活動報告


● 第62回セミナー(セミナー企画委員会主催) 実施報告

日 時: 平成9年8月27日(水) 13時30分〜17時00分
会 場: テラハウス/テラホール
参加人員:74名
テーマ:『Windows CE』
構 成:
 第1部 「日本語Windows CEの概要」
      マイクロソフト株式会社
      技術支援本部ディベロッパーサポート部
      Windowsテクノロジーグループ
      筒木 剛 様
 第2部 「Windows CEの紹介」
      日本電気株式会社
      第一パーソナルC&C事業本部パーソナルソフトウェア事業部
      アプリケーション開拓推進部 技術課長
      岡田 善一 様
      カシオ計算機株式会社
      コンシューマ事業本部PMC事業部
      開発統轄部 第2開発部 次長
      吉田 純一 様

 
 
 筒木講師
 第1部では、筒木講師から、Windows CE OS概要、Win32 for Windows CE、MFC for Windows CE、Windows CE開発ツール、VC++ for Windows CEのデモ 、Windows CEの今後の展望、Key Informationについてのお話がありました。


 
 Windows CEはWindows NTを基に作られた32ビットOSであり、マルチスレッド、マルチタスク、32MBユーザーアドレス空間、RAMファイルシステム(ATA Flash card FATファイルシステム)が可能である。

 
 Windows CEの設計思想は移植可能なアーキテクチャー、モジュラーなデザイン、ROMから実行できるWindows、組み込み用途向け、Win32 API、デスクトップPCのWindowsとのデータ互換性、Unicode採用による国際化対応などである。

 
 Windows CEのAPIはWin32 のサブセットであり、500余のファンクションを提供している。Overlapped Windowsは未サポート。新しく追加されたAPIに、Object Store、PIM API‐Adress Store、Shell notification API(アラーム、イベント等の通知用)がある。未サーポートAPIとして、Client/Server API(ODBC,MAPI)、Application/document integration technologies(COM/OLE)、 ActiveX Controls(DirectX)、Printingがある。現バージョンでは少ないメモリで稼動させるために省いたが、今後COM/OLE、ActiveXなどはサポートしていく予定である。
 Windows CEでサポートされないMFCクラスはPrinting,MDI,OLE,ODBCである。新しくコマンドバーに関するファンクションが9つ追加された。

 
 開発ツールとしては、Visual C++ for Windows CEがマイクロソフトカスタマーサポートセンター(Tel.048-226-5500)から通販で入手できる。8月1日から予約開始し、8月26日から発送している。SDK、DDK、クロスコンパイラー、各サンプル、リモートツールなどが入っており、Windows NT Workstation 4.0上のみで動作する。価格は34,000円。

 
 出席者からは、「最先端のWindows CEの概念および開発環境など大変よく理解できた」、「VC++ for CEのデモが非常に参考になった」の他、「ビジネス仕様として不十分という感じ(電子手帳、ザウルスと比べて特長がない、高い)」、「将来性が疑問」、「アプリケーションの機能が制約されるのは最悪(Word、Excel等)。データの変換が必要では駄目」、「セミナー参加者のほとんどがVCユーザーと思われるので、エミュレータの動作とリモートツールのみのデモで充分」、「Windows CEの稼動するハードウエアの現在の状況およびMSがどういう認証?していくかの等のハードウエアよりの話が欲しかった」等のご意見がありました。

 
 岡田講師
 第2部では、先ず岡田講師から、NECパーソナルコミュニケータMobile Gearについて、商品コンセプト、商品の特長、パソコン連携・メール連携・アプリケーション開発環境、デベロッパー様サポートプランについて、豊富なデータを入れたスライドによるお話がありました。

 携帯情報端末市場は急拡大が見込まれている(1996年 国内販売台数485千台、637億円、2000年予測1725千台、905億円)。各社とも通信、拡張性がキーとなった商品展開をしている。97/4末で携帯端末、PHSなどのデータ通信利用者が約85万人いるが、潜在ユーザー数は約570万人と推定される。携帯端末に期待される機能として、電子メールコミュニケーション(出張先から職場に報告を入れたい、客先で必要な情報を入手したい)、職場←→外出先間でのデータ共有を図りたい(外出先で最新スケジュールをいつもチェックしたい、パソコンで作成した見積や説明資料をそのまま持ち歩きたい)が主である。
 NEC Mobile Gearシリーズのコンセプトは“モバイルギアは外出先での活動を支援する端末である”とし、ターゲットを、(1)PCデータを外出中も活用したいユーザー、(2)業務ソフトを利用し外出先でも処理したいユーザー、(3)職場や客先との報告・連絡・相談や情報収集を外出先でも円滑に行いたいユーザー、とした。Mobile Gear新商品として、MC-CS11(Windows CE搭載、RAM 4MB)、(Windows CE搭載、内蔵モデム、RAM 8MB、MGアプリケーション)、MC-MK22(簡単電子メール、内蔵モデム、本格キーボード、画像ビューア)があり、H/PC対応アプリケーションは8/26現在で10本ある。
 MC-CS12では、Mobile Gearアプリケーション(MGメール、MG Fax、MGエディタ、MGパソコン通信、MG運用アシスタントなど)を搭載しており、モバイルギア独自ソフトがモバイルコンピューティングを強力にバックアップしている。

 
 
 PC-LANメール連携では、オフイスのPC-LANシステムとのメール送受信/転送ソフト(別売)があり、モバイルギアの操作環境で、StarOffice、cc:Mail、MS Mail、ロータス ノーツと電子メールの送受信が可能であるり、NECの特長とするところである。
 デベロッパー様サポートプランとしては、(1)アプリケーション企画・開発のサポート体制:Web上でサポートホームページを運営し、各種イベント情報・技術情報をリアルタイムに発信。このためには、98DRP(98 Developers Relations Program)への加入が必須で、情報をアクセスするためのIDを持ち、無償サポートが受けられる。他に技術質問、企画ご相談窓口のホットラインnec-mobile@psw.mt.nec.co.jp)があるが、通常の98DRPにても対応を実施している。(2)企画、開発のご支援体制、(3)実機を使っての開発・評価、 (4)AP流通のご支援体制、(5)プロモーション支援計画 、があるので、是非ご相談願いたい。

 
 吉田講師
 続いて、吉田講師からは、カシオが描くMobile&Networkingの世界、CASSIOPEIAを取り巻く環境、CASSIOPEIAの特長、アライアンスによるモバイル市場の創造、事例紹介、Club CASSIOPEIA、ディベロッパー支援体制についてのお話がありました。


 
 CASSIOPEIAのシンボルマークについては、「Wの字はカシオペア座のWを表しており、周りの四角の中の青は天窓を意味している。北極星を中心にまわるカシオペア座をウインドウを通して見ている姿であって、言い換えるとWindows CEをベースにしてCASSIOPEIAが世界中を駆け巡るというイメージを表している。」とのことです。
 H/PCの開発に関ったのは4年前で、パソコン特にWindowsとの連動に重点をおいて商品開発を行ってきた。CASSIOPEIAを取り巻く環境として、移動体通信の環境整備、携帯PCへの期待が揃った97年はモバイル元年ともいえるもので、CASSIOPEIAの出現により時間の効率的・効果的活用が期待される。

 
 
 CASSIOPEIA日本語版仕様が米国版とスペックが違うのは、次の理由による。(1)米国ではアナログ系が定着しているのでデジタル系が疎外されているが、日本ではアナログ系の通信が確立されていなかったためPHS、PDCなどのデジタル通信が急速に拡大した。(2)米国では会社の電話にも個人用の留守録が付いているが、日本の場合は再度電話をかけるなどして会話をするといった形で、感覚的にはリアルタイム性を重要視している。(3)広い米国では自動車での移動が中心になるが、日本では電車での移動で持ち歩くことになり、大きさに対する感覚が違う。Mobile ―持ち歩く― ということに対する価値観が日本人の方が強い。日本の場合にはMobileという文化が非常に育ちやすい環境にあり、この違いを商品として実現したものが、「マイクの搭載」と「2カードスロット」である。2カードスロットでは、1スロットはPHS、セルラー、アナログモデムカードなど通信の選択肢として、もう1スロットはストレージメモリ用である。Mobileでは音声や画像の扱いが増えており、またExcelやWordでも大容量のメモリを必要とするためである。当初、2スロットについてマイクロソフトさんからサポートがしていただけなかったが、日本と米国の違いを説明してご納得していただき最終的には現在のようなサポートとなった。

 
 Windows CEを開発するにあたってのコンセプトは、カシオ計算機はそれに適したハードを作り、マイクロソフトさんはそれをベースにお客さまが使えるシステムのソフトを構築し、プロバイダー、コンテンツメーカー、通信事業者、SI、VAR、ISV、IHVさんとは相互補完を行って市場を創造していこうということである。カシオの仲立ちにより、より優れたシステム、より優れたソリューションをご提供したい。
 現に今30本位のソフトが登載されているが、提案してもらった物、我々の方からISVさんに提案して作ってもらった物、我々が社内で開発した物である。また、今後出てくる製品の中には各ISVさんだけではできないもの、例えばあるISVさんにはこういう所のアルゴリズムを、あるISVさんにはこういうノウハウを、また通信事業者さんやコンテンツメーカーさんの得意とする技術を、これらをくっつけて混ぜ合わせると新しいMobileの世界が生まれてくると思われる。このプラットホームをベースに持ち歩けるシステム、ソリューションというものを今後皆さまと協力してお客さまに対して提供していかなければならないと考えている。
 モバイル市場の創造事例としては、3つの事例、(1)pcANYWHEREによるリモートコンピューティング(ホスト側のPCのあらゆるアプリケーションとファイルをCASSIOPEIAからアクセス可能とする)、(2)Web Albumを使用したQV画像のWebサーバー転送(リアルタイムに多数の人に画像での報告が可能)、(3)Argo-Builderを使用したハイパーデータベースの構築(文字だけでなく画像や音声でのデータベース作成が可能に)の紹介がありました。
 Club CASSIOPEIAは、カシオペアユーザーを中心とした会員制Webサービスであり、購入後もさまざまな情報等により継続的に付加価値を提供するものである。発売当初は、2週間で6千人の登録があり、現在1万人を越えている。現在会費無料でURLは、http://casiohpc.casio.co.jp/である。

 出席者からは、「具体的商品イメージが掴めるという点で大変有意義だった」、「Developerサポートプログラムが参考になった」、「NECさんの説明は簡潔で分かりやすかった。 カシオさんは商品そのものの背景の話が多かったので興味深かった」、「CASSIOPEIA上でのソフトでの事例紹介が面白かった」、「CASSIOPEIAのネーミングに隠された意味が印象的」のご意見がありました。


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