最新技術動向 ここが見所、さわり所

富士ソフトABC株式会社 技術調査室 室長
山本 淳 (yamamoto@fsi.co.jp)



12月にマイクロソフト関連で開催されるセミナー・カンファレンスの情報をまずお伝えしておく。

● Microsoft Internet Commerce Conference

   12月4・5日 (パシフィコ横浜)
 マイクロソフトが提供する電子商取引のすべてを解説するカンファレンス。Microsoft BackOffice製品群のSite Server 2.0を中心に、今後の企業経営に欠かせない企業間電子商取引や消費者向けオンラインシステムに対して、先進的で投資効果の高いElectric Commerceシステム構築の最新情報をいち早く紹介するカンファレンスである。このカンファレンスで21世紀に向けたElectric Commerceの方向性が明らかになる、とマイクロソフトはいっている。

● Microsoft Web Publishing Day

   12月10日 (幕張プリンスホテル)
 幕張メッセで12月9〜12日に開催される「SEYBOLD SEMINARS TOKYO 97」のInnovation Dayとして実施される特別セミナー。マイクロソフトの古川会長による「Windowsにおけるこれからのデジタルメディア」講演をはじめとする、インターネット関連技術の発表がある。内容的には、Internet Explorer 4.0のクライアント戦略やActiveチャンネル対応コンテンツの作成、Dynamic HTML解説といったコンテンツ作成のための最新テクニック紹介と、Active Server Pagesによるデータベース連携、Visual InterDevによるWebサイト開発、スクリプトによるWebコンポーネントといったWebサイト構築テクニックの解説に分かれている。

● Microsoft Professional Developers Conference 1997 Tokyo

   12月16・17日 (東京ドーム・プリズムホール)
 9月に米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された「Microsoft Professional Developers Conference」の日本版である。PDCはマイクロソフトがWindowsやBackOfficeを対象としたアプリケーション開発に従事している技術者に向けて戦略を発表する重要なカンファレンスで、今回はWindows NT 5.0の紹介と開発フレームワークであるWindows DNAアーキテクチャーの解説を行うことになっている。Windows NT 5.0やWindows 98などのベータ版が配布されることになっており、98年に向けた大事なイベントである。

● Microsoft Exchange Conference 97

   12月18日 (東京ドーム・プリズムホール)
 11月28日に発売が開始されたMicrosoft Exchange Server 5.5の紹介を中心に、Exchangeを中心としたシステム構築・運用に関するセッションや、アプリケーション開発のためのセッションが用意されている。これも9月末に9月に米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された「Microsoft Exchange Conference 97」を日本用にアレンジした内容で、小人数のオフィスから世界規模でビジネスを展開する企業の全社システムまで、すべての組織・あらゆるユーザーに情報の伝達と共有、およびコラボレーション環境を提供する最新の統合メッセージング&コラボレーションサーバー、Exchange Server 5.5の登場を飾る。

 マイクロソフトの98年のWindows・BackOffice戦略をチェックすると、当然後半に登場するWindows NT 5.0の存在が大きくなっている。前半にはWindows 98のリリースが予定されているが、企業ユーザーを対象にした場合ほとんど重要視されていない。マイクロソフトの戦略では、Windows 95/98とWindows NT 4.0/5.0の棲み分けを次のように定義している。
・これから新しいシステムを導入するユーザー
   Windows NT Workstation 4.0
   Windows 95 / Windows 98
・Windows 95ユーザー
   もしマシン環境がNT動作可能なら、Windows NT Workstation 5.0にアップグレード
   もしマシン環境がNT動作不可なら、Windows 98にアップグレード
・Windows 3.xユーザー
   もしシステム能力とアプリケーションが許すなら、Windows 98にアップグレード
   もし許されないなら、新しい環境を用意してWindows NT Workstation 4.0を導入
・Windows NT Workstation 3.xユーザー
   Windows NT Workstation 4.0にアップグレード

 一部の雑誌でも書かれているが98年に登場するWindows 98は、マイクロソフトにとってMS-DOS、Windows 3.1時代から引きずってきた16ビット資産を継承する最後の製品となり、そのあとにはWindows 99もWindows 2000もなく、NTカーネルをベースにした、あるいはWindows CEを拡張したコンシューマー向けの製品が投入されることが決まっている。
 そうした意味を理解すると、企業ユーザーにとってWindows 98を導入するメリットは少ないのだが、まだまだ日本だけでなく全世界においてWindows 3.xユーザーやWindows 95、Windows NT3.xユーザーは多い。実際筆者の会社にもSI作業の一環で、すでにWindows 98の大量導入を前提にしたシステム構築の案件の引き合いが届いている。マイクロソフトの思惑通りにことが進む保証はどこにもないが、少なくとも32ビット環境への移行だけは着実に進んできている。
 Windows NT 5.0とそれに対応したNT 5 WaveといわれるBackOffice製品のNT 5対応版の登場によって、大きな変革の時期を迎えている。NT 5.0はWindows 98のスーパーセットという位置付けで、Windows 98でサポートされるすべての機能が用意される。Windows 98とNT 5.0では新しいデバイスドライバモデルによって周辺装置のサポートが共通化され、これまで対応されていなかったプラグ&プレイやDirectXなどもサポートされる。すでに雑誌などで目にする新しいWindowsプラットホームの潮流は、これまでの製品の枠を大きく超えていこうとしている。
 さらに11月に登場したWindows NT Server 4.0 Enterprise Editionと、それに対応したExchange Server 5.5 Enterprise Edition、SQL Server 6.5 Enterprise Editionといった大企業向けエンタープライズ版、来年第1四半期にリリースされる予定の中小企業や部門サーバーとしてのBackOffice Small Business Server 4.0、同じ時期にはWindows NT Server 4.0 Option Packが投入され、既存のWindows NT Server 4.0にもInternet Information Server 4.0 (IIS 4)やTransaction Server 2.0 (MTS 2)、Microsoft Message Queue Server 1.0 (MSMQ)が搭載される。さらにこれまで開発コード名Hydraと呼ばれていたWindows-based Terminal Serverによって、NetPCやWindows Terminalをクライアントにしたマルチユーザー版のWindowsも登場する。
 NT 5.0がリリースされるまでの98年前半にNT 4.0をベースにしたこれらの製品ラインアップを揃え、大規模ユーザーから中小規模まで、あらゆる環境にWindows製品を投入する姿勢を見せている。NT 5.0が登場すると、Active Directory機能やZAW機能の充実によって、さらに適用範囲が広がることだろう。

 11月に幕張で開催された「Windows NT INTRANET Solutions Tokyo 1997」に併催された「Active Platform Developers Conference」は、Windowsコンソーシアム (Active Platformコンソーシアム)が協賛したこともあって、筆者とスタッフもセッションのスピーカーに駆り出された。
 96年11月のPDCで発表されたActive Platformというキーワード自身、前述のWindows DNAアーキテクチャーの登場によって色褪せてしまったが、根本的なところは変わっていない。筆者のセッションでは「Visual Studioを利用した三階層アプリケーション開発」というタイトルで講演したが、Active PlatformやWindows DNAのアーキテクチャーの基本になっているCOM/DCOMの話をベースに、どうして日本ではこうしたオブジェクト・コンポーネントによる開発が根づかないのか、という疑問を投げかけてみた。
 まだアンケート結果がまとまってきていないので受講者の意見は見えないのだが、独断と偏見をもとに意見させてもらえば、COM/DCOMにしてもActiveXにしても、先月号で触れた"Write once, run anywhere"の100% Pure Javaにしても、CORBA、古くはOLEやOpenDoc、Taligentなどにしても、コンセプトとしては一長一短があるにしろいずれも優れたものではあるが、少なくとも一般ユーザーからみればどれも関係ない開発者の世界の話であり、開発者にとってもこれらの技術を利用しなくても、目の前にあるソリューションを解決するプログラミングの方法はいくらでもあることが原因のような気がする。
 「開発者にとって作りやすいプログラムよりも、利用者にとって使いやすいプログラム」というキーワードをよく講演で話すのだが、とかく技術者は自分勝手に、あるいは安易に「作りやすい」プログラムに走っていないだろうか。別にオブジェクト技術を利用しなくてもプログラムは書けるし、プラットフォームベンダーが用意するむつかしいコンセプトより、開発ツールベンダーが用意するウイザードより、自分が知っている安直な方法に頼りすぎていないだろうか。この辺の話はアンケート結果がまとまった時点でもう一度整理して議論してみたい。


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