最新Windowsソフトウェア事情(第34回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄
(mtaka@fsinet.or.jp)



日本百名山をめざして

 前号から引き続いて感傷的な文章をつづらせてもらいたい。いつの頃からか、山へのあこがれが芽生えてきた。大学時代、長野県の大町郊外にあった学生村で過ごした1ヶ月間、それがきっかけであっただろうか、50過ぎたら山が見える場所で生活したいと思い続けたのである。そしてようやく小淵沢に窓から大きく南アルプスや富士山が見渡せ、そして北側からは八ヶ岳(編笠山、権現岳)がのぞめる家を建てたのであった。しかし、国立大学つまり国家公務員の身分ではせいぜい週末利用がよいところで、できれば週の半分は山で過ごしたい強い希望をかなえることができそうにない。そこで98年4月から南柏にある麗澤大学国際経済学部に移ることにした。私立大学なら授業さえしっかりこなせばあとはSOHOを実践したいという研究テーマのために「週の半分は山で」が実現する。ただし、すでに紹介したように防犯には配慮しなければならない。何かうまい方法があったら教えて欲しいものである。
 大町の学生村は遊びで滞在したわけではない。卒業論文執筆!がその主たるねらいであった。執筆に明け暮れる合間に(?)、民宿(学生を格安の料金で長期滞在させてくれた)の裏山にのぼっては北アルプスを飽きずに眺めて暮らした。木崎湖湖畔の高みからは前衛の山越しに鹿島槍、五竜岳、白馬など後立山連峰が見渡せ、それはそれは見事な眺めであった。学生村に滞在していた一ヶ月の間に白馬、唐松、五竜を征服!したことはいうまでもない。五竜から鹿島槍へ目指した当日、台風の接近にともなった天候が危うくなり、断念したことはいまでも残念で仕方がない。
 50代も半ばをすぎた現在、あらためて山へのあこがれがつのってきた。その大きな理由はWindowsコンソーシアムの小泉さんの指導や教唆があったためであろう。最近はカバンの中に「甲斐駒ガイドブック」を潜ませて登山ルートの確認を何度も繰りかえし行っているところである。黒戸尾根からの厳しい登頂のイメージがすでに頭の中に描かれ、かっこよくいえば、バーチャル登山はすでに何度も試みている。そういえば深田久弥の「日本百名山」が中高年の間であこがれとなっており、一種たまごっち的なブームにみえるほどである。私もこのブームにまきこまれて、百名山と名がつけばつい手にしてしまう症候群に陥った。

図1
 
 図 1はパソコンショップで衝動買いしてしまった「岩崎元郎と登る深田久弥の日本百名山」の画面例である(TOSIHBA EMI社)。上下2枚で一万円弱の投資となったが、お金はともかくパソコン画面上に次々にあらわれる名山の雄姿を眺めているだけで学生村の日々を思い出す。メニューの百名山リストから鹿島槍を選択してみると図のようにカラフルな写真の上段に基本データやコース概要が示され、右側に機能メニューがリストされる。

図2
 
 ここで地図を選択すると図 2のように、鹿島槍をめざす登山コースタイムとともに左側に地図が表示される。これをそのままPrintして山へもっていけばよいが、そんなことでは遭難間違いなしであろう。やはり国土地理院5万分の1地図が必携である。それはともかく、かつて五竜岳から難所八峰キレットを越えて目指そうとした鹿島槍も信濃大町から大谷原へ入る道がもっとも短時間で山頂に立てるルートである。いずれ挑戦したいと思い、そのためのメモとしてこの画面を印刷しておいた。

図3
 
 つづいて図1のメニューから「山の話」を選択すると深田久弥や岩崎元郎の話をテキストで読むことができる。図 3の右側には古典ともなった深田久弥の「日本百名山」(新潮社、最近は文庫本も発刊されている)からの一節が表示されている。さすがに名文である。

図4                    図5
 
 このソフトはいうまでもなく、CD-ROMマルチメディア版である。したがって豊富なカラー写真などが売り物であり、それらの写真(岩崎さんとその仲間が撮影したもの)は図 4のようにメニューから「山の写真」を選択することによって楽しむことができる。図では甲斐駒ヶ岳を選択してみたところである。それによって画面には図 5のように画面下段の左右のボタンをクリックすることで次々に見事な写真が表示されてくる。図では北沢峠から登ったときに出会う駒津峰から眺めた甲斐駒ヶ岳の雄姿である。

図6
 
 さきほどのメニューにはさらに「登山記録」がある。これを使うと自らの登山記録を残しておくことができる。さっそくためしてみると図 6のようにまだ未踏峰ではあるが19**年にようやく実現した登頂記録がすでにつづられている。いつになるか分からないが足腰が丈夫なうちになんとかと思っているところである。
 私の山の家からは甲斐駒ヶ岳をはじめ北岳、鳳凰三山などが一望でき、その左端に谷をおいて富士山も姿をあらわす。こうした風景をデジタルビデオにおさめてコレクションしていることはいうまでもない。朝日がようやくさし始めるころ、庭に出てビデオカメラを回して撮影した映像はデジタルカメラで撮った静止画とはまた違った魅力がある。しかし、みなさんにそうしたビデオを見てもらうわけにいかないので、すでに紹介したソニーのVAIOにボードを装着したDV端子から直接、キャプチャーできるハード(そしてソフト)を使って富士山の写真を紹介しよう。

図7
 
 図 7はこのDVBK-W2000のDVシェルソフトを起動し、接続されたデジタルビデオカメラを画面左側のコントロールボタンで操作し、これはと思われるショットを静止画として画面右側にキャプチャしたところである。この写真はデジタルのままキャプチャされ、JPEGあるいはBitmap形式で保存できる。また、ビデオソフトの登録や管理もこの画面上でできる。大変に便利なボードとソフトである。なお、最新のVAIOには標準でこのボードとソフトが組み込まれるようになった。しかもハードディスクは4GBから6.5GB、メモリは32MBから64MB標準に増えた。人よりも早くという方針はそろそろ見直す時期かなと思ったりするが、新機種が出るとつい目を奪われてしまう。なお、図 8はこの夏に征服した日本百名山の一つ、乗鞍岳山頂の私の雄姿である。「万歳」などをしているが、実は山頂下の駐車場から一時間半の登山であった。

図8
 
 山と地図は当然の組み合わせである。地図をもたずに山へ入るのは自殺行為といってよい。この地図の世界は最近、次々に新しいソフトが発売され、また価格も急速に下がってきた。一般のパソコンユーザーにとってはありがたいが、ソフトを作っている会社にとっては競争が激しくなり、大変である。

図9
 
 それはともかく、私も10種類前後の地図ソフトを集めているが従来から利用してきたのはMapFanII(インクリメントP社)である。図 9はMapFanllの画面例である。上段にはスポットやツールなど固有のメニューがあり、その下のツールバーにはスポット表示や検索などのボタンが見える。また地図の現在位置に対応する緯度・経度も表示されている。地図上で自分の家をロケートすればその位置の緯度・経度を読みとることができる。みなさんの家は地球上のどの位置にあるのだろうか、一度調べてみたらいかがだろう。私の山の家は図の中央に大きな円の中に+記号で表示されている北緯35度東経139度に位置している。図はまた、見事な立体地図になっている。こうした立体地図は都内の平地ではせいぜい新宿副都心などが目を引くだけだろうが、山国ではその効果は抜群である。

図10
 
 地図ソフトの定番といえばヴァル研の「駅すぱーと」であろう。このソフト一つでビルを建てたといわれているほどだ。今年、島村社長が急逝されたのはまことに残念だが私にとって島村社長とともに彼の分身として長年のつき合いのあった山田さんがあとをついでがんばっているのは心強い。図 10は「駅すぱーと」を使って私の自宅から小淵沢への経路を探索し、地図上そして画面下段の交通網ウィンドウに表示させたところである。なお、「駅すぱーと」はMapFanllとも連携でき、図では小淵沢駅周辺の地図をMapFanllから表示させたところである。

図11
 
 「駅すぱーと」の関連商品に「途中下車」シリーズがあり、「日本の名峰」、「名湯・秘湯」、「日本の滝」などすでに10種類前後発売されている。CD-ROMに収録された各スポットはそれぞれ、実際の交通経路は駅すぱーとから検索できる。たとえば図 11は「日本の名峰」のメニュー画面であり、ここから地域あるいは山の名前で調べたい山を選択すればよい。

図12                    図13
 
 ためしに「中央・南アルプス」を選択してみると図 12のような山の一覧が表示された。ここでたとえば甲斐駒ヶ岳を選択すると図 13のように山岳写真家、白籏史朗氏の撮影になるカラー写真が表示され、その右側には山の解説、下段には簡単な登山ルートが表示される。さらに右下に見えるツールボタンの中には「駅すぱーと」ボタンがあり、それをクリックすると駅すぱーとが参照されて図 14のようにあらかじめ登録しておいた居住地を出発点として登山口に至る旅行経路や時間、費用が表示される。「駅すぱーと」ともに手元に揃えたいコンテンツのシリーズである。

図14
 
 地図ソフトの最後として最新の「プロアトラス97日本広域」を見ておこう。このソフトはショップでの4,200円という価格からは予想できないような豊富な機能を備えており、もちろんGPS対応である。先日、渋谷の町を歩いていてたまたま、9,800円の値段のついたソニー製のGPSセットをみつけて衝動買いした。定価5万数千円であることを知っていたためである。おそらくほとんど売れずに捨て値でショップに回ってきたのだろう。私にとってGPSカードはもう一つ別にマイクロネットワーク社のセットがあった。2セットあってもとくに意味がないが、値段につられてつい、無駄をしてしまった。欲しい人には1万円でゆずりたい。もちろん、一つ前のバージョンであるがプロアトラス95がセットされている。

図15
 
 図 15はプロアトラスの画面例である。ここには「地理情報事典」の検索ウィンドウが表示され、日本百名山もちゃんと含まれている。じつはカタログのこの箇所を見てつい衝動買いしてしまったのが実際である。それはともかく、たとえば甲斐駒ヶ岳を選択してみると地図上にその位置が表示される。

図16
 
 また、図の下段に見える「鳥瞰図」ボタンをクリックすると図 16のように山の鳥瞰図が見えるではないか。これは4千数百円にしては「買い」であった。なお、今回は紹介できないがエーアイソフトから「VISTAPRO地図コンバータ」という名前のソフトが発売されており、これを使うと等高線データを入力することで立体地図を描くことができる。描いた山には季節にあわせて雪や紅葉で塗りわけることさえ可能である。次の機会に紹介しよう(つづけて山の話ばかりしているので、もういいよ!という声も聞こえてきそうであるが)。

図17
 
 最後に図 17は同じく地理情報事典に収録されているもう一つの項目、「名水百選」である。ここには先日、ハイキングに出かけた甲斐駒ヶ岳のふもとに流れ落ちる白州町尾白川渓谷や八ヶ岳南麓の名水が含まれている。じつは私の家のすぐそばに「根本湧水」とかんばんが立てられたわき水がある。たしかに泉のそばに立つ樹木の根元から清水がこんこんと湧いてきている。回りには私の家のほかにもう1軒だけしかなく、いわば2軒で占有する百名水の一つである。

図18
 
 図 18は私の家をおとずれた岩波書店の編集者(宮部さん)がデジタルカメラで撮影し、自分のホームページに掲載してくれているこの高橋湧水(正確には根本湧水という)の写真である。左の写真は家の前から見える甲斐駒ヶ岳、右側は湧水をバックにした写真である(片山さん、勝手に載せてごめんなさい。肖像権の侵害かな?)。URLは「www.asahi-net.or.jp/~MD6N-MYB/besso.htm」なので、とりあえず画面上で一度おとずれて欲しい。また、機会があればぜひ、湧水でコーヒーでもわかして飲みましょう。先日はこの湧水の前に5,6台の車がとまり、車座になって夕方まで宴会をしていました。
 このようにして今回は日本百名山とからませて地図ソフトのあれこれを紹介した。会員のみなさんで地図がらみの製品がありましたらぜひ、見せて欲しいと思います。よろしく。

(筑波大学大学院 経営システム科学 教授
http://www.fsinet.or.jp/~kaikoma/)


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