開発/言語ソフト ここが見所、さわり所

〜 最新技術動向 〜

山本 淳


 世間は夏休みだというのに、技術者にとってはマイクロソフトからの情報の嵐に翻弄されて、暑くてつらい毎日が続いている。今月号では、7月末に開催された「Microsoft Tech-Ed 96 Yokohama」の情報を中心に、最新情報をお知らせすることにする。

(1) Microsoft Visual C++ 4.2

 日本ではようやく「Visual C++ 4.1 日本語版」が「VC++ 4.0」正規登録ユーザーに9千円でアップデート配布され、サーバーサイドのインターネット対応の環境が整ったばかりだが、米国で実施されている「Microsoft Visual C++ Subscription Edition」では、6月末に「Version 4.2」がリリースされた。後述するが、日本語版については「Tech-Ed 96 Yokohama」の受講者には9月にベータ版がリリースされ、製品版は年内には出荷の予定である。
 7月に入手したパッケージを開くと、以下のような内容となっている。

・「Microsoft Visual C++ Professional Subscription Version 4.2」CD-ROM
・「Microsoft Visual C++ for 16-bit Windows-based Development Version 1.52 and 4.1 - For developing 16-bit and Win32s-based applications」CD-ROM

 同封された案内によると、「Microsoft Visual C++ Subscription release version 4.2は、Visual C++開発システムの最新アップデートで、このリリースにはWin32プラットフォームとインターネットに対する最良の種類のアプリケーションを開発するためのツール、テクノロジー、および情報のエッセンスとともにMicrosoftのコミットを含んでいる」とある。
 また、「インターネットに対するMicrosoft ActiveX技術のクライアントサイドのサポートの提供や、Microsoft Internet Explorer version 3.0の紹介によるコミット」も含んでいる。
 機能的には以下のような内容となっている。申し訳ないが、英語の原文のまま掲載させていただく。

・New features for developing Internet-enabled applications:   
- Support for ActiveX control creation   
- Improved ActiveX control performance   
- OCX '96 guideline (windowless, non-rectangular, flickerless drawing)
- Async Moniker support   
- Windows Internet Explorer (WinINet) support
- Client-side ActiveX Documents (Document Object) support
・Updated version of Crystal Reports 4.5 that supports output of reports into HTML format

・New non-Internet related features of general interest to developers:
- OLE Apartment model threading
- Support for Visual Basic data-bound controls such as the remote data control, data-bound grid, list, and combo-box
・Complete C++ Standard Library, as specified in the ANSI Working Paper

・ODBC performance improvements

・Thread-safe ODBC classes

・Improved run-time memory allocators

 さらに16ビット版の「Visual C++ version 1.52」は、「Visual C++ 4.1 for Win32s」とともにこのパッケージに含まれている。「Win32sベースのアプリケーションの開発については、オンラインマニュアルにもっと情報が掲載されているので、参照のこと」とある。

(2) Tech-Ed 96 Yokohama

 日本で最大級のマイクロソフトの技術イベントである「Microsoft Tech-Ed 96 Yokohama」は、7月31日から8月2日までパシフィコ横浜で開催された。1,800名の定員に2,200名以上の応募があり、断られた方も多数いるということで、読者の中にも出席された方は多いと思う。

 今回配布されたCD-ROMもなかなかボリュームがある。

・Microsoft Solution Development Kit
- 以前紹介したMSDNで配布されたMicrosoft BackOffice、Microsoft Office技術情報
・Tech-Ed 96 Conference Materials CD
- ロスアンジェルスで開催された「Tech-Ed 96」の配布CD-ROM
・Tech-Ed 96 Conference Materials CD Japanese Version
- 今回の「Tech-Ed 96 Yokohama」のセミナー資料 (初期版)
・Microsoft Internet Explorer 3.0 日本語版最新ベータ+ActiveX Control Pad 最新ベータ

・Microsoft ActiveX Software Development Kit

さらに今後受講者に送られてくるというCD-ROMは以下の通り。

・Microsoft Visual C++ Version 4.2 日本語版ベータ

・Microsoft Visual J++ 日本語版ベータ

・Tech-Ed 96 Conference Materials CD Japanese Version (Final)
- 今回の「Tech-Ed 96 Yokohama」のセミナー資料 (最終版)
 内容的には米国から講師を呼んで、6月に米国で開催された「Tech-Ed 96」のセミナー内容のサブセットを話したものだが、ご存知のようにマイクロソフトのインターネット技術は日々改良を加えられており、その意味では現在の最も新しい内容に改訂されている。初日の基調講演に先立ち、米国でのアナウンスに先駆けて「Windows NT 4.0」の工場出荷の話が聴けたのもうれしい。
 以前にも触れたことだが、率直な感想としては「ボリューム一杯で食傷気味」と「では日本語版はいつ」といったところである。インターネット技術の進歩への抵抗感とWindows NT 4.0への期待と不安があいまって、少々バテているのではないだろうか。
 受講者の関心もActiveX技術を中心としたインターネットアプリケーションの開発に集中しており、デスクトップアプリケーションでのOLE利用から、ネットワーク対応と飛び越えて、インターネット対応に注目しているという日本の現状を如実に表している。「Visual J++」によるJava対応についても、米国などでの評判も高く、出荷が待たれるところである。

手前味噌だが、富士ソフトが「Communications Network Area」を提供したということもあって、私も前日の夜からExchangeサーバーのインターネットメール接続に立ち会ったが、あいにく製品版が間に合わずにBeta-2版での提供になったとはいうものの、メール接続とブラウザ使用には人だかりがしていた。予想以上に企業環境におけるインターネット・イントラネット利用は進んでいるようである。

(3) その他

・Exchange Server 4.0 製品版出荷
・SQL Server 6.5 ベータ版リリースと製品版出荷予定アナウンス
・Systems Management Server 1.2 ベータ版リリース
・Windows NT 4.0 テクニカルベータ版リリース
・Windows 95 OEM Service Release-2 テクニカルベータ版リリース
・Internet Explorer 3.0 製品版およびInternet Mail and News, NetMeeingほかリリース

 最近マイクロソフトから入手した製品版・ベータ版は、今後の企業ユーザーにとって重要な位置づけを占めるものばかりである。「IE 3.0」は米国でいきなり重要なバグが発見されて、朝のFM放送のニュースでも一般の関心が高くなってきており、「Netscape Navigator 3.0」製品版のリリースと比較広告の問題や、「Windows NT Workstation 4.0」におけるTCP/IP接続制限の問題は、マイクロソフトの急速な市場寡占に対する警告と受け取っていいだろう。「Lotus Domino」のようなインターネット環境でセキュリティを強化した製品のリリースも近い。一時期はWebブラウザ市場で80%の指示を集めていたNetscapeが地位を脅かされており、マイクロソフト製品の市場への浸透は急速かつ顕著である。アプリケーション開発者にとっても、イントラネットでの企業内利用という新しい市場への対応に迫られており、今後とも目の離せない厳しい毎日の連続である。

富士ソフト株式会社 技術調査室 室長
【yamamoto@fsi.co.jp】


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