活動報告
● 第4回マルチメディア専門委員会セミナー実施報告
日 時 : 4月12日(金) 13時30分〜17時40分
会 場 : 大手町KDDホール
参加人員: 42名
テーマ : 『米国におけるマルチメディア著作権・知的所有権の諸問題』
講 師 : マックス法律事務所 弁護士・ニューヨーク州弁護士 齋藤 浩貴 様
今回は、米国ニューヨーク州で長年弁護士活動をされて、最近帰国されました齋藤先生から米国におけるマルチメディア著作権・知的所有権の諸問題についてお話いただきました。
@「米国著作権の概要」では、日本法との考え方の違いについて説明があり、米国連邦制度では、各州が憲法の制定権限をもっており、連邦法80条に著作権法がある。Copyrightは経済的な権利であり、Author's Rightは著作者の権利(自然的な権利)である。また、『米国著作権法の著作権者の排他的権利』を米国法106条、日本法21〜28条について比較された説明がありました。米国の方が日本より著作権法については、はるかに進んでおり、日本で起こりそうなことが既に起こっている。日本で問題であると考えられるが判例がない場合、米国では既に判例がある場合が多い。
A「ネットワーク事業者の責任」は今回のメインテーマ。準備体操として、『ソニー対ユニバーサル判決』を取り上げ、“寄与的侵害”(被告が直接的には著作権侵害を行っていない場合であっても、被告が侵害行為を知りながら他者の侵害行為をそそのかしたり、引き起こしたり、又は実質的に寄与している場合にはその侵害行為に加担した責任が問われるという法理)、“フェアユース”(4つの判断要素)を学習し、続いて『プレーボーイ判決(Playboy Enterprises Inc. v. Frena)』:BBS事業者が侵害を知らなかったケース、『マフィア判決(Sega Enterprises Ltd. v.. MAPHIA) 』:BBS事業者が侵害を奨励したケース、『ネットコム判決(Religious Technology Center v. Netcom)』:インターネット・アクセス・プロバイダーのケース、『コンピュサーブ訴訟(Frank Music corp. v. CompuServe Inc.)』、『プロディジー判決(Stratton Oakmont v. Prodigy)』:名誉棄損のケース、と具体的なケースを取り上げた説明の他、B「RAMへの読み込みと複製権」、C「創作性のないデータベースの保護 ─ファイスト判決の波紋」、D「米国ホワイトペーパーの提言」、E「ドメインネームと商標法」にも話が及んで、時間が不足気味の感じでした。
また、「マルチメディア著作権情報」(リットーミュージック マルチメディア編集室編)がWWWホームページ【http://mci.ritto-music.co.jp/】にありますのでご参照ください。
セミナー風景
ここで、皆さんからのアンケート36枚(提出率85.7%)からのご意見を紹介します。
有用とのご意見からは、「判例中心なので理解しやすい」4件、「日米の著作権の際について掲示されて良かった」2件、「マルチメディア・インターネット先進国の米国の判例はよく分かった」、「今後の事業のチェックポイントが明らかになった」、「判例に依る解説は理解しやすい。しかし、本件のように判例数にかぎりのある場合には、misleadする危険もあるように思う」、「BBS業者やIP業者の事例は良かったが、ユーザー企業の事例やソフトメーカー対企業の事例も、もっと紹介して欲しかった」などです。
不満なご意見としては、「資料の情報量が少なすぎる。少なくとも時間を有効に使うためには、用語の定義、概念の定義、重要な説明は事前に詳しい資料を準備頂きたい。(話を正確にメモしきれないため、参考文献や時々刻々動く情報へのアクセス方法等の資料)」です。
その他としては、「残念ながら理解できたとは言えないが、判決例は興味深く、米国と日本の違いも初めて知ることばかりでした。現段階では、すぐ有用な内容ではなかったのですが、今後役立つことが考えらる」、「専門的な用語が多いのでレジュメ等での解説があった法が良いと思う」、「情報発信者側の問題として課題があり、又ネットワーク社会を構成するサーバー、プロバイダーについての責任が広範囲にわたってあることに気づいた」、「マルチメディアの問題を取り上げて欲しかった。この面では、(コンピュータネットワーク中心に進められたので)内容がプログラムの主旨と異なっていたのが残念」、「具体例として、興味深い内容であった。ただ、日本と米国の違いがどの様に実例に反映されるのか知りたい。(日本では、判例がないとのことですが。)WWWのコンテンツは世界に出ていくものなので、結構こわいと思う」、「ネットワーク上でのクライアントのライセンス契約をうたっていますが、本日のクライアント・サーバー型というかサーバーにあるプログラム(アプリ)は、クライアントの数は関係なく、不法コピーにならないように聞こえたのですが、そうなのでしょうか? MS等もたしか著作権の違法コピーとして日本の大手の企業に警告を出したことがあったと思いますが、著作権法では、問題にならないのでしょうか」などです。
今後希望するセミナーは、「米国でのソフトを日本語化して販売する会社におりますので、米国のCopyrightの日本での扱い方、使用許諾にかかわる問題などを取り上げて頂きたい」、「分散処理コンピューティングの浸透によるシステム監査方法のあり方、また法律的な問題と課題をテーマとするセミナーを希望」、「ECとインターネットの先端動向(米国、ヨーロッパなどの)」、「ホームページ上での著作権利問題についての話を聞きたい。実状、米国や世界での状況、日本での今度の問題など」、要望としては、「ソフトウェアをめぐる著作権に関するセミナーを継続的に開講して欲しい」、「著作権に関しては、もっと入門コースを行っていただきたい」、「次は実際に日本国内でコンテンツ作成を行う際の著作権関連の問題をどのようにしてクリアしているかの実例が聞きたい」、「セミナーでの発表内容はテキストとして提供して欲しい」などです。
コンソーシアムに対する要望としては、「このような、重要なテーマについて、具体的な研究を行うよう望みます(ECなど)」がありました。
なお、『ソニー対ユニバーサル判決』については「Windows View」22号、「RAMへの読み込みと複製権」については本号で、齋藤先生の連載「米国におけるマルチメディア著作権・知的所有権の諸問題」で解説されておいます。
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