表示できるようにするために、もの凄くコードを書いたものですよ。
今では、RAD 環境が進歩しており、誰でもがその気さえあればプログラムの開発ができるような環境になってきている。隔世の念を禁じ得ない。
思い返してみれば、Windows が CPU の進化と共に Windows 286 になり Windows 386 になり、現在の Windows になった経過を実際に触れながらみてきたように思う。
偉そうなことを書いているようであるが最近は、ほとんど開発作業をしていないので、開発者としてではなく日常 Windows を使用して仕事をしている一人のユーザーとして、最近の Windows を取り巻いている様々な状況を(個人的に)見回してみようと思う。
巷間でよく「家を建てるのに、最低3回は建て直さなければ満足の行く家が建たない」と言われているが、同じように満足が行く Windows の環境を構築するためには、3回以上の再インストールが必要なようである。
しかし、再インストールのきっかけが、やや健全でない理由によるものであるためエンドユーザーから不評をかっていると思われる。
ハードウェアの追加やパッケージソフト、オンラインソフトなど色々なソフトウェアをインストールする過程で、自分では意識していないモジュールなどが組み込まれ、それまで正常に動作していたソフトウェアが動作しなくなってしまうと言う状況が散見されるのが実状である。また最近では、インターネットの World Wide Web にアクセスしただけで(少し言い過ぎか?)モジュールが書き換わってしまうようなこともあるので(注意を促すダイアログボックスは表示されるが、エンドユーザーにはよくわからない)さらに状況が悪化しているようである。
エンドユーザーにとっては、「何が必要で何が不必要なのか」の判断がつかないので最良の(・・・最後の)手段として再インストールを余儀なくされる。[アプリケーションの追加と削除]を使用して直近にインストールしたソフトウェアを削除しても元に戻らないことが多いものですから、再インストールすることは仕方がないことなのでしょう。動作不良に対して、現象のみから何が原因であるとは一概に断言できないため、初心者向けのパーソナルコンピュータ雑誌には再インストールを勧める記事が掲載されているようである。
エンドユーザーにとっては Windows のインストール作業自体がとても難しい作業であるのに、何度も繰り返すようになると嫌になってしまうであろう。特に企業内のエンドユーザーは、業務で Windows を使用しているので、使用するべきシステムがセットアップされたパーソナルコンピュータ(標準環境)には「何も足さず、何も引かないで使う」と言う自衛手段が要求されているようである。
斯く言う私も現在 Windows を再インストールしなければならない状況に陥っているのである。このような状況が過渡期に特有な現象であり今後改善されるであろうことを切に望む次第である。本来環境(住処)を作ることは、楽しいことであるはずなのであるが、現在は少し苦痛である。
パーソナルコンピュータの台頭は、何と言っても表計算ソフトの普及に起因しているように思う(ゲームソフトであると言う人もいるでしょうけれども・・・)。確かに集計業務が飛躍的に効率化されたことは間違いないであろう。
特にここ数年、Windows 上の表計算ソフトやワードプロセッサの機能が強化され続けており、ユーザーとして嬉しい反面すべての機能を使うわけではないのにアプリケーションが重く(大きく)なっていることに不満を感じている。体感速度の低下もさることながら、ハードディスクの占有量の増加も不満に感じる一因と思う。
しかしよくよく考えてみると、表計算ソフトの使用のされ方も単に集計業務だけではなく、資料をグラフ化する場合やデータベースとしても使用している。ワードプロセッサにしても、以前のように清書だけに使用するのではなく、アウトラインプロセッサ機能などの充実によって推敲に使用することが多くなってきている。このようにアプリケーションの用途が変化してきているので一概に重くなったことを非難することができないのは確かである。
エンドユーザーとしては、(一般的な範囲内で)用途に特化した軽いアプリケーションが欲しいと思っている。例えば、高度なマクロ機能(スクリプト言語)や文章校正機能などを常用しているユーザーはどの程度存在するのであろうか。本当にここまでの賢さが必要なのであろうか。巷では EUC と言う言葉がよく聞かれるようになってきているが、高度なアプリケーションを使いこなせると言う判断基準で考えれば、言葉だけが独り歩きをしているように感じる。
また、Windows のシステム自体やアプリケーションの肥大化に伴ってパーソナルコンピュータの性能も、より高度なものが要求され続けている。コンピューター業界からみれば(技術にも金銭的にも)好ましいことなのであろうが、エンドユーザーからみると悪循環としか映らない。
自動車は、一般道路で時速60Km出せれば古い車でも、排気量が少ない車でも現役として充分通用する。しかし、パーソナルコンピュータはすでに5年前のものが事実上使用できなくなっている(かなり我慢すれば使用できないことはないけれども・・・)。操作方法と言う面ではパーソナルコンピュータも自動車と同じように標準化されてきているが、こと寿命と言う面では全く性質が違うものなのですね。個人的には、同じパーソナルコンピュータを可能な限り長期間使い続けたいと思っている。
Windows95 の普及に合わせて、Windows およびパーソナルコンピュータに関する情報が氾濫してきているように感じる。テレビのコマーシャルや関連雑誌が増えてきていることからみても間違いないであろう。World Wide Web から発信される情報にいたっては、とても個人で把握することはできない。
コンピュータ関連の情報誌だけをみても[季刊誌]が[月刊誌]になり、[隔週刊]になり[週刊]になり[日刊(新聞ですかね)]になっている。電子的情報にいたっては、すでに[時刊(?)]になろうとしている。エンドユーザーにとって、本当にこのように膨大な情報が必要なのであろうか。確かに日々新しい言葉や新しい製品が出てきているので、それらを紹介する必要はあるのでしょうが、正直なところ食傷気味である。
また、Windows 関連のオンラインソフトの数もうなぎ上りに増加しており、自分にとって役に立つオンラインソフトを見つけることすら難しくなってきている。選択の余地があることは、とてもありがたいことではあるが、選択することが難しいのは事実である。
私自身も必要な情報を取捨選択するだけで、かなりの労力を必要としている。極論を言ってしまえばエンドユーザーにとっては、日常使用しているシステムなり、アプリケーションなりの情報があればそれで事足りるわけで、膨大な情報は必要ないと言える。しかし、情報は欲しいわけで、今のところエンドユーザーにとって必要でかつ良質な情報を得るためには、努力をするかお金をかけるかしかないようである。
最後にエンドユーザーからみた場合の Windows の使い心地について考えてみたい。Windows は果たしてユーザーフレンドリーなのであろうか。使用している途中でハングしてしまう(要因は様々あるが)ような現在の Windows は、ユーザーフレンドリーとは言えないのではないだろうか・・・。
そもそもユーザーフレンドリーであるとはどういうことなのだろう。日頃 Windows を使用していて余り感じたことはないが、パーソナルコンピュータ を文房具と考えるならば、Windows は使い慣れた万年筆に例えることができそうである。手になじみ、意識せずに使うことができれば、その人にとってはそれがユーザーフレンドリーなのであろう。
表示装置、キーボードやポインティングデバイスなど、ユーザーインターフェイスの面で考えて現時点でどれが最良であるかはわからないが、標準的な構成で特に不便を感じているわけではない。以前みた映画で、パーソナルコンピュータ(Macintosh だった)のマウスをおもむろに手に持って「コンピュータ、コンピュータ」と話し掛ける場面があった。自然言語でコンピュータと対話できるか否かは重要でない、誰もが気軽に(学習することなく)使用できるようになることが重要なのである。
今の Windows は、(没個性ではなく)標準化されてきており、人の慣れと言うこともあろうが、かなり手になじんできている。高速なパーソナルコンピュータを用意し、操作の勘所(何をするとハングするのか・・・など)を抑えてしまえば、恐いもの無しである。今後もさらに Windows が健常者にも、ハンディを持った人にも使い心地の良いシステムになって欲しいと思っている。
富士ソフトABC株式会社 技術調査室 室長
山本 淳 (yamamoto@fsi.co.jp)
2年間続けた連載から解放されたが、数人の方々から「楽しみにしていたのに残念」などというありがたいお言葉をいただいたので、毎月少しだけトピックを書き綴っていくことにする。本編の新連載は、私と目が合ったいろいろな人にお願いして、Windowsをキーワードに好きなことを書いてもらうことにした。ちょっと視点が変わって面白いかなと思っている。
● Microsoft Web Tech Ed 98
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以前も紹介したが、米国で1月末に開催された「Microsoft Web Tech Ed 98」のセッション情報がNetShow形式で米国マイクロソフト社のホームページにアップロードされている。インターネット関係について興味があったり、作業上必要な方はぜひ覗いてみるといい。すでにSite Server 3.0やSite Server 3.0, Commerce Edition、NetShow 3.0、Proxy Server 3.0あたりの話がオンデマンドで観ることができる。Dynamic HTMLやXMLなど、今後のインターネット・クライアント技術を先取りしておく必要はありそうである。
http://www.microsoft.com/sitebuilder/sbnmember/sbnlive/wte-f.htm
● Microsoft Tech Ed 98 / Microsoft Tech Ed 98 Yokohama
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すでに米国マイクロソフト社のホームページでは、「Microsoft Tech Ed 98」の案内が始まっている。今年は6月1〜5日までルイジアナ州ニューオリンズで、ジャズでも聴きながら楽しめるようである。97年からMCSP向けの「Fusion 98」が併設されているので、チェックしておいた方がいいだろう。
日本の開催も7月29〜31日にパシフィコ横浜と決まっている。すべても早期割引登録が始まっているので、早めに覗いておくべきである。今年はWindows 98の製品出荷とダブりそうだし、Windows NT 5.0についてもBeta 2版がリリースされるタイミングと重なりそうなので、マイクロソフト関連で先行調査が必要な方は要チェックである。
http://www.microsoft.com/events/teched/
http://www.microsoft.com/events/fusion/
http://teched.msn.or.jp/
● Microsoft Windows CE Developers Conference
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4月6〜8日には米国カリフォルニア州サンノゼで「Microsoft Windows CE Developers Conference」も開催される。Windows CEに関してはアプリケーションの開発が進み、関連する携帯端末がいろいろ登場してきているが、組込み型OSとしての新しい情報家電などへの展開が今後の焦点である。
http://www.microsoft.com/events/windowsce/
● Windows Hardware Engineering Conference 98
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3月25〜27日に米国フロリダ州オーランドで開催される「Windows Hardware Engineering Conference 98」からも目が離せない。毎年新しいハードウェアの方向性を明らかにするとともに、それに対応したOSのアナウンスが予定されている。今年はWindows 98の次期バージョンというよりまったく新しいコンシューマー向けのOS、NT Consumerの発表が予定されているようである。
http://www.microsoft.com/winhec/
米国ではこのほかにもサードベンダーが中心になって、「Visual C++ Developers Conference」「VBITS 98」「Visual J++ Developers Conference」といった開発者向けのイベントのアナウンスが流れている。そういえば、VBITSの日本開催はもう2年前からのことであるが、どうもVC++に関しても今年の春過ぎに日本で初めて開催されるようで準備が進んでいる。
そういえば、毎年開催されていたMicrosoft Developers Daysが当初予定から延期になって、まだ開催がはっきりしていない、何かあったのだろうか。
日本でのDeveloper Daysも予定されている。4月14・15日に新宿で開催される「Microsoft Developer Days 98 Tokyo」と「Microsoft Developer Days - Visual Basic & 開発ツールセミナー」である。
http://www.ant.co.jp/devdays_rel.html
http://www.boc.co.jp/rd/
今月はちょっと雑誌原稿と受託の技術調査作業がパニックしていて、イベントチェックだけに終わってしまった。徐々に内容を充実させていきたいと思っている。
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