開発/言語ソフト ここが見所、さわり所

〜 最新技術動向 〜

富士ソフトABC株式会社 技術調査室 室長
山本 淳 (yamamoto@fsi.co.jp)


 
●Microsoft Developer Days - Microsoft Visual Studio 97
 4月にマイクロソフトが主催した「Microsoft Developer Days」の内容のエッセンスをまとめて、富士ソフトABCの主催で全国9都市で半日セミナーを実施した。5月のWindowsコンソーシアムセミナーでも予行演習させていただいたが、地方を回って感じることは技術情報の東京一局集中傾向である。アンケートで一番多かったのが、「こうしたセミナーをぜひ続けて実施してほしい」という要求であった。東京地区にいると気がつかないが、話を聞いてみると、例えばマイクロソフトの営業所がある地区でも、思うように最新技術を吸収する機会が少ないようである。
 5月30日に発売された「Microsoft Visual Studio 97」は、好調なスタートを切ったようである。旧来製品からのグレードアップによって、3分の2の開発者が「Visual Studio 97 Enterprise Edition」へ移行したそうである。ほとんどの開発者がVisual C++もしくはVisual Basic、あるいは両製品を利用しており、アンケートの結果をみても、最新バージョンへのアップグレードを予定している。

●Microsoft Tech Ed 97
 世界規模で開催されるマイクロソフト最大のイベント「Microsoft Tech Ed 97」が、今年も5月5日から9日までの5日間、米国フロリダ州オーランドで開催された。7・8月にはフランス・ニース(7月1〜4日)、横浜(7月22〜24日)、オーストラリア・メルボルン(8月3〜6日)で相次いで開催されることになっている。

 今回の開催場所は、オーランドのオレンジ・カウンティ・コンベンションセンター、ちょうど幕張メッセを数倍大きくして、もっと豪華にした感じである。5月のオーランドは初夏を思わせる過ごしやすい気候で、ディズニーワールド、シーワールド、ユニバーサルスタジオなどを抱えたリゾート地として、世界中から観光客が訪れている。今回の往復の飛行機でも、日本からも新婚旅行を思わせるカップルや、小さな子供を連れた家族連れが、興奮気味に会話を弾ませていた。ちょうど日本では、ゴールデンウィークの最後に重なって、出発日の成田空港は大混雑を極めていた。まわりで背広姿を見つけることはできず、みんなTシャツやポロシャツといったラフな格好でくつろいでいる。

 マイクロソフトのイベントとしては珍しく、東海岸で実施されたこともあって、米国中からソフトウェア業界に生きる人たちが、続々とオーランド国際空港に降り立った。昨年9月に「Microsoft Exchange Deployment Conference 96」が、米国中南部のテキサス州オーランドで開催されたときも珍しいことだと感じたのだが、いよいよ東海岸までたどり着いてしまった。
 日本とは13時間の時差があってちょうど昼夜が逆転していて、ホテルで朝早く、ノートPCから悪評高いMicrosoft Networkのアクセスポイントを通して日本のメールサーバーにつなぐと、今日一日分のメールが届いている。返事をまとめて夜になって送っても、日本の始業時間には十分に間に合う。時間によっては、メールを送るとすぐに日本から返事が届き、時間の壁など感じずに、まったく便利な世の中である。米国への出張が多い方なら、MSNやAOL、CompuServeといった現地のアクセスポイントを通して、ホテルからでも25〜75セント程度のわずかな市内通話で、メールの送受信やインターネットが利用できる。

 さて話が随分それてしまったが、本題のTech Ed 97について紹介しよう。参加申し込みは、8,000人を超える規模になっている。日本からはマイクロソフト関係者を中心に20人程度だったという話である。マイクロソフトのホームページでも参加申し込みを受け付けていたが、数週間前から定員満員というアナウンスが流れていた。昨年より4割以上規模が大きくなっている。

 5日間に4つの1時間枠のキーノート・セッションと、7つのテクノロジートラックに分かれた200を超える1時間半枠のカンファレンス・セッションが用意されていた。カンファレンスセッションは、4つのタスクトラックで、受講対象者を明示してあった。一部のセッションは同じ内容を2回講演するようになっているので、セッションの総数は250弱である。似たような話を別々のセッションで講演していたものもあり、Part-1、Part-2として3時間に渡るセッションもあった。いずれにしても、実際に受講できるのはキーノートを含めて21セッションであり、どれを選ぶか悩んでしまうほど充実した内容になっている。

●Keynote Speakers
・Bill Gates, Chairman and CEO
・Tod Nielsen, General Manager of Developer Relations Group
・Paul Gross, Vice President of Developer Tools Division
・Bob Muglia, Vice President of Server Applications

●Technology Tracks
・Data Management・Enterprise Architecture・Internet Technologies・Messaging and Collaboration・Network Infrastructure・Office Development・Windows Services

●Task Tracks
・Deployment・Development・Management・Planning

●キーノート - ビル・ゲイツ会長
 Tech Ed 97の月曜日朝一番は、ビル・ゲイツ会長のキーノートで始まった。実は同じ会場で先行して世界中のソリューション・プロバイダー企業関係者を集めた「Microsoft Fusion 97」が開催されていた。こちらの参加者が約2,000人規模で、日本からも30人ほどが参加していた。ゲイツ会長のキーノートは、Fusion 97の最後の、そしてTech Ed 97の最初の目玉として、両カンファレンスの参加者が一堂に会して実施された。何と幕張メッセの展示会場の数倍のフロアに仮設スタンドが設置され、10,000人を超える参加者の満場の拍手の中で、キーノートはスタートした。会場のスケールの大きさに圧倒されただけでなく、マイクロソフト信奉者のゲイツ会長に対する絶対的な信頼が感じられた。

 ゲイツ会長は、Windowsの歴史的な背景から始まって、COM/DCOMをベースにした分散コンピューティングについて、具体的なデモを交えながら解説した。昨年11月に米国カリフォルニア州ロングビーチで開催された「Microsoft Professional Developers Conference」(PDC)で発表された、Active Platform構想をより具体化する洗練されたデモが登場し、非常に見栄えのいい内容となっていた。半年前には構想だけだった新しいいくつかの技術が、具体的な製品版やベータ版として紹介された。
 Transaction Serverをベースにした分散COMベースアプリケーションによって、あらゆるタイプの企業内情報にアクセスできるようになる。将来的には、トランザクションやセキュリティ、メッセージ・キューイングなどの新しいサービスがWindows NTやWindows 95に統合される。今後のアプリケーションは、軽量なCOMコンポーネントをベースに開発されるようになり、これまでのVisual C++やVisual Basicだけでなく、Visual J++ (Java)を含めたあらゆる開発言語が利用可能になる。COM/DCOMは、WindowsだけでなくUNIXやMacintoshに移植中であり、OSにも開発言語にも依存しない。会期中にDECとHPがCOMをそれぞれのUNIXやOpenVMSへのサポートを表明したように、今後のオブジェクト技術に大きな影響を与えることが予想できる。さらに開発コード名CedarというCOMとIBMのトランザクション処理CICSを統合する技術にも触れている。
 100% Pure Java構想やNetwork Computer (NC)構想に対抗するように、JavaによるネイティブコードサポートやNetPC、軽量端末であるWindows Terminalやネットワーク管理などについても言及した。

 ゲイツ会長に続く各キーノートやテクニカルセッションについては、すでにいくつかのオンラインニュースや雑誌で紹介されているし、米国マイクロソフト社のホームページでは技術資料とともに、NetShowを利用したビデオオンデマンドによって、セッション内容がフルタイムで確認できる。このNetShowのデータに関しては、現地の会場で主要セッションをビデオクルーが収録し、リアルタイムでエンコード処理した上で、マイクロソフトのサーバーにアップロードし、その日の夕方には公開するという離れ業を演じていた。
 7月に開催される「Microsoft Tech Ed 97 Yokohama」においても、このNetShowを通じた米国でのセッション内容が聴講できるように準備を進めている。横浜では、昨年に続いて富士ソフトABCが来場者が利用できる「コミュニケーション・ネットワーク・エリア」の運営を任されている。マイクロソフトの最新のサーバー技術、クライアント技術を体験できるので、ぜひTech Edにご来場いただき、用意されたマシンを触っていただきたい。どう実現したかは、いずれ裏話としてお話したい。

●Microsoft Scalability Day 97
 5月20日に米国ニューヨークで開催された「Microsoft Scalability Day 97」においては、Windows NT Server、SQL Server、BackOfficeの各Enterprise版が発表された。また、業界大手のパートナー企業と一緒に、BackOfficeファミリーの各サーバーアプリケーションを利用して、多数のユーザーをサポートするオンラインバンキングシステム、大型データウェアハウス、企業のメールシステムなどの大規模な企業情報システムアプリケーションの管理能力を示すデモンストレーションを行った。

 このデモの内容については、マイクロソフトのニュースリリースやインターネットのオンラインニュースで紹介されているが、Windows NTの可能性と限界について、賛否両論のさまざまな意見が流れてきている。マイクロソフトは、その後に開催された米国の「COMDEX Spring 97」や日本の「NetWorld + Interop 97 Tokyo」でも、同様の主旨の講演を行っており、おそらく6月にゲイツ会長が来日してプレス発表や名古屋地区でのセミナーを行う予定でその中でも、またTech Ed 97 Yokohamaでも告知されることになるだろう。とくに今夏に提供されるInternet Explorer 4.0や、来年リリースされるWindows NT 5.0やWindows 9x (Memphis)、今後発表されるBackOfficeサーバー製品群などに反映されていくことだろう。

 VBITS 97など紹介したいセミナーは目白押しだが、Developer Daysの全国日帰り出張の真っ最中で、旅先からのリモートアクセスということで、今回はご容赦願いたい。


Contents         Windows Consortium ホームページ