活動報告



● 第68回セミナー実施報告

第68回セミナー(アクティブ・プラットフォーム委員会主催)実施報告

日  時:1998年2月26日(木)13.30〜17.00
場  所:テラハウス/ICA B1Fテラホール
参加人員:47名
テーマ :「Windows DNA」
構  成:  第1部 『Windows DNAとクライアント戦略』
     マイクロソフト株式会社
     ソリューションデベロッパー事業部デベロッパー製品部
     テクニカル・エバンジェリスト
     寺田 雄治 様
 第2部 『分散コンピューティングにおけるビジネスビジネスアプリケーション開発』
     マイクロソフト株式会社
     ソリューションデベロッパー事業部デベロッパー製品部
     テクニカル・エバンジェリスト
     安田 和司 様
 第3部 『マイクロソフト ユニバーサル データアクセス』
     マイクロソフト株式会社
     ソリューションデベロッパー事業部デベロッパー製品部
     テクニカル・エバンジェリスト
     野村 一行 様

 今年初めてのセミナーです。寺田、野村両講師には、96年4月開催の第43回「ActiveXテクノロジー概要」および97年3月開催の第55回「Active Platform」セミナーに続いてお出でいただき、安田講師とともにWindows DNAのコンセプトについてその3階層アーキテクチャーにあわせて三つのセッションに分けた説明をしていただきました。

セミナー会場

 第1部では、寺田講師から「DNA(Distributed InterNet Application Architecture)は今現在我々のオブジェクト及びコンポーネントテクノロジーの集大成という形でサーバーからクライアントまで全てを統合したアプリケーション・フレームワークである」ということで、(1)Windows DNAのコンセプト、(2)クライアント・コンポーネント、(3) Dynamic HTMLの基本機能とデモ、(4)Scriptletの説明とデモ、と大きく4つに分けた説明がありました。

寺田講師

 DNAという言葉にするのには非常に無理があると思われるが、一般的に使われている言葉である遺伝子関係、そのもつ意味をアーキテクチャに託しており、今後数年にわたってWindowsというものにめんめんと受け継がれていく遺伝子のようなものとイメージしていただきたい。DNAの実態はあくまでフレームワークであり、DNAという名前の製品があるわけでもないし、それに関する製品も存在しない。あくまで我々がもつ各々のテクノロジー、製品それらを組み合せることによって生まれるフレームワークの総称であり、アーキテクチャレベルのフレームワークだとご理解いただきたい、とのことです。
 (1)では、Windows DNAに至る1991年スタンドアローン環境でのOLE1.0時代から現在のアプリケーション・フレームワークに至るロードマップ、DNAの機能、3階層アーキテクチャ(Business Processレイヤ、Integrated Storageレイヤ、User Interface And Navigationレイヤ)についてそれぞれの概要およびDNAの利点についての説明がありました。利点としては、明確な3階層アーキテクチャーに分けることによって各レイヤごとのスケーラビリティを強く出していけること、開発環境ではクライアントからサーバーまで基本的に同じ開発ツールが使えること(言語環境には依存しない、コンポーネントベースである)、既存資産の継承ができWebサーバーベースで開発するために今までのクライアント/サーバーベースの資産を継承している。 (2)では、ActiveXコントロール、Javaアプレットについての説明とそれぞれの比較(利点と欠点)、"Microsoftが考えるJava"では、Javaを言語とプラットフォームとに分けた場合の見解がありました。(3)では、Dynamic HTMLは、HTML,Scripting,CSSを組み合せて統合したもので、基本的なコンセプトはクライアント上に一括してダウンロードされその情報をもとにクライアント上で動的に見え方が変化する、というのが機能である。特長はメインとなる部分がテキストベースであること、また、クライアントで解釈・実行・変化するためサーバーへのアクセスが抑えられ、トラフイック情報を低く抑えることができる。Dynamic HTMLの機能はIE4.0およびネットスケープに実装されており、環境を選ばなくなる、とのことです。Dynamic HTMLのデモとして、「Big Fish」と呼ばれる魚屋をイメージしたもの、「アステロイド」というゲームについてありました。
 (4)では、ScriptletはDynamic HTMLをカプセル化してあたかもコンポーネントのActiveX、Javaアプレットと同列に使うために作られたアーキテクチャであり、汎用サブルーチンをスクリプトで作るようなもので、これを使うことによってHTMLの再利用が自由にできるようになった。デモとして「画面上でデータを入力するスライドコントロール」、「カレンダーのコントロール」などの例がありました。現在Scriptlet はVersion 1.0でいくつかの制限がある。1つはユーザーインターフェイスを持たないコントロールは作れないという点で、表示するものがあってはじめて意味をなすアーキテクチャーとなっている。クライアントで使う場合は大きな制限にはならないがサーバー側では使えない。2.0のドラフトではサーバー側のスクリプトを再利用、共有したりするものとしてScriptletが使えるようになる。
 最後にまとめとして、「クライアントで使えるコンポーネントはすべての技術のベースとしてCOMコンポーネント、この場合はActiveXコントロールをご推奨する。今後も私どものBackOffice、Office製品を含めてどんどんコンポーネント化が進んでいくのでスクリプトからの利用とか、他のアプリケーションからの利用という点に関してはどんどん使いやすくなると考えている。それに加えてできれば皆さま方の製品もコンポーネント化で他の製品の連携とかスクリプトからの管理ということを念頭において変えていただければと思う。それに加えてもっとシンプルなユーザーインターフェイスとか機能を限定した部分でクロスプラットフォームを持てられる場合にはDynamic HTML、Scriptletを有効に活用していただければと思う。Javaはクロスプラットフォームで若干疑問点があるので我々はアプレットとしてより、開発言語として活用していただく道をお考えいただければと思う」がありました。

 第2部では、安田講師から3階層の真ん中になるビジネスプロセスのレイヤについての説明がデモを交えて行われました。

安田講師

 (1) 現状の企業システム、(2)Windows DNAによる3-Tierシステムの概要、(3)アプリケーション開発の方向性、(4)非同期処理とトランザクション処理(デモ)、(5)企業システムにおけるセキュリティ、(6)開発関連事項、と大きく6つに分けた説明がありました。(1)では、一般的なC/Sシステム、一般的なWebベースのシステム、一般的な汎用機のシステム、レガシーシステムについての説明があり、特にレガシーシステムではハードウエア・ソフトウエアの設計段階から多大な投資が必要で、システムの規模拡張はフレキシブルに対応できず、メモリやDASDを増資する場合はさらに高額な再投資が必要である。従ってWindows DNAによるシステムにバージョンアップということで、(2)では、Windows DNAの3-Tier構想はビジネスシステムに必要な要素(高信頼性と拡張性)を包括し、なおかつシステム規模の拡大などに対して、ハードウエア構成のみならず、ソフトウエアレベルでもフレキシブルに対応可能である。(3)では、従来はC/Sのみだが、現在はシステムサービスでの提供が行われ、今後はストレージサービスが追加される。トランザクション管理、非同期通信、Web対応、Active Server Page等の説明がありました。(4)では障害発生につての説明とC/Sマシンでのデモがありました。(5)では、Active Directory機能の使用推奨(NT5.0によるサポート)、Compornent Base、Webベースについて、(6)では、開発者のサポート、開発言語の方向性、システム構成ツール群についての説明がありました。
 最後に「ミドルギアのアプリケーション開発に必要な拡張性、安全性、セキュリティといったさまざまな機能を持ったアプリケーションを開発していただくために、今までC++、Basic、Javaだけがアプリケーションを開発するプログラム、あるいはプログラマの方だとカテゴリされていたが、このWindows DNAの採用によりスクリプトレベルやVBレベルのアプリケーションプログラマ、HTMLのオーサーであった方々等までが大きなシステムアプリケーションを作っていただくための開発者として広く開発に参加していただけることになる」と結ばれました。

 第3部では、野村講師からWindows DNAの3階層の一番下のレベルである統一ストレージ(Integrated Storage)を実現するためのユニバーサルデータアクセスについての概要、アーキテクチャとどのようにプログラミングするかのデモを交えた説明が行われました。

野村講師

 (1)統一ストレージの必要性、(2)ユニバーサルデータアクセス概要、(3)OLE DBコンポーネントアーキテクチャ、(4)ADOアーキテクチャとコード例、と4つに分けた説明がありました。
 (1) では、データアクセスに関してマイクロソフトのスタンス、データの格納場所がさまざまであること、重要なビジネス情報はさまざまな場所・コンテナに格納されており、アプリケーションはデータアクセスへの共通した方法が必要であること、実世界の例について、単一ストレージのための必要条件(データをやり取りするための標準的なAPI、矛盾のない3階層モデルのサポート、従来のクライアント、シン・クライアント共につながること)の説明があり、(2)では、データコンシューマモデルによるプログラミング、データプロバイダインターフェイス、データデリバリのためのインフラの説明があり、次に"さまざまな情報にハイ・パフォーマンスなアクセスを実現するマイクロソフトのCOMベースの技術:OLE DB"と"情報への単一でパワフルなコンシューマインターフェイス:ADO"の概要とADO/OLE DB経由のデータアクセス等の説明がありました。
 (3) では、OLE DBデザインフィロソフィ、OLE DBアーキテクチャ、サービスコンポーネント、OLE DBインターフェイスの公開について、また(4)では、ADO概要、ADOオブジェクトモデル、ADOのコード例についての説明がありました。ADOを利用する理由としては、「多種多彩なデータストアへ簡単なアクセスができること」、「シンプルで使いやすいインターフェイスを通じてOLE DBのパワーが使用できること」、「あらゆるOLEオートメーション対応言語(Visual tools,VBA,scripting,etc.)から呼び出し可能であること」、「マイクロソフトのツールやアプリケーションから利用可能であること」とのことです。


 出席の皆さんのアンケートからのご意見です。
 第1部では、「概要レベルとしては適当で、有用であった」、「MSが今後どのようなコンセプトでこの分野の展開を行っていくかというロードマップが理解できた」2件、「今後のアプリケーション開発の参考になった」、「ActiveXやJavaの本質に触れながらの説明は聞きやすかった。JavaやActiveXを使用したアプリケーションの今後の開発の参考にしたい」、「Windows DNAについてある程度理解できた」の他、「DNAをベースにしたアプリケーションの具体例を示して欲しかった」、「Dynamic HTMLのデモをもう少し詳しく見せて欲しかった」がありました。

 第2部では、「具体例が多かったので分かりやすかった」、「現在の自分の作業がちょうど関連しているので大変ためになった」、「DBシステムでの現在の問題点、ビジネスプロセスレイヤの概要やWindows DNAでの位置づけがよく理解できた」、「単位時間あたりに処理できるメッセージ数によってはかなり使えそうである」の他、「MTS、MQSについて機能的な部分でもう少し詳しく知りたかった」がありました。

 第3部では、「サンプルソースが付いていたのがよかった」、「いかにユニバーサルデータアクセスに現状の資源を対応するかがよく理解できた」、「OLE DBおよびADOのそれぞれの違いが分かった」、「この分野が不案内だたので役にたった」、「ちょっと時間が足りなかったが、話がとてもよかった。この部分が自分に一番関連する部分である」

 セミナー全体としましては、「当社のプロジェクトでも今後この技術を使用し新しいビジネス展開を行いたい」、「有用な内容も多くあり、全体的によかった」、「3層それぞれのつながりがもっと分かるとよかった」、「三層アプリを構築する全体(特定技術ではなく)の話が聞きたかった」のご意見がありました。

 今後のご要望やご意見としましては、「今回初めて参加したがホットな内容で参考になった。短時間なので初心者には理解しきれなかった所がある。シリーズもので開講することも考えて欲しい。今後もできるだけ受講したい」、「各社でかかえている問題などについてアンケートを取ってみてはいかがでしょうか? そういった内容からセミナーの表題にするのもいいかもしれない」です。沢山のご意見ありがとうございました。

 なお、セミナーで配布しましたスライド説明資料が僅少ありますので、入手ご希望の方は事務局にご連絡ください。


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