活動報告


●第85回セミナー(Windows CEコンソーシアム主催)実施報告

日 時:1999年1月20日(水)14.00〜18.00
会 場:笹川記念館4F会議室(三田)
参加者:211名
テーマ:「Windows CE開発ツール」
構 成:
 第1部『Windows CE Toolkit for Visual C++ 6.0 日本語版』
    マイクロソフト株式会社 技術支援本部 デベロッパーサポート部
    Windows テクノロジーグループ 主任 筒木 剛 様
 第2部:『Windows CE Toolkit for VB 6.0 でのアプリケーション開発』
    マイクロソフト株式会社 技術支援本部 デベロッパーサポート部
    Windows テクノロジーグループ 下荒磯 利郎 様
 第3部『Windows CE & Windows CE Platform Builder 2.11』
    マイクロソフト株式会社 技術支援本部 デベロッパーサポート部
    Windows テクノロジーグループ 正谷 正 様
 第4部『Windows CE サポートプログラム』
    マイクロソフト株式会社 技術支援本部 デベロッパーサポート部
    Windows テクノロジーグループ 松川 高佳 様

 今回は、Windows CEコンソーシアム主催の第2回セミナーであり「Windows CE開発ツール」をテーマにマイクロソフト株式会社技術支援本部デベロッパーサポート部Windows テクノロジーグループより4人の講師をお迎えしてお話いただきました。セミナー参加応募をWindowsコンソーシアム会員、Windows CEコンソーシアム会員以外にも広く行い200名を越える参加者があり、三田笹川記念館4F会議室にて行われました。
 はじめに松川講師から、Windows CE Toolkit for VB 5.0のベータ版の配布を予定していたが、Windows CE Toolkit for VB 6.0が既に発表になったためにキャンセルになったとのお詫びがありました。

セミナー会場

 第1部では、筒木講師から、@Windows CE Toolkit for VC++ 6.0 日本語版の構成、A開発環境、Bサポートされている機能のお話と、Cデモが行われました。


@ では、今回で3代目となるWindows CE Toolkit for VC++6.0 日本語版は、プラットフォームSDK(エミュレーション、Win32サポート)、クロスコンパイラー、リモートツール、リモートデバッカーで構成され、Visual C++6.0上にアドオンして使う。サポートされるOSはWindows CE2.0(H/PCのサポート)および2.11(H/PC Proのサポート)である。インストール環境は、Windows NT Workstation4.0日本語版SP3が好ましく、ベースとなるVisual StudioはVisual C++ Ver.6.0エンタープライズまたはプロフェッショナル版を必要とする。ハード環境は、なるべくハイスペックのPC、メモリは48MB推奨、ハードディスクは610MB以上の空き領域が必要であり、OSとWindows CE Toolkit for VC++6.0のインストールや今後のソースの管理を考えると2GB位が好ましい。Windows CE Toolkit for VC++6.0 日本語版に含まれるプラットフォームSDKはH/PC2.0をサポートし、Win32 APIをサポートするヘッダーファイルとライブラリが含まれる。さらにDDKも含まれるのでデバイスドライバーの開発ができる。また、ターゲットとなるWindows CEデバイスのWindows NT上でのエミュレーション環境、多くのソースサンプル(Win32 APIベース、 MFC APIベース、DDKサンプルソース)が含まれるのでH/PC向けアプリケーション作成用には大変参考になる。他に、APIリファレンス、プログラマーズガイド、CPUデータマニュアルなどのオンラインドキュメントが含まれる。Windows CE Toolkit for VC++6.0 日本語版で作成できるアプリケーションは、WEC MFC AppWizard(exe),WCE MFC AppWizard(dll),WCE Win32 application,WCE Win32 Dynamic Link Library,WCE MFC ActiveX Control,WCE ATL COM Object,WCE Static Libraryの7つのプロジェクトである。

A では、Windows CE Toolkit開発例、Windows CE Toolkitエミュレーション環境、Windows CE Toolkitリモートツール、Visual C++開発、についてお話がありました。
「エミュレーション上で動いたが実際のターゲットで動かない」という声が多くあるが、実際のエミュレーションは全てのH/PCの機能をサポートしているのではなく、あくまでも画面イメージと簡単な動作の確認のみであって、最終確認は実際のターゲットで行っていただきたい。エミュレーションはWindows NT Workstation上のみで利用でき、Windows 95/98上にインストールするとエミュレーション環境はできないというメッセージがでる。ソースを書いてデバッグを行うためにはリモートツールを使って実際のテストを行うが、Version5と同じように7つのリモートツールがサポートされている。今回のWindows CE Toolkit for VC++6.0 日本語版およびプラットフォームSDKでサポートされているWin32 APIはDesktop用のサブセットとしてサポートするもので、H/PC 2.0では約600、H/PC Proでは約800のWin32 APIをサポートしている。さらに、MFC、ATLもサポートしている。

B では、Windows CEのMFC(Microsoft Foundation Classes)は、標準のMFCライブラリーのサブセットであり、標準のMFCと互換性を持ち、Windows CE用のクラスをサポートするものである。H/PC 2.0用のMFC For Windows CEには、サポートされるクラスとサポートされないクラスがあるのでリストを参照して欲しい。サポートされているMFC for Windows CE Version 2.0は、Windowsソケットサポート、Windows CEデータベースサポート、ActiveXサポート(WCE MFC ActiveX Controlプロジェクトを使う)、また、一般的なMFC用のアプリケーション ウイザード(MFC AppWizard)は、WEC MFC AppWizard(exe),WCE MFC AppWizard(dll)プロジェクトを使って書くことが可能となる。Windows CE特有のクラスの一例としてWindows CE用のデータベースのクラスが4つ(CCeDBDatabase,CCeDBProp,CCeDBRecord,CCeDBEnum)、非同期ソケットのクラスが1つ(CCeSocket)ある。また、データベースクラスを使った簡単なサンプルソースが示されました。CEOLE/ActiveXということでActiveXをサポートしており、OLE/ActiveXを使うときにはOlece20.dllが必ず必要になる。また、今回のVersion6でもWindowsコントロールのサブクラス化は未対応である、とのことです。Active Template Library(ATL)は、いくつかの違いはあるがDesktop用の標準的なATLと互換性を持っている。

Cデモとして、Windows NT4.0 Workstation上にWindows CE Toolkit for VC++6.0 日本語版をインストールして各機能の紹介、Desktopにターゲットを接続してのデバッグ、ActiveXコントロール作成などについて行われました。

 第2部では、下荒磯講師から、@Windows CE Toolkit for Visual Basic 6.0概要、AActiveXコントロール、BActive Database Object for Windows CE(ADOCE)についてお話いただきました。


@ では、Windows CE Toolkit for Visual Basic 6.0の機能として、VB6.0アドオン、Windows 95/98サポート、拡張言語Dim x As Integer、Declareステートメントのサポート、H/PC Pro Editionサポート及び拡張デバッグがある。また、開発環境(Windows NT4.0 Service Pack3上)、アプリケーション開発(Windows CE上の機能として、自動ダウンロード及び実行・リモートデバッグ・エミュレーション)、ランタイムの特徴と入手、アプリケーションモデル、アプリケーションの展開についてのお話がありました。

A では、Microsoftの提供するコントロール、ActiveXコントロールのインストール、ActiveXコントロールのホスティングのお話とWindows CE Toolkit for VC++で作成したActiveXコントロールのデモが行われました。

B では、ADOCE概要(デスクトップと自動双方向同期 Auto-Synch、doubleとbooleanの2データタイプ、SQLサポート、recordset.fieldnameアクセス、デスクトップADO互換)、Windows CEデータベースとADOCEの比較、ADOCEアーキテクチャ、ADOCE2.1の機能紹介がありました。

 第3部では、正谷講師から、@Platform Builder(PB211)の新機能紹介、AエクスポートSDKのデモ、BPB上からのアプリケーションのデバッグ、についてのお話がありました。


@ では、まず「ETK、Platform Builderって何?」では、組込みシステムデバイス用のOSであるWindows CEをOEMメーカーのデバイス用に作成、カスタマイズするためのツールであって、Embedded Tool Kits(ETK)からPlatform Builder 2.11に名前が変更された。Platform Builderの新機能として、スタンドアロン開発ツール、リモートツールの統合、構成ウイザード、エクスポートSDK、オンラインヘルプの日本語化があり、それぞれの説明がありました。

A のデモでは、エクスポートSDKの使用例「構成ウイザードによる“構成”の作成」?「OSのカスタマイズ」?「エクスポートSDKの起動、使用許諾書の追加」について行われました。また、エクスポートSDK使用の際の注意点は、エクスポートするためにはVCCE V6.0が必要、構成ウイザードで作成したファイルはエクスポートできる、との説明がありました。

B のデモでは、PB上からのアプリケーションプログラムのデバッグ例「ESHELLを起動してのターゲットデバイス内のデバッグ用イーサネットカードのデバイスIDの取得」?「ESHELL,CETERM,CESHの起動」?「OSイメージのダウンロード」?「リモートツールにてターゲットデバイスのレジストリ変更」?「PBの起動、アプリケーションのビルド、ダウンロード、デバッグ」について行われました。また、PB上からのアプリケーションプログラムデバッグと注意点は、CESHの起動、ターゲットマシンのレジストリの変更、リモートツール使用の際は/T:TCPオプション、アプリケーションプログラムのみ、との説明がありました。

 第1部〜第3部に共通な情報は、次のWebサイトから入手できます。
・http://www.asia.microsoft.com/japan/windowsce/
・http://www.asia.microsoft.com/japan/windowsce/embedded/
・http://www.asia.microsoft.com/japan/developer/winds/Ce/ce.htm
・http://www.microsoft.com/windowsce/developer

 第4部では、松川講師からWindows CEサポートプログラムについて、@概要、A契約形態、Bサポート契約例についてのお話がありました。



@ では、サポートプログラムは製品版に対して、インシデントベース(年間契約、スポット契約)で行われ、有償サポート、回答の義務はあるが回答期限はない。また、障害・ソルーションの提供は不可である、とのことです。

A では、契約としては4つの形態、(1)プレミヤサポート(年間契約、企業システムのコンサルティング)、(2)プライオリティA(年間契約、アドバンスド製品)、(3)プライオリティB(年間契約、プロフェッショナル開発製品)、(4)スポット契約がある。また、各契約のカウントについての説明がありました。

B では、スタンドアプリケーションはプライオリティB以上、スポットサポート(言語・開発ツール)形態を、またサーバー/クライアントアプリケーションでは、プライオリティA以上、スポットサポート(アドバンスドシステム)形態がとれる例の説明がありました。
 なお、サポート契約に関する申込み先は、マイクロソフトサポート契約センター(Tel.03-5354-4700)、契約内容のWebサイトは、http://www.asia.microsoft.com/japan/supportである。


 ご出席の皆さんのアンケートからのご意見をご紹介いたします。
 第1部では、「製品の発売時期と価格を知りたい」、「Win95/98上の開発が可能になったのも、開発環境を選ばないという点において扱いやすくなった。ただ、X86エミュレーションをプロジェクトで分離したのは失敗。あれではエミュレーションデバッグの手間がかかりすぎる」、「ActiveXコントロールの作り方についてきちんとしたドキュメントが欲しい。製品版でもあんな複雑な手順になるのでしょうか?」、「現在AP開発している。リアルタイムな話題なのでもっと奥まで説明して欲しかった」、「5.0版との違いについてもっと詳しい説明が欲しい」、「5.0版と比べて大きく変わったところがあまり無い様に思えた」、「デスクトップへのOCX登録の説明は難しい。恐らくユーザーから見ればここが問題になりそうなので自動化できるようにして欲しい」です。

 第2部では、「OCXの利点について理解できた」、「期待できる製品となりそうな感じを抱かせてくれた」、「ADOCE2.1の情報が初めてつかめた。(英語版の情報もなかったので)」、「VC++に比べVBのターゲット層を意識した使いやすさはある。拡張部分を見てもデスクトップアプリを書くのと違和感無く開発できるだろう」、「パッケージ化についてもう少し詳細な説明が知りたい」、「VBツールキットには大きな期待をしている。ODBCのサポートを望む」、「リリース時期を明確にすべき。β版でもいいからとにかく早く出すのが先決」、「VBの互換性(扱えるデータタイプ)、ADOの互換性、機能制限などについての情報が少ない」、「VBで組めると開発としては楽になる」です。

 第3部では、「とても面白く、分かりやすかった。現在はEmbeddedに関係ないが、ちょっとやってみたくなった」、「今後の組込み版OS作成時の参考となった」、「デモは分かりやすく細かい内容でよかった。エクスポートされたSDKについての情報がもう少し欲しい」、「OSのカスタマイズの説明が聞きたかった。PBについては非常に有益であった」、「ETKは有用な情報が多かった。組込み向けということでその性質から、かなり環境が特殊で実際に触ってみないと覚えられないようなものも多い」、「第1部、第2部に比べ内容が多い。もう少し時間を多く取って欲しい」、「あまりに内容が濃く、理解しきれなかった」、「もっとデモを見たい」、「HP等で互換のあるデバイスを公表して欲しい」

 第4部では、「資料から読み取れない部分が補足されていてよかった」、「本セミナーではこのセッションは不要である」、「折角の機会なのでCEの技術的なサポートの話を聞きたかった」、「PBの場合などの具体的な例が欲しかった」、「回答待ち時間によりコストが下がると良いのだが」です。

 セミナー全体としては、「まだまだCE関連の情報が少ないのでこういったセミナーで提供する情報の量を増やして欲しい」、「各ツールの提供予定時期、価格、提供方法などを明確に示して欲しい」、「多分参加者全員が期待していたはずのツールのリリース時期(含むβ版)の回答がなかったのは非常に残念」、「デモは理解できたがβ版で実際評価しなければ適用できるか決定できない。実際に使用して評価したいためβ版が必要である」、「バージョンアップの話よりも今後発表するバージョンでどういう環境でツールを使ってどのように開発するのかの説明が欲しい」、「ハード構成をもっと分かりやすく説明して欲しかった」、「初心者と経験者とセミナー対象者を絞った方がよい」、「半日でなく1日コースを希望」です。

 今後希望するセミナーとしては、「CEベースのシステム事例の紹介セミナー」、「H/PC Pro中心のもの」、「サードベンダーのCEツールやテクノロジーの紹介」、「PBを使ったEmbedded Systemの作成について詳細なセミナー」、「CE版ADO、Object Store等の詳しい説明」、「ドライバー関連の詳細、組込み関連の詳細セミナー」、「VCCE、VBCE、PBの実際の使用法」、「アプリ作成手順・注意点、OSカスタマイズ・ダウンロード・デバッグ等各セクションを半日〜1日セミナー」、「PBでOEM用プラットフォームの構成とOSイメージ作成方法について」、「CE3.0(特にリアルタイム機能)に関するセミナー、特にCE3.X機器でネットワークを構成したときに分散環境下でのリアルタイム技術(例えばReal-Time DCOM)などについて」、「国内だけでなく海外(英語)版での最新の状況に関する説明」、「CEで実際に提供しうるソリューション、プロダクトなどの紹介」、「CEを使った国内外のソリューションの紹介」です。

 セミナーに対するご意見としては、「実際にデモを多く取り入れたセミナーは重要であり、今回は非常に有難かった」、「CEについては、まだOEMマーケティングセクションの方の話が普及に必要である。テクノロジーセクションの話が80%、マーケティング20%位のお話が聞ければよかった。次回は是非前回の続きのH/PC Pro、OEM Embeddedの話を聞きたい」、「本セミナーは開発ツールのセミナーだから、β版を提供して欲しい」、「β版の配布が欲しい。ここに来ている人たちは興味本位ではなく、必要性に迫られて来ていると思う」、「テーマを絞ってもっと時間をかけたらどうか?全体として消化不良なので結局は時間を無駄にしているように思う」、「開発環境や開発ツール等の話だけでなく、今後の方向性や最新情報(HPや雑誌などでは得られない情報など)をもっと数多くオープンにして欲しい」、「セミナー対象者を告知の際に知らせて欲しい。例:SE・営業・管理職向け、プログラム開発者向けなど」、「セミナー内容について早めにWeb上で公開して欲しい。概要でもいいから分からないと受講の判断がしづらい」、「H/PC開発者用セミナーとEmbedded開発者用セミナーと分けた開催を。内容がゴチャゴチャになり、理解しづらい」、「Q&Aセッションが一番役に立つ情報が出てくる。セミナーではこの時間を多く取るか、Q&Aのみのセミナーを開催したらどうか?」、「時間の割に内容が多く、かゆい所に手が届かないような感じだった。今後はその辺りを考慮していただけたら有用なセミナーになる」です。

 Windows CEコンソーシアムに対する要望、意見など「当社はCEアプリを開発するのでこれからも同テーマのセミナーを」、「CEに関してはもっとオープンな体制を作らないと普及は難しい。開発などのコンシューマへの認知(個人開発者への情報提供など)指導の発揮を期待したい」、「CEの立上げにコンソーシアムに期待」、「CE開発者向けの内外書籍の紹介を望む」、「MSから出てくる情報が少ないので、どんどん情報発信をして欲しい」、「CEの情報は少ない、特に日本での情報が少ないのでその辺の公開を望む」、「アプリ作成方法のノウハウの詳しい資料が欲しい」、「将来の製品の予定をできる限り入手できるようにして欲しい」、「開催回数を増やして欲しい」、「今回初めて知った。もっとPRすべきと感じた」です。


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