私はパソコンソフト中心の研究(趣味の世界?)をつづけているが、もともとは41年一橋大学商学部卒のいわゆる文科系のバックグランド人間である。大学の同期生のほとんどは銀行、商社などの大会社に就職した。末は社長か頭取かと期待し、子供の就職口は彼らにまかせればよいと確実な期待をもっていた。しかし時代は変わった。50半ばに近づいた彼らにとってリストラの風が厳しく吹き付ける。軟式テニス部の仲間の大半は第二の会社勤めに変わった。おかげでこの超氷河期といわれる就職難の中、多摩美の油絵科を卒業した我が娘はつづいて新たに版画の学習をつづけるという恵まれた学生生活を継続することになった。PhotoShopやIllustratorなどのパソコンソフトの手ほどきは十分にしたつもりだったのだが。
さて、大学にも定年がある。ずいぶん前から定年になったら暇の時間を持て余すのではないかと心配していたが、それも10数年先に近づいた。本欄ですでに紹介したように私は今年末には山へ引っこむ。暇な時間は甲斐駒でも眺めてくらせばゆったりと時間が過ぎていくのだろうが、それでは「ボケ」が心配になる。ボケ防止策の第一は頭を使うことである。しかしいまさら難しい本を読むつもりもない。そうしたときにこれまで何度か挑戦して結局ものになっていない囲碁の学習を再開するという戦略(!)が頭に浮かぶ。もちろん、囲碁と並んで将棋もある。将棋界の天才、羽生は八王子郊外に実家がある。私は彼の実家と同じ住宅地に住んでいたことがあり(1ブロックと離れていなかった)、しかも我が息子は彼と小学校が同期であった。その上、私はその小学校のPTA会長までつとめていた。しかし、先を見る目がなかった私にはそんな天才が身近にいるとは想像すらできなかった。世が世ならば天才羽生の手ほどきを受けて将棋の世界に老年を送ることもできたのにと悔やまれる。
さて、話を急ごう。結論からいえば(どうでもよいことだが)、囲碁学習を再開することにした。実は(またか!話が長い)だいぶ前に囲碁学習用の本や定石辞典などの文献を山ほど購入した。しばらくは囲碁文献中心の研究生活を続けたものである。写真はその残骸を山積みした様子を示している。そしてその中には「松下電器製、ナショナル携帯用電子碁盤」などというのもある。これはオプションの定石集も含めて8万円した囲碁学習機である。保証書を見ると昭和59年とある。10数年前のことである。こんな文献や学習機を使いながら学習したのであるから現在の囲碁の腕前は少なくとも段に近いレベルだと推測されるだろう。しかし、残念ながらパソコンソフトの研究が忙しくなってしまい、いまだにハンディ36である(おっとゴルフの話ではなかった)。
囲碁学習を再開するにあたってそうしたかび臭い学習書や囲碁学習機を取り出すことも考えられる。しかし、パソコンソフト研究を飯の種とする私にとって囲碁ソフトを探索することは当然の道かもしれない。その結果として「デビッドフォットランドのAI囲碁5(アスキーサムシンググッド社)」にいきついた。このデビッドフォットランド氏についてはまだ面識がないが、羽生とならぶ囲碁の天才なのだろう(もしかして外国人?)。話はまたまた変わるが、私は日本ゲーミング&シミュレーション学会の理事の一人である。この学会はパソコンソフトウェア協会の支援を受けて運営されている学会であり、その中心テーマはゲームである。私の関心はビジネスゲームであるが、もちろん、囲碁、将棋も学会のテーマに含まれる。そういえば、学会の全国大会で将棋の女性棋士(林葉 直子さん)を招待したこともある。そして学会理事の一人である光栄の襟川社長は昨年からパソコン用の囲碁ソフトを集めた大会を始められた。上記のソフトもいずれはこうした大会などをきっかけとして人間の有段者にも負けないような囲碁ソフトが登場することになるのだろう。
「シカの頭、像の足、イノシシの尾、そのほかは馬。
牛のように太く低い声を出し、1メートルもの黒い角が頭の真ん中から
突き出ている。そして生け捕りにされることはない」。
古代ローマの博物学者、ブリニウスが記した一角獣(ユニコーン)。
ヨーロッパで生まれたこの空想上の動物がこの広場で見られます。
高橋先生をお訪ねになった際には、是非ご覧下さい。
まぶしい新緑の中、しばし神話の世界への旅をどうぞ。