活動報告


● 第95回セミナー実施報告 <Windows CEコンソーシアム主催>

日 時:1999年7月23日(水)13:30〜16:30
場 所:マイクロソフト新宿オフィス17Fセミナールーム
参加人員: 29名
テーマ:『Windows CE適用事例紹介』
構 成:
 第1部 「Windows CE辞書ソフトDTONIC」
     イースト株式会社 取締役 コミュニケーション事業部部長
     下川 和男 様
 第2部 「AutoPC開発環境Toolおよび開発周辺機器紹介」
     クラリオン株式会社AutoPC開発部 部長 中鉢 善樹 様
 第3部 「日立のハンドヘルドPCとその適用事例」
     株式会社日立製作所 デジタルメディアグループ オフイス情報機器事業部
     商品企画 主任技師 大川 修治 様

 今回のセミナー(第4回Windows CEセミナー)は、Windows CEの適用事例紹介ということで、イースト、クラリオン、日立の3社から講師をお招きしてお話いただきました。

セミナー会場

 第1部では、下川講師から、「Windows CE辞書ソフトDTONIC検索ソフトの概要とコンセプト」と題し、@DTONICの特徴と対応辞書およびDTONIC辞書の作成、ACE版DTONICの概要と対応辞書、利点、B販売条件、CSet Top Box対応、についてデモをまじえてお話いただきました。


 DTONICはいろいろな辞書系のソフトウェアをCD-ROMとして納めたものでパッケージとして販売している。DTONICは1995年から開発をスタートし、今までいろいろなバージョンのDTONICを作っており、十種類の辞書コンテンツを作成している。今までにかかった工数は大体200人月である。DTONIC自体はVC++を使って開発を行っており、辞書のデータ形式についてはSGML(Standard Generalized Markup Language)を使っている。SGMLのタグが付いた辞書データがあればそれを比較的容易にDTONICの辞書形式に変換できるツールを社内で持っており、それを使って辞書を作ることができる。対応OSは、Windows 98/95/NT4.0、Windows CE Handheld、Windows CE Palmおよび Power Macである。Windows 98対応版はWindows 98ロゴ付き商品として提供している。
 @ 特徴として、Hot Key検索(画面上の任意の単語で検索可能)、辞書データの互換性(DTONIC形式の辞書を追加登録可能)、インターネットリンク(Yahoo!/gooリンク、参照リンク、本文リンク)ができる。DTONIC対応辞書として、三省堂「デイリーコンサイス英和・和英・国語辞典、大辞林、新辞林、新明解国語、模範六法、クラウン仏和、独和、センチュリー英和・和英など」、岩波書店「広辞苑、岩波国語」、研究社「新英和・和英中辞典」、自由国民社「現代用語の基礎知識」、日経BP社「デジタル大辞典、金融英和・和英」、朝日新聞社「知恵蔵」、講談社「NAVIX」、旺文社「国語辞典」がある。DTONIC辞書の作成では、デジタルデータを入手後、2〜3ヵ月で作成できる。上記にあげた出版社他と交渉が可能である。
 A CE版DTONICは、日本語版Windows CE2.0以降、Handheld PCのプログラムサイズは、インターネット検索なしで約800KB、検索ありで約1.3MB 、Palmtop PCはインターネット検索なしで約68KBである。、CE版DTONIC対応辞書として、各社の辞書を提供可能である。三省堂「デイリーコンサイス英和・和英・国語辞典」で、4.6MB(57,000語)+4.0MB(63,000語)+6.2MB、EASTID英和・和英辞典で2.0MB(62,000語)+1.2MB(50,000語)である。利点は、プログラムと辞書の一部をROM化できる(CEが辞書端末となり、PCカード経由で複数のDTONIC辞書を入れ替え可能)、業界向けPCとして使える(医学用語辞典PC、模範六法PCなど)、インターネット対応の場合DTONIC連携機能が活用できる。
 B 納期は受注後2ヵ月以内、初回コミット本数は5000本、清算方法は3ヵ月単位の販売実績清算、ユーザーサポートはイーストが担当する。
 C テレビと辞書は相性が良い。辞書アクセス部分とUI部分が別プログラム、UI部分の改造作業が必要、プログラムと辞書でどの程度のサイズとなるかが問題である。
 More Informationは、
 ・http://www.est.co.jp/products DTONICなどのイースト商品の紹介、クロスワードパズルソフトなどもある
 ・http://x.jepa.or.jp Open eBookや電子書籍の動向、仕様
 ・ご意見、ご要望、商談は、shimokawa@est.co.jpまで
 デモとしてDTONICの持つ機能(Hot Key検索、インターネットリンク、クロスワードパズル)について行われました。

 第2部では、中鉢講師から、「AutoPC開発環境Tool及び開発周辺機器紹介」と題して、車載用のシステムの概要、Auto PCの紹介とハードウェア仕様、ASICの開発内容、Auto PC上のドライバー、アプリケーション作成に必要な開発環境、AutoPCのユーザーインターフェイス、USBと大変多岐にわたったお話をいただき、最後にビデオによるデモがありました。


 はじめに、「AutoPCに関しては記事などでいろいろ取り上げられているが、全体像についてはなかなか説明される機会がないので、このセミナーにおいて技術的な側面でハードウェア/ソフトウェアがどのようになっているのかご説明したい。またAutoPCそのものが車に積むものでなかなか持ち運びできないのでビデオのデモを参照していただければ、AutoPCのより詳細がご理解いただけると思う。特にAutoPCのSDKはマイクロソフトのWebサイト(http://www.microsoft.com/windowsce/autopc)から既にアベイラブルになっているので、ダウンロードしていただければソフトウェアに関してはかなりご理解いただけると思う」とのおことわりがありました。

 参照Webサイトと最近の車載用マルチメディアシステム動向の紹介に続いて、AMIC(Automotive Multimedia Interface Consortium、最近はConsortium からCollaborationと名前を変えている)の説明がありました。AMICは強力な自動車メーカー6社連合(Toyota,General Motors,Ford,Daimler-Bentz,Renault,Chrysler)がオープンアーキテクチャといった車載用のインターフェイスを標準化しようという動向であり、他にも10社のメーカーが賛同を示している。AMICの基本的な方針としては、共通のスペック、共通のAPI(SunのJavaを使ってAPIの共通化)、さらにハードウェア(特に車用のBUS)のインターフェイスを共通にしようとしている。
 これらを含めて近年の車載用のシステムは、3つのキーワード、(1)Open Platform、(2)Multimedia Support、(3)Standard BUS and API、の方向に進んでいる。Open Platformの環境を提供することにより、今まで車載用に関係のなかった皆さんの参加を求め、広い知識を集合することにより車のインターフェイスの部分を改善していけるのではないかと、期待されている。

 AutoPCは世界で初めて車載用の開発環境を提供するもので、ベースになっているのがWindows CEであるが、特殊な分野に入り、どちらかといえば組込み型に近い部分もあるがユーザーインターフェイスは随分違う。AutoPCのコンセプトは、(1)車載用のオープンプラットフォームの標準化を狙っている。これによって開発環境を一般に提供することにより車載用のコンピュータの環境を広く提供できる。(2)「Connectivity and Communication」は、ワイヤレス通信+従来のPCとやり取りし易い環境を提供する、(3) 現在のカーオーディオのゾーンをAutoPCで置き換える、(4)ドライバーを中心としたユーザーインターフェイス(Driver centric User Interface)を持つために音声認識、音声合成を重視した設計となっている、 (5) 拡張性ならびにアップデート性(Moduler structure and expandable)ということでは、ユーザーが周辺機器を付け加えたり、もしくはOSそのものをアップグレードすることによって常に最新の技術をユーザーが受けられる環境を提供したい。


 続いて、今米国で販売しているAutoPC Version1.0の仕様について説明がありました。詳細は、www.autopc.com或いはwww.clarion.comを参照ください、とのことです。続いて、AutoPCシステムダイアグラム、音声認識、音声合成、オーディオ機能、ディレクション、アドレスブック、ワイヤレスサービス、AutoPCの特徴、開発環境、ドライバー中心のユーザーインターフェイスについてのお話がありました。
 AutoPCの開発にはどのようなものが必要かというと、開発するレベルで異なってくるがAutoPCそのもののハードウェアを作りたいということでは、システムデザイン、ベーシックデザイン、プロダクトデザインが必要になり、特に電源関係は車の中なので非常にやっかいな問題がある。ソフトウェア開発では、アプリケーション開発、周辺機器の開発とそれによってレベルが違ってくる。ハードウェア開発では、当然ながらハードウェアの違いを吸収する吸収層ハブの開発が必要になってくる。周辺機器では、ハードウェア、ファームウェア、デバイスドライバー、アプリケーションについての開発と多面にわたるが、我々はこの辺を一通りやってきた。
 特に車環境ということで考えるとやっかいなことがある。例えば電源の変動はバッテリーを使っているのでそんなに変動は無いと思われるが非常に電源の変動は大きいところがあり、瞬断の問題、等いろいろある。瞬断したときにデバイスを認識しなくなったりするという難しい問題がある。これらを含めてAutoPCは、Windows CEを積んでいるのでハングアップしやすく、「ハングアップしやすいのを車に積めない」とよく聞くが、我々が作ったAutoPCは社内の品質管理の血を受けているので基本的にハングアップしないような作りになっている。
 続いて、AutoPCのハードウェアの大まかなブロック図の説明がありました。AutoPC Version1.0では4つASIC(CPU-HOST ASIC、CPU-PCMCIA ASIC、FACEPLATE ASIC、SUPPORT ASIC)を使っており、これらは我々がカスタムで起こしたものであると、各々の機能の説明がありました。
 AutoPCのコンポーネント、AutoPC専用に開発されたドライバー、開発環境でどのようなものがあるか、AutoPCのコーディングについては、「SDKをダウンロードしてみてください、特に一番違うのはSDKに書いてあるがForms Managerが一番違う。Forms Managerそのものが従来のWindows Managerの代わりをしてくれることになっている。全体がCOMモジュールを使うようになっているのでプログラムの流れそのものがCOMを呼び出したり、初期化したりという流れになっているので興味ある方はSDKの方をご覧ください」とのお話がありました。
 AutoPCのユーザーインターフェイスは、ユーザーとの接点が3つになっている、(1)Graphic::アイコンに対してユーザーに認知させる (2)Speech Command:音声認識、音声合成、(3)Audiory Feedback:ユーザーがAutoPCを見なくても操作できることを前提に設計されたシステムとなっている。そのためにアイコンの形成やユーザーインターフェイスの部分でASコントロールが準備されており、これらの組み合わせによってユーザーインターフェイスを作成することができ、17個のASコントロールが用意されている。
 USBは、基本的にAutoPCを拡張するための唯一のポートである。USBにデバイスを付けることによってユーザーはAutoPCそのものを先々拡張していけるシステムになっている。現在AutoPCで提供されているUSBデバイスとしては、CDチエンジャー、セルラーフォン、カーポート、シリアル、ナビゲーションユニットがある。USBを車に使う場合、非常に悩ましい部分(振動で抜けやすい、温度に弱い等)があるので、AutoPCでは、新しく8ピンの車載用のUSBコネクターを採用している。

 お話の最後に、「車の方で今大きな新しい流れとして、AMICの他にITS(Intelligent Traffic System)という流れがある。これは、国の方から指定されたプロジェクトであり、その中に車載用の情報処理機器の高度化というテーマがあり、今のナビゲーションを拡張した形で通信機能、特にインターネットとの通信を強化した形で高度化していこうという動きがある。その中でも特にAotoPCそのものがオープンアーキテクチャもしくはWindowsの搭載ということで、ITSの一つの大きな流れの中のデバイスとして位置付けられるのではないかとこのシステムを提案している。」とむすばれました。次いでAutoPCを説明するデモビデオの放映がありました。

 第3部では、大川講師から「日立のハンドヘルドPCとその適用事例」と題して、@モバイル環境の整備(モバイル機器の普及、通信費体系、通信の今後の動向、ハンドヘルドPCの需要予測)、AハンドヘルドPC「ペルソナ」のラインナップ、特徴、ソフト/ハード仕様、B業務向け提案(医薬卸の営業向け、生保渉外支援、勤休報告)について、お話いただきました。


 @ モバイルの環境が整備されたのはここ1、2年であり、特に移動体通信が4600万台(携帯電話 4050万台、PHS 587万台)と2.5人に1台という勢いで増えており、どこに行っても話はできるし、データ通信ができるという状況が出てきている。このことが大きくモバイル機器が業務用として普及に効いており、あとから説明する事例の中でもこの環境が整ってきたことが非常に大きく効いている。データ通信という意味では、FAXも1100万世帯に普及している。パソコンは昨年792万台出荷されており、特に企業での導入が多くなっている。また、インターネットユーザーが1000万人を越えるということで、このハンドヘルドPC、私どもの「ペルソナ」があると“いつでも、どこでも情報にアクセスできる”という状態が整ってきている。通信費体系では、通信費の目安として想定通信パターン(移動体通信と通信頻度の組合せによる)による1ヶ月の通信費概算、メール送信の場合の費用についての説明がありました。これだけの携帯電話が出てきて、通話料金も非常に安くなっている。例えば携帯電話を使って平均データ通信時間3分で、月に20回やって4300円、1回10分で月に50回やって8400円ですむ。もっと安くしたいというのであれば、PHS(PIAFS)を使うと5980円となる。あと、セルラーグループのCDMA Oneでは、8990円、パケット通信のDoPaは128バイト以下の通信をやるのであれば非常に安い料金のものも登場してきている。実際にはメールでデータを送る時、どれ位の時間と費用がかかるかというとメール+A4サイズの報告書を1枚付けて実際に送信を行ったとして、携帯電話では15円で20秒、PHSでは6秒で10円、DoPaでは28.8KBPSなので6.7秒で済む。このように安い料金でデータのやり取りができるという、環境となっている。
 通信もどんどん技術が進歩してきて今年の2月から4月にかけてNTTドコモ、IDO、セルラー系の電話もインターネットの接続が可能となり、文字情報をインターネットで送るというサービスが出てきている。また4月にはcdmaOneの全国サービスが開始された。第4四半期に入るとcdmaOne で64kbpsのパケット通信ができる(現在は14.4kbps)。来年中にはPDC(デジタル携帯電話)の音声の変復調の部分を改良して音声品質を向上させる動きが出てきて、2001年にはNTTドコモがW-CDMA方式を開始する、これは移動中でも384kbpsのデータ通信ができ、静止状態では2Mbpsの伝送ができるということで画像データの伝送が可能となる。ハンドヘルドPCの需要予測では、H10年は100万台(内、日本は20万台)、H11年は160万台(40万台)、H12年は240万台(70万台)、H13年は310万台(100万台)、H14年は450万台(140万台)と予想される(数値は日立予測)とのことです。
 A 日立は、この7月に業務用として、Windows CE H/PC Pro Edition V3.0日本語版を搭載して新発売したハンドヘルドPCペルソナHPW-600JTM とHPW-600JCMを発売した。いずれもモバイルに優れた特徴(コンパクトで持ち運びに便利なA5サイズ、処理/表示速度が速い、マルチ通信インターフェイスの搭載、長時間バッテリー駆動 <最大約9時間>、電源OFFからでも直ぐにAPが駆動できる10のクイックスタートキー、USBインターフェイスの搭載、600JCはペン入力のサポート<タッチパネルを使用>)と使い勝手に優れたソフトウェアの品揃え(ATOK Pocket for Windows CEを搭載、マンスリースケジュール、インターネット簡単設定、メッセージトーク、Picture Shot、NIFTY通信for Windows CE)を行っている。


 B ペルソナの導入により作業効率が従来システムより格段に向上すると3つのシステム事例をあげ、従来システムと比べての説明がありました。これもモバイルの環境が整備されたおかげであるとのことです。
 (1)「薬卸業向け営業支援システム」では、顧客先で受注書を作成し営業所へ即送信。在庫照会、膨大な商品検索(2万件)も即対応。受注データはペルソナで管理できるので営業所に戻ってサーバーにアップするだけで一元管理。新薬情報もWebを使って簡単検索可能である。
 (2)「生保渉外支援システム」では、いつでもどこでも本社の顧客情報を簡単に入手できる。顧客先に応じた提案をその場で効率よくシュミレーションできる。メールによる顧客とのコミュニケーション、営業報告書のメール送信で営業活動の効率アップ(移動時間、事務作業の省力化)が図れる。
 (3)「勤休報告システム」では、本社は派遣者のペルソナから送られてくる勤休届けをもとに全体を一元管理。派遣者のスケジュールも管理可能。一元管理された派遣者の勤休管理から給与計算もスムース。本社からの連絡事項もメールで送信できる。
 以上3つのシステムについてデモシステムが表示されました。

 ここで出席の皆さんからのアンケートによるご意見を紹介いたします。
 第1部では、「各辞書のCEコンバート後のROM容量一覧などがあると嬉しい」、「CE移植作業の話をもっと聞きたかった」。
 第2部では、「音声認識のデモが良かった」、「情報を絞って詳しく掘り下げるか、もっと広い部分を分かりやすくして欲しい」、「発表内容と資料を統一して欲しい」。
 第3部では、「ハンドヘルドの業務用途での利用例がよく分かった」、「動向データなどリアリティがあり、参考になった」、「事例情報について非常に参考になった」。
 セミナー全体では、「有益な話を聞けて満足」、「受講者のターゲットを明確にして欲しい」。
 今後希望するセミナーとしては、「CEベースの組み込み機器の開発事例紹介」、「H/PCの中小企業向けソリューション関係」、「Windows CEのソリューション事例」、「Windows CE納入事例を多くして欲しい」、セミナーへのご意見としては、「前3回のWindows CEセミナーとは内容ががらりと変わり中々いい物でした。これまではWindowsの発信元(Microsoft)、今回はそれを盛り上げる側(ISV、OEM)、あと数回はこれを続けていただいて、その後はそれを使う側(ユーザー)のお話が聞ければありがたい」。
 セミナー全般については、「セミナー申し込みが受け付けられたか分かるようにして欲しい」です。
 ありがとうございました。なお、本セミナーのハンズアウトが僅少ありますので、入手ご希望の方はEメールにて事務局までご請求ください。


Contents         Windows Consortium ホームページ