話を戻して、「Active PDC」について、セッションスケジュールと 配布CD-ROMは以下の通りであった。
・セッションスケジュール
参加者は約600名、セッションはすべて日本語で行われた。
今回のカンファレンスは、昨年11月に米国ロングビーチで開催された
「Microsoft Professional Developers Conference」で発表されたActive Platform構想を
日本でお披露目するために開催された。
その意味では、約4ヶ月弱かかつてマイクロソフトで資料を英語から日本語へ翻訳し、
日本語版の担当とプライオリティを決めた上での発表会ともいえる。
最近マイクロソフトが開催するカンファレンスで、極力日本人の手で発表を行う努力を続けていることは
称賛に値する。以前、たとえばOLEの立ち上がりの時期などは、カンファレンスでも米国技術者が来日して
同時通訳で講演するのが当たり前だった。日本語に翻訳された技術資料や書籍、雑誌などはほとんどなく、
OLEが日本で低空飛行を続けた原因の一つとして、カンファレンスのアンケートなどで一番に批判されたもの
だった。
昨年11月のPDCにも参加し、慣れない早口英語で新技術の発表を聞いてきたので、今回は復習の意味もあ
って日本語で安心して聞いていることができた。米国のPDCと比べて、セッション数もセッション時間も縮小
されていることもあって、全般的には説明不足の部分もあった。特別新しい発表はなかったと思うが、
回りの反応は、今回初めて聞く話も多かったような戸惑いを見せている受講者が一部に見受けられた。
Active Platformとは、既存の投資を守りつつ、多数の利用者に最適なアプリケーション、Webサイト、 ソリューションを簡単かつ高いコストパフォーマンスで提供するための統合開発プラットフォームである。 一般ユーザーは、ローカル、ネットワーク、イントラネット、エクストラネット、インターネットなど、 オブジェクトの実態がどこにあるかを意識することなく、シームレスなアクセスを実現する。
・Active Desktop
Active Desktopにとってのシステムサービスは、もっぱらPCの前に座るユーザーに対するグラフィックス
やサウンド、アニメーションといったユーザーインターフェイス回りが大勢を占める。
コンポーネントは、ActiveXコントロールやJava Appletsであり、スクリプトは、Visual Basic Scri
ptやJavaスクリプトである。ユーザーは、WebブラウザやOfficeなどのアプリケーションを通して、さまざま
なサービスを享受できるようになる。 Activeドキュメントのように、Webブラウザ上で既存のOffice文書を
読み書きできるようになる。
Active Desktopは、Windowsクライアントだけでなく、MacintoshやUNIXへの拡張が予定されている
クロスプラットフォーム環境である。Internet Explorer 4.0によって、OSとWebブラウザを統合し、
DCOMとの連携を図る。開発者にとっては、クライアントとサーバーに対して同一の開発環境を有し、
使い慣れたツールが利用できる。
ただし、Java、C/C++、VBといった開発言語には依存しない。
デモを見た限りでは、本当にOSがWebブラウザそのものになってしまった。マウスの左ボタンのシングル
クリックでファイルを開いたり、Activeコントロールを自由にデスクトップに貼り付けたり、
HTMLベースやスクリプトによってユーザーインターフェイスを自由にカスタマイズすることができる。
Windows ExplorerとInternet Explorerが統合され、ローカルなハードディスク、ネットワークサーバー、
インターネット上にある文書を自由に閲覧したり、FTPサイトからマウスのドラッグ&ドロップの操作で
ファイルをダウンロードしたり、ユーザーはどこに存在するかを意識することなく、違和感のない操作
を行うことができる。
・Active Server
一方、Active Serverについては、実に多くのセッションが用意された。
Active Serverは、Active Platformを支える屋台骨であり、Windows NT ServerとBackOffice製品群
によって、数多くのシステムサービスが提供される。これまではクライアントにダウンロードされて動作
していたコンポーネントやスクリプトもサーバー上で動作する仕組みが用意される。
ただし注意しなければならないのは、サーバーといってもかつてのホストコ ンピューターのような
一極集中・中央集権的な姿ではなく、複数のサーバー群が作る分散コンピューティングの新しい形である。
そのための新しいシステムサービスも登場する。
サーバーアプリケーションの構築が容易になり、分散アプリケーションを構築するための豊富な機能も
提供される。開発者にとっては、クライアントと同様に、同じ開発環境で、使い慣れたツールが利用でき、
開発言語には依存しない。
Active Server技術には、DCOM (Distributed Component Object Model)、Active Server Pages、 Microsoft Transaction Server、メッセージキューなどが含まれる。 いずれも分散コンピューティング環境を実現するための中核となる。
・Microsoft Visual Studio 97
〜 Visual C++ 5.0, Visual Basic 5.0, Visual J++ 1.1, Visual InterDev 1.0 〜
米国でのアナウンスによると、「Microsoft Visual Studio 97」、「Microsoft Visual C++ 5.0」、 「Microsoft Visual Basic 5.0」の各Enterprise Editionは、前述の「Dev Days」に合わせて3月19日から 販売が開始される見込みである。日本語版は「Dev Days Tokyo」を過ぎた4月末にリリースされるよう である。米国では製品発表がすでに行われており、米国Microsoft社のホームページでも製品紹介が始まって いる。
3製品には、それぞれTransaction Server 1.0 Developer Edition、SQL Server 6.5 Developer
Edition、Visual SourceSafe 5.0、Visual database tools、Remote Data Object 2.0、Integrate
d SQL debuggingなどが含まれている。
「Visual Studio 97」は、先月号でも紹介したように、Visual Basic 5.0、Visual C++ 5.0、
Visual J++ 1.1、 Visual InterDev 1.0、Visual FoxPro 5.0 (日本語版には含まれない)、Mi
crosoft Developer Network Library, Special Edition、Repository 1.0が同梱されている。
Visual Basic 5.0を除く各製品は共通したユーザーインターフェイス上で動作する。
98年に出荷予定の次期Visual開発ツールでは、Visual Basicも同じユーザーインターフェイ
スになるといわれている。
「Visual C++ 5.0」は、より高速なコンパイラ、COMのネイティブサポート、向上したユーザービリティ
機能、Visual Basicスクリプト機能、ATLなどが追加されている。
「Visual Basic 5.0」は、Repository 1.0を同梱し、クライアント・サーバーやインターネットに対応
したアプリケーションを開発するのに必要な、すべてのフェーズで有効に利用できる。
ネイティブコード・コンパイラが追加され、ユーザーインターフェイスも改良され、ActiveXコ
ンポーネントの開発も可能になっている。Office 97でも採用された「IntelliSense」技術を使って、
開発者のコーディングを迅速化する。
「Visual J++ 1.1」は、マイナーバージョンアップだが、ActiveX対応とデータベース対応のためのWi
zard機能が追加された。
「Visual InterDev 1.0」は、VC++、VB、VJ++で作成されたActiveXコンポーネントをベースに、
動的なWebページを構築するための開発ツールである。
今まではVisual Basicが各コンポーネントの接着剤の役割を担ってきたが、
今後はVBもコンポーネントを作成するツールであり、Webアプリケーションにとって
はInterDevが担当することになる。
最後に一つ気になった点を書いておく。
(富士ソフトABC株式会社 技術調査室 室長
Microsoft Visual Studio 97など、新しい開発ツール群の発表に合わせたイベントとなっている。
詳細は3月中旬には明らかになると思うが、過去の米国などの「Dev Days」の例からいっても、開
発者は要チェックのイベントとなる。
●Microsoft Tech・ED 97 Yokohama
マイクロソフトのイベントでは、毎年恒例になっているワールドワイド規模の「Tech・ED」
についての情報である。今年も7月に横浜で「Microsoft Tech・ED 97 Yokohama」として開催
されると告知があった。マイクロソフトのホームページに案内もされている。
3月1日からインターネット経由で早期申し込みもスタートしているので、「Active PDC」と同様に
チェックしてほしい。こちらは開発者向けだけでなく、営業担当向けやシステム構築担当向けなどといった、
エンドユーザーを含めたさまざまなレベルと内容のセッションが用意されているので、ぜひとも出席した方
がいいだろう。
●Microsoft関係情報 (米国)
・Windows NT 4.0のセキュリティ・パッチ
・Windows 95版のDCOM
・Windows NTのPowerPCサポート打ち切り
・SDK for Java 1.5
・PC 98 Hardware Design Guideline
・Active Directory Services Interface (ADSI) Toolkit
・ActiveXのセキュリティ問題
( http://www.microsoft.com/security/ )
・JDK 1.1をめぐるJavasoftとMSの対立
・Internet Explorer 4.0のプレビュー
(http://www.microsoft.com/ie/ie40/ )
●Microsoft Office 97
Windows NT 4.0とOffice 97の拡販に向けて、「Corporate Desktop Evaluation 97」の配布が始まった。
Windows NT 4.0評価版、Office 97評価版、FrontPage 97評価版、Project 95評価版、Office 97オンライン
機能ガイド、Windows NT資料などが同梱された簡易パッケージで、評価版は期間限定で使用できるように
なっている。
●Microsoft Windows CE プレリリースキット
米国でも日本でも、Windows CEに対応したアプリケーション、周辺装置を開発するために、
限定したメーカーやISVに対して説明会を実施し、プレリリース版の配布を始めた。秘密保持契約を交わした
上での内容となっているが、ニュースリリースが流れているので、興味があればチェックされた
方がいいだろう。
●最後に
2月は、幕張で「NET & COM 97」と「MACWORLD Expo/Tokyo 97」が開催され、NetscapeとAppleのCEO
が来日にして基調講演を行っている。それぞれ興味深い内容だった。
ロータスも1月末のNotes Domino R4.5の出荷の混乱が終わったようで、2月のテクニカルセミナーでも
興味深い内容が発表されていた。オラクルについても、Oracle 8の出荷に向けた最終フェーズに入ったようで、
NCやインターネット関連製品を含めて目が離せない。誌面の関係で、詳細をお伝えできないのが残念である。
2月10日にアスキー・ネットワーク・テクノロジーの主催で「ActiveX Intranet Conference」
が開催された。4万8千円の参加料を払ったのだが、直前になっていくつかのルートから参加者が集まらない、
ということで、無料招待券や1万円の特別優待券が流れてきた。最終的には500名ほどの来場者があったようだ
が、果たして何人が正規入場者だったのか。
マイクロソフトも協力し、ActiveX技術ではOLEの時代からASPとともに先頭で旗振り役を任じてきた
ANTのカンファレンスに、技術者が集まらなかった。実のところ、筆者も某社の依頼で3月にActiveXに関する
有料セミナーを実施するのだが、やはり集客状況は芳しくないらしい。
「Active PDC」の来場者が約600名、話し声を聞いていると関西ほかからの参加も多かったようだが、
一時期に比べてこの手のカンファレンスについて集客数は明らかに減ってきている。
マイクロソフトというブランド名だけでは、むつかしい時期なのかもしれない。
もともと日本ではOLEに関しても、英文資料ばかりで日本語の資料がなかなか入手できず、開発者の立ち上
がりが遅かった。ActiveXとなった今でも状況は変わっていない。だからこそ、カンファレンスやセミナーで
情報を入手するのが残された手段だった時期があったのだが、今ではActiveXというキーワードでは開発者
が集まらない。いまだに大多数の企業のプラットフォームとなっているWindows 3.1などの目先の作業に
忙しく、ActiveX対応は先の話ということなのか、ActiveXには見切りをつけてJavaの学習に忙しいというこ
となのか、とても気になっている。
yamamoto@fsi.co.jp)
Contents
Windows Consortium ホームページ