最新Windowsソフトウェア事情(第32回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄
(mtaka@fsinet.or.jp)



AVマニアの強い味方

●ようやく届いたソニー製パソコン
 昨年のComdex/Fall以来、ソニーのパソコンに興味をもっていた。ゲームパソコンの世界で急速にシェアを高めてきたソニーがホームパソコンの世界でどんな機種を出してくるのか大いに期待されたのである。日本でもようやく7月中旬から、まず最初にノートブックパソコンつづいてデスクトップパソコンが発売になった。6月のWindows Worldでその実際を見ていたのでなんとか手にしたいと思っていたが、あるプロジェクトの関係でようやく8月末にデスクトップ型のVaioが届いた。写真が私の自宅に設置されたVaioである。

 
 さっそく、主としてAV関連機能を中心にその豊富なソフトをためそうとしたことはいうまでもない。ただ、届いたその日のうちはハードの音(ファン?)がじつに静かでさすがはソニーだと思っていたが、2日後の現在、いざ本欄の原稿を書くために起動すると、どういうわけか音がうるさくてしようがない。今日は日曜日なので明日以降にサービスセンターに電話して騒音の原因を聞くことになろうが、こんなうるさい音ではせっかくのモニター内蔵の「ステレオスピーカーやウーファー」が泣くというものである。ソニーさん、なんとかしてよ!
 AV(オーディオビジュアル)といっても音声は図版で紹介しにくい。やはりビデオ動画の世界が紙面を華やかに飾ることになる。たしかに、VaioにはTVチューナーに加えて,ビデオ1、ビデオ2と二つのビデオ端子が用意されている。それらを使ってTV番組やビデオ素材をキャプチャーして編集し、その結果をビデオに外部出力したり、あるいはビデオCDの形で製作できる。そのための必須のツールとして、リアルタイムエンコーダ(MPEG1)や4GBのハードディスクが標準装備されている。1GBで1時間程度の番組が録画でき、しかもタイマー録画までセットできる。録画した番組は再生して楽しんだり、これはと思う場面を自由に編集して一つのストーリーに沿ったコンテンツとしてビデオCDに収録して、ビデオソフトのライブラリーに加えることができる。たとえば、ドジャーズ野茂投手の登場場面や三振をとった場面などをビデオクリップにした上で、静止画のタイトルから実際の動画クリップへといたる階層構造をもたせたビデオCDに作り上げれば、「X月Y日の7つめの三振」の場面を即座に楽しむことができる。

 さて、こんな話をしだすとすぐにでもTV番組やビデオ動画をキャプチャーしている様子を図版で示す原稿を書かなければならない。しかし、残念ながら本誌でこれまで利用してきた画面キャプチャーソフトでは、動画ウィンドウが開かれた画面をそのままファイル保存はできない。動画の部分がまっ黒になってしまうのである(誰かうまい方法を教えて欲しい)。本欄執筆にあたっては、まず図版を作成し、そのあとで図版にそって内容を書いていくという手順をとってきたが、今回はそういかない。やむをえないので、まず先に原稿を書いて、図版は時間があれば事務局に写真撮影してもらいたい所である。ただし、TV番組を録画するシーンは同じ番組を再現できないので、工夫が必要だろう。パソコン画面を手元のデジタルスチールカメラで撮影することも考えられるが、パソコン画面をきれいに撮るのは私にはとうてい無理である。

●ビデオ感覚でTVを録画SlipClip
 Vaioにバンドルされた20数本のソフトの中でもっとも注目されるのがSlipClipである。このソフトはTVやビデオ素材の録画、再生用のスリップレコーダー、映像編集ソフトのクリップエディター、収集したビデオクリップの管理用ソフトであるクリップビューアー、編集したビデオを特定のストーリーに応じて編集してビデオCDのタイトルを作成するビデオCDクリエーターそしてビデオCDのコンテンツを別のCD-ROMにコピーするビデオCDコピーツールの5つのソフトから構成される。今回はこのSlipClipを中心にみてみることにして、それ以外のバンドルソフトについては別の機会に紹介することにしたい。

図1
 
 図1はVaioのデスクトップ(単なる壁紙)からSlipClipフォルダー、そしてスリップレコーダーを起動しようとしているところである。なお、上段にメディアバーとよばれるマルチメディアソフトのパソコン起動と同時にスタートするように設定されている。これはWindowsアクセサリーソフトのメディアプレーヤの高機能版のようなソフトである。

図2
 
 スリップレコーダーは図2のように、左上にメインウィンドウが開かれ、再生メニューの「ソースモニター」によって接続されているソースの画面が右側のように開かれる(本当はTV番組がきれいに映っており、音声もソニースピーカーから聞こえているのだが、画面コピーすると真っ黒になってしまう)。TV番組を楽しむだけなら図1のフォルダーでもわかるように「TV」ソフトを使えばよい。
 スリップレコーダーでTV番組(あるいは二つのビデオ入力端子に接続したビデオ機器)を録画するにはハードディスク上にその名もテープとよばれる領域を設定する。それが図の下段にみえる「テープ設定」である。これによってテープを指定すればそのテープ上に番組が録画される(既存のテープ内容を新しい内容で置き換えてもよい)。図ではテストのためにvaio1というわずか5分間の短いテープを用意してみた。ウィンドウの下段にはこのNormal録画モードでは5分間で約50MBの領域が必要であることが示されている。なお、自動インデックスという項目があるが、これは動画の変わり目(シーン)を自動的に認識してインデックスを作成し、テープクリップ(テープとインデックスをあわせてクリップとよぶ)の編集を支援する機能である。もちろん、自分でインデックスを定義することもできる。

図3
 
 これでレコーダーウィンドウに用意されている録画/再生/ポーズボタンの録画ボタンをクリックすると現在のソースの録画が始まる(ソースはINPUTボタンをクリックすることでTV、ビデオ1、ビデオ2と切り替わる)。また、TV番組はCH(チャンネル)ボタンをクリックするか番号をクリックして選択する。また、再生メニューの「スリップ」によって録画中のウィンドウを表示できる。図3で右側のウィンドウがスリップ中の画面である。ここで録画途中の内容も録画はそのまま継続して、この再生画面で下段のレバーを移動することで録画途中でもそれまでに録画されて内容をバックモーションをかけてみることができる。たとえば、スリップレコードしながら野球の試合を見ていたとして、松井がホームランを打ったとしよう。試合はそのまま続けた(録画した)として、直前のホームランのシーンを即座に戻してみることができるのである。もちろん、スローモーションも自由自在である。マルチメディアコンテンツ作成支援というよりも、単にTVの新しい楽しみ方を提案する機能と理解してもよいだろう。たしか、商品としても5秒間だけ画面を戻せるTVが松下電器から販売されていたと思ったが、その長時間版であると考えてもよい。

●タイマー録画で「日本百名山」を収録
 TV番組を録画して(もちろん、デジタルで)自由に編集できることになれば、これはAVマニアにとってはすばらしい装置ということになる。じつは私はすでにデスクトップ型のビデオ録画装置(業務用の扱いなのでアナログ入力がついており、普通のTV番組を録画できる。ただし、録画方式はDVCAMとよばれる通常のDV方式の上位互換フォーマットである。また、価格は48万円と高性能パソコンが買える値段である)を購入し、アウトドア番組やクラシック番組などを録画している(デジタルのまま普通のデジタルビデオカメラ用のDVフォーマットにダビングできる)。それに対してVaioを使えばフルサイズは無理にしても、VHS以上の画質でパソコン上でタイマー録画までできるのである。

図4
 
 図4は編集メニューの「予約」によって録画予約を設定しようとしているところである。画面下段には予約管理ウィンドウが開かれ、予約名、日付、開始/終了時刻、そしてテープ名を設定するようになっている。図では新たな予約を入力しようとしているところである。これによって指定した日時に指定したTV番組が指定したテープに録画されることになる。

図5
 
 「編集」メニューの「テープ管理」を使うと用意しているテープの一覧とその管理が可能となる。図5がその管理画面である。すでに6本のテープが設定された(録画用に定義したテープも含まれている)。いらなくなったテープは削除したり、新しい内容を録画して置き換えればよい。また、当然のことながらハードディスクの容量がすぐに問題になってくるが、必要なテープはこれまた標準で内蔵されているCD-Rを使ってCDに移しておけばよい。

●ビデオ編集機能
 最近、ノンリニア編集という言葉をよく耳にする。ビデオ素材をハードディスク上に置き(デジタル化し)、それをデジタルのまま自由に編集するための仕組みである。ノンリニア編集のためにはビデオキャプチャー用のハードと編集のためのソフトが必要である。ハードとしてはデジタルビデオカメラのDV方式(IEEE1394)が標準となろうとしており、このDV端子をそなえたボードも出始めた。私もとりあえずソニー製のDV対応の静止画キャプチャーボードを昨年から使っており、その最新版(DVBK-W2000)にかえたところである。このDVキャプチャー機能はVaioのノートブックパソコン用のドッキングステーションに装備されるようになっており、単体で購入するよりはるかに経済的である(新製品の購入をあせってはいけない。しかし、新製品はすぐにでもさわってみたい。パソコンの世界は後悔、後悔の毎日である!)。
 ビデオ編集ソフトは定番がAdobe社のPremiereである。SlipClipの「クリップエディター」を使えばよいがやはり、「いつかはPremiere!」の憧れがあり、とうとう、Premiereの最新版も含めて、PhotoShop, Illustratorの3点セットを購入してしまった(大学のアカデミックディスカウントがあるにしても、これまたパソコンが買えてしまう投資である)。ただし、Vaioにインストールしただけで、実際はすべてこれからである。

図6
 
 とりあえず「クリップエディター」を使って編集することにすると、図6のように、ファイルメニューから「クリップを開く」によって既存のクリップを開いてみると、クリップ内容が画面上段にように表示される。横方向に経過時間がとってあり、シーンの切れ目が静止画として表示されている。これはパソコンが自動的に認識したインデックスである。上段の「インデックス」メニューから「インデックス追加」を選択することで自分で好きな位置にインデックスを定義することもできる。
 ビデオの編集はソースのビデオクリップ上の任意の範囲(インデックスとインデックスの範囲)を任意の順序でならべることによって行われる。したがってまずはインデックスの定義が重要となる。インデックスの間の動画内容を実際に再生して、その範囲の内容を確認し、必要なら編集をほどこして(任意の範囲の駒を削除/移動/コピーなどの操作が可能)、意味あるクリップに編集する。その上で再生の順序を設定していくのである。

図7
 
 図7は編集メニューから「編集点ファイル」を開き、画面下段のように表示されるエリアに上段のソースから任意の範囲をドラッグして再生の順序などを編集していくのである。もちろん、編集中いつでも実際に再生して編集の効果(成果)を確認できる。この辺は映画ディレクターの才能が求められることであり、パソコンの世界とは別物である。ソフトはあくまで単なる(といってもきわめて効果的な)支援にすぎない。

図8
 
 編集が終わった編集点ファイルは実際にクリップとして構築する必要がある。そのためには編集メニューから「ビルド」を実行すればよい。それによってTV番組と同様のクリップファイルが作成されることになる。図8はこのビデオクリップ構築中の画面である。このようにして編集済みのさまざまなビデオクリップが保存されることになる。そしていよいよそれらの素材を利用して特定の目的にそったコンテンツの作成へと進むことになる。

図9
 
 そのためにはまず、使いたいビデオクリップを一そろい用意、そのクリップの内容をインデックスを含めて確認しておく必要がある。そのためには「クリップビューアー」を使うことができる。図9はその画面例である。ファイルメニューから「クリップ集管理フォルダー」を新規に開き(あるいは既存のファイルを開いてもよい)、その上に管理メニューの「クリップの登録」によってクリップを登録していく。図の左端のクリップ一覧にクリップの先頭の静止画が表示され、その右側のインデックス一覧には選択したクリップに含まれるインデックスがそれぞれの先頭の画面の形でリストされる。もちろん、任意のビデオクリップを選択して右側の再生ウィンドウで再生ボタンをクリックすれば内容を確認できる(図の中ではすべて真っ黒く見えるが実際にはきれいな映像が音声とともに再生されている)。

図10
 
 コンテンツに使うビデオクリップが用意されてたとすれば、最後の段階はそれを目的にそった順序にならべ、さらにビデオCDとして実際の再生するさいに便利なように階層構造のメニューに配置することである。そのために、「ビデオCDクリエーター」が使われる。これは図10のように、画面左側に使いたいビデオクリップを置き、右側の階層構造の上に配置していけばよい。レイヤー1には静止画を置いてそこからメニュー番号(ビデオCD再生画面で番号のボタンをクリックする操作に対応)で次のレイヤーに配置されたビデオクリップを再生したり、あるいは下の階層にある複数のビデオクリップをランダムに再生するといった構成が可能である。図では現在の階層の下に2つのメニュー(選択肢)を置くように定義した。

図11
 
 図11は一応完成したビデオCDのコンテンツを(といってもわずか1時間でざっと全体をサーベイしただけなのでほんのテスト版にすぎないが)ディスク上に構築していこうとしているところである。もちろん、実際にCD-Rに作成するためには、その前にコンテンツが目的にそった内容、構成になっているのかどうかを確認しておく必要がある。そこでファイルメニューから「シミュレーション」を実行するとハードディスク上に構築された(それでよければ実際にCD-Rにコピーする段階にきた)内容をあたかもビデオCDで再生するようにシミュレートできる。図12がそれである。画面下段のビデオCD再生ウィンドウで再生ボタンを押し、さらに静止画で指示されるメニューにしたがって番号のボタンをクリックするとその番号に対応した(前の画面で一つしたのレイヤーに配置した)ビデオクリップが実際に上段の再生ウィンドウに表示されることになる。

図12
 
 このようにして今回は今か今かと待ち続けてようやく届いたソニーのパソコンについて、そのもっとも特徴的なビデオ編集機能についてごく簡単に紹介した。1時間ほどソフトを操作しただけなので、もっともっと高度な機能も含まれているようであるが、それらはビデオ編集の技量が高まった段階であらためて紹介することにしたい。最後に図版上に真っ黒な再生ウィンドウが残ってしまったのは申し訳ない。誰か動画ウィンドウまじりの画面をキャプチャーできる方法を教えてほしいものである。

(筑波大学大学院 経営システム科学 教授
http://www.fsinet.or.jp/~kaikoma/)


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