活動報告


● 第90回セミナー <マルチメディア委員会主催>実施報告

日 時:1999年4月28日(水) 13時30分〜16時45分
会 場:マイクロソフト株式会社新宿オフイスセミナールーム(新宿小田急サザンタワー17F)
参加者:36名
テーマ:『ソフトウェアと特許』
講 師:特許庁審査第五部計算機応用 相田 義明 様

 今回のセミナーは、特許法によるソフトウェアの保護という観点から、特許庁審査官の相田様により特許法、判例等について豊富な資料を基にお話いただきました。審査官という立場からのお話であり、かなり具体的な事例も多く、参加の皆さんは、大変興味をもって聴講され、ご理解を深められたようです。

セミナー会場

 お配りいただいた資料は、「特許法(抜粋)」、「特定技術分野の審査の運用方針 第1章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明」、「公開特許公報」、「特許公報」、「特許出願の経過と特許発明の技術的範囲についての判例」、「米国・欧州特許の判例」、「欧州特許庁の審査実務」と100ページを超えておりました。


 相田様の担当分野は、ビジネス特許、金融特許の出願審査である。取扱う内容は、電子マネー、電子商取引、保険の設計、資産負債管理、会計システム、お見合いシステム、求人システム、オークション、競馬、投票、電力最適配分法などありとあらゆるものである。また、欧州特許庁、米国特許庁において実務を研究してきたので、欧米の事情についてもある程度知識を持っているので質問等があったら自由にしていただきたい、との自己紹介をいただきました。
 また、「今日の話は、特許にあまりなじみのない方むけに特許法とその周辺法の簡単な説明をして、特許法の位置付けを明確にしてから特許法の基礎の話をする。それが終わってから日本、米国、欧州のソフトウエアの特許法の現状について説明する。特許法の基礎の話は法律が中心になるが、問題に直面したときに自分で考える際に是非とも基礎的な知識が必要と思われるので、ご理解いただきたい。」と講義の方針が示されました。

 はじめに、「特許法による保護と著作権による保護の比較」について、保護の対象(特許法では技術的思想〈プログラムに内在する機能〉、著作権では著作物〈プログラム言語による表現〉)、保護の条件(特許法では発明であること、著作権では創作性〈物まねでないこと〉)、権利の排他性、禁止権の範囲、権利の期間(特許法では出願の日から20年、著作権では団体名義のときは公表の日から50年)、開示義務(特許法では当業者が実施できる程度に開示、著作権で開示義務なし)、のお話がありました。
 続いて、@特許制度のしくみ、A特許発明の技術的範囲、Bソフトウェア関連問題の保護、C海外の事情について、豊富な資料を参照されながらのお話でした。特に欧米のソフトウエアの特許法の現状と判例では、英文資料を読みながらの解説が行われました。紙面では熱のこもった講演をお伝えすることができませんので、要約のみにさせていただきます。
@ では、特許制度の目的、審査主義、特許請求の範囲、特許権の性質、についてお話されました。特許を請求する範囲を記載したものを“クレーム”といい、特許要件としては明瞭なクレーム、新規性、進歩性が必要である、とのことです。
A では、クレーム解釈(原則、審査経緯の参酌、機能的クレームの解釈、権利濫用等)と均等論(5つの要件)、についてお話されました。
B では、特許法上の取扱い(発明の定義、特許保護の必要性、審査基準の変遷)、現行の審査ガイドライン(どのような形でクレームに書けるか、どのようなものであれば「発明」とされるか)、今後の課題(ビジネス関連出願の台頭、プログラムそれ自体)、特許法と著作権法、日米欧の保護の状況、についてお話されました。
C では、米国の例としてState Street Bank事件、審査実務、Freeny特許を巡る争い、欧州の例として最新の判決としてT1173/97(1998年7月1日決定)と審査運用の基本的な考え方、について英文資料に基づいてお話されました。

 ご出席の皆さんからアンケートによるご意見をご紹介いたします。
 「行政の実際の実行者の話なので迫力がある」、「特許法、判例等の資料が豊富で理解しやすかった」、「特許というものを漠然として認識していたが、系統立てた説明があったのでよく理解ができた」、「特許法の中身および特許対象、出願形式(クレームなど)が理解でき、大変有用だった」、「米国、欧州についての事例も説明され興味深かった」、「EUの最新情報は他で入手できない内容であった」、「例などの解説が分かり難い。もっと一般的な云い方に直して分かりやすい言葉で表現して欲しかった」、「法律の専門用語になじみがないため、分かり難い部分もあった」、「法律の用語が多くて難しかった」、「出願やクレームのシーケンスについて聞きたかった。(初心者向け)」、「具体的なソフトウエアの特許の例を話してもらいたかった」、「海外事例は短時間で具体的なものを示そうとされたようですが、もう少し時間をとって欲しかった」、「海外事例についてもっと詳細を知りたい」、「ソフトウエアについての具体的事例があればよかった」のご意見がありました。

 今後希望するセミナーとしては、「今回は第1弾と考え、是非第2弾の実施を望む」、「ソフトウエアに関する著作権について」、「ソフトウエア開発における実際の判例などを詳しく知りたい」、「特許等工業所有権のセミナーを定期的に」です。ありがとうございました。


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