松倉会長の会員会社キーマン直撃インタビュー


カテナ株式会社 ソフトウエアプロダクツ事業部 事業部長 厚川 美和氏

 

今回はカテナ株式会社にソフトウェアプロダクツ事業部厚川事業部長をお訪ねして、同社オリジナルソフトの中から機械翻訳・自然言語処理ソフトおよび教育関連ソフトについて開発経由、市場状況、将来構想など忌憚のないご意見をお伺いました。

− はじめにソフトウエアプロダクツ事業部をご紹介いただけませんか
厚川
 パッケージソフトの商品化を行う部門で、現在の部員は26名です。90年に、最初の商品であるMacintosh用の「The Translator」という翻訳ソフトを出しました。このソフトは20万円台で、当時の翻訳ソフトとしては破格の安い値段でした。このソフトをきっかけにカテナのパッケージソフトビジネスが始まったといえます。  その後低価格の一般的な例えばワープロ、住所録ソフトなどを手掛けたのですが、今は翻訳を中心とする言語処理の分野と、小学生、中学生向けのCAIソフトを中心とする教育の分野、この2つのプロダクトに特化したオリジナルソフトの商品化をやっております。開発部門は多摩市のオフィスにあります。

− 今はどの位の製品があるのでしょうか。
厚川
 大きく分けて18製品です。翻訳ソフトだけで、プラットフォームを入れますとかなりのバリエーションがあります。また教育ソフトの「THINKリード」も学年別、教科に分かれると膨大な数になりますが。

− ウエイトの入れ方は言語処理系と教育系とでどんな具合でしょうか。
厚川
 教育の方はこれから市場ができてくるところで、大事な時期です。翻訳の方は今、一番ホットな市場ですからやはり翻訳ソフトの方が少しウエイトはかかっております。

【インターネットをアクティブに利用するために両方向で使えてコミュニケーションの役に立つ商品を提供したい】
− ではまずその翻訳ソフトの今年の戦略をお聞かせください。
厚川
 カテナの英日翻訳ソフトには、「ロゴヴィスタE to Jシリーズ」と「コリャ英和!」があります。カテナの翻訳ソフトは他社さんのに比べますと、いろいろな製品がたくさんそろっています。やはりそれぞれのユーザーさんの使い方によってニーズが違うからです。翻訳を専門とされるプロの方むけの製品、ビジネスで情報を集めて、英文のいろいろな情報を読むためのツールとしてお使いになる方むけの商品、それから個人ユーザーとして気軽に、主には情報を集めることだと思いますが、趣味のためにも使いたい方むけの製品と。ハイエンドからローエンドまでお客様のニーズの違いに応える品揃えをしています。入力にお困りの方には、ペンOCRスキャナとセットにした商品も用意しています。
 しかし、なんと言っても、翻訳ソフトは翻訳精度が命です。その精度を左右する英文解析の部分を私たちは「翻訳エンジン」と呼んでいるのですが、「ロゴヴィスタE to Jシリーズ」はこの翻訳エンジンが非常に優れています。数理言語学の世界的権威でもあるハーバード大学 久野教授の最新理論を製品化しています。各パソコン誌でも、ベンチマークテストで翻訳精度については高く評価していただいています。1月にも、「DOS/Vマガジン」で「ベストチョイス」に選ばれたばかりです。
 日英の方もビジネス向けには双方向の商品を提供するということで、去年他社さんとタイアップして「英日・日英翻訳ダブルパック」という商品を出しました。それからこの3月に「コリャ英和!」の姉妹品として「これ和英!」という日英翻訳ツールを出しました。
 これまでは英日という片方向だけでした。今まではインターネットでもそうでしたが、お客様が情報を受け取るだけの、受け身の使い方だけだったのですが、これからはお客様自身もインターネットをアクティブに利用されるということで、状況が変わってきました。情報を受け今度は発信するというやり取りになると、コミュニケーションというニーズになってくると思います。そうなると、どうしても日英のツールが必要になってきます。両方向で使えて、コミュニケーションの役に立つ商品を提供したいということで、その第一弾として「コリャ英和!」の姉妹品「これ和英!」を出した次第です。

 
 「コリャ英和!」の命名者
カスタマーサービス部
藤田 順子さん
− この名前はどなたが考え付いたのですか。大変ユニークで面白いですが。
厚川
 「コリャ英和!」は部門内の人間の発案です。いろいろな名前の中から、非常に駄洒落センスのいいのを選びました。やはり低価格で皆さんにどんどん使ってもらえるためには、名前で一体どんなソフトかすぐ分かる、これがいいんじゃないかということになりました。

− 飲み屋に行って決めたとか。
厚川
 きっかけは飲み屋の延長の企画会議というところかもしれませんが、「コリャ英和!」の命名者は多摩のサポートの方で活躍している女性です。

− せっかくですから命名者を会員の皆さんに紹介させてください。
厚川
 ありがとうございます。本人も喜ぶと思います。


厚川事業部長
 

− 「これ英和!」の方はもう自動的に決まってたようなものですか。(笑い)
厚川
 はい。お客さんからも期待が大きくて今度は日英だね。その時の名前は『これ和英!』だねって。

− 精度の問題は如何ですか。
厚川
 どうしても皆さん翻訳してみて、精度に関しては二言三言あるようです。お客さんがどのぐらいの期待値を持っていらっしゃるか、またどの位の割り切り方を持っていらっしゃるかで随分評価は違ってくるようです。

− 英和の翻訳レベルは中学生でいうとどれ位でしょうか。
厚川
 翻訳レベルについては皆さんがよくそういう聞き方をなさいます。コンピュータで理論的に処理をするものですから、もともとの原文が理論的に処理できる文法に則っているものであれば、やはり精確に翻訳します。多分皆さんが多くご指摘なさるのは、自然な日本語でないということと、文法の解析は合っていても訳語の取り方が違う場合、全然違う意味のことに意識が行ってしまうものですから、そこで理解ができないというケースが多いようです。

− 和英の方はどうですか。
厚川
 和英の方は単なる逆ではなくて、やはり言語としての英語と日本語の特性の違いといいますか、日本人は単一民族で共通に認識しているもの、確固たるものがあって、その上に文化が成り立っているというようによくいわれますが、例えば主語をよく省くとか、言わなくてもいい共通認識ができている部分については省いてしまうという言語なので、そこでもやはりコンピュータの理論で解決するという難しさがあります。

− どうすればよい翻訳ができるのでしょうか。単文がよいとか、その辺について。
厚川
 あまりお客様に前処理だとか、うるさいことはしていただきたくないのですが、やはり少し書き方を意識して主語をはっきりさせるとか、1文には主題を1つにするとかということをしていただければと思います。

− 普通の文章では難しいでしょう。
厚川
 そうですね。でも実際にコミュニケーションということでは、かなり役に立ちます。例えばこれはお客様の中にもいらっしゃったのですが、海外から自分のところに日本語のしゃべれない外人の方がいらっしゃる。慌てて日英ソフトを買いに行って、それで筆談をした、と。それから当社の販売促進の者でも、ショーでやはり外人のお客様がいらっしゃって、そこでこちらは日英、あちらは英日で30分ぐらい対話が続いたというのがあります。やはりコミュニケーションというのはこちらの言いたいことが伝わる、訳の精度で確かに100%はもちろんいかないのですが、通じてそれに対して返ってくるという意味では、本当に役に立つと思います。

− 長いとだめですね。カンマでやたら長く書いてある例文があるんですが。
厚川
 そうですね。文学的なものですとか、文法的にはっきり理論で割り切れないような文章というのは難しいですね。

【インターネット時代が追い風に】
− 翻訳ソフトの市場は現在どのような具合でしょうか。また、翻訳ソフトの元年というのはいつと考えたらよいのでしょうか。
厚川
 翻訳ソフトがパソコンで一応普通に使えるツールとなった翻訳市場において、カテナとしてはリーダーになってきたなという自負がございます。90年に「Translator」が20万円という価格で登場し、パソコンで簡単にしかも精度、スピードの面で非常に使い物になった、その90年が翻訳ソフト元年といえましょうか。それから第2のターニングポイントがやはり「コリャ英和!」がでた94年です。この時には価格面では1万円を切って、ビジネスユーザーさんだけではなくて一般ユーザーさんも使えるようになったことが大きいといえます。しかもその時に「クリップボード翻訳」という機能を初めて付けたのです。それまでの翻訳ソフトというのはファイルを作って、そのファイルを取り込んで、それから編集をして、というような大変面倒な使い方だったのですが、クリップボード翻訳では翻訳がアプリケーションというような大袈裟な形ではなくて、ツールとして使っていただけるような手軽な存在になったのではないかと思います。そして、第3のターニングポイント、追い風としてインターネット時代がやってきました。

− 「コリャ英和!」は94年11月に開催されたWindowsコンソーシアム総会時のお土産としてご提供いただき、出席の皆様にお配りしましたが。その節はありがとうございました。
厚川
 そうでしたね。Windowsコンソーシアムの総会にお見えの皆様にと、100本ぐらいご提供させていただきました。翻訳ソフトというのはあくまでもツールなので、目的はその先の情報を知りたいだとか、伝えたいということなので、その間にあまりでしゃばらない形で、本当は使っているということを意識させないような形になるのがベストだと思います。それはインターフェイスの面でも、それからもちろん一番重要な精度の面でもそうなんですが、精度の面では非常に難しいですね。短期間では精度は上げられないところはありますけれど、使い勝手の面ではこれからは存在感をあえて意識させない、というようなものになっていくのだろうと思います。

− やはりインターネットが普及した分、余計市場が増えてきているのでしょうか。
厚川
 そうですね。やはり翻訳ソフトに必ず付きまとっているのは、どうやって文字を電子化するのか、お客様の問い合わせの半分はこの質問でしたので、そこの部分の手間でかなり使うのを諦めていたお客さんが多いものですから。それがなくなるだけで手軽に使ってみようというのは、やはりインターネットのお陰だと思います。

− 購買層はどんな具合でしょうか。
厚川
 それはやはりパソコンの平均的なものと一致しますね。年代的には20代、30代が中心で、男性が95%位です。

松倉会長
 

− インターネットユーザーと似ているのですかね。
厚川
 そうですね。「コリャ英和!」のお客様でやはり70%は「インターネットを使ってます」とおっしゃっていました。また、その半分ぐらいの方は日英を使いたい。メールかレターを書くかホームぺージを作るか、というようなことなんですけれど。

− いろいろ教えていただきましたけれども、上手な使い方をもう少し…。
厚川
 日英についてはまず1文1主題で書いていただくことと、もちろん主語を省いても設定によってということはあるのですが、誰が何をということをはっきり明確に書いていただくということです。

− 英日はどうですか。
厚川
 自然な日本語レベルの精度にこだわられると非常に…。やはりポジティブなお客様といいますか、その情報をどれだけ知りたいか、どうしてもこれが欲しいと、と思ってお使いになる方は、役に立つと思ってくださる方が多いです。たとえば、技術者の方で、最新技術情報が英文でしかも、それを読まなければ開発が進まない、といった場合ですね。情報に対してあまり目的意識がない方ですと、どうしても表現がおかしいということに拘られるのです。でもそのへんは私どもメーカーとしては、それはお客様が悪いのではなくて、こちらの精度がやはり足りないのだと思いますので、最終的にはやはりお客様が望んでいる期待のレベルに達しなければいけないなと思います。

【訳語を地道に入れるのが重要】
− 簡単な何か裏わざ的なコツはないですか。
厚川
 1つは単語の登録、これは重要です。特にその方が使われる分野の中での言葉の訳語に優先順位もございますし、その訳語が適切か適切でないかによって解析は合っているのだけれども、全然違う意味に取られてしまうというのがありますので。訳語を地道に入れていただくことは大切です。なかなか皆さん、そういうお時間はおありにならないので、やはりこれもメーカーがきちっと訳語レベルも整えていかなければいけないと思います。
 でも訳語はやはり重要です。

− 自分用のをということですか。
厚川
 そうですね。それから皆さん忙しいので、ご自分が読むためだけなら編集までは手間をかけたくないというのが普通ですが、上位版の「E to J Pro」という製品では、訳がちょっと違っているなと思う場合には、ボタン1つで別の解釈をさせることができます。編集に関しても、いちいちお客様が考えるのではなくて、簡単にボタン1つで編集して、別の解釈を出すということができるようになっています。
 もう1つはLogoVistaの特徴ですが、翻訳の精度とスピードを調節する機能がございます。精度を優先させるのか、それともスピードを優先させるのかで、スピードを優先させた場合にはちょっと精度は落ちますけれど、今とにかく結果が早く知りたいという場合にお使いいただけます。また、反対に調整により精度を上げることもできるわけです。

− プロ級向け、ビジネス向けで値段はいくら位ですか。
厚川
 プロ向けは、97,000円の「E to J Pro」。また、ビジネス向けとしては、「E toJ Personal」39,800円の製品があり、インターネット専用版として「E to J INTERNET PLUS」が12,800円です。この3製品はすべて翻訳エンジンについては同じものを使っています。INTERNETバージョンはインターネットに特化していることでこういう安いお値段なんですが、初期訳については全く同じ訳を出してくれます。

− ということは、単語を登録すると、みんな使えるということですか。
厚川
 ええ、使えます。このユーザ辞書は共通していますので。

− そういう意味では単語登録ユーザー会みたいなのを作って、各利用者同士交換して、結構インターネットの中に交換する会を作るといけるのではないでしょうか。
厚川
 はい。苦労して作っていただいた辞書を是非皆さんでご利用いただくようなユーザー会みたいな形のものは、私どもでも一つ課題です。

【「クリップボード翻訳」で大ヒット】
− 開発面や販売面での苦労話がありましたら。
厚川
 「コリャ英和!」を出す時、最初はWindows版でビジネスクラスのものを作ろうとしていたのですが、当時私どもにはWindowsの技術に関していろいろな情報が不足しており、大変苦労した面があってすんなりと上位版ができない壁がありました。開発部でいろいろと考えた中で、アプリケーションとしてハイエンド向けだけが翻訳ソフトではないのではないかという考えが出てきました。そこで「クリップボード翻訳」というアイディアを核にしながら、もっと簡単にツールとして使える翻訳ツールが生まれました。ですから壁にぶつかって、その制限のお陰というか、できなかったことのお陰で別の境地が開けたという感じがいたします。この最初のWindows移植に当たっては、非常に長い時間がかかりました。

− でもひょっとしたらビジネスクラスを先に出していたら、こんなに普及しなかったかもしれない。
厚川
 本当にそうです。ですからかえって壁だとか障害とか困難なものは、それを乗り越えるというか消化すれば、また新しい境地を開けるのだという気がします。じゃあ、そのツールなんだったらどういう商品、どういう価格がいいかということで、喧喧諤諤ありました。やはり9,800円で出すに当たっては非常に勇気がいりました。当初はいろいろな機械翻訳メーカーの方々からも「こんなんじゃ、他の翻訳ソフトが売れなくなるよ」というお声の方が多かったです。ですが、タイミング的にも本当にこれは幸運に恵まれたというか、市場のタイミングも合っていましたので、逆に翻訳市場全体を活性化することになりました。

− 「これ和英!」は3月13日に発売されたばかりですが、反響は如何ですか。
厚川
 ちょうどMicrosoft Office 97の発売と重なってしまって、店頭でもちょっとその熱に押され気味なのですが、でもお蔭様で週末明けたところでは売り切れという店も出ておりますので、スタートとしては非常によかったと思います。初回も販売店さんにはものすごく期待はもっていただいていまして、前から「『コリャ英和!』の日英版は作らないの」とずっーと言われ続けてきましたので、販売店さんの反応は上々で店頭にはたくさん置いていただいています。日英の市場はまだこれからできていくと思います。日英版を持っていらっしゃる大手メーカーさんでも双方向でという出し方はあるのですが、私どもはコミュニケーションツールとして明確に提案していきたいです。
 これからは、対話をしながら翻訳させて結果を読み上げるというようなことにも対応していきたいと思います。今でも「 コリャ英和!」についてはドキュメントトーカと関連機能がありまして、辞書引きをやると、耳で聞いて画面で追わなくても、自動的に読み上げてくれるという機能があるのですが、さらに日英版ができましたので、その逆も是非やりたいなと思っています。今ここに松倉さんがお持ちになっている携帯パソコン(Libretto 20)のようなものに対応させて、気軽に持って歩ける翻訳ツールとして実現させたいと思います。

− 私はこれを単語の辞書代わりに使っているのです。辞書を引くのが面倒くさいので。
厚川
 あっ、そうですか。やはりその頻度の方が多いかもしれないですね。海外出張のお供には必ず持っていっていただけるような、そういうビジネスツールとして双方向に揃えたいと思います。

− 翻訳ソフトでのハードディスクの容量は多いですね。でも容量が小さくなると単語の数が減っちゃうというのは問題ですね。
厚川
 それが課題です。スピードも犠牲にできないし、単語の数も犠牲にできないということになりますので。

厚川事業部長        松倉会長
 

− 今後出される翻訳ソフトはどのようなものになるのでしょうか。
厚川
 先程のやはりコミュニケーションということで、もっと両方で使いよくしていきたいということと、特にデスクトップで使うだけではなくて、機動力のあるモバイルのパソコンでも簡単に使っていただけるようにしたいと思っています。それと翻訳は言語処理ということを先程申し上げましたが、当社には翻訳を中心としてさらに辞書とか、音で読み上げるソフト(ドキュメントトーカ)などがあります。今はWindows版がないのですが、文例ソフトももともと持っていますので、これらをうまく組み合わせて英語の統合環境といいますか、英語を書くとか読むことに関しては、すごく英語のできる方、それから全然できない方、それぞれの方にはいろいろニーズがあると思いますので、それをトータルにサポートできるような商品群として揃えたいと思っています。 今回の「これ和英!」も翻訳だけだとやはり“本当にこれがあっているの”と皆さんが不安に思っていらっしゃるので、「日本の心」というメニューをつけました。その中にどうしても日本語のニュアンスでないと訳せないというもの ― お詫び、お礼、誤解されたくないというような言葉 ― は、データベースとして「日本の心」というメニューから簡単に引っ張ってこられるようにしました。これは、皆さんが本当にこれでは相手を怒らせるのではないかとか、誤解されるのではないかということを心配なさるものですから、こういうメニューをつけておこうということになったわけです。さらに発展した言い回しについては文例集ということで補完したいと思っています。

− 御社のサポート体制は如何でしょうか。
厚川
 当社のサポートは、初心者の方にも丁寧にということでやっています。パソコンに詳しくない方は何が分からないのか、ということが分かる人間が対応するようにしております。どうしても詳しい技術者になりますと、よく分からない方が何が分からないのかが分からない、というふうになってしまいますから。
 あとは「コリャ英和!」、「これ和英」でもぺーパーレスでオンラインマニュアルにいたしました。それから 最初にざっと使い方を見ていただけるようなチュートリアルを付けました。「コリャ英和!」の時も、せっかくあるクリップボード翻訳機能は便利なんですが、ほとんどの方があまりお気づきにならないというか、皆さん利用されていなかったのです。ですからチュートリアルを「コリャ英和95!」から付けまして、必ずこれをご紹介して使っていただけるようにしました。

− 私もマニュアルを読まなくても使えましたよ。ユーザーインターフェイスがいいんじゃないでしょうか。何となく感覚で使えます。
厚川
 ありがとうございます。開発スタッフが聞いたら喜びます。

【教育と言語処理の翻訳は大いに関連ある】
− 次に教育面のソフトについてお聞かせください。
厚川
 私どもは教育ソフトの方も長年やっておりまして、教育ソフトと言語処理は大きく重なるところもたくさんあります。今は「THINKリード」学習システムというCAIソフトをやっているのですが、特に今後は文部省の指導要領の中でも国際理解ですとか、それから新しい学力観というのでは「なぜ」とか「どうして」とか、「調べ学習」ですとか、単にCAIのソフトで教えているような事象を覚えるということよりも、考え方だとか疑問を持つ、調べる、そういう創造性を伸ばしていくというのが出てきます。
 国際理解というものには、2001年からカリキュラムの中に小学校でも英語を教えるというのが出てくるのですが、それも英語科というのではなくて、国際理解の中の一環として出てくるのです。そこで習った英語を実際に使いながら、でもそれだけではなかなかコミュニケーションがうまくとれませんし、インターネットで簡単に海外のお友達やいろいろな所にアクセスできるようになりますから、子どもが使える翻訳ソフトなども提供したいと思っています。そういうものを使った時には、今度はもう調査をする、調べ学習をするフィールドというのは、単に日本の中だけでなくて、それこそ国境を越えるということになります。そういう意味でも今やっている教育ということと言語処理の翻訳というのは大いに関連があると思います。

− 学年別に科目はいろいろあるわけですか。
厚川
 小学生と中学生向けに全教科網羅しています。しかも教科書は10年毎に大きな改訂があって、5年毎に小さな改訂ということで、「THINKリード」はその改訂にきちんと対応している数少ないソフトなんです。

【学校教育のゆとりの部分を補完するソフトを出したい】
− 売れてますか。
厚川
 ええ。教育ソフトなりに売れています(笑い)。約1500校への導入実績があります。今は市場はまだまだエデュテイメントばかりですけれど、これからはCAIのソフトの良さが見直される時代です。学校の方でゆとりの学習ということになってきますと、どうしても学科について勉強する時間は少なくなりますから、それは家で勉強するとか、どこかで補う必要があります。創造性を伸ばすといえど、どうしても基礎基本の事象は覚える必要があります。コンピュータでCAIソフトのいい所は、それぞれの子どもの学力に合わせることができることです。商品の中にも領域別という商品があるのですが、これは算数にしても3年生、4年生、5年生というふうに分けるのではなくて、たとえば「数と計算」というような領域に分けています。6年生でも今分からないのは、4年生の時のある所でつまずいたから分からないという場合があるのですね。その時に何年生、何年生となっていると、なかなかお子さんもプライドがあります。自分の分からない所に戻って、ちゃんと基礎をもう一回勉強して、それから進んで行けるようにということで、領域別という商品があります。やはりコンピュータの学習というのは、そういう子どもの学力、自分に合わせてできるというのがいい所ですので、学校教育のゆとりの部分を補完する意味で家庭で使えるものを今年、出していきたいと思います。

− 教育ソフトのサポートというのは大変なんでしょうか。
厚川
 カリキュラムの中身についてということではないのですけれども、先生方がやはり大変ですね。先生方があまりパソコンに馴染みがないですから、販社の皆さんがいろいろとコンピュータ室にセッティングをして、インストールをされてというところで、一体どうなっているのかがあまりお分かりにならないで使っていらっしゃいます。ですからそれを電話の向こうでサポートする歯がゆさは多いにあります。

− 学校の先生自体がパソコンを使ったことがないので、インストールができないからパソコンを怖がってしまうのではないでしょうか。結局販売店さんもサービスだと思ってやるんでしょうけれど、学校に関してはやらない方がいいんじゃないかと思うのです。販売店さんが立ち会って自分でやらせて、それで間違ったのをサポートすれば、生徒が壊した時などには自分でできるのではないでしょうか。
厚川
 文部省の方もインストラクターを増員するという計画がありますが、それじゃないと先生にはお気の毒ですよね。やはり生活指導ですか、生徒のメンタルケアの方にも時間をとられますから。今はまだパソコンに熱心だとか、教育熱心で研究会の授業のためにいろいろな工夫をしてお作りになるような先生が中心です。先生方にはパソコンが得意な方もいらっしゃるし、そうでない方もいらっしゃるので、やはりメーカーとしてはただでさえお忙しい先生方が、教育の本質以外のところでは苦労しないで手間を省いて使えるものを作らなければいけないんじゃないかと思っていますけれど。

− そうですね。アメリカの場合は、文部省がサンプルを出しなさいと決まっているらしいんですよ。そうするとどうしようもなく自分たちも使わなくちゃいけない。文部省に出す資料は紙をやめてワープロで出しなさい、メールで出しなさい、ということをやらないと。そういう勧告が必要なんでしょうかね。
厚川
 そうなんですね。

− それではどうもありがとうございました。

 
* 春の日差しが眩しい午後、潮見駅前にあるカテナ本社にお訪ねしました。Macintosh Plusのころからコンピュータソフトに携わっているとおっしゃる厚川事業部長は、教育ソフト論では学校教育のゆとりの部分を補完する意味で家庭で使えるCAIソフトを出したいと熱く語られました。
 カテナ本社は、JR京葉線の潮見駅前の屋上に大きな社名の看板があるすぐ分かるビルにあります。潮見地区は文字通り四面を運河で囲まれ、潮の香りと眺めのよい環境です。横を流れる砂町運河にかかる渚橋に潮風に吹かれながら立つと、ふと日頃の慌ただしさが幾分洗われる気分になっていました。

 


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