◆ 開発/言語ソフト ここが見所、さわり所

〜 最新技術動向 〜

山本 淳


 前回の原稿を書き上げた頃、「COMDEX/Spring Chicago」(6月3〜6日)の情報の整理も終わらないうちに、米国のマイクロソフトから「Intranet Strategy Day」(6月13日)についての大量の情報が流れ込んできた。昨年12月の「Internet Strategy Day」、3月の「Internet Professional Developers Conference」に続く、マイクロソフトのインターネット・イントラネット戦略発表の第3弾である。過去の例からいって、数ヶ月以内には日本でも「Internet Day」(4月)、「ActiveX Developers Conference」(5月)に続くカンファレンスが開かれて、内容が詳細に報告されることだろう。「Tech-Ed 96 Yokohama」(7月31日〜8月2日)でも、一般に向けたアナウンスが大々的に行われると予想される。

 わずか半年のうちに数々の発表をこなし、全社を挙げて戦略に沿った製品を発表・予告していくマイクロソフトのパワーにはまったく圧倒される。前回も触れたが、Windowsプラットフォームという強力な武器を持って、企業内ネットワークの既存データの有効利用をうたうイントラネットに目を向けさせることでインターネット展開で出遅れた市場の覇権を取り返そうとしている。本来なら、プラットフォームに依存しないことが最大のメリットであるはずのインターネット・イントラネットの世界でも、独自の標準をもって独占状態を目指しているという懸念の声も上がっている。

 次世代の戦略の柱となる「ActiveX Server Framework」や「Active Desktop」というサーバーやクライアントをWeb技術で統合し、さまざまなデータタイプをHTMLページとして扱うようにする。同時にアナウンスされた「Office 97」や「FrontPage Web」、「Viper」といった製品も同じ戦略の下に位置づけられている。開発者にとっては、「Visual Basic 5.0」、「Visual J++ 1.0」(コードネーム: Jakarta)、「次期Visual C++」などが、イントラネット・アプリケーションを構成するActiveX Control(コンポーネント)を開発できるようになるという発表の方に関心があるだろう。VB ScriptやJava Scriptだけでなく、PerlやREXXといった既存のスクリプト言語もサポートされる。先月触れた「ActiveX Control Pad」や「HTML Layout Control」は、現状でもアプリケーションとWebページをつなぐ橋渡しをしてくれる。ちなみに、「Visual C++ 4.1」の出荷がVC++ 4.0登録ユーザーに限定して開始された。以前紹介したが、ActiveX対応への道はようやく始まったばかりである。

 6月末の「Windows World Expo Tokyo 96」については、別に特集されているので改めて触れることもないが、「Internet Explorer 3.0 日本語版ベータ」が至る所で動作していた。マイクロソフトから事前に使用してほしいというお触れとともに、CD-ROMやグッズが配布されていた。注目すべきは「Java Support for IE 3.0」が米国のサイトからダウンロード可能となり、日本語版のIE 3.0に導入してJavaアプレッツを表示してみたが、うまく表示できるものと「不正な命令を〜」を表示してしまうものがある。

 Javaに対する期待は大きく、開発ツールベンダーも続々と新製品を発表・意向表明してきているが、技術的にはまだ固まっていない。Windows派からみると、しばらくは開発ツールの登場を待って、という模様眺めの状況が続くだろう、と言っている。「Java Developers Kit」(JDK)のインターナショナルバージョンは96年末に出荷ということなので、日本語サポートにも問題があり、本格的な企業向けのアプリケーション開発は来年からという見方もある。ただし、マイクロソフトと同様に毎日のように新しい発表がされている現状では、情報収集を怠らないようにしなければならない。IBMやロータス、オラクル、ノベルといったベンダーも続々とインターネット・イントラネット戦略製品を発表しており、ニュースからは目が離せない。

 「WWE96」の会場で開催されたテクニカルセミナーで、マイクロソフト成毛社長が講演された今後のWindows製品戦略を聴いていても、待望久しかった「Exchange Server 4.0」の出荷によって、ようやくBackOffice製品群が揃った。すでに始まっている「SQL Server 6.5」のベータテストに続いて、「Systems Management Server 1.2」、そして「Windows NT 4.0」のベータテストも開始される予定である。今後も「SNA Server 3.0」が米国で発表されたし、企業利用のニーズに合わせたいくつかの新しいサーバーがBackOfficeに加わっていく。

 「SIPC」(The Simply Interactive PC)構想も、「NC」へのアンチテーゼとして注目しなければならないだろう。インターネットにつながるだけの500ドルPCよりも、情報家電としてシンプルで魅力あふれるPCを、インターネットプラットフォームとマルチメディアプラットフォームに通用する製品に仕上げるとしている。ベーステクノロジーとしては、ActiveXであり、DirectXである。企業に向けられたWindows NTの将来構想を支える技術が、家庭の中にも入り込んでくる。開発者が取り組むべき技術は、現在も将来も同じだよ、というマイクロソフトの戦術のうまさには敬服する。

  最後に日本のマイクロソフトのホームページにある「サポート技術情報」のページ(http://www.microsoft.co.jp/pss/index.htm)は、時々覗いてみることをお勧めする。各種製品に関するバグやインフォメーションが多数掲載されている。「技術支援読本」という形で出版もされているが、当然オンラインで提供されている情報の方が新しい。Windows 95関係では、日本では公開されていないアップデートモジュールが米国のサイト(http://www.microsoft.com/windows/software/localize/localize.htm)に上がっていることもあるので、注意しておいた方がいいだろう。

富士ソフト株式会社 技術調査室 室長
【yamamoto@fsi.co.jp】


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