特集COMDEX/Fall'97レポート


● Synergy '97およびComdex Fall '97報告
(1997年11月 サンディエゴ、ラスベガス)

Windowsコンソーシアム副会長 下川 和男

 11月13日、木曜日、UA852便でサンフランシスコを経由してサンディエゴに入った。Comdexは17日からであるが、その前の週にMicrosoft社がSolution Provider企業を対象としたセミナーを開催するとの事で、その招待状が舞い込んだ。
 木曜日発のUnited Airline便は80%の入り。窓際3列に一人だけというファーストクラス以上に快適な席を確保できたのでご機嫌である。肘掛けを上げて、3席でゆったり横になって眠れるぞ。
 というわけで、久しぶりに本誌「Windows View」にレポートを載せることとなった。Comdexのレポートとしては、ビジネスコンピュータニュース(BCN)吉若さんのレポートもあるので、特に気になった点のみを挙げ、以下の4章に分けた。最近のパーソナル・コンピュータを取り巻く、米国の動向の一端をご紹介する。

1. Unitedの機内誌から
2. Synergy '97
3. Comdex Fall '97
4. Windowsコンソーシアム・ブース

1.Unitedの機内誌から

 成田からサンフランシスコまで8時間の旅である。機内のビデオでTOYOTA LEXUSの宣伝を流しており、「機内誌の1頁に広告が載っているよ」との事だったので、機内誌「HEMISPHERES」を見たら、LEXUS GS(http://www.toyota.com)という、ベンツEクラス(http://www.mbusa.com)のような四つメダマの車が載っていた。
 来年4月までにこの車を購入すると、何と25000マイルのUnitedのマイルがもらえるとの事。最近JALとANAがテレビ宣伝合戦を繰り広げているマイレージサービスも、米国では他業種とのタイアップが進んでいる。日米間の往復航空券は60000マイルでもらえるので、LEXUSを2台半買えば良いことになる。
 HEMISPHERESをパラパラとめくっていたら、コンピュータ関連の広告が非常に多いのに驚いた。ノート・パソコンや電話サービスの広告は以前から沢山あったが、インターネットと絡んだ新しいビジネスの広告が増えたので少し紹介しよう。9月にもユナイテッドに乗ったのだが、こんなに多くはなかった。

 
■ WebTV
 http://www.webtv.net
 http://www.webtv.co.jp
LEXUSの次の見開きが、大手デパートNordstromの旅行用スーツの宣伝、その次がSONY製品である。ディスクマンやウォークマンと並んで、WebTV INT-W100が載っていた。家庭用のテレビと一般の電話線があればインターネットを見て、電子メールも使えるという、いわゆるSet Top Box(テレビの上に置く箱)である。Microsoft社の一部門であるWebTV社の仕様とインターネット接続サービスを利用するもので、この仕様に沿った最初の製品が、このINT-W100である。

 
 Set Top Boxとリモコンのセットで、199.95ドル。しかもWebTV社からのリベートが100ドルあるので、売価は99.95ドル(約13000円)と、会社の帰りにちょっと買ってしまいそうな値段である。もっとも電子メールを送るには、オプションのワイヤレス・キーボードも必要だが。
 実際には、電話代がかかるし、WebTVのプロバイダー料金が毎月19.95ドルなので、1ヵ月のランニングコストは、$19.95+$20=$39.95(約5200円)。これは使い放題での価格である。米国は、地域、業者、契約形態などで若干異なるが、だいたい20ドルくらいで、市内通話は1ヶ月間かけ放題である。ホテルからでも75セントで時間無制限でインターネットに接続できる。そのため、このような低価格が実現できるのである。日本ではNTTが、夜だけテレホーダイというサービスを行っているが・・・。
 家庭内にテレビと融合したインターネット端末を置くことは、Windows 98の開発テーマである「テレビとインターネットとDVD」にも合致しており、西暦2000年までの近未来情報家電の最有力商品である。しかし、インターネットを見るときに「ダイヤルしています」、「プロバイダーに接続しています」、「IDとパスワードを確認中です」なんて、ヤッテランナイ。日本でも、いつも繋がっている安い家庭用の回線が必要な時期にきている。

■ DirecDuo
 http://www.direcduo.com
 これも、機内のビデオで宣伝していた。Hughes(ヒューズ)社が推進する、デジタル衛星放送サービスである。日本では多チャンネル・テレビ放送のDirecTVとしておなじみだが、米国では、これにDirecPCを使ったインターネット・アクセスサービスを付加したDirecDuoを盛んに宣伝している。200Kbpsのインターネット接続が毎月19.95ドルで可能となる。こちらは衛星放送の回線を使うので、電話代はかからない。
 衛星通信を使ってテレビ映像を配信するDirecTVは、USSB(United States Satellite Broadcasting Company)から配信される200チャンネルのテレビ映像を家庭にドンドン送り込んでおり、日本では松下電器、大日本印刷などがパートナーとなって、事業を展開している。
 前出のWebTVやDirecDuoなどの新しい仕組みの登場で、インターネットの家庭への普及が促進され、米国では、インターネットユーザ数が飛躍的に増加する下地が出来上がっている。

■ 携帯端末
 Windows CEマシンや3Com(旧US Robotics)のPilot、NOKIAの9000iなどが載っている。マシンではないがHITACHIが大ヒット中のRISCチップSuperHの広告で、財布PCのイメージ図を載せていた。
 CEマシンの広告は二つ。韓国LG社のPHENOM(http://www.lgphenom.com)とPHILIPSである。LGは、Powered by Windows CE 2.0と書いてあったが、画面写真はモノクロだった。向かい合った二つの電話ボックスにノートパソコンとCEを持ったビジネスマンが入っている比較広告となっている。

 
 PHILIPSのVELO(http://www.velo1.com)はプールサイドでビキニ姿の女性が使っている。コピーは「どこでもWindows」。VELOは耐水構造では無いのだが。
 CEに携帯電話が合体するのは時間の問題なので、半年後には「とこでもWindowsとインターネット」なんていう広告が、国産パソコンメーカーから出てくるかもしれない。

 
■ PalmPilot
 米国でAppleのNewtonに取って代わり、携帯端末市場を席捲したPalmPilotの広告が三つある。Yシャツの胸ポケット本当にスッと納まるそのサイズは見事である。
 US Robotics社を配下に収めた3Com社、カードリーダーのCardScan社、そしてCross社である。Cross社なんてコンピュータ業界にあったっけ?と良く見ると、ボールペンのCrossである。「Pilotの上に金色の太いクロスのペンが置いてある!」。つまり、ペンコンピュータ用のスタイラスペンとして、CrossがDigitalWriter(http://www.cross-pcg.com)という商品を出したのである。紙に書くのと同じ感覚で液晶画面に書ける「pen-on-paper感覚」の特許を持っているとの事。日本の万年筆メーカー、パイロットもスタイラスペンを製品化しており、こちらは「PalmPilotにはPilotを」ということになる。

 
 3Com社のPalmPilot(http://www.palmpilot.com)の広告も載っている。ボタンを押すだけで、PCや他のデバイスとデータ交換を行うHotSyncが売りである。最少構成で249ドル、電子メールとインターネット対応のプロ版が369ドルというお手頃価格も好評の秘訣であろう。
 CardScan(http://www.cardscan.com)は名刺カードリーダーの広告で、HotSyncでのPalmPilotへのデータ転送を宣伝している。PDA(Personal Digital Assistance)系の商品では、データの検索や表示、参照は簡単に行えるが、入力が厄介である。スタイラスペンを使った手書き認識では、なかなか入力スピードが上がらない。ということで、CardScanも売れている。

■ Communicator
 NOKIAの9000i(http://www.nokia.com)はCommunicatorという新しいジャンルの携帯端末である。何が新しいかというと、電話を進化させるというコンセプトである。1年以上前に発表されたが製品だが、ホットドックのような厚めの携帯電話で、開くと中からソーセージならぬ、キーボードと横長の画面が現れる。シンプルな広告に、Phone、Fax、Internet、E-mail、Pager(ポケットベル)、Organizer(住所録とスケジュール管理)とある。

 
 Communicatorという言葉には、なつかしく、さみしい思い出がある。5年前、GO社のPenPointというOSと、それを実装したAT&TのPersonal Communicatorという製品に惚れ込んだ。AT&TはHobbitというRISCチップを開発し、1992年のComdex Fallで大々的に発表した。この業界では良くあることだが、AT&TもGOも3年早かった。
 9000iのOSは、DOS上でWindows風のGUI(Graphic User Interface)を実現させたGEOSである。

■ デジタル・カメラ
 SONYのMavicaが見開き2頁、東芝のPC Cardカメラが表3に載っていた。
 Mavica(http://www.sony.com/mavica)は10倍ズーム付きの新製品が載っていた。Windowsコンソーシアムの松倉会長が持っていたので、触らせてもらったが、3.5インチディスクに保存する利便性は認めるものの、それにしても大きい。容積はSONYのデジタルカメラCyberShotの3倍以上である。VGA(640x480)なら1枚のFDにJPEGで40枚入る。

 

 
 これが米国で大ヒットしている。理由は二つ。一つは、米国人に合うサイズなのである。このくらい大きくないと、大柄な欧米人は「物」と感じないところがあり、限りなく小さくすると「宝物」になってしまう。もう一つは、FDによるシンプルな操作である。「シャッターを押すと、FDに書き込まれる」、「このFDをパソコンに入れると見える」という操作ある。従来のデジタルカメラのデータ転送は、ケーブルを繋ぎ、何らかのアプリケーションソフトを起動する必要があった。このほんの、数ステップのデータ転送手順の差が、ヒットにつながっている。
 思い起こせば、3.5インチFDを提唱したのはSONYである。8インチFD(当時はディスケットとかフレキシブル・ディスクなどと呼んでいた)をIBMが考案し、それを小さくしただけの5インチFDが登場した。その後、日立やSONY、松下から様々な小型FDが提唱されたが、3.5インチがAppleのLisaそしてMacに採用され、主流となっていった。そのSONYの3.5インチFDへの思い入れがMavicaにつながっている。
 東芝のカメラ(http://www.toshiba.com/caq1)は、PCカードサイズの超小型、軽量のもので、「撮って、カメラを開いて、PCカード部分をノートパソコンに差し込んで、写真を見る」という仕組みである。DVDドライブ搭載ノートパソコンや、ミニノートという分野を開拓したLibrettoなど、最近の東芝は「In Touch with Tomorrow」という企業キャッチの通り、すばらしい製品を次々に送り出している。

■ Creative社
 シンガポール出身のCreative Lab.社(http://www.soundblaster.com)が、3頁連続で広告を出している。「髪が逆立ち、心臓が高鳴る」(広告のキャッチコピー)AWE64サウンドボードと、「シネマ品質ビデオとサラウンド・オーディオ」のPC-DVD Encore Dxr2の宣伝である。PC-DVDは375.99ドル(約47000円)。もちろんDVDドライブ付きである。5、6年前のComdexでは、空港でSound BlasterのCD-ROMドライブが入った大きな箱を下げた日本人を大勢見かけたが、今年は、PC-DVDをお土産にする人も多いだろう。
 しかし、DVDの国別IDが米国と日本で異なるので、米国向けのDVDタイトルしか再生できない。

■ 液晶プロジェクター
 以前からHEMISPHERESには、展示会向けの携帯型簡易パネルや、景品用の安い時計やバッジの宣伝がたくさん載っていたが、最近、液晶プロジェクターの広告がやたらに増えている。

 
 InFocus社(http://www.infocus.com/ufm)は、ご丁寧にComdexのブース番号まで書いてある。 SHARP(http://www.sharp-usa.com)は軽量SVGA、SONYは(http://www.sony.com/professional)は5機種の品揃え、CTX社(http://www.ctxopto.com)は比較広告、NECと三洋、東芝、三菱はXGA対応の高精細機、EPSONは4kgの超軽量SVGA機、CRTモニタのViewSonic社もプロジェクターを宣伝している。
 なぜこれほど液晶プロジェクターの広告が多いかというと、飛行機の乗客に営業系の旅人が多いのと、30万円から80万円という高価格で売れるからである。EPSONの7000(XGA)が6000ドル、SVGA機だと3000ドルくらいで売られている。
 このような広告が、厚さ3cmのステーキや、かつら、バッグ、語学会話、電動歯ブラシなどに交じって入っている。特に、今月はComdex特集ページがあるので、コンピュータや通信と関係した広告が全体の半数を占めている。

2.Synergy'97

 
 13日(木曜日)から15日(金曜日)まで、サンディエゴのダウンタウンに近い海辺のホテルHyatt RegencyでMicrosoftのSolution Developerを対象とした、「Synergy '97」というコンファレンスが開催された。主催は、Application Developers Customer Unit(ADCU)で、ボスはMSKK代表取締役として、7月まで日本に駐在していたCharles Stevensである。
 13日の夕刻にレセプションがあり、14日は終日セミナーと夕刻から空軍の基地でパーティー、15日午前中でセミナー終了である。参加者は500人。日本からも20数名が参加した。Comdexの直前ということで、海外からの参加者が多く、ヨーロッパ各国からも数十人が参加した。

■ ADCU
 ADCU(Application Developers Customer Unit)は今年作られた新しいMicrosoftの組織で、先ず日本で東(ひがし)ソリューションデベロッパー事業部長のもとで組織化され、それが米国にも波及する形で登場した。ADCUはその名が示す通り、ビジネス・ソリューション・システムの開発社向け支援を業務としている。
 日本では東さんの下に、デベロッパー製品部 (三ヶ野原部長)、インダストリーマーケティング部(永久部長)、ソリューションテクノロジー支援部(藤林部長)の三部門がある。日本では米国以上にWindows NTが正当に評価され、着実にシェアを伸ばしているが、そのノウハウを世界に広げるための組織といっても過言ではない。
 パソコンメーカーとの提携や、OLE POS、拡張漢字処理などの産業別協議会は、日本のWindows NTの成功に大きく貢献している。
 余談だが、ホテル近くの24時間オープンの大きなスーパーマーケットRalphsで買い物をしたら、レシート以外にクーポンをくれた。リプトンのアイスティーが50セント引きと書いてある。私が買ったのはネッスルのアイスティー!これもPOSなればこそで、
 if <ネッスルのアイスティー> then <リプトンのアイスティークーポンを印刷>
という一文を入れたら実現できる。RalphsがNT POSかどうかは未確認だが・・・

■ セミナー
 Stevensのキーノート・スピーチの前に、ゲストとしてMicrosoftの前社長Mike Maplesが登場した。肩書は、セミナー資料にMicrosoft Ambassadorとあったが、PowerPointの画面ではRancherとなっていた。牧場主にしては太り過ぎである。MaplesはMicrosoftの現状を40分ほどでサラリと説明したが、退職した人なので話に迫力がない。Solution Provider制度の生みの親で企業コンピュータシステムに精通している、Business Customer Unit Relationshipの副社長Bob McDowellあたりを起用して欲しかった。
 Stevensは、ADCUの位置づけ、業務内容などを説明し、その後、BackOffice、COM、SQL Serverなどの解説が60分づつ行われた。9月にここサンディエゴで5日間に渡って行われたProfessional Developer Conference (PDC)の要約のようなセミナーが続いた。
 初日の最後に東さんが登場し、20分ほどのスピーチを行った。MSKKでのADCUの活動と、日本市場の紹介であったが、自信に満ちたプレゼンテーションであった。
 以下、Small Business Server、Windows 98、Office製品などのセッションを紹介する。SQL Serverなども充実した内容であったようだが、時差ぼけで居眠り状態だったので、残念ながらレポートできない。

■ BackOffice Small Business Server
 http://www.microsoft.com/backofficesmallbiz
 ADCUはBackOfficeアプリケーションの普及を目的としているわけだが、3種類のBackOffice(BO)製品を提供するので、ディベロッパーの創意工夫でそれを活かして欲しいというのが、今回のコンファレンスの主なメッセージである。
 BO Small Business Server、BO Server、そしてBO Enterpriseの3つである。Enterpriseは、大規模システム向けのサーバーOS、Windows NT Server Enterprise版を核として、従来の通りExchange Server、SQL Serverなどを別売している。BO Small Business Serverは、シングルサーバー限定で2から25クライアントまでをサポートしており、以下の構成となっている。
  ・NT Server 4.0
  ・Exchange Server 5.0
  ・SQL Server 6.5
  ・Proxy Server 1.0
  ・Internet Information Server 3.0
  ・Internet Index Server 1.0
  ・FrontPage 97
  ・Fax Pooling Software
  ・Modem Pooling Software
  ・Client Setup Wizard
  ・Management Console

 FaxやModemにも対応し、OSとBackOffice製品群が低価格でパックされている。インストールも容易で、ウィザード形式で、OSやネットワーク、インターネットなどの設定が可能となっている。

 因みに、未発売であるが、Back Office Server 4.0の構成は以下の通りである。
  ・NT Server 4.0
  ・SQL Server 6.5
  ・Exchange Server 5.5
  ・Proxy Server 2.0
  ・SNA Server 4.0
  ・Site Server 2.0
  ・SMS Server 1.2

■ Windows 98 vs. Windows NT 5.0 Workstation
 もちろんWindows 98やNT 5.0についてもセミナーで説明されたが、企業システムのクライアントOSとしてどちらを使うかという議論には、NT 5.0の登場で終止符が打たれることになった。
 MicrosoftはNT Workstationの最初の出荷時から、一貫して「Windowsは個人のOS、NTは法人のOS」と言っていたが、会社でも個人で使うのはWindowsという企業が多かった。これはOffice製品などのアプリケーションがWindows用となっており、またNTが機能的に劣る部分多少あったためである。
 今回、NT 5.0はWindows 98のSuperset(上位互換)と明確に定義されたことにより、「Windowsは家庭のOS、NTは会社のOS」となった。つまり、NT 5.0がPlug & PlayやPower Managementにも対応し、ノートパソコンでも使えるようなり、Windows 98の上位互換ということで、OfficeなどのアプリケーションもNTで導入しやすくなった。
 企業内のWindows 95やWindows 3.1クライアントをNT 5.0に移行するキャンペーンが来年には始まると思われる。Windows 98は、テレビのOSの方向を強めていくであろう。

■ Office製品とビジネスシステム
 http://www.microsoft.com/office/org/solutions.htm
 Office製品については、9月のPDCでのテクノロジー一辺倒の説明ではなく、実践的な解説が行われた。全世界のOfficeユーザ数は6500万人、Office 97のライセンスを受けた人は、1400万人以上との事。下世話な話で恐縮だが、Officeのライセンス料はアップグレードでも10000円以上なので、これだけで1400億円の売上である。
 このセミナーでは、Officeをワープロと表計算とプレゼンツールの統合ソフトと思うの止めてくれと言っていた。では、Officeは何かと言うと、ユーザインタフェースであり、データ解析やスケジュール管理、電子メールクライアント、Web出版、そして検索や印刷のコンポーネントの集合体と定義している。
 これらを、VB(Visual Basic)や、各Officeアプリケーションが内部に持っているスクリプト言語VBA(Visual Basic for Application)で組み合わせて、ビジネスソリューションを提供するというシナリオである。次バージョンのOfficeでは、Microsoftが強力に推進しているDynamic HTMLもサポートするとのこと。
 デモでは、Office Server Extensionという新しい概念を紹介した。Excelをサーバ側に置き、ブラウザーでExcelを操作する仕組みである。Hydra(BCN吉若さんのレポートを参照)同様、クライアント・パソコンの資源を最小限に抑えた仕組みである。これには、別途、ライセンス料金が発生すると念を押していた。

■ Selling NT Solution
 13日の昼にゴルフ・トーナメントがあり、このスポンサーがWindows NT Magazine(http://www.winntmag.com)、そして毎日の朝食が姉妹紙のSelling Windows NT誌(http://www.sellingnt.com)である。コンファレンス資料の中に、この2誌が入っていたが、Selling Windows NTはVolume1,Number1つまり創刊号である。
 表紙に「The independent guide to making money with Windows NT」とあり、すっきりした目的を持った雑誌である。Independentといちいち断っているのは、コンピュータ・メーカーや大手ソフトベンダー系の雑誌が多数存在するからである。Synegy'97の共催者であるDigitalは「NT Manufacturing」(http://www.ntmanufacturing.com)という雑誌を並べているし、書店売りされている雑誌でも、特定の会社が後援しているものがたくさんある。
 ソフトウェアのオンライン販売についての解説や、SFA(セールス・オートメーション)をどのように販売するか、などの記事が並んでいる。記事の視点がいいし、時代にマッチした雑誌である。

■ Baan
 http://www.baan.com、http://www.baan.co.jp
 この会社名を知ったのは、9月のPDCであった。Microsoft社のOS部門の総責任者であるPaul Maritzのキーノート・スピーチに、Baanの技術のトップが登場し、Microsoftとの提携や、彼らの技術についてプレゼンテーションを行った。SAP(http://www.sap.com)と同じように製造業、流通業、金融、運送、サービスなどすべての分野で使えるアプリケーション・フレームワークを提供する会社である。
 SAP同様、Unix出身の会社であるが、最新のBaan IVはBackOfficeをサポートしている。全世界の社員数は6000人(SAPは10000人)とのことで、この種の会社がWindows NTの世界でも急成長している。
 本社はオランダにあり、Baanは創業者の名前である。オランダからは10名以上が参加していたが、Baanの影響であろう。そういえばSAPはドイツだし、ADCUのプロモーションビデオには、イタリアやスェーデン、デンマークの会社も登場していた。米国が独占していたパーソナルコンピュータ・ソフトの市場に、ヨーロッパのメインフレームやUnix系のソフト会社が多数進出している。

 ADCUが設立されて早々のコンファレンスであったが、ADCUを作ったMicrosoftの考えなどが理解できた。ただし、セミナー資料一切なし(後日、PowerPointファイルの入ったCD-ROMを送付するとの事)、会場が椅子だけで机がない、などセミナーを聞く条件が悪かった。また、開催時期もComdexの直前は準備で忙しい人もいるはずで、サンフランシスコで毎年夏に開催される、Windows NT INTRANET Solutionsの前後に行うなど工夫して欲しい。
 宿泊しているホテルの中にセミナー会場があるという足場の良さは、非常に心地よかった。最後に、ADCUは3年後にも存在するか? という質問が、Stevensからボスであるグループ副社長のJeff Raikesに飛び出したが、毎年規模を拡大して開催して欲しいものである。

3.Comdex Fall '97

 Comdex Fallも回を重ねて19回目である。初日の11月17日付けで、ComdexがZiff-Davis(ZD)の一部門になるとの発表があった。どちらもSoftbank系の会社であるが、二つの巨大な展示会運営会社がこれで完全に合併した。ZDが運営する、SeyboldやInterop、NT Solutionsなどの展示会と同様、今回から、ブースの写真撮影が、特別のカメラマン以外禁止となった。
 会場は、LVCC(Las Vegas Convention Center)と隣接するLas Vegas Hiltonの展示会場、そして、SECC(Sand's Expo and Convention Center)である。LVCCが拡張工事を行っており、Hiltonに行くのに10分近く歩かねばならなかった。また、LVCC、SECCおよび各ホテル間のシャトルバス・サービスも、昨年より本数が減っているようで、待ち時間が長かった。

■ LVCC
 メイン会場であるLVCCに入ると、ここ数年、ベストポジションに陣取っているのはMicrosoftである。年々、規模を拡大し、パビリオンの中までゆっくり見ると、ここだけで半日かかってしまう。プレスセンターも独自に用意しており、主催者側の扱いも別格である。

 
 今年のMicrosoftブースは、Windows CE 2.0やOffice製品の法人向け利用、新しいホーム製品などが目立った。
 パビリオンには、Active X(30社)、BackOfficeロゴ製品(46社)、Office97ロゴ製品(6社)、Hydra関連(9社)、NetMeeting関連ハード(11社)、NT Workstation搭載ハードウェアメーカー(14社)、Small Business関連(24社)、Solution Provider(31社)、Telephony(13社)、VBA対応製品(15社)、Windows製品(39社)、Windows CE関連ハード/ソフト(30社)である。
 このパビリオン参加社の数やパビリオンの配置から、NTのビジネス利用を強調しているように見える。Synergy'97の章で述べたように、NT 5.0を会社のOSとするためにMicrosoftが全社一丸となって取り組んでいる様子が伺える。
 Microsoftブースの周りには、NEC、Philips、SONYなどのメーカーが陣取り、ハードウェア製品の性能を誇示するためにゲーム大会やデジカメ撮影会を開催している。何れもモニターやドライブ装置、グラフィックスチップなどの素材メーカーであるが、年々、展示が派手になっている。

■ キーノートのメンバー
 今年のComdexは以下のようにキーノートスピーチが行われた。開催前日、日曜日の夜のキーノートというのは異例である。私はWindowsコンソーシアム・ブースの設営などでBill Gates氏の講演を聞けなかったが、BCN吉若さんのレポートやマスコミ報道によると、NTとCEを強調したようだ。以前のNTワークステーションと95の競合状態が解消され、住み分けが明確になったが、1年後には、CEと98に家庭での競合が起こりそうである。
 18日のCiscoは、Comdex初登場である。ブースも大きく取り、ネットワーク機器の紹介を積極的に行っていた。10分ほどの紹介スピーチを聞くとTシャツがもらえるので大人気である。このTシャツ、黒いアミに入っている。「ネットで包む」というCiscoらしいジョークである。San Franciscoから採ったこの社名、以前は、cisco Systemsと小文字で始まっていたし、Golden Gate Bridgeをあしらった、ロゴもなかなかセンスが良い。
 Novellは別項の通り、Comdexに非常に力の入れていた。
・16日夜 MicrosoftBill Gates
・17日CompaqEckhard Pfeiffer
・18日Cisco System  John Chambers
・19日NovellDr. Eric Schmidt  
■ Windows CE 2.0
 Windows for Pen Computing、開発コードPegasus、WinPADと10年近くの紆余曲折の末、Microsoftは、やっと小さなOSをものにしたようだ。CE 2.0はカラーになり、従来のPocket Word、Pocket ExcelにPower Pointまで入った。前出のWebTVのOSにもCEが使われる予定で、PDAから電話、テレビ、財布PC、携帯端末など、各種機器のエンジンとしての使用が予定されている。
 CompaqのCシリーズは75MHzのMIPSチップとモデムと16MB RAMがついて、来年早々の出荷になる。PHILIPSのVELO 500もMIPSチップを使い、来年春の出荷を目指している。LG、NEC、Casioなど、CE 1.0マシンを出荷してきた会社はもちろん2.0対応マシンを発表した。そして、会場には、SHARPのCE 2.0マシンが美しいカラー画面で動いていた。

 
■ PalmPilot
 3ComのPalmPilotは、Hiltonの二つの展示場の間にある大きな通路に陣取ってアプリケーションや開発ツールを展示していた。PalmPilotの成功は、その機能や価格と共に、充実した開発ツール群にあると思う。Macの開発環境として定評のあるCode Warierが使えるので、アプリケーションも充実している。このあたりが、SHARPザウルスとの違いである。

 
 NTTデータの山田さんという人が、Code Warriorを使ってPilot全機種用の日本語環境を1年がかりで作り、商用ソフトとして4000本を販売したという記事が、Pen Computing誌に紹介されていた。簡単な漢字変換を含むOSの日本語化を彼は趣味で行ったのである。正式の日本語版も、来年春には発表されるとの事。
 LotusはNotesおよびOrganizer 98のグループスケジュール管理を、PalmPilotのHotSync機能でリンクすると発表した。また、IntelliSyncというサードパーティー製のリンクツールも発表されている。
 IBMはWorkPadという名称でPalmPilotをOEM販売しており、PalmPilotの勢いは当分続きそうである。

■ DVD
 1394や高速シリアルバスUSBと共に、今年のハードウェアの目玉の一つがDVDである。何れも、NECの大宣伝で耳慣れた、「PC98」ハードウェア・スペックで定義されている仕様である。DVD-ROMドライブを搭載したノートパソコンも、発表済みの東芝Tecra(http://www2.toshiba.co.jp/pc/catalog/tecra/t750dvd/index_j.htm)以外に、IBM ThinkPad 770やPanasonicが出ていた。もっとも自動車業界と違って、仲の良いコンピュータ業界だから、1社が薄形DVDドライブを出せば、搭載はどの社も簡単に行える。
 DVDを使った映画鑑賞会もモニターメーカーやホームパソコンメーカーで行われていた。NECのCereb(http://www4.pc98.nec.co.jp/product/98/cereb/)と同じ機器構成で、大画面TVと高機能PCをセットにして、DVDドライブが付いている。
 Comdexの帰りにサンフランシスコに寄ったが、HMVやVirginなどのCDショップのDVDコーナーも充実してきた。といっても、まだ二桁のタイトル数だが・・・ 日本では寅さんシリーズが5800円で発売されたが、米国では1枚24ドルくらいで、タクシードライバーやターミネーター・シリーズが売られている。
 DVDが定着するには、四桁のタイトルが必要と思われるが、その前に、DVDドライブ付きのWindows 98パソコンが大量に販売され、再生環境がタイトルより先に整ってしまう可能性が高い。

■ NovellのNDS大ネットワーク
 http://www.novel.com/NDS
 http://www.novell.com/lead_stories/97/nov12/bridge.html
 LVCCの入り口や、SECCの通路にCompaqのパソコンが100台以上も並び、Comdex参加者へのお知らせメールや、インターネット・サーフィンなどが自由に行えるようになっている。NovellがDNSで構築した20万人の巨大ネットワーク・システムのデモンストレーションである。

 
 PC Weekなどのコンピュータ雑誌や、経済新聞Wall Street Journalで、起死回生の大宣伝をこのプロジェクトで行っている。

■ 出展していない会社
 毎年、DELLのブースに行くのを楽しみにしていた。この5年ほどずっと、ノートパソコンLatitudeのユーザで、今のマシンが3台目である。Pentiumの133Mなのでそろそろ買替えの時期なのだが、ブースが無かった。DELLは直販なのでユーザがマシンに触れる機会がない。デスクトップ型はボディーを触っても何の感動もないが、ノートは、手触りが非常に重要である。薄形軽量の新製品、Latitude CP (http://www.dell.com/jp/products/latitude/cpmmx/index.htm)のキーストロークや、タッチパッドの使い心地を知りたかったが残念である。
 そう言えば、Compaqも出ていない。今年は本拠地Houstonで、Innovateという催しを4年ぶりに開いたし、NDS大ネットワークでCompaqのマシンが並んでいるからそれで良いのだろう。
 Appleもブースを出していない。そして、Netscapeも。

■ Linuxパビリオン
 Sand'sの地下は、5、6年前からマルチメディア関連の新興企業が小さなブースを出していたが、今年は、目新しいものが無かった。そんな中で、面白かったのが、FreeBSDなどのCD-ROM製品販売でお馴染のWalnut Creek(http://www.cdrom.com:すごいでしょ。さすが老舗の貫禄URL)ブースの周りに陣取った、Linux関連の会社である。Comdex認定のパビリオンというわけではなく、Linux関連企業5、6社が、勝手にブースを近くに並べただけの手作りパビリオンである。このあたりもLinux的で好感が持てる。

 
 CDやニュースレターのLinux Mall社(http://www.linuxmall.com)、Linux Journal社、各種サーバOS間の接続を得意とするCaldera社(http://www.caldera.com)などが並んでいたが、特に目を引いたのがRed Hat Software(http://www.redhat.com)である。
 Red HatはLinuxを使ったインターネットOSやApplixwareという名のLinuxのオフィス・アプリケーション製品を出しており、赤い帽子のロゴもセンスが良い。コンピュータ好きの素人集団の中から、まじめにビジネスをやる会社が登場したようだ。

■ Hanes T-Shirt Maker
 Http://www.hanes2u.com
 TシャツのHanes社である。1年以上前からEgg Headなどのパソコンショップで見かけたが、真っ白なTシャツと、画像編集印刷ソフト、専用の用紙がセットになっており、40ドルくらいで売っている。
 これの開発会社であるAustin-James社がComdexにブースを出していた。オリジナルのTシャツが作れるとあって、ブースには人だかりがしていた。Tシャツ5ドル、ポロシャツ8ドル、スウェットシャツ7ドル、スウェットパンツ7ドル、マウスパッド6ドル、布のカレンダー 8ドル、エプロン10ドル、・・・と注文カードも入っている。カレンダーの日付以外はどれも真っ白な商品である。
 サンフランシスコのEgg Headには、T-Shirt Makerのコーナーがあり、Tシャツがたくさん並んでいた。Tシャツやポロシャツをパソコンショップで買うのも妙なものである。
 このT-Shirt Makerの場合、小さなソフト会社がHanesという大ブランドと組んで成功した例である。同じ時期にMicrosoftとHallmarkという巨大企業が組んだグリーティング・カードソフトは、Tシャツ印刷ソフトほどのインパクトがないため、成功には至っていない。
 また、ダブルブランドではなく自社でDisneyが一昨年にパソコンソフトに参入したが、今回、積み木玩具のLegoがソフトウェアに参入した。積み木までバーチャルになってしまった。

■ Cross
 http://www.cross-pcg.com
 機内誌の章でも書いたが、ボールペンのCross社が大きなブースを出していた。ペン一筋、150年の歴史を持つ会社である。「Finally, a stylus with Cross quality and styling」とキャッチもふるっている。6種類、カラーバリエーションも含めて29製品が並んでいた。
 電池の関係かCrossの一般のボールペンより太目で、持ちやすい。金に縦線の入ったあのCrossが並んでいる。12ドルの普及品から80ドルのチタン製最高級品まで揃っている。
 PalmPilotそしてWindows CEの登場で、スタイラス市場に活気が出てきた。ParkerやMontblancもスタイラスペンの新製品を用意しているかもしれない。Parkerならどこそこの難破船から引き上げた金塊を使った、世界限定1000本の50万円くらいするスタイラスを作ってくれるだろう。
 このCrossのスタイラスペンを発端にして、価格競争ではなく、高級素材を使ったパソコンの登場を期待している。数年前にも他の雑誌に書いたが、黒檀のキーボード、刻印は真珠貝という物である。
 春のAtlantaのComdexにもブースを出していたとの事だが、今回は、タブレットまで登場した。このi-Penという商品、スタイルもすばらしい。タブレットの周囲が皮張り風になっており、CROSSという文字が金色に浮き上がって輝いている。ペンのキャップは22金とカタログにいちいち注記してあった。このi-Pen、単なるタブレットであるが、マウスをこれに置き換えるという壮大な計画をCross社は持っているようだ。

 
 Mouse Points, Clicks
 i-Pen Points, Clicks, Signs, Edits, Writes, Draws
 と広告に書いてあるが、確かにそのとおりである。価格は150ドル程度。案外大きな市場がありそうだ。ちょっと機構が複雑になるが、次はボールペン+スタイラスペンという融合製品を出して欲しい。シャーボの発想である。

■ 今後のコムデックス
 Comdexの会期は5日間であるが、3日でほぼ全体をぐるりと回り、ラスベガスを後にした。なぜ、早々に引き上げるかというと、ホテル代が高いからである。有名な巨大ホテルは1泊30000円近くになる。同じ部屋が、冬場の安い時期に1週間泊まると、1泊6000円くらいまで下がる。
 今回の来場者数は25万人という予想を下回り、20万人程度であった。ラスベガス在住のコンピュータ関係者は皆無なので、みんなホテルに泊まる。集客にはホテル料金の値下げがいちばん効果がある。
 しかも、来年冬には、Treasure Island、The Mirageと同系統のDel Bellagioが建ち、その前、つまりBally'sとAladdinの間にParisも控えている。また、Sand'sの後には巨大なThe Grand Venetian & The Lidoが1999年にオープンする。数千室規模のホテルが林立することになり、過剰供給になることは必至である。抜群のセンスを持つZiff Davis系に運営が移ったので、来年は居心地の良いComdexになることを期待している。
 また、Comdexのテーマも見直しが必要と思われる。Computer Dealer's Expoというテーマはいかにも大きい。今のComdexはコンピュータのごった煮である。ZD系のExpoであるWindows Solutionsも、NT INTRANETを加えて、「Windows NT INTRANET Solutions」と名称を変更し、更にテーマをセグメント化して成功した。SeyboldもDTPからWebデザインへとテーマの変更を見事に成し遂げた。
 Linuxのとなりのブースがキーボード、その隣りがゴルフソフトという、何でもござれのComdexをどのように変身させるか、ZDのお手並み拝見である。
 インターネットで得たい情報が手に入るからExpoは衰退するという意見は多い。しかし、無味乾燥なインターネットだからこそ、そこで知り合った者同士が酒を酌み交わす、オフライン・ミーティングの機会が増えるのも事実である。それには、不夜城ラスベガスは恰好の場所である。

4. Windowsコンソーシアム・ブース

■準備
 16日の早朝サンディエゴを出て、サンフランシスコ経由でラスベガスに入った。昼頃ホテルに入ったが、本日はComdex客と一般観光客の入替え日の為、3時まで部屋は空かないとの事。大きなトランクをホテルに預けて、早速、Windowsコンソーシアム・ブースの設営に行った。シャトルバスは明日からなので、タクシーでLVCCに向かった。円安の為、チップ込みで10ドル程度のタクシー代も結構な額になってしまう。
 LVCC横の巨大なテントでComdex入館バッジをもらい、10分ほど歩いてHilton内のブースに行った。会場は設営でごった返している。どのブースも、まだ半分程度の仕上がりである。
 今年のWindowsコンソーシアム・ブースは、インターネット関連の展示を集めたHilton会場の中に、業界の週刊新聞で有名な「ビジネス・コンピュータ・ニュース(BCN)」社と一緒に出展した。10フィート平方のコマ2つをBCN社と分けて使った。壁際で、悪くない位置である。
 ブースに行くと、展示用テーブルがあるだけで、まだ、後ろに置く棚も商談用テーブルも椅子も来ていなかった。まず、日本からの送付物の確認である。カタログ類や配布用のCD-ROMなどを確認し、装飾や設備を催促して、一応の体裁が整ったのは、5時過ぎであった。
 それから、タクシーを捕まえてホテルに戻り、やっと部屋の鍵をもらった。結局、7時からのBill Gates氏のキーノート・スピーチを聞くことができなかった。

BCN吉若さん、千葉さん、松倉会長
 
■展示内容
 初日の17日は、富士ソフトABCの方々と、プレスセンターに置くカタログセットを500部作成し、持ち込んだ。クレオ「筆まめ」の美しいカタログに、欧米の記者達が見入っていた。
 ブースでは、昨年同様、Windowsコンソーシアムの活動報告と、会員企業の紹介を行った。また、有償のカタログ参加には、クレオ、ランドコンピュータ、富士ソフトABC、イーストの4社が参加し、各社のカタログをこのブースおよびプレスセンターで配布した。
 ブースは、持ち回りで担当を決め、富士ソフトABCの社員の方々や松倉会長、ランドコンピュータの原さん、シリコンバレーで日本語化などのソフトウェア開発を行っている、Chiba-Shotenの千葉さんなどに手伝ってもらった。

富士ソフトABCの方々と千葉さん、そして筆者
 
■総括
 昨年は、「Japan Wincons」という名称で、単独でブースを運営したが、今年は、BCN社と共同だったので、器材のレンタルや説明員の手配など、楽であった。日本からの来場者の休息所として、テーブルや椅子を並べておいたが、話し込んでいる光景も目立った。「毎年、ここでしかお会いしませんねぇ」いう挨拶も聞こえてくる。
 BCNさんには大変お世話になったが、大きな事故もなく、3日間の展示を終えることができた。

(イースト株式会社 取締役 コミュニケーション事業部長 shimokawa@est.co.jp)

 

● COMDEX/Fall'97 視察報告

BCN・COMDEX特別取材班  吉若 徹

PC市場の変革を示唆するCOMDEX/Fall'97

 米国ネバダ州ラスベガスにおいて、COMDEX/Fall'97が11月17日より開催された。17日の開催にあたって日曜日16日の午後7時から開催された基調講演ではマイクロソフトのビル・ゲイツ会長が登壇した。
 翌17日より幕を開けたCOMDEX/Fall'97はマイクロソフト一色と言っても過言ではないほどマイクロソフト社の色の濃いショウとなった。会場ではマイクロソフトパビリオン、USBパビリオン、インフラレッドパビリオンなどが設置され、インターネット、イントラネット、コミュニケーション関連製品など、これまでのCOMDEXになかった製品群が展示された。

WindowsはNTとCEの2本柱に支えられて発展とゲイツ会長表明

 1997年秋のCOMDEXは、恒例のごとくラスベガス・コンベンションセンターで17日から開催されたが、前夜祭としてマイクロソフトのビル・ゲイツCEOが16日の夜、アラジンシアターで7,000人以上の聴衆を前に特別基調講演を行い、これからのWindowsはNTとCEの2本柱に支えられて発展すると語った。
 同氏は1998年に出荷するNT5.0は、NT4.0のバージョンアップではなく、エンタープライズを狙った「NTファイブ」という新OSだと強調した。さらにWindows CEはハンドヘルドPCだけでなくデジタルTV、ナビゲータ、CD/DVDプレイヤー、WebTV、ウォレット(財布)PCなど、インターネット家電の中核OSの座を確保すると説明。講演中にはWindows 98という言葉は1度も聞かれなかった。
 マイクロソフトはすでにNTと98のカーネルの統合化路線を発表しており、98よりもNTに重点を置いていることが、この講演で読み取れた。
 COMDEX初日のキーノートスピーチを行ったコンパックのE・ファイファーCEOは、今後のPCの主力市場はエンタープライズとデジタルホームであると説明した。PCサーバーがスケーラビリティを拡大することで、リガシィシステムをリプレースし、PCがこれからの全ITの標準技術となることを強調した。

 PC産業がインターネット家電を包含することによって、ホームや自動車の運行環境はデジタル技術で取り囲まれ、それぞれデジタルホーム、デジタルカー時代が到来することを示唆した。COMDEXの展示場では、IBM、ロータスによるJava、IBMを中心としたNCの展示、マイクロソフトが協賛ベンダーとともにWindows Terminalのデモを派手に展開した。

 ロータスは待望のJavaアプレット集(コード名Kona)を「eスイート・ワークプレース」として正式に展示。このコーナーでは日本語版のデモも行われ、98年1−3月に日本でもリリースすると説明した。
 IBM自社のNCであるネットワークステーション100/300/1000の全モデルを展示し、すでに米国の大企業1500社に平均500台から1000台を設置したと説明した。
 一方、マイクロソフトはNT4.0上のマルチユーザー・サーバーソフトHydraベータ版に、ワイズ、バウンドレス、IBM(NCD製)、DECなどのWindows Terminalを接続し、シンクライアント上で32ビットWindowsアプリケーションを高速に処理させていた。
 今回のCOMDEXではとくに低価格のノートPCの新製品が目白押しの状態であった。

 
 また、米国のノートPC市場で、コンパック、IBMと激烈なシェア争いをしている東芝のブースの大きさが目を引いた。韓国のLG電子はサンの技術供与によるピコJavaチップを初公開し、テレビ、電話、プレイヤー、NCなどの主力チップになることを強調した。

 米国のPC市場は伸長しているが、多くの参加者の目はJava、NCやWindows Terminalどのシンクライアント、デジタルの地上波TV放送用のSTBなどのインターネット家電に引き付けられているようである。米国のPC市場にも変革の兆しが明確に現れ始めたと見るべきであろう。

マイクロソフト、WBT、Hydra発表

 マイクロソフト一色となった今回のCOMDEXだが、マイクロソフトは今回のCOMDEXでWindows 98の機能評価版を展示したほか、米オラクルなどが推進するネットワーク・コンピュータ(NC)に対抗した新型の低価格ネットワーク端末を発表した。新型端末の名称は「Windows Based Terminal(WBT)」。ネットワーク上のサーバーが端末を一元管理するため、端末自体にWindowsは搭載していないが、Windows搭載パソコンと画面表示や操作方法が同じため、パソコンの操作ができる人は誰でも操作が可能であるという。

 ハードディスクなどパソコン用の主要周辺機器が不要なため、価格が500−600ドル程度と安価であることも特長である。オラクル陣営のNCが実行に必要なソフトを操作時にサーバーから回線経由で取り寄せて端末上で実行させるのに対し、WBTはサーバー側で全ての処理をするため、回線に負荷がかかりにくいという利点もあるという。

 同時にマイクロソフトは、「Windows Based Terminal(WBT)」に対応するサーバー「(コードネーム)Hydra(ハイドラ)」のβ1版を発表した。ハイドラは、本年5月に米シトリックスと共同開発すると発表したもので、Windows NT Server4.0、また将来バージョンに、複数かつ同時にクライアントがアクセスできるホスト能力を提供する。ハイドラでは、アプリケーションなどはサーバ上で実行し、クライアントは単なる入出力機として働く。そのため、Windows NT用の32ビット・アプリケーションがそのまま利用でき、またクライアント側にアプリケーションを実行する環境が不要なためクライアントを低価格化できる。すでに主要な端末メーカーが対応を表明しているという。

 会場ではWBTおよびハイドラに対応した製品群のデモをマイクロソフト・パートナー・パピリオンで見ることができた。
 ハイドラβ1版は発表後、技術評価用に配布される予定である。マイクロソフトは、β1のインフラや互換性の試験結果をフィードバックし、β2のリリース時期を決定するとしている。製品版の価格や発売時期は未定である。

(株式会社コンピュータ・ニュース社 常務取締役
waka@computrnews.com)


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