活動報告


● 第89回セミナー <Windows CEコンソーシアム主催>実施報告

日 時:平成11年4月26日(月)
 第1部 (午前の部)10時00分〜12時00分
 第2部 (午後の部)14時00分〜16時00分
会 場:マイクロソフト新宿オフイスセミナールーム(新宿小田急サザンタワー17F)
テーマ:Windows CEコンソーシアム第3回セミナー

 第1部 『マーケティング関連』
     マイクロソフト社のWindows CE市場の取り組み
     マイクロソフト株式会社 OEM営業本部Windows CEアカウント
     プロダクトマネージャ 崎野 公太 様

 第2部 『開発ツール紹介』
     (1)「Windows CE 用アプリケーション開発環境のご紹介」
      「Windows CE Toolkit for Visual C++6.0日本語版でのアプリケーション開発方法」
      マイクロソフト株式会社 技術支援本部 デスクトップシステム部
      Windowsシステムテクノロジーグループ 主任 筒木 剛 様
      「Windows CE Toolkit for Visual Basic6.0日本語版でのアプリケーション開発方法」
      マイクロソフト株式会社 技術支援本部デスクトップシステム部
      Windowsシステムテクノロジーグループ 遠藤 剛彦 様
     (2)「Windows CEプラットフォーム開発ツールのご紹介」
      マイクロソフト株式会社 OEM営業本部
      Windows CEアカウント課長 小摩木 宏次 様

 今回のWindows CEコンソーシアム第3回セミナーは、午前がマーケティング関連、午後が技術関連で開発環境およびツール紹介と2部構成により行われました。これはご参加者のご便宜を図ったものです。参考資料として、「Microsoft Embedded Review 日経エレクトロニクス1998.11.16付録、1999.4.19付録」と、「第1回および第2回“Microsoft Windows CE開発ツールWorkshop”ドキュメント」が配布されました。

セミナー会場

 第1部では、崎野講師からマイクロソフトがWindows CEのプラットフォームを使ってNonPCデバイスに向けて、どういう製品をデザインして、どういう営業政策を行って市場に参入していくか、という点を中心にしたかなり具体的なお話がありました。


 最初に「本来提供されるべきツールとしてのSDKやコンパイラがハードウエアの出た後に提供されるなど、ちぐはぐな状態になっているのは事実である。大変申し訳ないと思っている。しかしながら米国も同じ状況でWindows CEのチームは、OS・ツールをやっているグループ、デバイスを作っているグループ、セットトップボックスのような家電向けの機器を作っているグループなど複数のグループに分かれており、各グループとも機器を出すことがどうしても先行している。本来Windowsのデスクトップであればツールが後から出てくることは有り得なかったことであるが、Windows CEについては、プラットフォームが出た後にSDKやコンパイラーが出てくるといった状況は今一部続いている。これは次の大きなバージョンアップまでには改善する方向で少しずつ進めているので、ご了承願いたい」のお断りがありました。

 まず、マイクロソフトはいかなる前提条件でものを作ろうとしているかのお話がありました。「マイクロソフトがWindows CEをデザインするにあたり、基本的にはプロセッサの集積度が高まるということを大前提にしてデザインしている。Windows NTが最初に出たときにも言われたことだが、現時点におけるプロセッサーに対してOSがハイスペックもしくはオーバースペックではないかという議論が行われたが、私どもから見ると現時点で多量に流通しているプロセッサーを目標にしてデザインを行うと、次に起こるプロセッサーの集積度に追従することができなくなり、すぐに陳腐化するという可能性がある。このため、OSのデザインは基本的には2〜3年間先のプロセッサのパフォーマンスいわゆるミップス値を想定したデザインをしている。その大前提条件がムーアの法則(価格/パフォーマンスは、過去20年間で100万倍に、次の20年間では100万倍以上に、あと40年はこの法則が成立するとの確信)である。マイクロソフトでは予想されるプロセッサの集積度が高まることによってさまざまな変化が起こると考えている。その一つが以前は非常にハイエンドでしか実装できなかったようなアプリケーションもしくはシステムソフトがPCとネットワークの出現によって非常に簡易にかつ個人の生産性を上げるだけではなく、個人の創造性を発揮させるようなさまざまなデバイスおよびアプリケーションが出始めている。これ自体が大きな変化であると思うし、特に今起こっている通信は高速通信から携帯通信までさまざまな通信が考えられるがIMT2000を前提としたような携帯通信、その次のMMACを前提としたような通信のように構造の変化によってさまざまなことが起こるであろうと考えている。かなり高集積化されたハイパフォーマンスのプロセッサとそれにプラスしてさまざまなICカード用のキャッシュやメモリ、IOコントローラ、デバイスコントローラのチップが1チップ化されるのが多分1年半後にくるだろうといわれており、私どももそれを想定してOSをデザインしている。技術の変化というのは、産業・社会・政治の変化に比べて非常に早く、必ずさまざまなものをその下から追従して引き上げていくという考え方でOSやアプリケーションはデザインされるべきだと考えている。」
 以降、マーケットの主なターゲットのセグメントに分けた個別の説明がありました。
 「私どものグループが持っている課題は、NonPCデバイスにおける OSおよびアプリケーション分野での市場拡大を目指すことである。したがってPC以外は全部ということでさまざまな活動を行う必要があると考えている。その中でも現在Windows CE を適用していくマーケットとしては3つの主なマーケット(組み込み型マーケット、HOME製品マーケット、PCコンパニオンのマーケット)に対して製品開発、営業活動を行っている。高集積化するプロセッサーにともなってさまざまなデバイスがこれまでのPCとは異なった形で出てくるだろうということを想定しており、その一番の引き金は通信であり、これまでのワイヤーからワイヤレスに変わって高バンド化することによってさまざまなニーズが出てきてさまざまなアプリケーションの提供の場が出てくると考えている。また、組み込みおよびマイクロコントローラユニットは、まだ大半が8ビット、16ビットであるが、集積化するプロセッサーを前提に32ビット化する技術に対してさまざまなニーズが出てくるだろうし、これらの技術革新によりさまざまなビジネスがより活発になっていくだろうと考えている。この中でWindows CEと合わせてWindows NTの組み込みバージョンEmbedded Windows NTが国内でも年内中に出る予定なので、これらによりもっと広がる可能性が非常に強いと考えられるNonPCデバイスマーケットに製品を投入していく。」
 “組み込み型のマーケティング”については、広範な組み込み/専用型の市場があること、先進的な産業へのアプローチ状況、既存の組み込み市場の特徴、今後の組み込み市場の特徴、組み込み市場のスケーラビリティ、国内における主な活動、各メーカーのWindows CE組み込み機器の紹介、今後の主な活動計画についてのお話がありました。情報インフラの整備として、News Letterサービス、一部のデストリビュータ向けのメーリングサービスを始めており、Webも米国の基本情報を80%近く捕捉するように拡充している。
 “PCコンパニオンのマーケティング”では、PCコンパニオンの製品ライン、アプリケーション開発ツール、目標(PCコンパニオン機器を企業PCユーザーにとって必須のビジネスツールとして位置付け、PalmSize PC(Ps/PC)でWindows CEの柔軟性の訴求、Handheld PC Pro(H/PC Pro)をHandheld PC(H/PC)の上位版に位置付けする、AutoPC Windows CEベースプラットフォームの訴求)についてのお話がありました。この分野ではデバイスを先に出してツールが後から出てくるという状況で開発者の方には迷惑をかけているが、できるだけDesktop PCとの整合性を売りにした形でデバイスの普及の促進を図っていきたい。アプリケーション開発ツールおよびコンパイラはMSDNの4月配布に含まれ、Ps/PC、H/PC Pro用のSDKは連休明けにWebでの告知、ダウンロードの提供、部材としての提供が予定される。
 “組み込み型システムのマーケティング”については、生長している市場であること、市場の状況、組み込み機器開発ツール、目標と戦略(開発者向けマテリアルの作成・コミュニティ、ビジネスにおける最良の販売チャネルの構築)、マーケティングコミュニケーションやマーケティング活動を活発に行っていること、リソース(Webサイトhttp://www.microsoft.com/japan/windowsceと関連書籍の紹介)についてのお話がありました。組み込み機器向け国内イベントとして、7月のESEC(Embedded Systems Exhibition Conference)、12月のMST(Micro Computer System Tool fair)に参画する予定である。また、Windows CEデベロッパーズカンファレンスが6月22、23日に有料で行われるが、米国の製品開発担当者が直接お話するので是非参加して欲しい。
 “Windows CE Operating System”については、Windows CE OSの特徴(コンパクトでメモリ常駐型のOSである、UNICODEベース、5つのプロセッサアーキテクチャintel x86,MIPS,SH,ARM,PPC各シリーズに対応)、Windows CE Ver.2.1用新規CPUを稼動させるプロセッサ(CPUベンダーとサポートされるファミリーの種類)、Windows CE アーキテクチャ、Windows APIの互換性、セキュリティ、通信、VB、MFC/ATL、Windows NT/95とのAPIの相違点、リファレンスプラットフォーム、Windows CE2.11 Birch Service Pack 1、Windows CE2.12 Birch Service Pack 2 の主な概要、と多岐にわたったお話がありました。  「Windows CEのOSは現行の日本語版が出てくるのは“2.11”であるが、今 “2.12”というマイナーバージョンを作っている。“2.12”の最大の特徴はIEが4.0とほぼ同等機能で入ってくる。ブラウザーをアプリケーションインターフェイスに使うことが可能になり、これが大きな機能拡張となっている。もし、組み込み機器への転用あるいは組み込み機器アプリケーションソリューションの提供の計画があるならば、現行バージョンでまず正しく評価いただき、その次のバージョン“2.12”を含めたご検討をいただきたい。」
 最後に、「私どもでは、PCコンパニオンへの活動はさることながら、NonPCデバイスへ向けてどのような形でOSがデザインされて投下されることによってしかるべき市場になるかということを模索している。必ず1チップ化していくということは必然だと考えているので、是非これまでのデスクトップアプリケーションおよびデスクトップで運用されているシステムそのものを、うまい形でできるだけ早いタイミングでさまざまな機器への転用をお考えいただければ有難い。」と結ばれました。

 第2部(1)では、筒木講師から「Windows CE 用アプリケーション開発環境のご紹介」および「Windows CE Toolkit for Visual C++6.0(VCCE6.0)日本語版でのアプリケーション開発方法」について、遠藤講師からは「Windows CE Toolkit for Visual Basic6.0(VBCE6.0)日本語版でのアプリケーション開発方法」についてデモを交えたお話がありました。

 筒木講師による「Windows CE 用アプリケーション開発環境のご紹介」では、@開発環境、AH/PC2.0 Platform SDK、Bエミュレーション環境、Cリモートツールについての紹介がありました。


@ 開発環境については、Windows CEデバイス向けにアプリケーションやデバイスドライバーなどを開発をするには、言語ツールVCCE/VBCEを使用し、ターゲットデバイス(H/PC2.0、Ps/PC1.2、H/PC Pro、組み込みなど)に合わせたPlatform SDKのインストールを行う必要がある。開発環境は全て日本語で行える。特にVBCEについては、今までのVBCE Ver.5.0は英語版のみであったが、Ver.6.0で日本語版として発売となった。VCCEは今回のVer.6.0で第3世代となり、H/PC2.0以外にH/PC ProおよびPs/PCのアプリケーション開発が可能となる。最初はVC for CEという形で出ており、ターゲットはH/PC1.0であり、現在発売されているVer.5.0のターゲットは、H/PC1.0とH/PC2.0である。重要なのは、Windows CEのターゲット(H/PC2.0、Ps/PC1.2、H/PC Pro、組み込みなど)に合わせたPlatform SDKが必要であるが、例えば今発売中のVC++5.0には2.0向けのPlatform SDKのみが入っているが、他のターゲット(H/PC ProおよびPs/PC)には使えない。また、VCCE6.0にもH/PC2.0 Platform SDKのみが入っている。
A H/PC2.0 Platform SDKには、Win32 APIヘッダーファイルとライブラリ、インストール可能なデバイスドライバー開発キット(DDKセット)、ターゲットとなるWindows CE デバイスのエミュレーション環境、数多くのソースサンプルや、オンラインドキュメント(APIリファレンス、プログラマーズガイド、CPUデータマニュアル)が含まれる。
B エミュレーションはWindows NT上で利用でき(Windows NT のカーネルを使うため、Windows 9Xでは使えない)、Windows CEのアプリケーションを開発するデバイスがないときに使え、高い生産性をもつ。前からお願いしていることであるが、全てのアプリケーションの開発およびデバッグをエミュレーションで行わないでいただきたい。あくまでもエミュレーション環境は、動作の確認や画面のイメージを確認するものであり、実際のデバッグは実際のターゲットに接続して確認していただきたい。エミュレーションでは動くが、ターゲットに転送したら動かないという現象が出る場合も多々あるので、最終的なデバッグはH/PCなどのデバイスに接続してご確認していただきたい。
C もう一つの開発環境であるリモートツールはデバイスにシリアルで接続してリモートデバッグが行える。この場合、Windows CEサービス2.2が必要であるが、VCCE6.0には含まれていないので、購入したデバイスに含まれているものをお使いいただきたい。リモートツールには、デバッグする以外に、デスクトップでお馴染のツール類であるリモートスパイ、リモートレジストリエディタ、リモートズームイン、リモートファイルビューワ、リモートヒープウオーカー、リモートプロセスビューワなどが含まれているので、Windows NT/98上から実際のデバイスの状況が確認できる。

 続いて、筒木講師から「Windows CE Toolkit for Visual C++6.0(VCCE6.0)日本語版でのアプリケーション開発方法」では、C言語およびC++言語を使ったときのアプリケーションの開発環境について、@概要、A開発環境、B機能、CPlatform SDK for H/PC Pro 日本語版、DPlatform SDK for Ps/PC1.2日本語版の紹介がデモを交えてありました。
@ 概要では、Windows CE Toolkit を使うためには必ずPlatform SDKが必要である。いろいろなH/PCにはいろいろなCPU(SH,MIPS,ARMなど)を搭載しているが、そのCPUに合わせたクロスコンパイラーやリモートツール、リモートデバッガーが含まれている。Visual C++6.0にアドオンしており、Win32 APIサポート(Windows NT/9xバージョンのサブセットになり800〜1000のAPIをサポートするが、実際にサポートされるAPIの数はターゲットとなるデバイスによって変わる)、MFC(Microsoft Foundation Library)/ATL(Active Template Library)の対応。開発のためには必ず、Visual Studio6.0が必要で、そのVisual Studio6.0上にVCCE6.0日本語版をインストールし、ターゲットに合わせたPlatform SDKが必要となる。H/PC 2.0 Platform SDKはVCCE6.0日本語版に含まれるが、Ps/PC1.2 Platform SDKおよび H/PC Pro Platform SDKは別途入手が必要である。
A 開発環境としては、Windows NT Workstation 4.0日本語版Service Pack3以上/Windows 95/98サポート、Visual Studio6.0(SP2までのテストは行っているが、もしSP2をインストールして問題が発生するようならばSPをはずしていただきたい)、VC++6.0日本語版、メモリ48Mb以上推奨、ハードディスクに610MB以上の空き領域必要。
B 機能としては、MFC/ATL対応(MFC/ATLアプリケーションをビルド時、自動的に適切なDLLをターゲットに転送する)、構成マネージャとプラットフォームマネージャによりターゲットデバイスの自動選択とターゲットの接続方法(シリアル/ネットワーク)が切替えられる。プロジェクトとして、WCE MFC App Wizard(exeおよびdll)、WCE Win32 application、WCE Win32 Dynamic Link Library、WCE MFC ActiveX Control、WCE ATL COM Object、WCE Static Libraryと数多くのプロジェクトが作成可能である。
C Platform SDK for H/PC Pro日本語版は、VCCE6.0日本語版にアドオン(VCCE6.0日本語版には含まれていない、マイクロソフトのWebサイトより入手可能、CD提供サービスも考えている)、H/PC Pro日本語版向けにアプリケーションを開発、Win32の対応、MFC/ATLの対応(Mfcce211.dll,Olece211.dll,Atlce211.dll。この“211”はWindows CE2.11対応を示す)。機能として、Windows CE2.11対応(ARM,SH3/4,MIPS,x86emなどさまざまなCPUに対応したクロスコンパイラ)、Win32/MFC/ATLのサンプルソースを含む。H/PC2.0 Platform SDKにはDDKは含まれていたが、このH/PC Pro Platform SDKにはDDKは含まれていない。最高800x600までの多様な画面サイズ対応、多種な通信サポート、COM/OLEサポート、未対応はODBCとMAPIである。その他環境、H/PC Proで構築されるアプリケーションの例などの紹介がありました。
DPlatform SDK for Ps/PC1.2日本語版は、VCCE6.0日本語版にアドオン(VCCE6.0日本語版には含まれていない、マイクロソフトのWebサイトより入手、CD提供サービスも考えている)、Ps/PC1.2日本語版向けにアプリケーションを開発、Win32の対応、MFC/ATLの対応。機能として、Ps/PC1.2対応(SH3,MIPS,x86emCPUのクロスコンパイラー)、Win32/MFC/ATLのサンプルソースを含む、65Kのカラー対応、TrueTypeフォント対応、通信(TCP/IP,PPP,IrDA,TAPI)サポート。大きな特徴としてSIP(Software Input Panel)の対応があるが、Ps/PCではキーボードが無いので実際の画面上にタッチして入力することになり、それに対応したカスタマイズを行うAPIである。インストール環境としては、Windows NT Workstation4.0日本語版 SP3以降Windows 9x、Visual C++6.0日本語版、VCCE++6.0日本語版が必要で、ハードディスク上に123MB以上の空き領域(FATでのサイズ)が必要。デモとしては、H/PC Pro SDKに含まれるサンプルの動作およびPs/PC 1.2 SDKに含まれるサンプルの動作について行われました。

 遠藤講師による「Windows CE Toolkit for Visual Basic6.0(VBCE6.0)日本語版でのアプリケーション開発方法」では、@機能、A開発環境、Bアプリケーション開発、Cランタイムの特徴、DVBCE6.0日本語版デモ、EActiveXコントロール for Windows CE、FPlatform SDK for Handheld PC Pro日本語版、GVBCE6.0日本語版デモ、HPlatform SDK for Ps/PC1.2日本語版、IPlatform SDK for H/PC ProおよびPs/PCの入手方法、についてお話がありました。


@ 機能としては、VB6.0日本語版のアドオンになり、Windows 95/98サポート(ただしエミュレーションは不可)、拡張言語サポート(Dim X As Integer、Declareステートメント)、H/PC2.0のサポート、拡張デバッグとして開発環境とは別にデバッグ環境を起動してシングルステップ、ブレークポイントなどのデバッグができる。
A 開発環境としては、Windows NT Workstation 4.0日本語版Service Pack3以上、メモリ48Mb以上推奨、ハードディスクは125MB以上の空き領域が必要。
B アプリケーションの開発環境としてVisual Basic Pro/Enterprise6.0が必要。各デバイス用のPlatform SDKを組み込むことによりそれぞれのデバイスのWindows CE用プロジェクトタイプが作成される。Windows CE上のアプリケーション開発のためのIDEとしてWindows CE メニューの追加、プロジェクトプロパティとしてエミュレーション上での実行/実機での実行かの設定ができる。Windows CE上の機能として自動ダウンロードおよび実行、リモートデバッグ、Windows NT上ではエミュレーションが行える。拡張性モデルとしてActiveXコントロールのホスティングができる。リモート開発ツールとしてVCCE同様多くのツール類が使える。
C ランタイムの特徴として、デバイス上でインタープリテッドで実行される。App.vbファイルはCPU非依存であるが、実際のデバイス毎に必要なランタイムが必要になる。また、ランタイムの特徴としてVB6.0ランタイムのサブセットである(Windows CEで利用可能なWin32 APIをサポート、サイズ・スピード重視、言語サブセット、オブジェクトモデルサブセット、サポートされているプロパティのサブセット)。VBCEのランタイムでサポートされるコントロールには固有のコントロールとして、メニュー、ラベル、テキストボックス、フレーム、コマンドボタン、チェックボックス、オプションボタン、コンボボックス、リストボックス、スクロールバー、スクロールバー、タイマー、ライン、シェイプがある。
D H/PC2.0上でMsgBox関数使用の簡単なデモがありました。
E マイクロソフトの提供するコントロール、ActiveXコントロールのインストール、ActiveXコントロールのホスティングについての説明がありました。
F VBCE6.0日本語版にアドオン、H/PC Pro向けにVBアプリケーションを開発できる、さまざまなCPUに対応したランタイム、ADOCE(Active Database Object for Windows)が使用可能。ADOCEはH/PC Proのみサポート、Synchを含むフル機能をサポートし、CEデータベースとの比較ではより高い機能を持つ。
G H/PC Pro向けのアプリケーションの作成と実行をADOCEを使ってpAccessのデータベースにアクセスした例とPs/PCを使用したデモとしてコモンダイアログコントロールを使用して例が示されました。
H VBCE6.0日本語版にアドオン、Ps/PC1.2向けにVBアプリケーションを開発できる、さまざまなCPUに対応したランタイムが提供される。
I では、Platform SDK for H/PC ProおよびPs/PCは5月半ばころまでには提供できるのでWebサイト http://www.asia.microsoft.com/japan/windowsce/を参照して欲しいとのことです。

 第2部(2)では、小摩木講師から、@Windows CE Platform、AOS/Driver開発ツール、BApplication/Driver開発ツール、CPlatform‐開発ツール、DPlatform Software Development Kitについて環境設定・デバッグ環境設定・留意点についてお話いただきました。


@ では、Windows CE PlatformのPCコンパニオンとEmbeddedの相違点について、ハードウエア仕様(PCコンパニオン:固定のハードウエア仕様、PC9Xと同様に仕様を制限。Embedded:独自のハードウエアにOSをインプリメント)、ソフトウエア仕様の制限(PCコンパニオン:OSのカスタマイズは不可、バンドルは可能。Embedded:OSのカスタマイズが可能)、ライセンス形態(PCコンパニオン:限定されたメーカーにライセンス、ライセンスのあるメーカーからのOEM供給。Embeddded:プロジェクト単位で代理店よりサブライセンス、使用モジュールに応じて異なるロイヤリティ)、プロダクトの開発方法、Platform別開発ツール(PCコンパニオン、Embedded)についてプロダクト開発の面からのお話がありました。
A では、Windows CE Platform Builder 2.11(PB2.11)は、Windows CEカスタマイズツールである、Device Driverサンプルソースコードを提供する。概要について、統合開発環境(スタンドアロン)、ビルド構成のサンプル、Device Driverサンプル、構成ウイザード、エクスポートSDK機能、MFC for Windows CEの説明があり、ビルド構成のサンプルとDevice Driverサンプルについては、かなり具体的な手順が示されました。
B では、Windows CE Toolkit for Visual C++6.0(VCCE6.0) およびWindows CE Toolkit for Visual Basic 6.0(VBCE6.0)についての概要説明がありました。
C では、VBCE6.0はAutoPCおよびEmbedded開発には適した環境とは言えない、とのことです。
Dでは、AutoPCについてはWeb上にUS Beta版があるが、日本語版は現在のところ未定である。H/PCについては、VCCE6.0とVBCE6.0のSDKはH/PC2.0用である。H/PC Pro SDKは別売りである。H/PC2.0 SDKおよびH/PC Pro SDKは MFC,ATLをサポートしている。Palm Size PCはMFC,ATLをサポートしている、とのことです。

ご出席の皆さんからアンケートからのご意見をご紹介いたします。
 第1部 では、「現在開発者が困っているツールなどの話題について明確に説明されていたのがよかった」、「CEの開発環境の全体系を把握することができた。(Web上でこのような情報が分かりやすい形で提供されていない)」、「組込み機器市場に非常に興味があり、Windows CEが今後本格的に同市場へ展開されることを確認できた」、「Windows CE組込み機器の市場について具体的な例をあげた説明をしていただき、よく理解できた」、「初めて医療分野への利用に触れられたが、今後の対応に期待」、「MSのNon PC市場への取組み姿勢が理解できてよかった」、「取組みの概略が理解できた。今後も継続的により詳細な情報を提供してもらいたい」、「一般的な話が多かった。MSとして具体的に何を目指し、それに対してどのような方法でいつまでに何を行うかを説明して欲しい」、「WCE3.0の内容についてもう少し知りたかった」、「技術よりの説明が多く感じられた。もう少しマーケットよりの話が聞きたかった」、「OSの選択としてソースコードの提供なども可能なのだろうか?開発期間の短縮は汎用OSを使用するのもよいが、不良やBugの解析に時間がかかっていては意味がない」、「エミュレーション機能の詳細(実機との違い、エミュレーションの信頼度など)について知りたい」です。

 第2部(1)では、「非常に分かりやすい内容だった」、「開発環境の大枠が理解できた」、「開発環境が複雑なため、その説明に重点が置かれていてよかった」、「デモが充実していて分かりやすかった」、「新しい開発環境についての情報は役立つ。早く入手したい」、「開発環境の構成については理解できた。より詳細なトピックスにも触れて欲しい」、「ツールが開発用に沢山必要であることに憂鬱になった」、「別提供でなくH/PC ProやPs/PC のPlatform SDKもVBCE、VCCEに含めるようにして欲しい」、「最後の質疑がとても有用だった。プロジェクタが2台あるのがよかった。(H/PCとDesktopが同時に見られる)」、「H/PC Pro SDKが何故分離されているのか、また、追加されるモジュールはどういったものなのか説明が欲しかった」です。
 第2部(2)では、「分かりやすかった」、「Embedded系の情報が得られたのは収穫」、「デバイスドライバ、OALの開発に関してもう少し詳しい説明が欲しかった」、「PBの紹介ということであったが急ぎ足で情報的に不足感があった」、「CE単体の性能はもとより開発周辺環境の整備をお願いしたい」、「概要ではあったが、たてまえの話と実際の話があって良かった。ライセンス関係はいろいろと細かいところまで規定されるので、更に用途に応じて緩やかにして欲しい」、「EmbeddedへのVBCEの対応の強化を行っていただきたい」です。

 セミナー全体としては、「ほとんど無駄のない情報が得られ、有意義だった」、「時間も適当であったと思う。また説明も分かりやすかったのでよかった」、「参考資料も非常によく、前回よりかなり有用なセミナーであった」、「組込みのOSとしてのCEの特長がよく理解できた」、「CEにはまだまだ不安な面があるが、今後の展開の方向性などが見えたかなという感じ」、「有用であったが概略が多かった。今後はより具体的なテーマについても聞きたい」、「組込み機器の開発に関してもう少し詳しく聞きたかった」です。

 今後希望するセミナーとしては、「CEのデバイスドライバー作成方法」、「Embedded CEの開発ステップや設計スタンスなど」、「CEの活用事例(組込み機器)を含めたユーザー企業担当者の講演」、「Embeddedでの活用事例の紹介」、「Embedded NT関連」、「PCコンパニオンとノートPCとの位置付けおよび今後の展開」、「CE組込みデータベースについての企画、また具体的な事例(組込み)の企画」、「デバッグ環境について」、「どうプログラムすればよいのかはMSDNに聞けるので、何がプログラムできるのかというサンプルが示してもらいたい」です。

 Windows CEコンソーシアムに対するご意見、ご要望としては、「特に組込み機器開発に関しては情報が少ない状況であるのでこの関係のセミナーは有効である」、「初めて参加したが、国内ではこのようなセミナーがないので、これからも続けて新しい情報を提供して欲しい」、「CEの将来性と開発の容易性を知ることができて、大変有意義であった」、「CEに不可欠なハードウエアの情報やメーカー側のサポートに関する情報提供も行って欲しい」、「良い企画なので新製品のリリースや新しい情報があれば定期的に開催して欲しい。また、実際のインプリメント例(他社の実例)を紹介して欲しい」、「CEに関しては、とにかく情報拡充、整理をお願いしたい」、「PCコンパニオン向けの情報をもっと提供して欲しい」、「広く浅くでなく、特定のテーマを深く掘り下げて欲しい。例として、カスタムWebブラウザ作成方法やカスタムBUSドライバ作成方法など」、「セミナー参加者間で交流を行えるような機会を作って欲しい」です。
 多くのご意見ありがとうございました。次回Windows CEコンソーシアム第4回セミナーは7月23日ですが、参考にさせていただきます。


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