最新技術動向 ここが見所、さわり所

富士ソフトABC株式会社 技術調査室 室長
山本 淳 (yamamoto@fsi.co.jp)



 8月の日本は当然夏休みを挟んで、企業も人も活動を停止する傾向が強いので、雑誌やオンラインのニュースをみても「夏枯れ」状態の、動きの少ない一ヶ月である。米国では8月上旬のマイクロソフトによるアップル救済のビッグニュースや、8月下旬のJava Internet Business Expoなど、いくつかトピックとなるイベントが開催されている。9月に入って夏休みだった学生たちも活動を開始し、交通事故でなくなったダイアナ妃の話題で持ちきりとなっている。Mac OS 8の日本語版が登場したり、ジャストシステムの店頭株式公開の話も現実のものとなり、ようやく技術的な話のねたが聞こえ始めてくるようになった。

 マイクロソフトのWindows 98やInternet Explorer 4.0については、すでに日本でも機密保持契約を結んだOEM・IHV・ISVを中心とした限定ベータテストに入っているが、公開ベータテストの準備も進んでいる。筆者の元にもMicrosoft Solution ProviderやMicrosoft Developer Networkなど、いくつかのルートでベータテスター登録の話が舞い込んできている。9月中には公開ベータテストが始まるような感じである。機能面の話では、すでにいくつかの雑誌で紹介され始めているし、Windows Viewでも来月あたりに特集を組もうと準備を進めていると聞いている。まだ現状のレベルでは動作中に突然キーボードが効かなくなったり、システムエラーが発生したりして、一日に何度も電源を入れ直すことが多いが、魅力的な機能も搭載されている。このあたりは時期をみて、公開するのに問題がなくなった頃に紹介してみたいと思う。

 むしろ米国で9月下旬に開催されるMicrosoft Professional Developers Conference (PDC)に合わせて公開されるWindows NT 5.0と関連するBackOffice製品群、および開発ツールの動向に注目が集まっている。毎年のように繰り返されるバージョンアップ攻勢にユーザーは悲鳴を上げているが、新しい機能を豊富に取り込んで着実に進化を遂げている。先日マイクロソフト・調布の技術支援担当の口からはWindows NT 6.0などという話もこぼれていたが、Windows 98の次にWindows 99やWindows 00は存在せず、Windows NTがいくつかのバージョンに分化して、エンタープライズユーザーからホームユーザーまでカバーするといわれている。先日セミナーで紹介のあったWindows CEや、今後リリースされるであろうNet PCやWindowsターミナルといった製品群が、マルチユーザー版のWindows NT Serverや高速ネットワーク回線と絡んでどう実を結んでいくか、今後の動きに注目していかなければならない。

 マイクロソフト以外の動向としては、オラクルがOracle 8.0の登場を機に、盛んにマイクロソフトのSQL Serverとの比較を行ったり、営業担当向けや技術者向けのセミナーを続けて開催している。なかなか盛況で受講申し込みが殺到して、担当者は同じ話を何度も繰り返さなければならないとうれしい悲鳴を上げている。トップ・データベース・ベンダーとしても努力は欠かせないといったところだろう。マイクロソフトも4月に組織変更して、SQL Serverを企業の基幹システムに導入という青写真を描いているが、オラクルの牙城を崩せないで苦戦していると聞いている。Windows NT Server 4.0 Enterprise EditionやSQL Server 6.5 Enterprise Editionの投入も間近であると先日のセミナーでも紹介していたが、企業システムへの本格採用が今後の焦点となっていくだろう。

 もう一つ注目すべき動向として忘れてならないのが、Javaを巡る各社の動向である。どうもJavaに関しては、マイクロソフト対サン・IBM・オラクル・Netscape・ノベルなどの反マイクロソフト連合という縮図が見え隠れしてしまうが、インターネットなどのニュースをみても米国での盛り上がりに比べて、日本におけるJavaの立ち上がりの遅さが気になってしまう。最近OS/2コンソーシアムでJava部会が活動を開始し、筆者もスタッフの一員としてJava動向をウォッチしているのだが、あちこちから聞こえてくる声は、まだまだ日本でJavaをビジネスとして捉えることができないという否定的な観測である。たしかに、一時期の盛り上がりは下火になっているし、コーレルのようにJava Officeを大々的に打ち上げてみたもののさまざまな理由で撤退を余儀なくされたり、日本語環境ということでもJDKを巡るいろいろなすれ違いや、かな漢字変換やフォントといった基本的なレベルでの問題は、かつてWindowsやOS/2が生まれた頃にあった、米国人が考えるソフトウェアが日本の文化になじむまでの葛藤のようなものを感じている。

 むしろJava誕生の契機ともなっている組み込み型ソフトの世界で、もっと注目を浴びていいような機がする。もともと日本人が得意とする分野であり、ニーズも多いような気がするが、なぜか思うように立ち上がってきていない。米国ではいくつかおもしろい組み込み型のソフトが登場してきているようで、日本語の問題に左右されないという点でも、要チェックの項目であると思う。マイクロソフトも早くもVisual J++の次期バージョンを米国でベータテストに投入するというし、他のベンダーの開発ツールも充実し始めてきている。この辺の話もいつかどこかでゆっくり整理してみたい。

 9月下旬から米国に出張して、Microsoft PDCとExchange Conference 97に出席してくる予定である。日本でもいくつか大きなイベントが予定されているので、次回はそのあたりをフォーカスする予定である。


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