最新Windowsソフトウェア事情(第18回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄


8千万件の電話帳

 6月はシカゴ(Comdex/Spring)、ニューヨーク(PC Expo)と海外視察が続いた。二つの展示会の間は1週間しかなかったが、大学の授業の関係で一度帰国し、時差調整もままならない状態のまま再度出発するというスケジュールを余儀なくされた。しかし、航空会社のマイレージ獲得に懸命の私にとってはこの2回の視察で今年のNorthwestのPreferredメンバー資格を確保したのでまずは成果があったと評価しているところである。もっとも体を張って蓄積したマイレージもワイフや娘の海外旅行に浪費されるだけなので無駄な努力もいいところである。たまにはファーストクラスにアップグレードでもしたいものである。
さて、今年のComdex/Spring(Windows Worldも併設)はオリンピックの関係もあり、アトランタから久しぶりにシカゴに戻った。しかし来年からは21世紀がくるまでふたたびアトランタに戻り、これら二つの展示会にさらにSpring Consumer Electronics Show, Interactive Content WorldそしてExpo Comを加えた情報技術の総合展示会になることが発表された。来年は見逃せない展示会になりそうである。しかし、今年に関していえばPC Expoの方がはるかに賑やかであったし、3年ぶりのニューヨークの街はシカゴに比べて実質3日間の滞在ではもったいない魅力を備えていた。それはともかくComdexについては先月号に下川さんの詳細なレポートが掲載されているので、本欄では今回の展示会視察の会場および街のショップで収集してきたソフトの中から表題のソフトを紹介することにしたい。
 Phone Search USA(DELORME社。会場の特別価格で30ドル)は米国の個人や会社の電話番号を収録したCD-ROMである。西部、中央、東部の3枚からなっており、マニュアルによればなんと「80 million business and residences」つまり8千万件の電話番号が収録してある。本当かなと思わせるほどの膨大な数の電話番号である。米国の電話番号のデータベースがあって何の役に立つのと思われるかもしれないが、私にとってはとりあえずこの8千万という数を実際に体験できることが30ドルの価値があるのである。

図1
 

  図1は電話番号の検索画面である。氏名や住所あるいはZIP(郵便番号)さらにはSIC(Standard Industrial Classification:産業コード)にもとずいて検索できる。図ではさっそく、西部地区について高橋という姓をもった個人なり会社(たとえば高橋法律事務所といった)を検索してみたところである。その結果、図の中段のように表示しきれないほどの電話番号が表示されてきた。1行ではデータの内容のすべてを表示しきれないので特定のレコードの詳細を表示することもでき、画面右下にその例が示されている。いまの場合は高橋会計事務所の電話であり、産業分類コードは87210101となっている。

 

図2
 

 図では8件しか表示されていないが実際には高橋だけでも無数の電話番号が検索できた。その件数を数える機能も画面下段のCountボタンに用意されている。ためしにカウントしてみると、図2のように個人と事業所あわせて西部地区だけで(といってもハワイとカリフォルニアには日系企業の駐在日本人や日系人が多いことはいうまでもないが)1000件を越える高橋さんの電話があることが示された。これは驚きである。電話番号はまた番号から名前や住所を調べることもできる。このソフトを大学の講義の中で紹介したときに、たまたま学生の一人がホームステイ先の電話番号を覚えており、それを入力して検索したところ即座に氏名と住所が表示され、「すごいな!」と学生を驚かせることができた。
さて、10分もためしてみると「電話番号が分かって何になるの!」とい疑問がわいてくる。これは無駄な投資だったのではないかと後悔の念がわいてくるが、それを打ち消してくれるソフトがあった。同じくDELORME社から発売されているStreet Atlas USAとMap'n'GoそしてMapExpertである。 Street Atlas USAは米国都市の詳細な街路地図、 Map'n'GoはAAA(日本のJAFにあたり車の修理サービスや旅行情報などを提供する団体)、 MapExpertはデータベースと地図を関連づけて各種の分析を行うためのビジネスツールである。そしてこれらの地図ソフトの中で上記の電話番号データベースが活用できるのである。

図3
 

   図3はStreet Atlas USAの画面例である。画面中央に東部地区が表示され、右側にはこ の地図ソフトをナビゲーションするためのさまざまなツールボタンが用意されている。画面右下の地図上で枠をドラッグすることで米国地図上で任意の位置に移動できるし、右上のボタンで地図の拡大/縮小表示ができる。日本でも最近、カーナビゲーションがブームになっており、その関連でCD-ROM版の地図ソフトが各種発売されるようになった。とりあえずはその米国版と考えてよい。ただ、画面でみるように、検索メニューには「Phone Search USA」の機能が見える。これはもちろん、上で見た電話番号データベースである。この機能を使うと電話帳で検索した電話に該当する住所が地図上で即座に表示できるのである。

 

図4
 

 図4は上でためした検索結果から私がかつて住んでいたロスアンゼルス近郊のトーラン ス市に居住する高橋さんの住所を地図上で検索しようとしているところである。図の右側に検索結果のウィンドウが開かれ、その中の検索対象を選択して下段のLocateボタンをクリックすると地図上にその住所の位置が表示される。実際にためしてみると即座に図5のにょうな画面が表示された。東部から即座に詳細な街路図になったので「ここはどこ?」と迷ってしまうほどである。もちろん、画面右下には概要図が表示されており、また、拡大/縮小ボタンで任意の大きさにすればよい。図では詳細な通りの名前が表示されており、それらの中には84年から86年にかけて滞在したときに車で通った懐かしい通りの名前も数多く見られる。

 

図5
 

 今度はMap'n'Goを見てみよう。これはAAAのドライブガイドソフトといってよい。その重要な機能の一つは出発地点と目標地点を入力すると経路にあたる道路を地図上に表示したり、印刷できることである。この経路は最短経路や最速距離(距離は多少遠回りになってもフリーウェイを利用して時間を短縮する)、あるいは眺めのよい経路などの選択ができる。さらに経路上のモテルやホテルさらには各種施設などについても豊富な情報が収録されており、それらの中には写真や音声による解説なども含まれている。

 

図6
 

 図6はかつて試みたロスアンゼルスからサンフランシスコまでのドライブの経路を画面 上で検索しようとしているところである。画面上段の左端のボタンをクリックして出発地点を設定すると中段のようなウィンドウが開かれ、ここで出発地点を入力すればよい。図ではロスアンゼルスを入力した。

図7
 

図8
 

 同様にして目的地を入力し、図7のようにRouteメニューからたとえば「Scenic(眺めのよい)」経路を検索させてみると図8のように太平洋沿いのルートが検索された。地図上で網掛けになっている経路がそれである。また、画面左側にはこの経路沿いの道路の番号や距離、所要時間などのデータがリストされている。

 

図9
 

  画面上段の山の形をしたボタンをクリックするとルート沿いの主要な施設の一覧を表示できる。図9はその例を示している。このリストはそれぞれAAA推奨の施設であり、価格やサービスの面で安心して利用できる。また、画面下段に用意されているSlide Showボタンをクリックするとルート沿いの主要な観光スポットのスライド写真などを楽しむことができる。実際にためしてみると図10のようなツアーガイド画面が表示され、ロスアンゼルスのオリンピックスタジアムなどのカラー写真やさまざまな紹介記事が次々に再生された。このMap'n'GoもPhone Search USAと連携して利用できる。

図10
 

 このようにして今回は電話番号データベースとそれに関連して地図ソフトのいくつかを紹介した。写真は上記ソフトを含めて今回収集した6種類の地図ソフトに加えて手元にある地図ソフトを勢揃いさせた様子を示している。CD-ROMがのっけてある地図帳は有名なRand McNally社のRoad Atlas96年版であり、同社から発売されているTripMaker(上記のMap'n'Goと同様のドライブ旅行支援ソフト)にバンドルされていたものである。サンフランシスコ市内(書店のStacyの近所)で毎年購入しているものであるが、今回はソフトにバンドルされていたので購入してみた。

地図ソフトは単に旅行などの個人的な利用だけに使われるだけではない。データベースと連動させた高度な分析のツールとしても利用できる。私自身、この地図ソフトの強い関心をもっており、集中的に研究してみようと考えているところである。その成果についてはいずれ本欄でも紹介することにしたい。乞うご期待!

(筑波大学大学院経営システム科学 教授)


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