開発/言語ソフト ここが見所、さわり所

〜 最新技術動向 〜

富士ソフトABC株式会社 技術調査室 室長
山本 淳 (yamamoto@fsi.co.jp)



●Windows World Expo Tokyo 97
 6月25日から28日に幕張で開催された、恒例の「Windows World Expo Tokyo 97」については、今月号でいろいろ特集されていることだろう。実際に幕張に行かれた方も多いに違いない。20万人を超える来場者があり、国内のWindows系イベントでは最大規模となっている。コンソーシアムもさまざまな形で関わりを持ち、会員各社の出展も数多かった。
 全般的にはインターネット・イントラネット技術を中心に、ビジネス・ソリューションや電子コマースなどさまざまな広がりを見せていた。後述するようにWindows CE日本語版の発表があり、いくつかのブースで発売されたばかりの実物が展示され、人だかりがすごかった。Microsoft Cluster Serverを意識した、クラスタリング技術を搭載のサーバーの展示や、Net PCの参考出展などもあり、Windowsファミリーの広がりを見せている。
 マイクロソフトのブースでは、Visual Studioパビリオンと銘打って、Visual Basic、Visual C++、Visual InterDevを中心に構成された、Visual Studio 97の統合開発デモを行っていた。これが以外に盛況で、Office製品よりも開発ツール製品のセッションに人だかりがしており、こんな事は初めてであるという関係者のコメントが印象的だった。

●Windows CE 1.01 日本語版
 Windows World Expo 97の初日の6月25日、幕張で記者会見が開かれ、待望のWindows CE 1.01 日本語版が発表された。翌日の新聞に全面広告が掲載されたように、同時にNECとカシオから実際の製品が発売された。
 ニュースリリースによると、「Windows CEは、さまざまな用途の非PC電子機器用に開発された、32ビット、マルチタスク/マルチスレッド対応のWindows OSの新メンバーです。オープンで拡張性に優れた設計がなされており、限られたメモリ容量で高い性能が要求される、携帯情報端末にも適したプラットフォームです。製品の設計仕様に合わせてマイクロプロセッサを選択することができ、モービル・コンピューティングで必要とされる長時間バッテリー駆動を可能にする、高度なパワーマネジメント機能もサポートします。また、Windows CEではハードウェア、マルチメディア、通信における標準仕様がサポートされており、赤外線によるWindows CEを搭載したハンドヘルドPC製品間の通信やシリアルケーブルを介したWindows搭載のデスクトップ システムとのシームレスなデータのやりとりが行えます」と特徴が述べられている。"Microsoft Developer Network Weekly News Japan" (MSDN News)の7月2日号でも解説されているので、参考にするといいだろう。
 Windows CEについては、すでに英語版に関して機能追加されたVersion 2.0の仕様が公開され、開発者向けのSDKのベータ版が用意されている。日本でも限定されたベンダーとの間で、機密保持契約の下で情報が公開され、新しいアプリケーションの開発が始まっている。今年秋に米国で開かれるCOMDEX/Fallあたりをターゲットに、新製品が投入されると思われる。

●Windows TCO Summit
 毎年Windows World Expoに合わせて来日していた米国MS社のビル・ゲイツ会長は、今年は1週間早く来日した。都内のホテルで開催された「Windows TCO Summit」と、名古屋地区でのセミナーに出席した。米国のPC Expoで発表されたNetPCや、Zero Administration Initiative for Microsoft Windows (ZAW)構想についてのお披露目となった。
 オラクルをはじめとするNC構想に対抗する勢力の結集を目指し、日本および海外の有力PCベンダー30社弱がNetPCについてのサポートを表明した。NetPCは、マイクロソフトとインテルが提唱するネットワーク接続を前提とした端末の規格である。ハードディスクは持つが拡張ベイは持たない、小型のPC/AT互換機をベースのパソコンと考えれば良い。ハードディスクを持たないWindows Terminalと同様に、ネットワーク環境でサーバーからOSやアプリケーションをダウンロードして実行する。
 NetPCやWindows Terminalの管理を含めて、ネットワーク環境でクライアントの資源やユーザーの操作を、サーバーで一括管理しようというのがZAW構想である。ダウンサイジングが進み、PCによるクライアント・サーバー環境へのシフトが進んだ今、管理コストの増大が問題になってきている。Total Cost of Ownership (TCO)の削減を掲げて出てきたのが、NCであり、NetPCやWindows Terminal、ZAWである。
 ZAWが本格稼動するのは、来年発売されるWindows NT 5.0がベースとなる。しかしそれに先立って、現行のWindows NT 4.0や、Windows 95のためのZAW機構が提供されることになっている。Zero Administration Kit for Windows NT Workstation 4.0 (ZAK)が、7月下旬からマイクロソフトのホームページでダウンロードできると発表されている。Zero Administration Kit for Windows 95も秋の出荷への準備が進んでいる。ZAKは、現状のWindows NT 4.0が持つ、クライアントマシンのログインユーザーに関する管理を、ネットワーク環境に拡張したもので、既存OS上にアドオンされて稼動する。
 PCの世界でインテルとともに90%を超える市場を握り、Windows NTでネットワーク市場に本格参入し、全製品のインターネット技術への対応という急激なシフトが完了した今、マイクロソフトにとって次のメッセージとして出てきたのが、TCOの削減のようである。とくにJavaやNCに代表される反WINTEL陣営の攻勢をいかにかわして、2,000年に向かって勢力を維持していけるかの鍵を握っていえるかもしれない。

●Microsoft Tech Ed 97 Yokohama
 この連載でも再三情報を流してきたが、7月22日から24日までパシフィコ横浜で、「Microsoft Tech Ed 97 Yokohama」が開催される。"MSDN News"でも紹介されているように、今回のTech Edでは「Windows 9x ("Memphis")、およびWindows NT 5.0など、マイクロソフトの戦略的概論から最先端技術まで、詳細に解説され修得できます」となっている。次回はこのイベントの情報を速報できるだろう。

●その他のマイクロソフト情報
 日本では、Windows NT 4.0 Service Pack 3、Exchange Server 5.0 Service Pack 1、SQL Server 6.5 Service Pack 3が相次いで提供され始めた。Internet Information Server 2.0および3.0のための、ハッカーからの不正な攻撃に対する堅牢性を向上させる修正モジュールも用意された。
 米国では、Memphis (Windows 9x)、Internet Explorer 4.0、Internet Information Server 4.0などの公開が始まった。いよいよActive Platformの実現に向けて、今年後半から来年にかけてリリースされる基幹モジュールのレビューがスタートした。
 また、9月22日から26日まで米国カリフォルニア州サンディエゴで、今年の「Microsoft Professional Developers Conference」(PDC)が開催される。米国MS社のイベントのページでは、徐々にコンテンツが明らかになってきており、チェックを忘れてはならない。"What's new in the next generation of Windows?"というテーマで、Windows NT 5.0やWindows 9x、Internet Explorer 4.0、COM/DCOMなど、Active Platformを実現するさまざまな新しい技術について紹介されるようである。7月中旬には事前登録が開始されるそうだが、日本からもツアーを組んで大挙して情報収集に走り回ることになりそうである。

●Java関連
 コンソーシアムでは、Active Platformコンソーシアムを下部組織として設立し、Active Platformのサポート体制を固めているが、最近対抗勢力であるJavaに関して、いくつかの動きがあったので紹介しておく。
 マイクロソフトでは、先ほど触れた次期Web関連ソフトである、Internet Explorer 4.0とInternet Information Server 4.0に搭載される、新しいJava仮想マシンに、「J/Direct」という新しい技術を投入した。J/Directでは、Win 32 APIを直接呼び出し、Windowsの機能をフルに利用したJavaプログラミングが可能となる。
 100% Pure Java勢力にとっては、Javaの持つ"Write once, Run Anywhere"というクロスプラットフォーム性が失われると、マイクロソフトのこうした動きを激しく批判している。マイクロソフトにとっては、JavaはC++やBasicと同等の単なる言語仕様であり、将来のVisual J++にネイティブコードコンパイラを搭載するという噂もあるくらい、Windowsとの親和性を重視している。真のクロスプラットフォーム・アプリケーションなど存在しないという立場の人間にとっては、デファクトスタンダードであるWindowsマシンで高速に動作するJ/Directは、魅力あるアプローチであるといえる。
 Java Softからは、近々Java SoftのCore Class Libraryと、NetscapeのInternet Foundation Classes (IFC)を統合した、Java Foundation Classes (JFC)のベータ版がリリースされる。マイクロソフトも対抗するクロスプラットフォーム・クラスライブラリである、Application Foundation Class (AFC)を発表しているが、今年の夏はJFC対AFCの標準化に向けた暑い戦いが繰り広げられそうである。
 日本でも、7月16日から18日に「Java Developer Conference Tokyo 97」というカンファレンスが開催される。4月に米国で開催されたJava Oneの主要セッションを日本で開催するもので、Java関連技術者はチェックしておく必要があるだろう。その他でも、OS/2コンソーシアムでJava部会をスタートさせたし、日本サンマイクロも業界団体を設立して標準化を図っていく動きがあるようである。ActiveX対Javaという争いを単なる営業戦略的な目で見るのではなく、技術者としてどちらもサポートできるような情報を蓄積していきたい。


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