最新Windowsソフトウェア事情(第54回)

Windowsコンソーシアム顧問 高橋 三雄
mtaka@fsinet.or.jp


位置情報を取得する情報機器:デジカメと携帯端末

 いうまでもないことであるが、デジタルカメラは通常の銀塩フィルムを使ったカメラとは異なる。かつて(35万画素のころ)は、画質に大きな差があったので、銀塩カメラとあえて競争することはしなかった。「デジカメって何が便利なの?」といわれたときは、「パソコンに簡単に写真を取り込むことができる便利な装置」と説明する程度で言葉をにごしていた。しかし、わずか数年でデジカメの画質は急速に改善し、最新の250万画素ともなるとサービスサイズでは銀塩写真と変わらない写り具合になった。こうなると、デジカメも写真を撮影する本来の目的において、通常のカメラといい勝負ができる。「カメラも古くなった。今度はデジカメにしてみようかな」と考える人々が増えてきたのも当然である。
 さて、いまさらデジカメでもないだろうというみなさんの声が聞こえてきそうである。もちろん、アルバムに貼って楽しむ意味でデジカメを話題にしようというのではない。通常のカメラと違って、先端をいく情報機器の一つとしてデジカメを再認識してみたいのである。
 私もごく最近、6台目にあたるデジカメを購入した(図1)。どういうわけか、150万画素のFinePix1500(富士写真フイルム社)である。同社からは同時に3倍ズームつきの250万画素カメラも発売されたが、高機能よりも携帯性(99年7月現在で世界最小、最軽量)を選択した。デジカメは私にとって写真展に応募する作品をものにするための装置ではない。情報技術の展示会で最新の情報機器を撮影して情報データベースに保存するといったように、情報収集の効果的な手段としての利用が主たる目的である。

図1

 ところで、富士写真フイルム社の最新デジタルカメラは2機種とも興味深い機能を備えるようになった。それは地図ソフトと連携して、写真に撮影した場所の位置情報を記録できる機能である。もちろん、5万円前後のデジカメが位置情報を取得するGPSなどの機能を備えているわけではない。位置情報を含んだ地図をデジカメに移し、デジカメのディスプレイ上で地図情報を参照して撮影場所の位置を写真上に記録する仕組みである。そんなことができて何の役に立つの、と思われるかもしれない。しかし、たとえばアルバムの写真をクリックするとその写真を撮影した場所が地図上に即座に表示されるというのだから、けっこう面白いと思うがいかがだろうか。
 デジカメの中にはGPSと連動して直接、撮影場所の位置情報を写真に記録する機能を備えた本格的なカメラ(装置とよんだほうがよい)もある。コダック社の製品である。カメラとGPSとを一緒に使うので大きく、重くそして高価な装置である。デジカメ部分は160万画素、3倍ズームレンズを搭載したコダック社の「DC260Zoom」。GPS部分は米国ガーミング社の製品で位置精度の誤差は150m以内、GPS補正サービスを利用すると5m以内の精度にすることも可能であり、デジカメとケーブルで接続し、データをやりとりする仕組みである。緯度経度情報などは撮影画像の下部に写しこむことができる。価格は46万円。もちろん、個人用というのではない。街中で製品の市場調査をするときに記録用として使ったり、山中の工事現場で作業の進捗管理などに使うといった特殊用途向けの製品である。

 さて、デジカメによる位置情報の収集/利用を実際にためしてみよう。いま、私の自宅近辺で写真を撮影し、そこに位置(緯度経度)情報を記録することにする。そのためにはまず、パソコン上で自宅周辺の地図をデジカメのメモリー上にコピーする(緯度経度情報もあわせてコピーされる)。対応地図ソフトは最新版MapFanIVである(インクリメントP社)。図2はMapFanIV上で目的の場所を選択し、適当な縮尺にした上で画面上段の移動メニューから「マップイントーラ デジカメ&CE」を起動しようとしているところである。この機能によってパソコンからデジカメやWindows CEパソコンに地図をインストールしてパソコン以外の環境で利用できるようになる。それによって図3のようにツールバーにデジカメ用のボタンが表示され、ボタンをクリックすると指定した範囲の地図が特定のフォーマットに変換され、図4のような手順をへてデジカメ用のメモリー(FinePixの場合はスマートメディア)にコピーされていく。

図2

図3

図4

 その結果、図5のように地図が488KBのファイルサイズ(デジカメでは18枚分にあたる)で作成された。この地図はデジタル写真と同じファイル形式なのでカメラのディスプレイ上で表示して地図を参照できる。写真に位置情報を記録する目的だけでなく、出先の地図をカメラにコピーしておけばガイド役としてカメラを利用できる。もちろん、必要に応じて複数枚の地図をコピーしておけばよい。最近のスマートメディアは最大32MBの容量があるので、数メガ分の地図をコピーしたとしても写真撮影の邪魔にはならない。

図5

 デジカメに撮影個所周辺の地図がコピーされたとして、いよいよ実際に写真を撮影することになる。そのためにはまず、図6のように、カメラの再生機能を使い、ディスプレイ上のメニューからマッピビューワー機能を選択し、目的の地図ファイルを選択するという操作を行う(デジカメはTVとつないで画像を再生できる。この図はTVにつないで再生中に下段に表示させたカメラのメニューを選択しようとしている様子をもう一台のデジカメで撮影したものである)。つづいて、「撮影地OK」と確認を求められるので「実行」ボタンを押せばよい。これで以後撮影する写真にはこの地図の緯度経度(地図の中央にあたる位置)が情報として写真に付加されることになる。

図6

 現在のところデジカメにコピーした地図1枚ごとに一箇所(地図の中央にあたる位置)しか位置情報を記録できない。これがさらに、ディスプレイ上の地図で任意位置の緯度経度を記録できるようになれば、使い道もぐんと広がるだろう。地図はまたガイド役として使う場合は、カメラのズーム再生によって拡大表示したり、地図をスクロールすることもできる。
 デジカメで撮影した写真は即座にパソコンに移すことができる。これがデジカメの大きな特徴である。しかも位置情報が記録された写真(ファイル)はMapFanが用意してあれば、写真を開くと同時に撮影位置がMapFanの地図上に表示される。MapFanIVには「デージーコラージュ3Lite」とよばれる画像処理ソフトが添付されており、このソフトを使うと写真に付加された緯度経度情報を表示したり、あわせて地図を表示させることができる。たとえば、図7はデージーコラージュの上でアルバムを開いたところである。ここには上記の位置情報を記録した写真が表示されている。ここで任意の写真を選択し、上段の「位置情報」ボタンをクリックすると図の中央のように緯度経度情報が表示される。また、位置情報ウインドウの下段に見える「MapFan」ボタンをクリックするとMapFan上の該当する位置が地図上に表示される。図8は地図が表示された様子を示している。このように、アルバムの上で簡単に地図も参照したい場合は気軽に利用できる。また、MapFanに添付されているデータベースのテンプレートを使うと写真や地図を含んだデータベースも簡単に構築できる。このようにしてここまで位置情報もあわせて撮影(記録)する新しいデジカメを紹介した。アイデア次第でさまざまな応用が考えられることだろう。

図7

図8

図9

 最近、私の手元に図9のような最新の携帯情報端末「Locatio」(EPSON)が届いた。
 この「GPSモバイルコミュニケータ」とよばれる製品は、携帯端末の基本機能として住所録、スケジュール、メモ、電卓、時計などに加えて、デジカメ、位置情報を取得するGPSそしてインターネット接続や電子メール機能のためにPHSが一体化されている。たとえば出先で現在地を確認し、またその周囲の地図を必要とするときには、GPSアンテナを通じて位置情報を取得し、位置情報の精度をあげるためにPHSを通じてインターネットへアクセスし、誤差補正を行うことができるのである。もちろん、PHSは電話(音声)による通常のコミュニケーションのために使うこともできる。また、インターネットは位置の誤差補正のためだけではない。Locatioに組み込まれたブラウザを通してインターネットアクセスすればよい。とくにEPSONが運営する「i-Pointネットワーク」とよばれるホームページには全国各地の詳細地図とともに、各種の情報も収録されており、必要に応じてLocatioにダウンロードして利用できる。たとえば、いまいる場所の周辺でおいしいレストランを探したいといったときに、現在位置の地図とともに、レストラン情報をダウンロードすれば即座にレストランの候補が画面に表示される。
 出先では思わぬ発見に出会うこともある。そうしたときに、その発見を即座にデジカメに記録し、場所の情報を収集し、その最新情報をメモつきでいち早く、社内の関係者に送信するといったことができれば、その可能性は大きいだろう。現在地が確認できれば、その位置情報はデジカメで撮影した写真とともに、メモに添付して電子メールで送信できる。図10はメモに写真や場所の情報を貼り付けたところだ。ここで位置情報のアイコンをクリックすると図11のように、即座にその場所に対応する地図が画面に表示される。携帯端末は携帯性を重視することから画面のサイズや見やすさを犠牲にせざるをえない。しかし、携帯端末の多くは会社に戻ってきたあとで情報をパソコンに移し、パソコン画面上で情報を参照できるようになっている。今後ますます携帯端末の競争は激しくなり、やがては社内ネットワークとスムーズに連携できる情報機器がビジネスマンの必須のツールになることだろう。

図10

図11

 なお、Locatioの豊富な機能の具体的なイメージをつかんでいただくために、主な画面を簡単に紹介しておこう。メインメニュー(図12)には地図機能に加えてメモ、スケジュール、アドレス、PHS電話そして機能を追加するアドインソフトが見える。メインメニューにはさらにもう一画面があり、そこには電卓、世界時計、PCとの通信などの機能がある。さらに、メインメニューとは別に環境設定の中でメールやインターネット接続の設定などを行うことができる。

図12

 つぎに、Locatio本体の下部に用意されているアイコン(文字入力、ツール、デジカメ、GPSなど)からデジカメ(Photo)を選択するとデジカメの画面が表示される(図13)。この画面の上で本体側面についているボタンを押すと写真が撮れる。このシャッターボタンは地図機能などを利用しているときには、ジョイスティック的な機能を果たし、地図のスクロールなどがすばやくできる。撮影した写真はアルバム風に表示され、特定の写真を拡大表示したり、写真をコピーしてメモ帳などに貼り付けることができる。

図13

 GPSアイコンは位置取得のための画面だ(図14)。それによって衛星画面が表示され、衛星からの受信状況と緯度経度情報などが表示される。

図14

   このようにして今回は位置情報を取得するための二つの情報機器について紹介した。位置情報をともなったデータがどのように利用できるか、そのためのソフトがマッピングとかGIS(Geographical Information System)とよばれる分野である。私もこのGISとくにマーケティングにおける応用に強い関心をもっており、最近スタートしたばかりのマップ研究会にも参加したところである。その成果についてはいずれ紹介したいと思う。

(麗澤大学 国際経済学部 国際産業情報学科 教授
http://www.reitaku-u.ac.jp/


渋谷にて 筆者

<事務局より>
インクリメントP株式会社のご好意によりソフトパッケージ『MapFanW』のプレゼントがあります。「事務局便り」をご参照ぅださい。



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