松倉会長の業界キーマン直撃インタビュー
インフォテリア株式会社
平野 洋一郎社長を訪ねて


 インフォテリ株式会社はXMLを専業とするソフトウェア開発ベンチャーとして今非常に注目されている企業です。
 今回の直撃インタビューは去年12月中旬、目黒碑文谷にあるインフォテリア本社に平野社長をお訪ねして、"今何故XMLなのか"を中心にお伺いしました。平野社長にはロータス在社中、Windowsコンソーシアム活動に大変ご協力をいただいておりました。
 話は大変熱く盛り上がり、インタビューの中にXMLにかける平野社長の熱意をくんでいただけましたら幸いです。

平野社長

<<98年9月に2名でスタート>>

― まず、御社をご紹介ください。
平野
 98年9月に私と北原で設立しまして、今1年と少し経ちました。設立当初から投資による資金調達ということでやっており、この11月に第2回目の第3者割当増資が完了して資本金が3億7千万となりました。経営陣が私と北原と古谷の3人で、社外取締役として2名お願いしています。事業内容としては、XMLの専業ということでXMLのソフトウェアに特化した会社です。

― 製品としてだいぶ揃ってきたとお伺いしていますが。
平野
 製品としては今3つのライン、「iPEX」と「XML Solutions Components」と「XML Server for Domino」とでやっています。
 一つ目の「iPEX」(Infoteria Processing Engine for XML)はソフトウェアをXML化するためのモジュールです。以前いろいろなソフトがHTML対応したと同じように今後ソフトをXML対応しなければならなくなります。その時に、自社で全部コーディングするのか、それともiPEX等のモジュールを使って組み込むのかという選択になります。その時、このiPEXというのは特に用途は限定せずにXMLの処理を全て請け負うモジュールで、他のソフトの中に組み込まれて出て行くOEM製品です。対応のプラットフォームとしてはWindowsだけでなく、Solaris、Linux、Mac、BeOS、他にOEMとして特定のOS(家電用のOSなどいわゆる一般のOSでないもの)と幅広くやっております。ソフトウェアから命令するだけで、コンバートのほかに、普通のデータとしての読込みやデータを保持して削除・追加などの機能を持っています。NTTデータさん、ユニシスさん、日立さん等でシステムに組み込み用として使われています。まだパッケージは少ないですが、例としてインクリメントPさんのMapFanがあり、iPEXを組み込んでXMLで地図の検索データをやり取りしています。今後このようなパッケージも徐々に出てくるでしょう。例えばゲームや宛名書きソフト等もXML対応するということであればこれを使えばいいわけです。別に業務用でなくても個人用なところまで使えるものです。
 二つ目の「XML Solutions Components」は用途が決められていて、企業間のデータの連携やアプリケーションの連携を行うために組み合わせて使うミドルウェアです。データベースとつなぐモジュールであったり、インターネットのメッセージを受け取り発信するモジュールであったり、旧来のブラウザ向けにXMLからHTMLを生成するモジュールであったり、こういうものを用途に合わせて使えるように6種類のモジュールを提供しております。領域的には企業間もしくは拠点間です。
 三つ目の製品が「XML Server for Domino」でロータスさんとの共同の製品です。ロータスノーツ/ドミノで作成された文書やデータをXML形式に変換し、社内外との情報交換・蓄積を行うためのサーバーソフトウェアとして、ロータスさんが既にノーツ/ドミノの顧客になっていらっしゃる方々に向けて提供する、というものです。 この3ラインが今1年経ってようやくそろったというところです。事例もようやく出始めました。NTTデータさんのB to BのWeb通販サイトでOrderItというがあるのですが、発注側が「XML Server for Domino」、受付側が「XML Solutions Components」で構築されています。
 また、英語版として米国市場への展開を始めています。12月初めに米国でXML'99があり、英語版を出展しました。1月中には子会社をボストンに設立し、2月には営業開始を予定しています。インフォテリアUSとして、国内と同じように製品展開をしていきます。

松倉会長、平野社長

<<12社と業務提携>>

― 各社さんとの業務提携はいかがですか。
平野
 これらの製品ラインのうち「XML Server for Domino」を除いた製品は我々が独自に売っていかなければいけないので、「XMLプロフェッショナルインテグレータ」という制度を作っております。発表当時は8社でしたが現在12社で、うちの製品ベースとしてXMLソリューションが組める会社ということで、10月からアライアンスを組ませていただいています。この12社がうちの製品を使ってインテグレーションをしていただくと同時に、XML自身の普及ということも一緒にやっています。少し仰々しいのですがXMLを何か見えるようにしようということで各社の名前が入った盾を作ったり、共同でコンピュータ雑誌に広告展開したりして、興味のある企業にお問い合わせいただける仕組み作りをしています。


 それ以外にいくつか組んでやっているところがあります。東芝アドバンスシステムさんは、単にうちの製品でインテグレーションするだけでなく、本当に顧客に応じたソリューションを提供したいということで、パッケージ製品のカスタマイズまで範疇に入れたアライアンスを組ませていただいています。シーアイエスさんには、教育の分野でXMLの基礎から応用の部分まで我々の製品を使ってXMLトレーニングコースとして開催してもらっています。インフォテリアでは、XMLのいろいろな技術的なノウハウ、監修、テキスト作成の協力をやっています。あとINSエンジニアリングさんと提携して、ナレッジマネジメントサーバー(KMサーバー)を共同で開発しています。これはINSエンジニアリングさんの製品になり、技術提携という形でやっています。

松倉会長

<<アプリケーションに依存しないデータの記述方法が必要だ、それが出てきた、だからやった>>

― 根本的に戻りますが、何故平野さんはXMLをやろうとしたのですか。
平野
 結論からいくと、「アプリケーションに依存しないデータの記述方法が必要だと、それが出てきた、だからやった」ということです。
かってロータスで製品のインターナショナルプロダクトプランニング部門にいたことがあり、ワールドワイドでどのような製品が必要か、将来的にどのような製品が必要かを考えていました。問題として、ソフトというのはソフト間の移動というのが非常に難しい、つまりEXCELから1-2-3に行く、1-2-3からEXCELに行くとか、ノーツからExchangeに行く、Exchangeからノーツに行くとか、最大のポイントはデータにありました。ソフトウェアには、データが違うからその上のアプリを簡単に変えられないという垣根がすごくありました。1回決めたからとか、もしくは隣の人が使っているからそれを使わなくていけないとか、そういうところが非常にあります。ところが世の中で普及している商品を見ると最初は各社各様いろいろなものが出るのですが、普及段階になるともうそういうものは無くなって、ユーザーが目的とか予算とか好みとか、いうことで選べるようになるのです。古くは例えば車です、昨日はホンダに乗っていて、今日はトヨタで、明日はニッサンでもいいわけです。もうちょっと近くなると、例えば家電ではどこのメーカーの製品を使ってもいいわけです。例えばビデオでは、どこの製品でも同じテープが使えるわけです。もっと近くなってパソコンの世界では、ほんのちょっと前まではメーカーによって使えるソフトが違っていましたが、これが共通化されてどこのメーカーでもよくなりました。そうなるとパソコン自体はソフトとは関係なく、自分の目的とか好みとか予算とかに応じて選べるようになったので。だからVAIOのようなユニークな製品が出てきた。ところが、ソフトはそうではないのです。

― ソフトはまだまだですね。
平野
 このデータを読まないといけないからWordを使うとか、EXCELを使うとか、ノーツを使うとか、そういうような世界です。でも、EXCELや1-2-3にしたところである表を書くときにやることは全く同じですが、保存されたフォーマットは全く違う。それは何故かというと、アプリケーションにデータが従属しているからです。だから、そうでなくてデータがあってそれを処理するのがアプリだというように将来的にならないといけないなと、それをずーっとずーっと思っていて、でXMLが出てきたのです。

― 最初に出合ったのはどういう時ですか。
平野
 それを考えていたのは92年か93年頃です。最初は、HTMLに注目していました。つまり、HTMLをこの共通フォーマットの基礎に使えないかと。何故かというとHTMLというのはデータの方が「偉い」のです。データがあって、それをブラウザが競って早く表示しようとしたり、きれいに表示しようとしたりとしているわけです。データ構造というのは、アプリケーションに関係無くもう決まっているわけです。このモデルを文書以外の表計算や、グループウェア、データベースに使えるといいな、と思ったのです。そうこうするうちに96年になってXMLが出てきてこれが使えるのではないかと注目していました。そのころ私はプランニング部門でなくて国内のマーケティング部門に移っていましたから、直接深くやる時間はなかったのです。しかし、2年くらい経って98年の2月に勧告(最終仕様)になって、これは使えるなと思って決めて半年間準備をして、9月に会社設立というような経緯です。

<<XMLは3年で業界、5年で一般的化する>>

― 最近BSのデジタル放送などを見てみますと、発信データがXMLだよというような話題も出ていますが、<これからの我々の情報化社会にどのような位置でXMLが入ってくるとお思いですか。
平野
 基本的にはコンピュータの世界でいろいろなメーカーの違いだとか、ソフトベンダーの違いを乗り越えた世界になる、データ中心ですね、データがアプリから独立している世界に持っていける触媒ですね。今後どんどんXMLが普及して皆がXML、XMLというようになるかというとそれは違っていて、当り前になってくるので、XMLといわなくなるという状態になければいけないと思っています。例えば通信路で今プロトコルにTCP/IPがありますが、誰もTCP/IPと騒がない、当り前だから。そいう状態になるということです。そうなった時には誰も騒がない、そうなっていなければ逆にいつまでもXML、XMLと騒いでいたら、それは普及していないと同じです。だからそうなることでいろいろなものがつながって、今インターネットで線はどんどんつながっていますが、それに対して例えば家電がつながる、PCがつながる、携帯がつながると、といったようなときに一体何をもってつなぐかというかというと、データの領域です。ラインはTCP/IPでつながります、じゃデータは何でつなぐかというと、従来のようにソフトウェアが各社各様にデータを決めていて送る、送らない、A社とB社で話してこう通じるようにしましょうとか、そういう世界でなくて、TCP/IPと同じように、いってみればXMLはデータのパケットなのです。アプリケーションのレイヤーで扱える共通言語です。

― XMLがTCP/IP並になるのは何年後くらいですか。
平野
 5年ですね。でもいわゆるこの業界だけだともっと早く、3年位です。

― 3年で業界、5年で一般的化するということですか。それでは、次にXML'99のお話を、日本から2社が出展と聞いていますが。
平野
 日本で出展したのは、ソニーとうちで、ソニーはソニーアメリカです。ソニーアメリカが出したのはサイバーショットというデジカメです。デジカメのキャンペーンキャラバンを全米でやっていて人が集まる所には出て行くということで、実はXMLには何も関係ないのですが、人が集まるということでやっていました。ただソニーが出てくるということで、何をやるのだろうと前評判は結構高かったのです。出てきてみたらサイバーショットでちょっとがっくりという感でした。

― XML'99での御社の反応は如何でしたか。
平野
 フィラデルフィアで12月5日から8日に開催され、反応は大変よかったです。ブースの場所もよかったですが。その後アメリカから問い合せが結構きています。昨年はXML'98で毎年1回ずつ開催され、XMLに特化したものとしては、世界で一番大きなイベントでセミナーを中心としたイベントです。セミナーと展示会を合わせてカンファレンスと呼んでいるのですが、うちは展示会だけでセミナーの方は聞く方でした。来年は何か発表したいと思っています。今年の参加者は2200人、規模的には去年の1.5倍位の参加者と広さと聞いています。

― 米国に子会社ができますから、今後とも積極的に展開していくということですね。
平野
 はい。

― 事業も軌道に乗ってきたようですが、そこまでの一番の苦労話を聞かせてください。
平野
 軌道に乗ったというよりは、まあスタートラインに着けたかなというところです。うーん、一番の苦労話ですか(しばらく考え込む)。

― それでは、スタート時のお話を、最初の事務所はどちらでしたか。
平野
 ベースは田園調布でした。なぜ田園調布かというと共同創業者の北原の家が田園調布にあり、彼が開発の中心ですから、いつでも歩いて帰れるということで、北原の家の隣のアパートではじめました。

― ガレージ産業ですね。
平野
 はい、本当にガレージそのものです。最初は6畳一間で始めましたから。3つ机を入れたらいっぱいです。それから2番目として正月に引っ越したのが2LDKのマンションで、ここに来たのが今年の7月22日です。

― 今現在は何名ですか。
平野
 社員は15名です。それ以外に開発の部隊として社外で専属でやってもらっているフリーの方が5名います。

<<一番の苦労は資金集め、先行評価を自らのプレッシャーに>>

― 御社を見込んでいろいろ投資があるようですが。
平野
 最近6億円の投資を受け入れました。その前は1億の投資を入れています。ですから今3億7千万円の資本金とは別に3億5千万円の資本準備金があります。そうですね、一番苦労したのは、やはりお金のことです。資金繰りというよりか資金集めです。

― スタート時ですか、運転資金ですか、
平野
 もともと出発するときから米国型のベンチャーということで大見得をきっていました。即ち借金を絶対しないと、投資だけでまかなうといって、当初自分達で取り敢えず2千万円作って、最初の投資を受け入れるまでその中で全部まかなっていました。その間業界内を回ってプレゼンをして、そこで1億の投資を出していただいたわけですが、その時が一番本当にこれがいけるのかどうかという不安、今でもいろいろ不安はあるのですが、初っ端というのはやはり大変でした。設立時から先行評価をお願いして回っていましたので、それを理解していただくのが最初一番大変でした。それでも理解していただける方が結構いまして、それでやってこられたと思っています。
周りに先行評価してもらうということは、最初に言ってそれを実行していくことです。どんどん「ちゃんと」やっていかないと、そこで評価が駄目になってしまいますから、その自らかけるプレッシャーに対してやっていかないといけないというところが、まあ難しいというか、苦労というか、楽しいところでもあるのですが。

<<99年はXML元年、2000年は利用元年>>

― XMLは20世紀最後の年にはどうなりますか。
平野
 99年はXMLが注目されたということでXML元年というように位置付けてもよいと思っていますが、実際世の中で使われているかというと、そうじゃないですね。今まだ皆注目して、勉強して、使う準備をしているところですから。2000年はXMLの分野でいうと実際の市場、即ちユーザーサイドでの準備が始まる利用元年というところでしょうか。本当にこれだけ注目されて、いろいろなところで話や記事などが出ていますが、実ビジネスというのは微々たるものです。先端の技術というのはどれもそうだと思うのですが、別にXMLに限らなんですけどね。ノーツもそうでしたが、93年に日本で売り出してもグループウェアというセミナーとか記事ががんがんやるのですが、注目は大変高いけれども最初はなかなか実売に結びつかなかったですから。

― 取り敢えず2000年問題が終わらないと駄目ですかね(笑)。
平野
 それもありますね。ある程度予備費も取ってらっしゃいますから。

― 利用元年になるとどんなユーザーさんが最初になるのですか。
平野
 我々が注目しているのはECですね。従来的にいうとドキュメントソリューション系が結構出てくるでしょうが、既存のシステムを持っているところも多いし、HTMLやワープロ文書のドキュメント管理でのシステム展開もまだ多い。ところがECに代表される社外システムは、まだできていなくて、「これから」というところが多い。今後はネット系のビジネスが新しく出てきて単純なショッピングからオークションからいろいろなものがBtoB、BtoCといった新しい分野で使われてきます。ただそれも直ぐには普及するわけでなく、今後ブラウザやERP系の製品、マイクロソフトなどのサーバー製品もXML対応になってきますから、そうなるとやっと使われ始めることになると思います。



<<日本の利用状況は米国に比べて2年遅れ>>

―米国の方ではどういう状況ですか。
平野
 米国の方ではそういう意味でいえば、今年は利用が進んだ年ですね。

― 利用元年ですかね。
平野
 そうです。

― 日本は1年遅れですか、でも早いですね。御社があるから早いのですかね。
平野
 そんなことはないと思います。ただ正直言って、量の違いはあります。米国はかなりの量で進んでいますから、どれだけ進んだら元年といえるかというとちょっと微妙な差があります。実際に同じところまで進化するとなると、やはり2年くらい遅れている感じはあります。とはいえXMLが98年の2月に勧告されたばかりですから、実際XMLだけを取ってみると1年くらい、いわゆるインターネットでの利用度合い、つまりインターネット自身の利用度合いが違いますから、その辺まで含めると2年くらいということです。もう米国の方ではBtoBのいわゆる企業間の見積書から発注までをXMLでやる実システムが動いています。日本には実証実験はいくつかあるのですが、私の知る限りパブリックにサービスインしているシステムはまだありません。多分2000年に出てくるでしょうが。

― MS Office2000がXML対応といっていますが、どこまで対応しているのですか。
平野
 うーん、HTMLで出していた代わりにXHTMLというXMLベースのHTMLで出せるということだけですね。これはマイクロソフトさんも認めています。今回のXML'99で「Wordの文書をちゃんとXMLにしますよ」というツールを発表した会社があって、そこにパネルディスカション的な形でマイクロソフトの人もいたのですが、司会のモデレータの人が「そういう製品を発表されたらしいですが、マイクロソフトさんはXMLに対応するといっていますよね」といったらマイクロソフトの人が「いや、対応しているといってもこれはHTMLですから、あっはっはっは」まあ、そんなものです。ただ、対応するというのはやはり評価すべきことで、本当はXML対応というのはデータの標準ですからロータスとかコーレルが最初にやってもおかしくないことです。XML対応はマイクロソフトにとっては諸刃なのです、というのはマイクロソフトさんは今まで特にOffice製品はファイルフォーマットで囲い込みをしているのです。Wordなんてのは、送られて来るWordの文書を読むために皆がWordを使うわけです、使いづらいとかいいながら。

― 読めないから買うわけですね。
平野
 そうですね。本当にXMLに100%なってしまうと、これはもうWordでなくていいという世界になってしまうわけです。本当は他のところがもっと元気を出してやらなければいけないのですが、私は、マイクロソフトさんがある程度の意識をもってやったということを評価しています。ただ、まだWordが吐き出すXHTMLにすべての情報が入っているかというと入っていないので、マイクロソフトとしては「Wordのファイルを使いましょう」ということで依然囲い込みの状態になっているわけですが。

― 病院のカルテもXML対応ということで進んでいるようですが。
平野
 ベースは実は今年の4月に厚生省が診療記録を電子的に記録、保管していいよということを認めたことが、大きなポイントだったのです。それ以前は、原本は紙でないと駄目だといっていました。例えば、税務署でも電子的な書類を認めはじめていますが、そのような流れの一つとして厚生省も、診療記録の電子保存を認めたわけです。日本医療情報学会というところで以前から電子カルテの研究をしていたのですが、それで一気に機運が盛り上がったようです。もともとSGMLベースのプロトタイプがあり、それをベースにXMLベースのMML(Medical Markup Language)ができた、ということです。MMLが目指してところは、単純な記録だけではなくて、インターネット時代における病院間の情報の流通(診断・診療をするためのベースとしてのデータの受け渡し)ができるようにしようを考えていることです。例えばある病院から次の病院に移ったときに、今は再検査ですが、そうでなくてこの情報をセキュリティに基づいて受け渡すことで継続して診察ができるとか、従来の病歴が解ることで過去の蓄積も含んだ診断・診察ができるということを目指しています。

― XMLの規格は確定しているのですか。
平野
 XML自体はXML1.0で決まっています。XML1.0はそんなに簡単には変わりません。XML1.0をベースにしてそれを使ったいくつかの新しい仕様が出ています。XMLは本当に基礎の文法のようなもので、それを使って例えばベクターグラフイックに応用するとか、電子カルテに応用するとか、デジタル放送に関するだとかは、これはまた別の技術ステップです。こういうところは取捨選択できるのですが、XMLの部分は別です。

― XMLの啓蒙活動ということでは。
平野
 インフォテリアは普通の営利企業なのですが、まだまだXMLの布教活動をしている面が大きいですね。XMLとはいいのものだと理解していただいて、それを使おうということになってもらおうというところから始めています。本当は直ぐ商売したいのですがそうはいきません。ノーツが最初「グループウェア」の啓蒙と一緒に進めていったのと同じようにXMLの普及活動をしていくと。

― XML準拠スペックに拡張提案したアイデアが業界標準に成る余地がまだまだあり得ると聞いています。そこに新規ビジネスのチャンスがあるのではないかと思いますが、御社からのアドバイスなどをお聞かせ願えれば。
平野
 一番ありきたりな例でいえば、"何とか業界"というのがあって、そこで取引するものを"何とかML"といって、そこで何らかのビジネスが成り立つ可能性というのはあります。

― 他社さんがXMLに力を入れたいと、御社と一緒にいろいろやりたいといった場合のアドバイスを。
平野
 「是非ご一緒にお仕事をしましょう」ということになります。

― 例えば、他社さんが新規に始める時には何からスタートすればよいのですか。
平野
 いろいろな側面があると思います。全く新しいものではないので、XMLというのはインターネットの技術をベースにしていますから、今何かをうたう商売にされているのなら、SIさんだったらSIの中にXMLを入れていくとか、コンサルティング屋さんだったらコンサルティングの中にXMLを入れていく、教育ビジネスをやっていらっしゃるところだったら教育に入れていくとかようなことで、今やっている商売の中にXMLを取り込むというものです。

― 取り込めばいいのですか。
平野
 まずスターティングポイントはそういうことです。でないと日々のビジネスをやっていらっしゃるので全くなかなか新しいビジネスというのは難しいですね。全く新しいのといことであれば、スピンアウトしてベンチャービジネスを作ってくださいよということになります(笑)。

― どこのプラットフォームも関係ないですよね。
平野
 全く関係ないです。Windowsもこだわりません。

― 新規ビジネスということのアドバイスは。
平野
 何かベンチャービジネスを始めるというところでいうと、米国だとうちみたいに軸足をXMLに置いている会社が20社くらいあります。今回フィラデルフィアに行って初めて知った新しい会社も4社くらいあり、結構がんがん出てきています。うちは今ツールをやっていますが、XMLの教育をやりますといった会社もあれば、XMLのコンサルをやるという特化した会社もあるわけで、そういう米国の会社をモデルにして新規事業としてやるのもあります。

― Windowsコンソーシアムも今年からXML委員会をやることになりましたので、是非ご協力をお願いしたいと思います。
平野
 はい、わかりました。

― 利用の事例をいっていただくと多分SIの会社さんも使えるという話と、コンポーネントの説明をしていただくといいのではないかと思います。
平野
 XMLの伝道師という感じになってしまいますが。

― インフォテリアさんは緑がベースにですがこれは何か。
平野
 これは私が好きだからです(笑)。まあ、好きなのは本当ですが、正しくいうとエコ、地球環境を考えてということです。というのは、ソフトウェアを通じて例えば移動しなくてもいろいろな情報が取り入れられる、もしくは仕事が進められる、というようなことができれば、そこでガソリンを使わない、排気ガスを出さないとか、そういうことで今の地球の課題に貢献できればという意図があります。

― 地球にやさしくですね。
平野
 地球にやさしいソフトウェアです。実は緑だけでなく青が入っています。名刺にも緑と青が入っていて、緑と木と水ということです。北原が青色が好きなのですが、これは偶然ということにしておきましょう。

― このマークはどういう意味ですか
平野
 地球のマークとあと、発信をしていく、伝播させていくということです。



<<業界関係者はXMLを是非やっておくべきである>>

― それでは最後に、これだけをいっておきたいことは。
平野
 どういうことをいうのですか(笑)。

― これからやった方がいいとか。
平野
 XMLはこれからTCP/IPとか、もしくはデータの領域でいうとASCIIのようないわゆる根本のものになることは間違いないですから、早いうちにやっておいた方がいいですね。インターネットの世界にはいろいろな技術が出ていますが、XMLはその中でも本当に基礎技術なのです。他の領域のものは自分のところに関係がなければマルチメディアのように取捨選択がありますが、XMLは全部ベースになるものですから、業界関係者であればエンジニアに限らず、マネージャもそうですが是非理解しておくべきですね。エンドユーザーは関係ないです。知らないところで使われているだけでOKです。

― コンソーシアムとしても早速XMLの啓蒙をやりますのでよろしくお願いいたします。それでは長い間、ありがとうございました。




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